チャイナマンスリーレポート

9月号

2013年9月1日 内藤証券中国部

景気のハードランディングの可能性は大きく後退、反騰局面が続く

本土市場
景気減速に歯止め、中長期では買いのタイミング

 8月の本土株式市場は月初から堅調なスタート。その後いったんもみ合いに転じたが、中旬にかけて一段高。ただ、月後半は失速気味の展開となり、再びもみ合いの動きとなった。

 7月終盤にかけ底入れから回復に転じた上海総合指数だが、8月に入っても堅調な動きが続き、1日には4営業日ぶりに2000ポイントの大台を回復、7日にはザラ場で2069.56ポイントまで戻した。7月の製造業購買担当者指数(PMI、物流協会算出)が市場予想を上回ったことや新規公開(IPO)の再開時期先送り観測に加え、米国市場でダウ平均が過去最高値を更新するなど、外部環境の好転も下支え要因となった。

 その後、いったん足踏み状態となったものの、12日には前日比2.4%の急上昇となり、終値で約2カ月ぶりに2100ポイント台を回復。公表された7月の主要経済統計が概ね強い内容だったことで景気の底打ち感が拡がったほか、政府の産業政策、主要企業の好決算への期待感なども加わり大幅高となった。

 もっとも、月後半にかけては反落、再び一進一退の展開に。引き続いて足元の経済指標や金融統計の好転、産業振興策への期待感などが相場を下支える一方で、ニューヨーク・ダウ平均の15000ドル割れ、アジア市場の下落など海外環境の悪化が上値を抑えるなど、好悪材料の綱引きが続いた。

 1日発表の7月のPMI(物流協会)が事前予想を上回って好転、中旬に発表された7月の主要経済指標も貿易統計をはじめ固定資産投資、鉱工業生産などが軒並み予想を上回り、さらに下旬にはHSBCのPMIの急回復も明らかになった。政府としても7%を下回る成長率は容認しないとの方針であり、景気のハードランディングの可能性は大きく後退した。株価は6月の急落、7~8月の底練りを経て景気に対する最悪のシナリオを織り込んだとみられる。海外環境に一部不透明さが残るものの、基調的には景気回復期待を背景に堅調な展開が予想される。(8/27 村上)

香港市場
海外環境に不安定さは残るが、本土景気の回復が支え

 8月の香港株式市場は月初こそ堅調に始まったものの、その後反落。中旬には再度上昇に転じる場面もあったが続かず、月末にかけて一進一退の動きとなった。

 7月末にかけもみ合いが続いていたハンセン指数だが、8月に入ると1日から5日まで3営業日連続で上昇、約2カ月ぶりに終値で22000ポイント台を回復した。米FOMCで金融緩和の継続が確認されたうえ、4-6月期GDP成長率、7月のADP雇用統計がいずれも市場予想を上回るなど米国発の好材料が続き、香港市場の押し上げ要因となった。また、1日に発表された7月のPMIが大きく上振れしたことも好感された。

 その後は6日、7日と2日連続で1%を上回る下げとなり、21000ポイント台半ばまで押し戻されたが、8日から13日まで4営業日連続で買われ、13日には終値で22541.13ポイントまで上昇。QE3早期縮小懸念が燻りつづけたものの、7月の主要経済指標が概ね市場予想を上回る内容だったことや中国政府の産業政策への期待感などを背景に堅調な展開に。

 しかし、上昇局面は長続きせず、月末にかけて再び反落、22000ポイントを挟んだもみ合いに。米長期金利が約2年ぶりの高水準となり、米国の景気や企業業績への懸念が強まるなかで、アジアを中心とする新興国市場から資金を引揚げる動きが拡がったことが嫌気された。

 米国の量的緩和縮小観測をきっかけとする世界的なリスク資産からの資金引揚げにより6月は大きく売られた香港市場だが、ようやく混乱も一巡し、7月以降は戻り局面に入ってきた。しかし、QE3縮小に関する議論はいまだに続いており、実施に至るまでにはまだ紆余曲折がありそうで、世界の資産市場にとって不安定要因であることに変わりはない。ただ、本土景気は各種の指標が示すように最悪期を過ぎて、回復過程に入ってきた可能性が高く、今後は相場の押し上げ要因として働こう。戻ったとはいえ依然として割安感が強い香港市場だけに、海外からの資金流入の増加も期待できよう。(8/27 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:安定成長のけん引役としてIT需要に期待

政策支援を受け、IT銘柄が堅調な値動き

 中国株式市場は一進一退の状況が続いている。7月の経済指標が概ね良好だったことから、中国経済に対する悲観論が後退。これによりA株市場はやや持ち直した。一方でQE3(第三弾の量的緩和)の早期縮小が現実味を増すにつれ世界的にリスクマネーの巻き戻しが起き、海外勢が中心の香港株は神経質な地合いとなっている。

 こうしたなか、全般的にIT関連銘柄の値動きが堅調だ。政府が今月、ブロードバンドの整備、ITサービスの需要増加に関して、中長期的な発展計画を発表したことが大きい。内需主導の安定成長に向けた構造改革が官民挙げて進むなか、IT需要には成長をけん引する役割が期待されており、政府も支援姿勢を鮮明化。実際、需要は基盤となるネットユーザー数の増加に伴い着実に伸びている。

IT消費の倍増に向け政策措置が加速、4Gが注目分野

 政府は昨年約1.7兆元のIT消費規模を15年までに3.2兆元と、ほぼ倍増させる計画だ。また、携帯・固定通信双方からのネット接続環境を充実するため、3G・4G、ブロードバンド網の整備を進めてユーザー数の更なる増加を目指す。これに向けて、多くの分野で規制緩和、税制優遇、研究開発・産業化等の支援などが強化される見通し。大手企業を中心に関連産業への追い風が見込める。

 このなかで特に注目されるのが、秋口にも予想される4Gライセンスの発給だろう。4G対応の通信機器・設備の需要増加に繋がるほか、これによる通信速度の高速化はスマートフォンによるITコンテンツへのアクセスをより容易にし、内容の充実化に寄与する可能性が高いからだ。都市部はすでにスマートフォン時代に入っており、その効果が期待される。(8/26 畦田)

ネットユーザー数の推移 3G、固定ブロードバンドの利用件数 IT消費の拡大に関する注目分野

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中興通訊(ZTEコーポレーション)

00763〈N0763〉香港 株価チャート

通信設備の総合メーカー

 通信ネットワーク設備や携帯端末等の開発、製造からソリューションの提供まで手掛ける。第2世代規格(2G)であるGSM方式とCDMA方式の両方に対応するほか、TD-SCDMA方式など第3世代規格(3G)もカバー。また、中国本土を主な市場とするだけでなく、海外でも積極的に事業展開。昨年の売上構成比は、通信設備事業49.4%、携帯端末事業30.7%、ソフトウェア・サービス・その他19.9%。

12.12期は小幅減収、大幅赤字

 12.12期の業績は売上高が前年比2.4%減と小幅減収にとどまったものの、純損失が28.4億元と、04年の香港上場以来初の赤字を計上した。

 海外でのシェア拡大を目指して価格競争を仕掛けたことで、新興国を中心に廉価品の輸出が増加。さらに、国内では第4世代規格(4G)の移動体通信ライセンスの交付を控え、大手通信キャリアが設備投資を抑制。そのため、採算が悪化し、粗利益率は前年の28.0%から22.2%に低下した。加えて、財務費用が膨らむなど、コストの増加も業績悪化に繋がった。

 事業別では、主力の通信設備事業は同10.6%減収、セグメント利益で同49.5%減。一方、携帯端末事業も同4.1%減収となったが、スマートフォンなど、高機能機種が普及したことでセグメント利益は同155.8%増益。ただ、通信設備事業の不振を補うまでには至らなかった。

足元の業績に改善の兆しも

 13.6期(中間)は売上高が前年同期比11.9%減、純利益で3.1億元、同26.6%増と、前下期の大幅な赤字から黒字に転じた。製品構成の改善およびコスト管理の徹底に努めた結果、粗利益率が上昇に転じ、業績の改善に繋がった。また、同社は13.1-9月期においても純利益が5億元以上に達するとの見通しを明らかにしている。国内の通信キャリアが下期に入り上期を大きく上回るペースで設備投資を行っているためだ。こうした需要回復に加え収益管理の強化と製品の合理化効果も現れ、利益率が足元で急回復を遂げているもよう。

4G投資を追い風として再度、高成長路線に

 中国のモバイル通信市場ではスマホやタブレット端末等の普及に伴って通信量が急増しており、大手キャリアは通信設備の増強に迫られている。今後、通信ネットワークの高性能化に対する需要の拡大が通信インフラ投資を牽引するだろう。

 実際、中国移動(00941)は4G規格の「TD-LTE」設備に対する入札を7月から始めており、同社が総投資金額(約420億元)の2割以上を落札したもようだ。さらに、同月に開かれた国務院常務会議では、「IT関連の消費拡大」に繋がる「三網融合」(トリプルプレイ)を全国規模で展開する方針を固めた。この一環として3G通信網に対するアップグレードや4Gライセンスの年内交付が見込まれる。こうしたなか、同社は経営目標の達成と人材の確保等のため、1500人以上の従業員を対象にA株ストックオプションの導入計画を発表。業績改善に対する従業員のモチベーションを高めることで競争力の強化を促す構えだ。(高)

部門別売上構成比(12.12期) 業績推移

華潤創業(チャイナリソーシズ)

00291〈N7080〉香港 株価チャート

小売り、飲料、食品事業を手掛ける政府系持ち株会社

 国務院傘下の中国華潤総公司を実質筆頭株主として香港や本土で事業を展開。主力の小売り事業はスーパーマーケットやコンビニのほか、ドラックストア、コーヒーショップなども手掛ける。また、「雪花(SNOW)」ブランドのビールを製造しており、国内シェアで2割程度を占め、業界最大手。

 13.6期(中間)の業績は、売上高が前年同期比12.3%増、純利益で同54.5%減。小売り事業では既存店売上高が同5.6%増となったものの、人件費の高騰などが響いた。また、ビール事業は生産能力の拡充等に加え、天候に恵まれたことで販売量が同7%増となったが、原材料価格の上昇など、コストが増加したことで利益率は悪化した。さらに、前年同期に計上した不動産評価益の反動も大きかった。

小売り事業の強化で利益率は改善へ

 同社は今後、地方都市を中心に小売り事業の強化を進める方針だ。中でも、近年進出したばかりの東北地域でブランドイメージの向上を図るとともに仕入れ体制の見直しや物流拠点の整備等を通じたサプライチェーンの確立に力を入れる。売上構成比で6割以上を占める同事業の収益改善に努めることで、全体としての利益率向上を目指す。

 また今期、53.8億元を投じて金威ビール(00124)のビール事業を買収する計画を立てている。これによって国内市場におけるシェアが1%強拡大する見通し。業界内での地位も一層強化されよう。(有井)

長江基建集団(チョンコンインフラ)

01038〈N7430〉香港 株価チャート

長江グループ傘下の大手インフラ企業

 電力、水道、ガス、有料道路など、各種インフラ企業に投資。海外にも積極的に進出しており、英国、オーストラリア、カナダや中国本土で事業を展開。また、香港メインボードに上場している電力会社の電能実業(00006)を傘下に置く。

 13.6期(中間)は売上高が前年同期比7.8%増、純利益で同10.3%増。主力地域である英国での事業が堅調、セグメント利益で同5.2%増となった。特に、昨年10月に買収したガス供給会社からの利益貢献が大きかった。また、海外事業が好調な電能実業もセグメント利益で同10.2%増。一方、中国本土事業は同14.2%減と不振。一部の高速道路で交通量が減少したことなどが響いた。

積極的な企業買収を継続し、新規分野にも参入

 今後も海外企業の買収などを通じて事業の多様化やグローバル化を更に進める計画だ。実際、今年4月に廃棄物処理事業を手がけるニュージーランドの企業を約32億香港ドルで完全買収し、新規分野への参入を果たした。

 また、欧州でも屈指の廃棄物処理能力を誇るオランダ企業を電能実業などと共同で買収する計画も進めており、今7-9月期には完了する見通し。この案件は同社にとって欧州大陸で初の事業となり、新市場での足場作りにも役立とう。こうした海外市場での新たな買収が事業規模やエリアの拡大をもたらすと同時に収益源の多様化に繋がることで、同社は長期的に安定した成長を続けよう。(佐藤)

華電国際電力(ファデンパワーインター)

01071〈N1340〉香港 株価チャート

5大電力グループ「中国華電集団」傘下の電力会社

 石炭や天然ガスによる火力発電を主力事業とするほか、水力、風力、太陽光等の再生可能エネルギーを用いた発電も手掛ける。山東省、四川省、安徽省などで事業を展開しており、今中間決算発表時点での発電能力(持分ベース)は2万9100MWに上る。また、炭鉱の開発や運営も行い、生産能力は年間1000万トン。

 13.6期(中間)の業績は、売上高が前年同期比6.7%増、純利益で同6.2倍と大幅な増益。電力販売量が同4.6%増加したことに加え、営業費用の6割以上を占める燃料費が石炭価格下落等の影響で同14.7%減少したためだ。さらに、熱源供給など、他の事業も比較的堅調だった。

電力消費量の増加と燃料コストの低下が追い風に

 足元、中国の電力消費量は増加傾向だ。特に、夏季の猛暑を受けてエアコンの使用率が上昇している影響で年後半の電力消費量は前半を上回る伸びとなろう。また、製造業やサービス業向けも回復しており、今期の国内電力消費量は前年比5~6%増となる可能性が高い。

 一方、主な発電燃料である石炭に関しては国内全体の過剰生産能力に対する問題から、価格の低迷が今後も続く見通し。年後半に電気料金の引き下げなどの懸念材料はあるが、燃料コストの低下で相殺できるだろう。国内電力消費量の増加と石炭価格の下落を背景に、同社は下期も好調な業績を維持しよう。(有井)

華晨中国汽車(ブリリアンスチャイナ)

01114〈N1120〉香港 株価チャート

BMWと合弁事業を展開する自動車メーカー

 ワンボックスバン、セダン、自動車部品の製造・販売を手がける遼寧省政府系の投資持ち株会社。子会社の瀋陽華晨は「海獅」ブランドのワンボックスバンなどを製造。BMWとの合弁会社である華晨宝馬はBMW3シリーズや5シリーズをセミノックダウン方式で生産する。

 13.6期(中間)の業績は売上高が前年同期比8.5%減、純利益が同52.4%増。競争激化を受け、ミニバンの販売が落ち込み小幅減収。一方、高級車に対する旺盛な需要を背景にBMWの販売台数は同30.8%増加した。加えて、コスト削減も奏功し、華晨宝馬からの利益は同60.0%増。これによってミニバンの不振を補い、全体の利益が大きく押し上げられた。

生産能力の拡充等によって更なる成長へ

 同社は今後も引き続き生産能力の増強に努める方針だ。昨年5月には最新設備を整えた新工場が一部で稼働した。その後も生産能力の増強は順調に進んでおり、今期のBMWの生産能力は年間30万台に達する模様。

 こうした生産能力の拡充に加え、今下期には新型モデルのBMWが2つのシリーズで販売を開始する予定。中国でも人気の高い同ブランドだけに新型車の投入は市場に大きな影響を与えよう。同社ではBMWの販売台数を今年は前年比27%増、14年で同30%増と、昨年同様の伸びを見込んでいる。16年には新エンジン工場が稼働する計画もあり、国内調達比率を今後一段と高めることで更なる成長を遂げよう。(佐藤)

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