チャイナマンスリーレポート

6月号

2013年6月3日 内藤証券中国部

世界的な金余りを背景に出遅れ修正の動きが続く

本土市場
出遅れ感の強まりを背景に水準訂正の動きが続く

 5月の本土株式市場は出足こそもたついたが上旬にかけて反発。その後いったんもみ合いに転じたものの、月末に向けて再度、上値追いの動きとなった。

 4月終盤には下げに転じていた上海総合指数だが、5月に入っても初日の2日は小幅続落となり、2174.12ポイントと年初来安値を更新した。1日に発表された4月の製造業購買担当者指数(物流協会算出、PMI)が市場予想を下回ったことが嫌気されたためだ。ただ、翌3日以降は反発に転じ、8日まで4営業日連続の上昇。欧州中央銀行(ECB)の利下げや米国雇用統計の改善などを背景にニューヨーク市場が大幅高、国内的には都市化推進や証券業に対する規制緩和などへの期待感が高まったことなどが買い材料に。

 その後、中旬にはいったん反落。4月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を超える上昇率となり、かつ前月の数値を上回ったことで金融緩和期待が後退するなか、13日に発表された鉱工業生産などいくつかの経済統計が事前予想を下回り、景気の先行きに対する懸念が台頭したため。

 一方、月後半にかけては人民元高に伴う資金流入期待などを背景に上値追いに転じ、21日の終値は約2カ月ぶりに2300ポイント台を回復した。ただ、その後は景気指標の悪化もあり不安定な値動きとなった。

 4月の経済指標も総じて低調で景気の先行き不安が払拭できない。本来なら景気刺激のための金融緩和に動いてもよい場面だが、不動産価格の上昇が続いていることからそれも難しい。新たな都市化推進策など政策期待も高まっているが、なかなか具体化しない。ただ、そうした中でも株価は5月初めを底として足元で反転上昇の気配が出てきた。日々の売買金額もこのところ膨らんでおり、株式市場への資金流入を示唆している。現在の世界的な株高局面において出遅れ感が強まっていることは間違いのないところであり、水準訂正の動きが既に始まっている可能性が大きい。(5/24 村上)

香港市場
リスク資金の流入継続で割安修正が続く

 5月の香港株式市場は前月の地合いを引き継ぎ前半は堅調な動きであったが、中盤には反落。その後、いったんは高値を付ける場面もあったが、月末にかけて再度、調整気味の展開となった。

 4月下旬から反発基調にあったハンセン指数だが、5月に入ると初日の2日こそ小反落のスタートとなったが、翌3日以降は上昇に転じ、7日には約2カ月ぶりに23000ポイント台を回復した。欧州ではECBが利下げ、米国では4月の雇用統計が予想以上に改善、など海外環境の好転が株価を押し上げた。また、中国政府が人民元の国際化、資本取引規制の緩和などを加速させるとの方針を打ち出したことで、「香港株直通車」(中国本土の個人投資家による香港株直接投資)導入への期待感が高まったことも相場の下支えに。

 ただ、その後、中盤にかけてはいったん反落、13日には前日比1.4%の大幅安となり、再び23000ポイントを割り込んだ。高値警戒感が高まるなか、発表された4月の中国本土の経済統計が低調だったことや、米国が早期に量的緩和を縮小するとの観測も地合いを悪化させた。一方、下旬にかけて再度、上値を試す動きもあったが、23日には前日比2.5%安と急落、23000ポイントを割り込むなど不安定な動きに。バーナンキFRB議長発言、HSBC発表の5月のPMI(速報値)の50割れ、東京市場の急落、などが嫌気された。

 4月のG20財務相・中央銀行総裁会議をきっかけに先進国の量的緩和継続観測が強まり、香港市場へも海外資金が流入、4月下旬以降の株価反転につながったようだ。ただ、足元では米国の量的緩和縮小観測も出ており、これまでのような一本調子の戻りは期待し難いが、当面、世界的な金余り状態の継続に変わりはなく、引き続き香港市場へのリスク資金流入が予想される。また、07年に話題になった「香港株直通車」の導入も現実味を増しており、今後も折に触れて材料視されよう。本土市場同様に水準訂正の動きが続こう。(5/24 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:人民元国際化の進展に期待

人民元高が株価を下支え

 中国経済の回復ペースが想定以上に鈍っている。23日に発表されたHSBC算出の5月の製造業購買担当者指数(PMI、速報値)は49.6に低下し、7カ月ぶりに景気判断の目安となる50を割り込む結果に。2Q13の成長率下振れが警戒され、同日の中国株は大きく調整した。

 もっとも、景気の不透明感にも関わらず、人民元レートは基本的に上昇基調。先進国を中心に低金利政策が続くなか、相対的に金利が高い中国への資金流入が続いているからだ。人民元高は更なる資金流入への期待感に繋がり、これが中国株にポジティブな影響を与えている。香港株は足元調整しているが、5月中頃までは元高を追い風に上昇。人民元が取引通貨のA株も底堅さが目立つ。輸入インフレ抑制に向けて当局に元高容認姿勢が見受けられることからも、当面、緩やかな元高が続き、株式相場の地合いを下支えする要因となろう。

人民元国際化の進展に期待

 また、市場は人民元の国際化にも注目している。中国政府は貿易での元決済拡大を促進。人民元レートの変動幅拡大の可能性も話題に出始めた。さらに現在、厳しい規制下にある資本取引に関しても、当局は年末までに具体的な緩和策を打ち出す考え。加えて、人民元オフショア市場の拡大にも努める方針だ。

 こうした動きは恐らく漸進的なものとなろうが、着実に資本市場の活性化に繋がろう。本土から海外への投資はQDII2制度の導入が焦点。逆に本土への投資では既存のQFII、RQFIIの投資枠拡充、QFII2制度の採用が考えられ、A株への資金流入が期待される。どちらの方向でも香港の投資家や金融機関が重要な役割を担うことは確実。7月1日の香港返還記念日を前に何らかの進展があるものと考えられ、これが株価の大きな刺激材料となることが期待される。(5/24 畦田)

人民元の対米ドル基準レートと乖離率の推移 外国為替資金残高の月間増減額、基準レートの月間騰落率 人民元の国際化に関する主要トピックス

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中国建築国際(チャイナステート)

03311〈N3310〉香港 株価チャート

香港を拠点とする大手総合建設会社

 国務院直属の中国建築工程総公司を親会社とする大手建設会社。香港と中国本土を中心に、マカオ、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイなどで、建物の建設・土木工事やインフラ工事などを展開している。

 近年は中国本土の低所得者向け住宅建設プロジェクトに注力。さらに昨年は、世界各国でカーテンウォール事業を展開する香港上場企業の遠東環球(00830)を支配下に置いた。

12.12期は約4割の増益を達成

 12.12期の業績は売上高が前年比20.7%増、純利益が同41.4%増となった。なお、配当予案は1株あたり0.09香港ドル(権利落ち日:6月11日)。

 地域別では、香港が政府による公共インフラ整備の推進を追い風に、売上高が同6.9%増。コスト削減などを背景に粗利益率が8.2%と前年から0.9ポイント上昇し、セグメント利益は同22.0%増となった。

 また、中国本土でも低所得者向け住宅を含むインフラ事業が好調で、売上高が同13.0%増。加えて、一部のBT(建設・譲渡)プロジェクトが完工し、引き渡しにより同期に6.3億香港ドルの収益を計上したこともあり、セグメント利益が同47.3%増と大幅に伸びた。

 さらに13年1-3月期決算も全体の売上高が前年同期比29.8%増、営業利益と共同支配会社に対する持ち分法利益の合計は同30.2%増と、業績は引き続き堅調だ。

インフラ需要や本土事業へのテコ入れが成長を後押し

 足元の新規受注も好調に推移している。13年1-4月期の新規受注額は前年同期比89.8%増の204.4億香港ドルに達し、通期目標額(400億香港ドル)に対する達成率では既に5割を上回った。

 地域別では、香港とマカオが好調だった。香港では、今年1月に消防訓練学校の設計・建設プロジェクト、2月に住宅建設プロジェクト、3月にはトンネル工事や関連施設の建設プロジェクトなどを受注した。新規受注額は同335.3%増と大幅な伸び。マカオでも政府の積極的な公共事業を追い風に、1月に住宅建設プロジェクトの新規受注を獲得。このプロジェクトはマカオ政府の案件として過去最大の18.9億香港ドルに達し、マカオでの受注額は同187.2%増となった。

 一方、中国本土は伸び悩み、低所得者向け住宅を含むインフラ事業の新規受注額が同10.8%増。ただ、同社は今年の設備投資60億香港ドルの約8割を充てるなど低所得者向け住宅事業を重視。加えて、3月の社債発行で調達した約5億米ドルの一部も同分野に投じる方針など事業強化に努めており、今後、受注が増加する見通し。

 手元資金を見ても、12.12期末時点で約67.2億香港ドルのキャッシュを保有。さらに100億香港ドル以上の銀行融資枠を温存しており、資金需要に対する手当は十分に確保されている。こうした香港・マカオの旺盛なインフラ需要に加え、中国本土事業へのテコ入れなどを背景に、同社は高成長を維持しよう。(佐藤)

セグメント売上構成比(12.12期) 業績推移

吉利汽車(ジーリーオート)

00175〈N0175〉香港 株価チャート

浙江省に本拠地を置く民営の中堅自動車メーカー

 「全球鷹」、「帝豪」、「英倫汽車」といった自社ブランド車の製造を手掛け、中低価格帯の車種を得意とする。昨年末時点で浙江省、湖南省や上海市等に複数の工場を構え、年間生産能力は62.5万台。また、国内はもとより、東欧、中南米、アフリカなど、海外37カ国に販売拠点を持つ。

 12.12期の業績は、売上高が前年比17.5%増、純利益で同32.2%増。国内販売台数が前年比でほぼ横ばいだったものの、輸出が同157.3%増(同6.2万台増)と好調だったことで、全体として同14.7%増の48.3万台に達し、当初目標の46万台を上回った。また、国内に関しても9月以降、新型モデルを相次いで発売しており、販売台数は増加傾向だ。

足元の自動車販売が好調

 今年1月、同社の月間新車販売台数は前年同月比7割増の6万3500台と、過去最高を記録した。「GX7」等のSUVが堅調だったことに加え、昨年投入した新型車種も高い伸び。続く2月は旧正月連休の影響で営業日数が少なく、同2割減の 3万1500台にとどまったが、1-4月累計では前年同期比2割増の18万7400台と高水準を維持している。

 さらに、年後半には電気自動車を含め4~5車種で新型モデルを発売する予定だ。また、国外に関しては合弁会社等を通じて生産拠点を拡充する計画。大気汚染対策として国内都市部での新車購入規制の拡大など、懸念材料もあるが、今期の販売台数は昨年実績を大幅に上回ろう。(有井)

中国建設銀行(コンストラクションバンク)

00939〈N0939〉香港 株価チャート

中国四大国有銀行の一角

 1954年に設立された中国人民建設銀行を前身とし、04年の再編で誕生した大手商業銀行。インフラ建設向け融資等に強みを持つ。昨年末時点で総資産は14.0兆元に上り、国内第2位の規模。また、中国全土に1万4000カ所以上の営業拠点を構えるほか、香港、シンガポール、東京、シドニー、ニューヨーク等、海外にも複数の拠点を置く。

 12.12期は純利益が前年比14.1%増と二桁の増益。貸付総額が期間平均で同15.0%増加したほか、利ザヤも前年比0.01ポイント向上して2.58%となったことで資金運用益が同16.0%増。特に、インフラ、農業関連への法人向け融資や個人向け住宅ローン等が好調だった。一方、期末の不良債権比率は前年末に比べ0.10ポイント低下して0.99%と低水準を保っている。今1-3月期も純利益で同15.7%増と堅調だ。

リスク管理を強化しつつ、事業規模は拡大へ

 現在、中国政府は内需拡大策の一環として都市化や農業の高度化などを推進している。これによってインフラ建設や農業関連への投資が加速することで銀行融資も増加する見通し。さらに、人民元国際化の流れの中で、本土外での中国大手銀行よる人民元業務の拡大も見込まれる。

 ただ、政府当局は各銀行に対してリスク管理を強化する方針だ。このような下で同行は預貸比率(預金残高に占める貸出総額の比率)を65%程度にとどめるなど、リスクコントロールの厳格化に努めており、今後も高成長を続けよう。(有井)

比亜迪(BYD)

01211〈N1210〉香港 株価チャート

新興自動車メーカー、業績改善の傾向が強まる

 95年に創業した民営企業。自動車事業とIT製品事業(二次電池、太陽電池、移動通信端末部品の製造および組立等)が収益の柱。自動車事業ではガソリン車のほか、バッテリー製造の強みを生かして電気自動車(EV)やプラグインハイブリッドカー(PHEV)等の新エネルギー車にも力を注いでいる。

 13.1-3月期の業績は、前年同期比9.8%増収と好転したほか、純利益で同315.6%増と大幅な伸び。さらに、会社側は今上期の純利益が最大で5億元、同約30倍になるとの業績見通しも発表。今後は需要回復に伴い中高級車をメインとして新型のセダン、SUV車等を相次ぎ市場に投入する予定。また、IT製品事業はスマホ等を中心に受注が増えているほか、太陽電池部門も最悪期を脱出し赤字縮小の傾向が強まっている。

エコカーへの注力が中長期的な成長を支える

 同社は環境に優しいエコカーを中心とする事業再編を推進。今後、PHEVやEVなど、環境対応車の販売比率を一段と引き上げる見通し。実際、エコカー分野での開発ペースが速まっており、今年9月頃までに次世代エンジンを搭載したPHEV「秦」、来年初めにはダイムラー社と共同開発の新型EV「騰勢」がそれぞれ発売される予定。このほか、EVバス「K9」は今年初めに「欧州統一型式認証:WVTA」を取得。欧米などで生産・販売網の構築を急いでおり、今後、海外からの受注増加も見込まれる。このような次世代自動車への注力が中長期的な成長に繋がろう。(高)

北京同仁堂科技(トンレンタンテクノロジーズ)

01666〈N9490〉香港 株価チャート

約三百五十年の歴史を誇る漢方薬メーカー

 「同仁堂」は1669年に創業し、18世紀前半には宮廷御用達となるなど、国内の漢方薬業界で知名度が高く、強いブランド力を持つ。このような中で同社は親会社との競業を避けるために伝統的な漢方薬を扱うのではなく、ソフトカプセルなど新型漢方薬の製販を手掛ける。主力製品は解熱鎮痛剤の「牛黄解毒片」、貧血や婦人病等に効果がある「永盛合阿膠」など。

 12.12期の業績は、前年比26.4%増収、同29.6%増益。近年、国内では「医薬分業」との医療制度改革が推し進められており、市販薬の需要が旺盛だ。なかでも、同社は市販薬を主に取り扱っており、大きな恩恵を受けている。加えて、生産技術の革新や販売力の強化に取り組んできた結果、収益が大幅に向上した。

新規増産体制の構築で、生産能力の不足が解消へ

 生産拠点の拡充が本格化している。主力漢方薬の一つである「永盛合阿膠」は、原料となるゼラチンの生産能力不足が販売量増加のボトルネックとなっていた。これを解決するため、昨年末、河北省で新工場を増設。ゼラチンの生産能力は、それまでの4倍程度の規模に引き上げられた。

 また、安徽省では投資額が1.9億元に上る漢方薬原料の加工拠点の建設が既に始まっている。さらに、北京市においても10.9億元を投じて医薬品製造工場を設立する計画が進んでいる。これらの投資が生産能力の拡大をもたらし、同社は今後も高成長を続けよう。(高)

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