チャイナマンスリーレポート

8月号

2013年8月1日 内藤証券中国部

6月の急落を経て悪材料をほぼ織り込む、反騰局面入りへ

本土市場
悪材料はほぼ織り込んだ、中長期では買いのタイミング

 7月の本土株式市場は月初こそ堅調に始まったものの、その後反落。中旬には再度上昇に転じる場面もあったが続かず、月末にかけて一進一退の動きとなった。

 6月終盤にかけ底入れから回復に転じた上海総合指数だが、7月に入っても堅調な動きが続き、2日には7営業日ぶりに2000ポイントの大台を回復、5日には2007.19ポイントまで戻した。6月下旬の株価急落の主因となった銀行間金利の急騰がようやく峠を越え安定に向かったことが、好感された。ただ、1日に発表された6月の製造業購買担当者指数(物流協会算出、PMI)が引き続き低調だったことで上値は抑えられた。

 週明けの8日には新規公開の早期再開観測が嫌気され前営業日比2.4%安の大幅下落となったが、翌9日から3日続伸となり、11日にはザラ場で2100ポイントに接近。6月の貿易統計が大きく下振れしたことや、李克強首相が最低ラインの経済成長率は維持すべきと発言、景気刺激策への期待感が一気に高まったことが背景。

 その後はいったんもみ合いに転じたが、17日からは3日続落となり、再度2000ポインを割り込んだ。李克強首相の景気対策に対する否定的な発言に加え、財政部トップが年内の大規模な財政出動を同様に否定するなどで、政策期待が後退したため。月末にかけても景気対策の有無を巡り、一喜一憂の展開となった。

 4-6月の実質GDP成長率は7.5%に減速、足元の経済指標も総じて低調で、景気の停滞感が一段と強まっている。新政権は経済構造の転換を最優先に考えており、その結果としての目先的な成長率の鈍化は甘受するというのが基本姿勢だが、李克強首相の直近のコメントを見る限り、さすがに7%を下回る成長率は容認できないようだ。したがって、今後は景気指標の悪化が政策期待の高まりに繋がり、むしろ買い材料になりそうだ。株価についても6月の急落で大方の悪材料を織り込んだとみられ、下値は限定的だろう。短期的には不安定さが残る可能性もあるが、中長期的には買い場と考える。(7/26 村上)

香港市場
資金流出も一巡、割安感を背景に上値を試す動きに

 7月の本土株式市場は出足こそもたついたが中盤にかけて反発。その後、いったんもみ合う場面があったものの、月後半にかけて再び戻りを試す動きとなった。

 6月末にかけ戻りに転じたハンセン指数だが、7月に入るとともに反落。初日の2日こそ前営業日比0.7%安と小幅安に止まったが、3日は同2.5%安と大幅な下げに。海外ではエジプト情勢の緊迫化、米国雇用統計への警戒感、本土では6月のPMIが前月に比べ悪化、さらには銀行の資金繰りに対する不安、不動産引き締めへの警戒感、などが悪材料となった。

 ただ、その後は一転して上昇、4日、5日と連騰の後、1日置いて9日から11日まで3日連騰、11日には21000ポイント台を回復した。欧州中央銀行(ECB)総裁が低金利の長期化を表明したことで欧州株が上昇、米国株も好業績期待を背景に続伸、など海外環境が好転。さらに、本土市場も政府の景気対策への期待感から急上昇、などが背景。

 月半ば以降はもみ合う場面もあったが、23日には前日比2.3%の大幅高。李克強首相が7%を下回る成長率は容認できないと発言したという報道が伝わったことで、政策期待が再燃し買い安心感につながった。一方、月末にかけては景気刺激策や海外からの資金回帰に対する期待感を支えに堅調な展開となった。

 米国の量的緩和縮小観測をきっかけとする世界的なリスク資産からの資金引き揚げ、特に新興国市場からの資金流出により6月は大きく売られた香港市場だが、ようやく安定化の兆しが出てきた。米国の量的緩和縮小は米国景気の回復を意味するわけで、一方的に悪材料と捉えるのは悲観的に過ぎる。前月号で「足元でのリスクマネーの動向を巡る混乱が一巡すれば、割安感が目立つ香港市場だけに、再び海外からの資金流入も期待できよう。」と書いたが現状はまさにそうした展開になってきたようだ。当面は上値を試す動きが期待できよう。(7/26 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:長期安定成長に向けた李克強首相の経済運営に期待

持続可能な成長モデルの構築を急ぐ中国政府

 「リコノミクス」、聞きなれない言葉だが、最近、エコノミスト等、一部の市場関係者の間で使われ始めた造語だ。日本の安倍首相が推し進める経済政策「アベノミクス」に倣って、李克強首相が主導する一連の経済政策を指し示す言葉として使われている。ちなみに、中国語で表記すれば、「李克強経済学」。この「リコノミクス(李克強経済学)」に関しては厳密な定義があるわけではないが、「アベノミクス」同様、主に三つの柱、つまり目先の経済成長を追わない姿勢、金融市場等における過剰な信用拡大の抑制、構造改革によって構成されている。実際、政府高官の大型財政出動に対しての否定的な発言など、この方針に則ったものだ。前政権からの課題であった長期安定成長に向けた構造改革を推進するうえで、現政権が取り組む経済政策の基本的な方向性と言えよう。

 ただ、株式市場をはじめ金融市場では、これらの基本方針が消化しきれていないようだ。5月下旬以降の上海総合指数の大幅な下落、6月下旬の短期金融市場で発生した流動性の逼迫など、一時的にしろ、金融市場に混乱をもたらした。足元では落ち着きを取り戻しつつあるものの、高成長を前提とした投資家にとって不安要因となっている。

 しかし、現政権の方向性が決して誤っているわけではない。多くの市場関係者が認識するように、かつてのような高成長を中国経済が維持するのは不可能だ。資源浪費や環境問題、更には地方政府の財政負担等、中国は多くの課題を抱えている。これらの問題が今すぐ、表面化することはないだろうが、このまま放置すれば、リーマン・ショックやギリシャ危機等の金融問題に発展する可能性がある。それを未然に防ぐためにも有効だ。それゆえ今後、「リコノミクス」が正当に評価されることで中国株は本格的な上昇へと向かおう。(7/24 畦田)

上期の主要経済指標と下期の見通し

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中国燃気(チャイナガス)

00384〈N0380〉香港 株価チャート

中国の大手都市ガス会社

 中国東南部の沿海地域に液化天然ガス(LNG)の受入基地を設けているほか、液化石油ガス(LPG)事業も展開。また、香港メインボードに上場する中裕燃気(03633)に出資。一方で、英フォーチュンオイル、韓国のSKグループなど海外のエネルギー企業が資本参加している。さらに昨年末、大株主の中国石油化工(00386)と戦略的提携関係の構築で合意した。

 13.3期末時点で22の省・自治区・直轄市にわたり179件の独占的な事業ライセンスを保有。CNG(圧縮天然ガス)・LNG車向けのガスステーションも計170カ所運営している。

13.3期は大幅増益を達成

 13.3期は売上高が前年比12.2%増、純利益が同85.0%増。純利益が売上高を大幅に上回る伸びとなった理由は、(1)財務費用の減少、(2)天然ガスの平均販売価格が上昇し、全体の粗利益率が20.6%と前年から1.5ポイント上昇、(3)子会社・持分法適用会社の業績の大幅な改善──などが挙げられる。なお、配当予案に関しては1株あたり0.0628香港ドル(権利落ち日:8月22日)。

 部門別では都市ガス販売事業が好調。都市ガス販売量が同22.7%増の68.2億立方メートルに上ったことを受け、売上高が同22.0%増、セグメント利益が23.0%増となった。また、ガス管接続事業も接続件数が同11.0%増となったことで売上高が同17.7%増、セグメント利益が同23.5%増と堅調。

 一方、LPG販売事業は不振だった。LPG販売量が88.9万トンで同0.5%減少したことなどを背景に売上高が同0.4%減、セグメント利益は1354万1000香港ドルの赤字となった(前年は8074万9000香港ドルの黒字)。ただ、持ち分法適用会社である中裕燃気からの利益は同87.8%増と大幅に拡大 した。

企業買収や天然ガスの需要増加などにより更なる成長へ

 同社は今後も買収などを通じて天然ガス関連事業の拡大に注力する方針。昨年12月に大株主の英フォーチュンオイル傘下でガス事業を展開する富地燃気投資控股有限公司(富地燃気)を4億米ドルで買収すると発表。今年9月末には買収が完了する見込み。富地燃気は中国本土で都市ガス供給、コールベッドメタン(CBM)やLNGの充填事業を展開。都市ガス事業では2500キロメートルを超えるパイプライン網を保有するほか、CNGステーションを運営。今回の買収が完了すれば、スケールメリットを発揮でき、競争力や収益力の向上に繋がろう。

 また、環境保護の重視を基本政策とする中国では、石油や石炭系燃料に比べ二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスの需要拡大が見込まれている。特に、大都市と比べて普及率が低い地方都市では天然ガスへの切り替えが一層進む見通し。そうしたなか、今年6月に中国とミャンマーを結ぶ天然ガスパイプラインが完成した。西南地域の天然ガス普及率は国内でも特に低いことから、今後の発展余地は大きい。それゆえ、同地域での天然ガス関連事業の更なる拡大が見込まれ、同社の成長を後押しする要因となろう。(佐藤)

売上構成比(13.3期) 業績推移

東江環保(ドンジャンエンバイロ)

00895〈N9240〉香港 株価チャート

産業廃棄物の処理やリサイクルを手掛ける民営企業

 本拠地である深セン市のほか、江蘇省昆山市や四川省成都市などに処理施設を構え、産業廃棄物の収集、無害化、再資源化等を行う。また、ゴミ埋立地でのメタンガス発電や環境保護に対するサービスなども手掛ける。昨年4月には深センA株市場への上場も果たした。

 12.12期は売上高が前年比1.4%増、純利益で同30.9%増。廃棄物処理や環境保護エンジニアリング関連が好調だったものの、再生品の販売等を手掛ける主力のリサイクル事業が金属価格下落の影響で同9.4%減収。ただ、A株上場に伴う資金調達によって金利負担が減少するなど、コスト管理を徹底したことで大幅な増益を達成した。一方、今1-3月期は売上高が前年同期比12.9%減、純利益で同27.8%減と減収減益。金属価格が引き続き軟調なためだ。

処理能力の向上で事業規模は一段と拡大

 同社では設備の増強に伴って廃棄物の処理能力が大幅に向上する見通し。今期中に深セン龍崗廃棄物処理基地をはじめ2カ所で商業運転を本格的に開始するほか、江門処理基地の主要工事も年内には完成する予定だ。また、昨年買収した浙江省の資源リサイクル企業も処理能力を現在の年間9千トンから将来的に6万トンまで引き上げる計画。景気悪化に伴う金属価格の下落等、懸念材料もあるが、国内における昨今のゴミ処理問題などを背景に同社は処理能力の拡充によって更なる成長を遂げよう。(有井)

恒安国際(ヘンアンインターナショナル)

01044〈N1440〉香港 株価チャート

大手衛生用品メーカー、12.12期は小幅増収、大幅増益

 主力商品は「心相印」(ティッシュ)、「安爾楽」(生理用ナプキン)、「安児楽」(乳幼児用紙おむつ)、「安而康」(成人用紙おむつ)等。昨年の売上高(セグメント利益)構成比は、ティッシュ49.4%(33.3%)、生理用ナプキン26.5%(50.2%)、紙おむつ14.5%(14.2%)。

 12.12期の業績は、前年比8.6%増収、純利益で同32.8%増益。増益率が増収率を大きく上回った要因は、原料安や品揃えの改善、新商品の発売等が挙げられる。主力3部門の粗利益率は、ティッシュ製品35.4%(前期:31.4%)、生理用ナプキン65.8%(同60.4%)、紙おむつ42.9%(同35.2%)と、前期に比べ大きく改善した。

生産能力の増強と製品構成の改善で更なる成長へ

 同社は積極的な投資を行うことで採算性の高い生理用ナプキンと紙おむつの売上比率を一段と高める方針だ。加えて、ティッシュ部門では15年までに8本の生産ラインを増設し、生産能力を昨年の90万トンから138万トンに引き上げる計画。このような生産規模の拡大はスケールメリットを発揮することで利益率の更なる改善に繋がろう。

 一方、国内における衛生用品の一人当り消費量は先進国に比べ少なく、今後も需要は増加する見通し。また、景気の如何に拘わらず、衛生用品市場は生活水準の向上に伴って拡大する傾向があり、足元の景気動向にも左右され難い。それゆえ、同社は旺盛な需要を背景に高成長を続けよう。(高)

上海医薬(シャンハイファーマ)

02607〈N2607〉香港 株価チャート

上海市政府系の医薬会社、昨年は大幅増収、小幅増益

 医薬品の研究開発、製造や販売を手掛ける。主力の卸売事業は華東、華北、華南を中心に全国規模の販売網を持ち、国内3位。製薬事業は幅広い製品を取り扱い、国内2位。昨年の売上構成比は、卸売83.5%、製薬12.0%。

 12.12期の業績は前年比24.0%増収、同0.5%増益。ただ、為替差損など一過性の要因を除けば、純利益は実質的に同13.5%増と好調だった。積極的な市場開拓や品揃えの充実が奏功したうえ、スケールメリットも生かせたためだ。特に、他社との差別化を徹底した結果、高付加価値製品の出荷が拡大するとともに収益の改善に繋がった。今1-3月期の業績(中国会計基準)も前年同期比17.6%増収、同8.5%増益と堅調。

需要が拡大する中、大型買収と政策支援が成長を後押し

 国内における都市化と高齢化の進展に伴い、医薬品に対する需要が拡大している。なかでも後発薬の使用量が急増中だ。このような状況を背景に同社は今年6月、大型買収計画を発表した。後発医薬品を手掛ける国内大手製薬会社を買収する。これによって心血管薬に関するラインアップの拡充や麻酔・筋弛緩剤等の新規導入を実現でき、後発医薬分野での競争力が一段と高まる見通し。

 また、政府は社会保障の充実や医療制度改革に努めており、医薬品業界の再編を促すとともに重点企業への支援を強化している。同社のような大手にとっては市場シェアの拡大ならびに更なる収益力の向上に繋がろう。(高)

重慶農村商業銀行(CQRCバンク)

03618〈N3618〉香港 株価チャート

重慶市を主な地盤とする商業銀行

 中国内陸部の主要都市である重慶市を中心に江蘇省や雲南省等で銀行業務を手掛ける。前身は農民の互助金融組織であった農村信用合作社。08年に省レベルの農村商業銀行として設立された。昨年末時点で営業拠点を1700カ所以上構え、本拠地の重慶では最大規模の店舗網を誇る。

 12.12期の業績は、純利益が前年比26.3%増と二桁増益。重慶市経済の高成長を背景に貸付残高が前期末比2割増となったほか、利ザヤも3.50%と前年の3.36%から0.14ポイント拡大した。また、不良債権比率に関しても0.98%と前年末に比べ0.46ポイントの大幅な改善。今1-3月期も純利益で前年同期比15.3%増と好調だ。

農村部での貸付業務が堅調

 同行は農村の末端まで張り巡らされた幅広い拠点網と農村合作会社を前身とする過去の経緯から農村部で強い競争力を持つ。さらに足元で重慶市経済が高成長を続けており、貸付残高は近年2割前後の高い伸び。それゆえ、内陸部や農村の発展を重視する中央政府の基本方針のもと、今期の新規貸付額は全国平均を上回る可能性が高い。

 また財務面においては、今年3月に最大50億元規模の劣後債発行計画を発表するなど、自己資本の増強に努めている。重慶市経済が急激に悪化しない限り、同行の財務内容に特段の問題はなく、内陸部の経済発展とともに今後も高成長を続けよう。(有井)

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