チャイナマンスリーレポート

12月号

2012年12月3日 内藤証券中国部

景気指標は引き続き改善、海外資金の流入が香港市場を押し上げる

本土市場
景気指標は改善が続く、株価も徐々に回復方向へ

 11月の本土株式市場は月初こそ堅調に始まったものの、中旬にかけて下落。月後半には、いったん下げ止まったが、月末にかけて再度弱含みの動きに。

 10月終盤まで下落基調が続いていた上海総合指数だが、11月に入るといったん反発に転じ、1日には2100ポイント台を回復し、2日も続伸。1日に発表された10月の製造業購買担当者指数(PMI)が50.2と前月から0.4ポイント上昇し、3カ月ぶりに景況判断の分かれ目となる50を上回ったことから、景気減速に対する警戒感が後退。さらに翌週に開催予定の共産党大会に対する政策期待も加わり、地合いを下支えた。

 もっとも上昇局面は長続きせず、その後は5日から9日まで5営業日連続で下落するなど軟調な動きに。米国大統領選挙、共産党大会など重要イベントを控え様子見気分が強まったことが背景。6日の大統領選挙はオバマ大統領の再選となったが、“財政の崖”問題が急速にクローズアップされ、7日のニューヨーク・ダウが今年最大の下げ幅となるなど海外市場の下げも響いた。

 15日には習近平・新総書記を中心とする共産党の新指導部が発表されたが、全般的に保守色の強い人事に改革期待を強めていた市場はネガティブに反応。19日にはザラ場で1995.721ポイントと今年の安値を更新した。ただ、その後は、値頃感からの押し目買いも入り、2000ポイント台での一進一退が続いた。

 共産党大会の開幕とともに株価は再度下落に転じ、閉幕後には安値を更新。ようやく底入れ機運が出てきた景気をさらに押し上げるような政策推進を期待していた市場にとっては、今回の新指導部人事は失望ものだったのだろう。ただ、新指導部が本格的に動き出すのは来年3月の全人代以降であり、評価を下すには早計に過ぎよう。いずれにせよ足元の景気が上向きに転じつつあるのは確かであり、企業業績にも底打ち感が出てきた。短期的にはダメ押しの下げも有りうるが、基調としては株価は緩やかながらも回復に向かおう。(11/27 村上)

香港市場
世界的にリスクオンの動きに、つれて資金流入が再開

 11月の香港株式市場は月初こそ堅調に始まったものの、中旬にかけて反落。ただ、月後半は再度出直りの動きとなった。

 10月終盤にいったん反落したハンセン指数だが、11月に入ると再度上昇に転じ、2日にはザラ場で22149.70ポイントと今年の高値を更新した。1日発表の10月のPMIが3カ月ぶりに景況判断の分かれ目となる50を回復、2日には米国のISM指数も市場予想を上回るなど米中の景況感指数が改善したことや、引き続き香港金融管理局が香港ドル売り介入を継続したことから流動性相場への期待感が高まったこと、などが背景。

 その後、22000ポイント前後でのもみ合いとなったが、8日には前日比532ポイント、2.4%安と急落。“財政の崖”問題で前日の米国市場が急落、欧州でもドイツ経済の先行き不透明感が燻るなど外部環境が大きく悪化したことで、香港市場では当面の利益を確定する動きが広がった。共産党新指導部の発足も買い材料とはならず、15日には終値で21108.93ポイントまで売られた。

 もっとも、月後半にかけては一転して戻り歩調に。16日、19日と2営業日連騰の後、1日おいて21日から23日まで3日連騰となり、23日の終値は21913.98ポイントと再度22000ポイントに迫った。“財政の崖”問題に関する悲観的な見方が取り敢えず後退したほか、HSBC算出の11月のPMI (速報値)が13カ月ぶりに50を上回り、中国経済の回復が再確認された、などが支援材料に。

 本土市場が依然として調整局面を脱け出せないなか、香港市場は11月半ばを底に回復に転じてきた。米国の“財政の崖”問題に対する悲観論が後退、ギリシャ支援も合意に向けて漸進、などから世界的にリスクオンの動きが再開、欧米中心に株式市場が反発に向かったことで香港市場にもリスクマネーが流入し、株価を押し上げているもよう。香港ドルが対米ドルで引き続き高値に張り付いていることがその証左だ。本土市場の不振がマイナス材料ではあるが、当面は海外資金の流入が株価を押し上げる展開が続きそうだ。 (11/27 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:中央経済工作会議で定まる来年の経済政策目標が景気回復の軌道を確かなものに

”財政の崖”への懸念などから利益確定の動きに

 11月前半は米国の大統領選挙、中国共産党大会での新指導部選出という重要イベントが続き、株式市場は全体的に手控えムードが濃厚であった。こうしたなか、オバマ大統領の再選を受けて米国では“財政の崖”への懸念が日に日に深まると、世界的にリスクオフに転じ、本土・香港の両株式市場ともに目先の利益を確定する動きが広がった。

 それでも、海外マネーの中国への流入傾向は足元でも継続中とみられる。業績悪化が目立つ中国企業の今1-9月期決算がほぼ出揃ったことで悪材料出尽くし感が広がるなか、これまでに発表された経済指標が概ね良好な結果となり、国内景気の回復期待が続いているからだ。“財政の崖”回避に向けた米国内の動きは12月に山場を迎える。一方で国内では強気の材料が目立つ。不安定な海外情勢と比較的堅調な国内環境の綱引きが続いている。

中央経済工作会議で来年の経済政策目標が明らかに

 こうしたなか、今年のマクロ経済政策を総括し、来年の方針を定める中央経済工作会議が今月中旬までに開かれる見込みだ。これは先ごろ発足した習近平・総書記を中心とする新指導部が迎える最初の重要会議。党大会で示された方針が、工作会議で来年度の具体的な経済目標として落とし込まれる見通しだ。党大会で提唱された「所得倍増計画」が注目点であり、7%台の安定成長、内需拡大を柱とした経済目標などが決められる可能性が高い。政策スピードは加速していくだろう。

 一方で不安定な外部環境は折に触れ調整圧力となり得るが、中国の経済政策が好材料としてその圧力を軽減し、同時に景気回復の軌道を確かなものにしていくという期待が持てる。こうした見通しに立つと、1-9月期でも増益を確保したような“勝ち組”で、更に政策の恩恵が見込める優良企業などは、今後も安定成長していくものと考えられる。(11/26 畦田)

中国共産党大会で定められた主な経済政策方針と関連銘柄

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中石化冠徳(シノペックカントンズ)

00934〈N3230〉香港 株価チャート

中国政府系の原油貿易、原油ふ頭サービス企業

 石油関連の貿易事業を中核とする中国政府系の投資持ち株会社。国務院国有資産監督管理委員会の直接管理下にある中国石油化工集団公司が、香港と上海に上場している中国石油化工(00386)などを通じて支配。主要事業は、原油貿易、原油ふ頭・関連設備の運営や荷役・備蓄など。昨年に船舶チャーター事業に参入した。今上期の売上構成比は原油貿易95.0%、原油ふ頭サービス2.7%、船舶チャーター2.3%。

12.6期(中間)は二桁の増収益を達成

 12.6期(中間)は売上高が前年同期比18.4%増、純利益が同35.8%増と、二桁増収益を達成した。前年同期に比べ原油の平均販売価格が上昇し、貿易量も増加したことで、二桁増収。また、原油ふ頭サービス事業が堅調だったほか、広東省湛江市でふ頭運営を手掛ける企業を昨年買収したことで、今上期から投資収益を計上したことも増益率を押し上げた。

 事業別では、収益性の高い原油ふ頭サービス事業が堅調で、売上高が同8.8%増、セグメント利益が同6.0%増。また、新たに参入した船舶チャーター事業も、今上期にチャーター船の運航回数が7回に増加したことで、売上高が同346.3%増、セグメント利益が同12.4%増。原油貿易事業は原油貿易量の増加を背景に、売上高が同16.6%増。ただ、原油ふ頭サービスなどに主力事業を転換するなかで、収益力が引き続き低下し、セグメント利益は356万香港ドルの赤字となった。

親会社からの優良資産の取得などによって更なる成長へ

 同社は将来性が見込める原油ふ頭サービスや物流事業に経営資源を集約して行く方針。その一環として、親会社から原油ふ頭の経営会社5社の権益50~90%を計18.1億元で取得する予定。この買収のため今上期に増資を実施し、約35億香港ドルを調達した。親会社からの優良資産の買収により、保有バース数が現時点の14から24カ所に、原油の年間取扱能力が8500万トンから2.3億トンにそれぞれ増加し、国内最大、アジアでも最大級の原油ふ頭業者になるという。

 加えて、大型石油タンカー(VLCC)の荷役作業が可能なふ頭も2カ所から9カ所に増える予定。中国の原油輸入は主にVLCCが担っているが、現在、VLCCが着桟できるふ頭は国内に20余りしかない。買収が完了すれば、国内の約半数を同社が占めることから、原油ふ頭市場での競争力は一段と高まろう。監督官庁の承認は既に取得済み、後は地方政府の手続きを残すだけとなっており、年内には買収が完了する見通しだ。

 同時に海外市場の開拓にも積極的に取り組む計画。今年10月にオランダ、ベルギー、エストニアなどで石油製品などの貯蔵ターミナルを運営している企業の株式50%を買収すると発表。親会社は今後、サウジアラビアから欧州向けに石油製品を輸出する予定。この買収を通じて欧州でのふ頭・物流拠点の足場を築くことは、親会社の欧州貿易の拡大戦略とのシナジー効果が期待できる。こうした国内外の企業買収によって、収益力の更なる向上が見込まれる。(佐藤)

中国原油輸入量と対外依存度の推移 中国の原油生産量と消費量の推移

中化化肥(サイノファート)

00297〈N0297〉香港 株価チャート

国内化学肥料の製販大手、12.6期(中間)は増収増益

 筆頭株主は政府系の「中国中化集団」。窒素肥料やカリ肥料など、化学肥料全般を取り扱う。「中化」のブランド名で高い知名度を誇り、原料調達から生産販売まで行う一貫体制を構築。今上期の売上構成比は窒素肥料34.0%、カリ肥料23.8%、リン酸肥料23.2%、複合肥料等19.0%。

 12.6期(中間)は前年同期比22.0%増収、純利益で同9.9%増益。ただ、昨年上期に計上した転換社債評価益の影響を除けば、実質的には同21.5%増の大幅増益であった。出荷量の増加や製品単価の上昇に加え、燃料となる石炭の価格下落等が好業績に繋がった。更に在庫回転日数が前年の66日から62日に短縮するなど、経営効率の改善も寄与した。

資源獲得への取組みを積極化

 当局は食糧増産を重要な課題としており、化学肥料の需要は引き続き拡大する見通し。こうした中、同社では需要の増加に備え、原材料の安定確保に注力。今年初め、3億トンのリン鉱石資源を持つ企業を買収、4月から連結対象とした。これによって年間0.5億元以上の利益が嵩上げされる模様。今後も潤沢な手元資金を生かして資源獲得を急ぐことで他社との差を広げよう。また、化学肥料業界は工場の乱立や生産技術の遅れに伴う環境汚染など、多くの問題が指摘されており、これらを解決するために企業の統廃合が進んでいる。このような中、同社は化学肥料メーカーの大手として業界再編で中心的な役割を果たし、市場規模拡大の恩恵を享受しよう。(高)

中国食品(チャイナ・フーズ)

00506〈N7100〉香港 株価チャート

国務院管理下の中糧集団を親会社とする食品企業

 食用油、飲料やワインなどの製造販売を手掛ける。飲料事業では米コカ・コーラと業務提携しており、炭酸及び果汁飲料の市場シェアは国内首位。また、ワイン事業では中国3大ワインの一つである「長城」ブランドを展開。このほか、食用油の「福臨門」、チョコレートの「金帝」などの有力ブランドを複数持つ。今上期の売上構成比は食用油45.5%、飲料39.4%、ワイン12.6%、菓子その他2.5%。

 12.6期(中間)の業績は売上高が前年同期比15.5%増、純利益で同50.4%増。新製品の投入等によって各事業ともに二桁の増収となった。しかし、食用油事業では大豆などの原材料価格が高騰した影響でセグメント利益は同37.8%減。ただ、採算の悪い商品の製造を中止するなど、コスト削減に努めたことが功を奏し、全体としては大幅な増益を達成した。

中高級品に対する販売強化で高収益体質に

 新商品の投入や製品構成を見直すことで利益率は今後も向上する見通し。特に、ワイン事業では良質な外国産を輸入することで中高級品の販売比率を高めていく方針だ。実際、今上期に実施した南米チリとフランスでの醸造所の買収に続き、豪州や米国などでも対象を物色している模様。一方で、「福臨門」ブランドの調味料の発売を計画するなど、新商品の開発にも余念がない。国民の生活水準向上に伴って「食」への関心が高まっており、優良ブランドを多数保有する同社は中長期的に高成長を続けよう。(有井)

聯想集団(レノボグループ)

00992〈N2950〉香港 株価チャート

パソコンでは中国最大手、二桁の増収益を確保

 世界でも有数のパソコン(PC)メーカー。ノート型PC、デスクトップ型PC等の製造販売を手がける。「Lenovo」や「ThinkPad」等のブランド名で事業を展開するほか、近年はスマートフォンやタブレット型PCなど、採算性の高いモバイル・インターネット・デジタル・ホーム(MIDH)製品の生産販売にも注力。

 12.9期(中間)は前年同期比21.7%増収、20.1%増益。市場シェアの拡大、高付加価値製品の販売強化が好業績につながった。PC市場での世界シェアは過去最高の15.6%を記録、最大手である米HPとは僅かな差となった。また、従来型PC市場の規模縮小から、MIDH事業を積極的に推進したことも功を奏した。

積極的な提携・買収を通じて強固な戦略実行力をつける

 当局が「三網融合(電信、放送、インターネット網の一体化)」政策を推し進める中、同社は通信機器の進歩に伴うパソコン離れへの対処策としてクラウド・コンピューディング・サービス(CCS)の分野で「PCプラス」戦略を強化している。この戦略では従来型PCに加えてスマートフォンやタブレット型PC、高機能サーバーなど、MIDH製品に強い総合力が求められる。そのため、同社はストレージ・ソリューション分野で米大手のEMC社と業務提携したほか、CCSソフトウエア開発の米ストーンウェア社、更にはブラジルの大手家電メーカーを買収。こうした一連の提携や買収は他社との差別化に繋がるほか、海外部門での業容拡大にも大きく寄与する見通し。(高)

中国無線(チャイナワイヤレス)

02369〈N2369〉香港 株価チャート

携帯電話機の国内大手メーカー

 高機能携帯電話(スマートフォン)の製造販売を手掛ける。自社ブランド「Coolpad(酷派)」を主力商品として国内3大通信事業者と提携関係にあり、それぞれの通信方式に対応。昨年までは第2世代(2G)規格のスマートフォンも製造していたが、現在は3G規格の商品に特化している。今上期での携帯端末(3G規格対応機種)の市場シェアは国内第5位。

 12.6期(中間)の業績は売上高が前年同期比105.4%増、純利益で同28.2%増。各通信事業者による3Gネットワークの強化に伴ってスマートフォンの出荷台数が増加したことに加え、新機種を多数発売したことで平均販売単価も上昇したためだ。ただ、製造コスト等の上昇を受けて粗利益率は前年同期の16.8%から12.0%と、大幅に低下した。

市場シェアの拡大を背景に好業績を維持

 今後も好調な業績を維持する見通し。足元におけるスマートフォンの国内出荷状況が好調なうえ、販売価格も比較的安定しているためだ。実際、米調査機関の最新データによれば、今7-9月で同社の「Coolpad(酷派)」ブランドのスマートフォンは市場シェアを拡大させ、韓国サムスン、レノボグループ(00992)に次ぐ国内第3位となったもよう。販売単価を中価格帯のレンジに絞った商品戦略が消費者のニーズに合致したようだ。業界内での競争激化による携帯端末価格の下落など、リスク要因もあるが、スマートフォン市場の拡大が同社に大きな恩恵をもたらそう。(有井)

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