チャイナマンスリーレポート

7月号

2013年7月1日 内藤証券中国部

景気停滞、金融システム不安を背景に、催促相場的な色彩が強まる

本土市場
景気の停滞感が一段と強まる、底値模索の動きが続く

 6月の本土株式市場は月初から軟調な展開。中旬にはいったん下落に歯止めがかかったものの、月末にかけては急落場面を交えつつ、下値模索の動きとなった。

 5月終盤にかけ回復基調にあった上海総合指数だが、6月に入ると初日の3日こそ小幅安で始まったが、その後下げ足を速め、7日まで続落、この間の下げ幅は約90ポイント、率にして3.9%の下落。米国のQE3縮小観測を背景に米国株式市場が不安定な動きを強めるなど海外環境に不透明感が増す中、HSBCの5月の製造業購買担当者指数(PMI)が下方修正されるなどで国内景気の減速懸念が強まったことが嫌気された。

 その後、端午節の連休を挟んで取引が再開された13日も62.5ポイント、2.8%の大幅続落となり、年初来安値を更新。連休中の海外市場が引き続き軟調だったことに加え、週末に発表された5月の主要経済統計が事前予想を下回り、総じて弱い内容であったことから、国内景気の先行きに対する懸念が台頭したため。

 一方、月後半にかけては下げ過ぎの反動や政府系投資会社である中央匯金投資有限責任公司の保険・銀行株買い増し報道を材料にいったん下げ止まりかけたものの、20日には59.4ポイント、2.8%安と再び急落。さらに24日には銀行間金利の急騰を嫌気し、100ポイントを超える下げとなり終値で2000ポイントを割り込むなど、下値模索が続いた。

 5月の経済指標も総じて低調で、景気の停滞感が一段と強まってきた。本来なら景気刺激のための金融緩和や財政出動に動いてもよい局面だが、現段階ではその可能性は小さそうだ。新政権は社会的には綱紀粛正、経済面では成長パターンの転換をそれぞれ最優先に考えており、その結果としての目先的な成長率の鈍化は甘受するという姿勢だからだ。短期的な成長を犠牲にしてでも構造改革による安定成長を目指す方向であり、この点の評価が浸透すれば株式市場にとって中長期的な好材料となろう。ただ、短期的には景気・株価ともに底を探る展開が続く可能性も。(6/24 村上)

香港市場
米国の量的緩和縮小観測で急落、割安感が強まる

 6月の香港株式市場は月初から調整色の強い展開。中旬にかけては下げ止まりの様相を呈したが、下旬に入ると再 び急落、その後も下値模索の動きが続いた。

 5月下旬から下落に転じたハンセン指数だが、6月に入ってもトレンドは変わらず初日から続落のスタート。さらに1日置いて、5日から7日まで3日連続で200ポイントを上回る大きな下げとなった。米カンザス連銀総裁による量的緩和策の縮小支持発言、低調なADP雇用統計などから米国市場の下げが続いたほか、本土で銀行間金利が急騰、資金需給のひっ迫感が強まったことも嫌気された。

 その後、週明けの10日には小幅に戻したものの、11日,13日と再び続落。特に13日は467.6ポイント安と2%を超える急落となり、終値は21000ポイントを割り込んだ。米FOMCを控えてQE3縮小への警戒感は引き続き根強く、米国市場が大幅に続落。ギリシャ国営放送局の閉鎖を契機に欧州情勢にも不透明感が広がるなど外部環境が悪化。加えて、連休明けの本土市場が大幅安となったことが響いた。

 一方、月半ばには値頃感からの買い戻しで反発する場面もあったが、20日には604.0ポイント安と3%近い大幅な下げ。さらに、24日も2%を超える下落となり、約9か月ぶりに20000ポイントの大台を割り込むなど、低調な展開が続いた。

 米国の量的緩和縮小観測をきっかけに世界的にリスク資産からの資金引き揚げが進み、株式、債券がともに売られる展開となっている。特に新興国市場からの資金流出が激しく、香港市場もその流れに巻き込まれ、6月に入ってハンセン指数は10%を超える急落となっている。ただ、米国の量的緩和縮小は米国景気の回復を意味するわけで、一方的に悪材料と捉えるのは悲観的に過ぎる。足元でのリスクマネーの動向を巡る混乱が一巡すれば、割安感が目立つ香港市場だけに、再び海外からの資金流入も期待できよう。また、「香港株直通車」の導入も現実味を増しており、今後も折に触れて材料視されよう。(6/24 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:成長モデルの転換に向けた構造改革に注目

減速が想定内に収まる限り、景気対策は限定的

 中国経済に対する減速懸念が日増しに強まっている。実際、5月の主要統計は概ね弱い内容。特に輸出の下振れが目立った。また、6月中旬には世界銀行が今年の成長見通しを1月時点の8.4%から7.7%に下方修正。こうした悪材料に株価が敏感に反応、中国株式市場も足元で大きく調整している。加えて、年内にも米国の量的緩和が縮小との観測も出ており、世界的な金余り状態は節目を迎えている。

 ただ、政府当局は構造改革を進める上で、景気減速はむしろ有益だとする考えを持っている様だ。最近の短期金利の上昇は、その証左といえよう。もちろん想定内に収まることが前提となるが、当面は中長期的な観点から構造改革を景気対策よりも優先していくだろう。仮に対策が打たれても、大型の財政出動といった“カンフル剤”的なものとなる可能性は低い。

改革に適応できる企業が中長期的な投資対象

 その背景にはリーマン・ショック直後に実施された総額4兆元の景気対策の結果、非効率さが目立つ粗放型の成長モデルが益々浸透したという反省があろう。そのため、従来型の景気対策では改革の効果を弱める可能性がある。一定程度の成長を犠牲にしてでも、新指導部は改革をやり抜く構えだ。

 こうした状況下では構造改革への適応力が企業の将来を左右する。改革の目指す方向は個人消費が牽引する内需型経済の実現。企業にとっては成長余地が見込める中小都市・農村での販売力が重要となろう。製品の技術・ブランド力を重視する経済構造を確立しつつ、中国発のグローバルブランドの育成も待たれる。改革は確かに痛みを伴うが、一方で改革に適応し、安定成長を遂げる優良企業も出てこよう。こうした企業は、景気減速下でも中長期的な投資対象となるだろう。(6/25 畦田)

成長モデルの転換を目指す中国

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蒙牛乳業(チャイナモンニュウデアリー)

02319〈N2319〉香港 株価チャート

中国大手乳製品メーカー

 「蒙牛」ブランドを主力とする大手乳業メーカー。主力製品は超高温殺菌(UHT)牛乳、ヨーグルト等の液状乳製品。そのほか、アイスクリーム、粉ミルク等の生産販売も手掛ける。米調査会社ACニールセン社によると、液状乳製品における昨年の国内市場シェアは27.4%と、引き続き国内首位。昨年の売上構成比は、液状乳製品が89.6%、アイスクリーム・その他10.4%。

12.12期は小幅減収、大幅減益

 12.12期の業績は前年比3.5%減収、純利益で同20.9%減益。11年末頃、同社の製品から基準値を上回る量のカビ毒「アフラトキシン(AFT)」が検出され、この問題によって需要が減少したため。ただ、現時点で原因はほぼ特定されており、原料乳仕入先の飼料に問題があったことが指摘されている。

 このような中、液状乳製品部門は売上高が同4.0%減。内訳をみると、部門収入の6割を占めるUHT牛乳が同5.4%減となったほか、ヨーグルト・乳飲料も同1.8%減。AFT事件を受けて販促強化に取り組んだが、需要鈍化から苦戦を強いられた。

 一方、消費者の不信感を取り除くため、管理体制を十分に整えた牧場から調達する原料乳の比率を11年末時点の8割弱から12年上期で85%、下期には93%まで引き上げた。この結果、原料乳の仕入れ単価が市場平均(3.5元/kg)を上回り、上期で3.6元/kg、年末時点で4元/kgまで上昇。また、これに伴って粗利益率は25.1%と前年に比べ0.6ポイント低下した。加えて、品質管理の厳格化から検査費用が嵩んだことで営業利益率も前年の5.1%から4.1%となった。

品質向上への注力と製品構成の改善で収益基盤を強化へ

 同社はこれまで低価格路線を歩むことによって市場シェアの拡大を図り、高成長を遂げてきた反面、過去数回にわたって食品に対する安全性問題を引き起こしてきた。ただ足元では、抜本的な改善を目指し、品質安全管理センターの新設や原料乳仕入れ管理体制の強化に努めている。一方、品質向上に伴う経営コストの増加は販売単価の上昇で吸収する方針。経営陣は食品に対するリスクを減らすとともに、高級品を中心としたラインアップの充実を図っている。

 この一環として、同社は昨年中頃、デンマークを本拠とする世界的乳製品大手のアーラフーズ(AF社)と戦略的提携関係を結んだ。今後、AF社から大規模牧場の建設・運営や品質管理に関するノウハウを導入できるほか、粉ミルクの分野においても新製品の開発などで有利に働く見通し。既に実際、AF社と共同で「中国・デンマーク乳製品技術協力センター」を設立し、牧場の管理から乳製品の出荷までトータルでの生産管理・研究開発について協力関係を強めている。さらに同社は先月18日、粉ミルク大手の雅士利国際(01230)に対する買収計画を発表。急成長が続く国内粉ミルク市場でのシェア拡大を図る構えだ。

 加えて、ヨーグルト世界大手ダノン社の資本参加を受け入れ、ヨーグルト分野での協力関係を強化。消費者の信頼回復に向け、これら有力企業との業務提携を通じて食品安全管理とブランド価値の向上を目指す。また、新製品開発力の増強に伴う収入源の多様化が経営基盤の拡大に繋がろう。(高)

売上構成比(12.12期) 業績推移

銀河娯楽(ギャラクシーエンター)

00027〈N0027〉香港 株価チャート

マカオでカジノ事業を展開する香港企業

 カジノホテル「スター・ワールド」やコタイ地区の大型総合カジノリゾート「ギャラクシー・マカオ」などを経営。昨年のカジノ収益は業界トップの澳門博彩控股(00880)に次いで第2位。今年6月17日からハンセン指数構成銘柄に採用された。

 13.1-3月期は売上高が前年同期比15%増、EBITDAが同29%増となった。VIP向けカジノは中国の景気減速などを背景に賭け金が前年同期に比べ減少。だが、控除率(カジノ側の勝率)が「ギャラクシー・マカオ」と「スター・ワールド」でいずれも上昇。これによって収益もそれぞれ同15%増、同1%増。また、一般向けカジノも控除率の向上で収益がいずれも同42%増と大幅に伸び、そろって過去最高を更新した。

カジノ以外の事業拡大により更なる成長へ

 同社はカジノ以外の業務を充実させ、事業の多様化を図る方針。現在、「ギャラクシー・マカオ」では第2期プロジェクトを推進中。15年までに、約950台のカジノテーブル、2500台以上のスロットマシーンに加え、約200の高級ショップ、高級ホテル、各種レストランなどを建設する計画だ。

 続く第3・4期プロジェクトも早ければ今年末に着工する予定。このプロジェクトでは、1万人収容可能な多目的アリーナの建設など、非カジノ事業が開発面積の95%を占める。これによって様々なサービスを提供することで、収益源の多様化を図ると同時に、観光客誘致にも繋がろう。そのため、今後も観光客の増加が見込め、同社は高成長を続けよう。(佐藤)

和記電訊香港(ハチソン・テレコム・ホンコン)

00215〈N0215〉香港 株価チャート

香港の大手電気通信事業者、12.12期は二桁増収益

 香港とマカオで「3」ブランドの携帯電話サービスを提供するほか、「HGC」ブランドでブロードバンド(BB)など固定電話事業も手がける。米アップル社などとも提携。

 12.12期は売上高が前年比15.9%増、純利益が同20.3%増。移動通信事業ではスマートフォン等の販売が好調で売上高が同19.0%増。モバイル契約件数も同7.7%増、うち3G、4Gユーザー数が同25.4%増。これによってARPU(1契約当り平均月間収入)は同7.0%増、EBITDAで同22.7%増となった。また、固定通信事業では通信キャリアや法人向けデータ伝送・専用線サービスの提供などが堅調、売上高は同7 . 0%増、EBITDAで同3.3%増。

新規事業の推進や買い替え需要が成長を後押し

 同社はスマートフォンを使った電子マネーシステムをシティバンクと共同開発し、親会社傘下の小売チェーンで運用する予定。親会社は香港でも屈指の小売ネットワークを持っていることから、広範囲に導入が可能で急速な普及が見込まれる。

 また、同業他社に比べスマートフォンの買い替え需要も期待できる。昨年12月時点で、同社ユーザー全体に占めるスマートフォンの割合は約6割にとどまっている。そうしたなか、今年4月下旬に「ギャラクシーS4」の販売を始めたほか、下期にも新機種を投入する計画だ。買い替えによる4Gユーザー数増加に伴ってARPUの伸びが見込まれることから、安定した成長を今後も続けよう。(佐藤)

華能新能源(ファネンリニューアブルズ)

00958〈N0958〉香港 株価チャート

中央政府系の大手風力発電会社

 国内最大規模の発電事業者である中国華能集団を親会社とする再生可能エネルギー開発企業。風力発電を主力とするほか、太陽光やバイオマス等による発電事業も手掛け、昨年末時点の発電能力は約5500メガワットに上る。また、温室効果ガスの削減によって得られるクリーン開発メカニズム(CDM)に基づく認証排出削減量(CER)の販売も行う。

 12.12期の業績は、売上高が前年比26.0%増、純利益で同45.5%減。発電量が同22.8%増加したことで二桁増収となったものの、設備増強に伴って減価償却費が同37.9%増と嵩み、大幅な減益。また、一部の地域において送電網の不備等の影響で風力発電所の稼働時間が低下、全体として同9.6%減となったことも利益率の悪化に繋がった。

今期も発電量は大幅に増加する見通し

 現在、中国政府は深刻な大気汚染等を背景に風力による発電能力を強化する方針だ。同社でも、これに伴い風力発電設備の拡充を一段と急ぐ構え。また、今年に入ってから全国的に天候にも恵まれ、十分な風量が確保できたことで発電量は増加傾向にある。実際、今1-3月の発電量(権益ベース)は前年同期比64.8%増と高い伸びを示しており、今期も前年実績を大きく上回ろう。

 一方で、昨年10月に社債を発行して金利負担の低減を図るなど、財務コスト圧縮にも努めている。CER価格の下落等、懸念材料もあるが、今期の業績は急回復を遂げよう。(有井)

瑞声科技(AACテクノロジーズ)

02018〈N2018〉香港 株価チャート

深センを本拠地とする小型音響部品メーカー

 携帯電話、タブレット端末、ゲーム用コントローラーに組み込まれる音響部品等の研究開発や設計製造を手掛ける。スマートフォン市場で世界的に大きなシェアを握る米アップルを主要顧客とするほか、サムスン、モトローラー、中興通訊など、国内外の大手メーカーとの取引実績を持つ。

 13.1-3月期の業績は、売上高が前年同期比59.7%増、純利益で同69.9%増。足元でアップル「iPhone」の販売が伸び悩むなか、韓国や国内メーカー向けが好調であった。特に、世界のスマートフォン市場で存在感を高めているサムスンに対する出荷が大きく伸びたようだ。また、平均販売単価も前年同期に比べ二桁の上昇となった。

販売単価の更なる向上に加え、出荷台数も増加

 現在、スマートフォン市場ではディスプレイの大型化に伴い音響部品に対しても高性能化が求められており、製品単価は上昇傾向にある。それゆえ、同社においても今第1四半期に続き、販売単価が今後一段と上昇する見通し。

 さらに、年後半には部品納入先メーカーの新製品発売なども控え、出荷台数の大幅な増加が期待できる。また、アップルに対する依存度が高かった今までの経営体質に関しては、サムスンの比率が上昇するなど、顧客層に厚みが増しており、業績の下振れリスクは以前に比べ大きく軽減されている。スマートフォンの高性能化ならびに世界的な普及の恩恵を受け、同社は今後も高成長を続けよう。(有井)

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