チャイナマンスリーレポート

11月号

2013年11月1日 内藤証券中国部

金融引き締めに対する懸念は行き過ぎ、政策期待もあり株価は回復へ

本土市場
金融引き締めの本格化は考えにくい、下押し局面は買い場に

 10月の本土株式市場は前半こそ上値追いの動きが続いたものの、中旬にかけて反落。その後、いったん反発したもの の続かず、下落基調を強める展開となった。

 9月終盤にかけ回復に転じた上海総合指数だが、10月に入っても堅調な動きが続き、国慶節連休明けの8日は23.5ポイント高、翌9日も13.6ポイント高と続伸。さらに1日置いて11、14日も連騰となり、14日には終値で2237.77ポイントまで戻った。連休中に発表された複数の景況感指数が概ね堅調な内容だったほか、中国共産党の第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)を11月に控え、政策期待が高まった、などが背景。

 もっとも、その後は15日から3日続落となり17日にはザラ場で2183.24ポイントまで売られた。米国の債務上限問題のタイムリミットである17日が近づくなか、7-9月期のGDPを含む主要経済統計の発表を18日に控え、利益確定の動きが拡がった。ただ、21日には7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比7.8%増と、前四半期から伸びが加速したことを受けて大幅高、再び2200ポイント台を回復した。

 一方、月末にかけては中国人民銀行(中央銀行)の買いオペ見送りで金融市場の資金繰りを懸念する声が出始めたうえ、金融・住宅政策に関して政府が引き締めに動くとの警戒感が高まったことから下落基調を強め、底値模索の動きとなった。

 7-9月期のGDP成長率は事前予想通りの回復となったものの、同時に発表された9月の経済指標の中には景気停滞を示唆するものも出始め、年末にかけての景気減速も予想される状況となってきた。一方で、不動産価格の高騰が収まらず、金融引き締めへの警戒感も高まっている。株価もこうした情勢を反映し、調整気味の展開となっている。ただ、足元のインフレ情勢や景気動向を見る限り、本格的な金融引き締めの可能性は小さい。11月の「三中全会」で新たな政策が明らかになり、景気の先行きに対する期待も高まろう。ここからの下押し局面はむしろ買い場と考える。(10/28 村上)

香港市場
米国の量的緩和縮小はさらに先送り、資金流入が継続へ

 10月の香港株式市場は堅調にスタートしたものの、前半は一進一退の動き。その後も高値圏でのもみ合いとなったが、下旬には失速、下値模索の展開となった。

 9月終盤にかけて弱含みの動きが続いていたハンセン指数だが、10月入りとともに反発に転じ、初日の2日が124.6ポイント高、3日が229.9ポイント高と2日連続で上昇。9月の非製造業購買担当者指数(PMI)が半年ぶりの高水準となり、中国経済への楽観的な見通しが拡がったほか、国慶節休暇に入った中国本土で連休商戦の盛り上がりが伝えられ、これも全体の地合いの改善につながった。

 ただ、その後は中旬に至るまで23000ポイントを挟んだ狭い範囲でのもみ合いが続いた。11日には前日のニューヨーク市場が連邦債務の上限引き上げ合意への期待から急騰したことで267.0ポイント高と大きく買われたが、結局合意に至らず失速。18日には米国の債務上限問題が決着、同日発表された中国の7-9月期GDP成長率が7.8%とコンセンサス通りに落ち着いた、などで245.2ポイントの大幅高。さらに翌営業日の21日も続伸、ザラ場で23534.67ポイントまで買われた。

 一方、月末にかけては本土で金融・不動産に対する引き締め懸念が俄かに高まったうえ、銀行の資金繰り悪化への警戒感から上海銀行間金利(SHIBOR)が大きく上昇したことが嫌気され急反落、下値模索の展開に。

 中国本土での不動産・金融引き締めに対する警戒感の高まりを背景に香港市場も足元で調整色が強まっている。しかし、香港市場の最大の懸念材料であった米国の量的緩和の縮小は今般の政府機関一部閉鎖に伴う景気押し下げ効果もあり、来年への先延ばしが濃厚となった。したがって、米国発の世界的な流動性相場は当面継続が予想され、香港への資金流入も続くものと思われる。本土市場が金融引き締め懸念をある程度織り込み、安定してくれば香港市場も上向きに転じよう。(10/28 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:「三中全会」での構造改革の進展に期待

景気は緩やかに回復

 10月に入り、中国株市場は一進一退の状況が続いている。中旬までは米国のデフォルト(債務不履行)の懸念、下旬は中国の金融引き締めへの警戒感が広がった。ただ、国内経済は緩やかな回復基調を維持。月半ばに発表された経済統計では、7-9月期のGDP成長率が3四半期ぶりに加速した。固定資産投資が引き続き成長をけん引。輸出も9月の貿易統計をみる限り改善が続いているようだ。インフレ、個人消費が気がかりだが、基本的には今後も景気は底堅く、GDP成長率は政府目標を達成できるだろう。

 特に注目すべきは、構造改革を強力に進めているなかでの景気回復という点だ。大規模な財政出動など従来型の刺激策を取らずとも、製造・サービス業はいずれも堅調であり、企業の競争力は向上している。

三中全会で構造改革が深化・加速へ

 こうしたなか、習近平政権は11月に節目となる重要会議「三中全会」を迎える。この三中全会は中国経済を語る上で重要な会議であり、78年の同会議では改革開放路線が決定された。現指導部は今回の会議を通じて構造改革の深化・加速を目指していく構えだ。

 構造改革は金融、財政、都市化、国有企業などの分野に分けられ、金融の国際化、土地・戸籍制度の規制緩和、エネルギー価格の市場化、社会保障の拡充などの動きが加速する可能性がある。経済構造の高度化を目指し、中長期的にはマクロ経済、優良企業にとって追い風となろう。また、足元の底堅い景気動向は改革を進める上で有利だ。株式市場でも構造改革を好材料として、一層織り込んでいくことが期待される。(10/25 畦田)

1~9月の経済指標と今後の見通し

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三中全会とは

中国共産党中央委員会第3回全体会議の略称。5年ごとの党大会で選出される中央委員は、全体会議で党の重要は意思決定を行う。なかでも3回目の会議となる三中全会は新指導部下で活動方針を本格的に議論する最初の全体会議となるケースが多く、経済が中心テーマ。

78年の第11期三中全会では改革開放政策への転換が決められた。習近平新政権が迎える今回の第18期三中全会では、構造改革の行方が注目される。

三中全会で注目される構造改革

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京能清潔能源(ジンノンクリーンエナジー)

00579〈N0579〉香港 株価チャート

北京最大のガス発電会社

 北京市政府系投資会社の傘下で、環境負荷が比較的小さい発電事業が主力。燃費効率の高いガス火力式コージェネレーション(熱電併給、CHP)システムの発電所を首都圏で運営し、電力と熱を供給する。このほか内モンゴル自治区や寧夏回族自治区、北京近郊などで風力発電事業、四川省、雲南省で小型の水力発電事業、新疆ウイグル自治区などで太陽光発電事業も手掛ける。13年6月末時点の発電容量は持ち分ベースで4047メガワット(MW)。内訳はガス発電が50.1%、風力発電が39.5%。

13.6期(中間)は大幅な増収増益

 今上期の業績は前年同期比52.4%増収、36.6%増益と大幅な伸びを達成した。主力の天然ガス焚きCHP事業(以下、ガスCHP事業)は同59.6%増と急拡大し、全体の売上を一気に押し上げた。前年同期に比べて既存発電機の稼働率が改善したほか、北京市を囲む4大ガスCHPセンターの一つである「西南熱電センター」の「京橋プロジェクト」(発電容量が838MW)第2期施設も新規稼働。これらによって発電量と熱の供給販売量が前年同期に比べ大幅に増加したためだ。さらに他の事業に関しても発電容量の拡充が主な要因となり、風力発電事業で同42.2%増、水力発電事業も同19.6%増となるなど、いずれも好調だった。

 また事業別のセグメント利益をみると、ガスCHP事業では新規発電所の稼働による減価償却費の負担増などが響き、同2.4%増と小幅増益にとどまった。一方、風力発電事業は同74.9%増、利益全体に占める割合も前年同期の40.8%から54.4%に急拡大。要因としては、これまでネックとなっていた送電網の整備が進んだことで沿海部への送電が容易となったこと、風力発電所が集中する内陸部でも電力需要が増加していること、などが挙げられる

ガスCHP事業が今後の成長けん引役に

 現在、中国では深刻化する大気汚染問題を受け、大都市圏での「PM2.5」削減が注目されている。これを背景に比較的クリーンなエネルギーとして天然ガスによる発電が拡大する見通し。実際、北京市政府は石炭の使用量を削減する一方で、15年までに使用電力の8割を天然ガス発電によって賄う方針を立てている。さらに、燃料ガスの供給を確保するために、その代替燃料として石炭ガスの生産も促している。

 同社のガスCHP事業は、昨年、発電設備の保守点検によって稼働時間が落ち込んだが、今期に関してはメンテナンス作業の完了に加えて政府からの手厚い支援もあり、設備稼働率が大幅に回復するもよう。加えて、建設中のガスCHPプロジェクトは向こう2年にわたり順次稼働。14年末時点でCHP事業の発電容量が4400MWを超え、12年実績に比べ2倍以上になる見込み。一方、天然ガスの価格上昇が懸念要因として考えられるが、天然ガスの仕入価格と売電価格は政府の決定事項であり、その価格設定は基本的に発電企業の利益を配慮する形で実施される見通し。また、同社では研究開発などを通じて発電の効率化にも取り組んでおり、天然ガスの価格上昇に対する抵抗力を高めている。環境保護意識の高まりを追い風に、クリーンエネルギー事業を主体とする同社は更なる成長を遂げよう。(高)

部門別売上構成比(13.1H) 業績推移

神華能源(シェンホア・エナジー)

01088〈N1080〉香港 株価チャート

国内最大級の石炭会社

 火力発電向けの石炭事業を主力とするほか、発電所や石炭輸送用の鉄道・港湾なども保有。陜西省、山西省、内モンゴル自治区に複数の石炭鉱区を持ち、昨年末の可採埋蔵量は151億トン。また、電力事業では華北地区を中心に発電所を構え、総発電能力は4万1800メガワットに上る。

 13.6期(中間)の業績は、売上高が前年同期比4.7%増、純利益で同7.0%減。主力の石炭事業が出荷量の増加によって同6.0%増収を確保したものの、石炭価格下落の影響でセグメント利益(以下同じ)は同15.5%減。一方、火力発電事業は設備稼働時間が伸びたことに加え、燃料コストの低下を受けて同50.2%増益となった。

収益源の多様化に加え、石炭価格も反発へ

 同社は既存事業に注力するだけでなく、収入源の多様化を図るために新規事業への投資を積極的に進めている。さらに、各事業間の連携を強化することでコストダウンを図る方針だ。この一環として今期、親会社から石炭化学プロジェクトを買収する予定。同プロジェクトでは石炭を原材料に化学製品の生産を行い、各製品の年産能力はメタノール180万トン、エチレン30万トン、プロピレン30万トンに上る。また、足元では石炭価格に底打ち感が出てきた。10月中旬に発表された発電用石炭のスポット価格指数は前年同期との比較で17%の下落だったが、前週比で約1年ぶりに反発。石炭価格の下落が業績の足枷となっていただけに今後の期待材料だ。(高)

中国生物製薬(サイノバイオファーマスティカル)

01177〈N9270〉香港 株価チャート

肝炎治療薬を主力製品とする民営の医薬品会社

 肝炎治療薬、心臓・脳血管薬を中心に抗がん剤、更には糖尿病や呼吸器疾患に対する治療薬等の研究開発及び製造を手掛ける。また近年、湖南省で病院を買収するなど、医療サービスの分野にも参入。

 13.6期(中間)の業績は、売上高が前年同期比34.5%増、純利益で同40.1%増。売上構成比で5割程度を占める肝疾患治療薬では、「天晴甘美」注射液が同51.1%増、B型肝炎治療薬「潤衆」も同87.8%増と売り上げを大きく伸ばした。また、心臓・脳血管薬の「依倫平」錠剤が同39.6%増となるなど、他の治療薬に関しても主力製品の販売額が前年同期を大きく 上回った。

急成長が続く国内医薬品市場を背景に研究開発に注力

 現在、本土の医薬品市場は高齢化や所得水準の向上に伴って拡大傾向にある。このような中、同社は研究開発に注力、新薬を次々と市場に投入することで事業規模の拡大に努めている。実際、研究開発費は年々増加しており、今上期では4.7億香港ドル(前年同期比78.0%増)と、対売上高比で約1割に達した。こうした努力によって、足元における開発中の新薬は抗がん剤の32件をはじめ、合計で84件に上る。今上期に限っても臨床認可が1件、生産申請の受理で9件となった。薬価の引き下げや新薬開発に対する今後の進捗など、不確定材料もあるが、国内市場の急激な成長を背景に同社は中長期的に高成長を続けよう。(有井)

広州汽車(コウシュウキシャ)

02238〈N2238〉香港 株価チャート

広東省広州市政府系の自動車メーカー

 トヨタ、ホンダなど、日系企業との合弁を通じて乗用車を製造するほか、自社ブランド車「伝祺」を展開。昨年の自動車販売台数は国内6位。日本車の販売台数がグループ全体の約8割を占め、主力車種はアコード、オデッセイ、カムリなど。

 13.6期(中間)の売上高は前年同期比50.4%増と大幅な伸び。一方、純利益は同17.7%減。景気の改善などを背景に、グループ全体の販売台数は同15.5%増の約42万台まで回復。なかでも、自社ブランド「伝祺」のSUV車が販売を拡大し、大幅増収に貢献した。ただ、尖閣問題を受けて昨年後半以降、日本車の販売が急減。この影響が今上期も残り、日中関係が比較的落ち着いていた前年同期の利益額を下回った。

日本車の販売増によって足元の合弁事業は回復傾向

 足元では日本車の販売が急回復。9月の自動車販売台数は前年同月比91%増加。広州ホンダが新型モデル投入により、9月の販売台数で同160%増。広州トヨタも約3割の伸びを確保するなど、日本車の販売環境はほぼ、反日運動が激化した昨年秋口以前の状態に戻ったようだ。グループ全体でも販売台数は1-9月で前年同期比21.8%増まで回復した。

 同社は今下期に合計6モデルの新型車を発売する計画。さらに来年以降は好調な自社ブランド「伝祺」でもSUV、セダンなど、9モデルを発表する方針。広州ホンダも2年間で中国仕様の4モデルを上市する予定。新型車投入をテコに今後も販売の回復が続きそうだ。(畦田)

玖龍紙業(ナインドラゴン)

02689〈N2689〉香港 株価チャート

アジア最大規模の段ボール原紙メーカー

 クラフトライナーや中芯などの段ボール原紙を主力に、再生用紙、特殊紙等の製造販売を手掛ける。広東省東莞、重慶、天津など、国内に多数の工場を持つほか、ベトナムでも現地企業との合弁を通じて製紙事業を展開。今年6月末時点における年間生産能力は1255万トンに上る。

 13.6期の業績は、売上高が前期比5.8%増、純利益で同9.9%増。設備の増強や紙需要の拡大等を受け、販売量が同17.4%増加。特に再生用紙は同182.4%増の大幅な伸び。しかし、製紙業界全体としての過剰供給の影響で主力製品の平均販売単価が前期に比べ約1割低下。ただ、コスト管理の徹底や高付加価値製品の販売強化等によって前期と同水準の粗利益率を維持した。

生産能力の拡大で販売量は一段と増加

 同社は今後も設備増強に努めることで事業規模の拡大を図る方針だ。実際、8月に福建省泉州で年間生産能力35万トンのクラフトライナー製造設備が稼働を始めた。この他、四川省楽山、遼寧省瀋陽でも新工場を立ち上げる計画。15年末には年間生産能力で1400万トンを上回る模様。

 一方で、業界全体では中小零細企業の淘汰が進む見通し。現在、中国政府は深刻な大気汚染を背景に環境対策に力を入れており、老朽化施設の閉鎖を積極的に推し進めている。これによって国内市場での過剰供給が抑えられ、製品単価の下落にも歯止めが掛かろう。(有井)

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