チャイナマンスリーレポート

3月号

2014年3月3日 内藤証券中国部

景気減速の織り込みが進む、金利の高め誘導も一巡し反発へ

本土市場
景気に対する過度な悲観は不要、銀行間金利も低下方向

 2月の本土株式市場は中旬まで堅調な動きが続いたが、その後失速、月末にかけては下値模索の展開となった。

 1月終盤にかけて下げ止まりからもみ合いに転じた上海総合指数だが、旧正月の連休明けとともに上昇局面に入り、2月11日には、約1カ月ぶりに2100ポイント台を回復。世界の主要株式市場の持ち直しに加え、国内では短期金利が低下に向かうなど、旧正月も過ぎたことから資金需給のひっ迫懸念が後退、さらに3月から始まる全人代に向けて政策期待が高まり、買い戻しが入った。

 その後はいったんもみ合ったが、上昇基調は崩れず20日にはザラ場で2177.97ポイントまで買われた。1月の金融機関新規貸出しが市場予想を大幅に上回り、上海銀行間貸出金利(SHIBOR)も低下したことで、金融引き締めに対する警戒感が和らいだことや、3月上旬に「両会」(中国人民政治協商会議と全国人民代表大会)が迫り、経済政策に対する期待感も膨らんだことが背景。

 もっとも、月末にかけては反落、再び下値模索を模索する動きとなった。2月のHSBC中国製造業PMI(速報値)が予想を下回ったほか、人民銀行が銀行間市場から資金吸収を行った、などが嫌気された。また、国内銀行が不動産や鉄鋼セクター向け融資を絞り込んだ、一部都市の不動産価格が下落している、などと伝わったことも市場心理を冷やした。

 足元で再度、調整気味の動きとなっている本土市場だが、基本的に株価の回復トレンドは続くものと考えている。確かにPMIは低調な数字が続いているが、1月の輸出統計や新規貸出しの数字を見る限り過度な悲観は不要だろう。3月の全人代で消費拡大のための政策が打ち出される期待もある。また、人民銀行の銀行間市場からの資金吸収が嫌気されているが、銀行間金利自体は低下が続いていることから、金利の高め誘導は一巡したようであり、金融引き締めに対する懸念も早晩、払拭されるだろう。バリュエーション面での割安感も続いていることから、下値は限定的と考える。(2/25 村上)

香港市場
新興国不安も一巡、徐々に資金流入も再開へ

 2月の香港株式市場は出足こそもたついたものの中旬にかけて反発。ただ、その後はもみ合いに転じ、月末に向けては方向感に欠ける展開となった。

 1月終盤にかけて下落に転じたハンセン指数だが、2月に入っても基調は変わらず、旧正月連休明けの4日には前日比で637.6ポイント、2.9%の急落、さらに5日も続落となった。①1月の米ISM景況感指数が大きく低下したことでニューヨーク市場が大幅に下落、②中国本土でも1月の製造業購買担当者指数(PMI)が同様に悪化、などにより大きく売られる結果に。

 ただ、6日以降は回復に転じ、下旬に至るまで上昇基調が続いた。①資金需要の高まる旧正月を過ぎたことで銀行間金利がピークアウト、②1月の輸出統計や金融機関の新規貸出しが予想を大きく上回り、中国経済に対する警戒感が後退、③3月上旬に開催予定の「両会」が近付き、政策期待が強まった、などが背景。

 もっとも、20日以降は頭打ちから一進一退の展開に。20日に発表された2月のHSBC中国製造業PMI(速報値)が前月の値や市場予想を下回り、本土景気に対する先行き不安が再燃したことや、連日の公開市場操作で人民銀行は資金吸収のための売りオペを実施、資金需給のひっ迫懸念が続いたことなどが重石となった。

 1月下旬には一部の新興国経済・通貨を巡る動揺に巻き込まれ急落した香港市場だが、2月に入って取り敢えず混乱も収束、下落分の8割程度を取り戻した。ただ、足元では本土経済の減速懸念に加え、金融引き締めに対する警戒感が燻り、上値が重い状況が続いている。しかし、輸出が順調に拡大していること、銀行貸出しが予想を上回る増加となっていること、などを考慮すれば、今回の景気減速は軽微なものに止まる可能性が高い。本土市場でも既に株価への織り込みが進んでおり、今後の香港市場への影響も限られよう。新興国経済・通貨を巡る混乱も一巡したことから香港市場への資金還流が期待できよう。(2/25 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

特集:3月は企業決算の発表が集中、ファンダメンタルズ再評価の動きも

落ち着きを取り戻しつつある投資家

 中国株市場は1月後半から新興国不安に端を発する世界的な株安に巻き込まれたが、2月に入って底打ち感が出てきた。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン新議長の議会証言を受けて、米国の量的緩和縮小に伴う資金流出への懸念が後退。加えて、IPO再開に伴うA株企業の上場ラッシュが峠を越し、本土市場の需給関係が改善したことも大きい。ただ、中国を含む新興国経済への警戒感は継続。20日に発表された2月のHSBC中国製造業PMI(速報値)は下振れし、当日の株価指数は調整した。

 もっとも、1月の速報発表時と比べると、今回は同じ弱い内容でも混乱は短期間で落ち着こう。市場では既に景気減速が織り込まれつつあるうえに、構造改革により一定程度の成長鈍化は不可避という認識の共有も進んでいることが理由。投資家は落ち着きを取り戻す一方で、3月開催予定の「両会」(中国人民政治協商会議と全国人民代表大会)や上場企業の決算発表に関心を向けつつある。

決算発表が本格化、構造改革の“勝ち組”企業に注目

 3月は上場企業の13.12期決算の発表が集中。一年の中で最も企業業績が注目されやすい。ファクトセット社のコンセンサス予想(2/25時点)に基づき決算動向を見通すと、マクロ経済の低迷とは裏腹に、企業業績の改善傾向が目立つ。これは構造改革による成長鈍化を通じて、各業界で優勝劣敗が進んでいるからだろう。コンセンサス予想がある上場企業は大手が多く、景気減速下でも経営は概ね安定。構造改革の“勝ち組” 企業が目立ち始めている。

 セクター別にみると、ディフェンシブな電力、医薬などは引き続き増益を確保する企業が多い。近年の急速な情報化に伴い、IT関連企業の好調さも目立っている。また、建設、建設資材、家電、自動車や、石油・ガスなどの景気敏感セクターでも、業績改善が進んでいるようだ。さらに、石炭、非鉄金属、海運・空運などの業種では前期決算は厳しい内容となったもようだが、今期は企業業績が大幅に改善する見通し。(2/25 畦田)

12月決算銘柄のうち、増益・黒転の銘柄数(セクター別) 好業績銘柄一覧(13.12期)

高キン零售(サンアートリテール)

06808〈N6808〉香港 株価チャート

国内ハイパーマーケットの最大手

 フランスの小売り大手「オーシャン(Auchan)」と台湾の「潤泰集団」による合弁会社。「欧尚(Auchan)」、「大潤発(RT-Mart)」のブランドでハイパーマーケットを運営する。12年のハイパーマーケット市場における販売額ベースでの国内シェアは13.6%に上り、業界最大手。国内沿海地域の大都市圏だけでなく、内陸部や地方中堅都市でも積極的に事業を展開。昨年6月末時点で26の省、自治区および直轄市に進出しており、合計284店舗を経営する。内訳は大潤発が230店舗、欧尚で54店舗。昨年上期の売上構成比は、商品販売97.5%、テナント料2.5%。

足元の業績は二桁の増収増益

 13.1-9月期の業績は、売上高が656.9億元、前年同期比11.7%増、純利益で21.8億元、同26.4%増と大幅な増益。 昨年5月末の省エネ家電補助金制度の終了や習近平政権による公費の削減など、厳しい環境下ではあったものの、商品構成の改善、販売効率の向上等によって既存店売上高が小幅ながらも増加。さらに、新規出店効果も加わり、二桁増収を達成した。実際、店舗数が12年末の273から293カ所まで増加するとともに床面積も全体で49万平方メートル増えて約813万平方メートルとなった。

 こうした売上高の増加に伴い、採算性が一段と向上。以前から業界首位として高い収益力を誇っていたが、粗利益率は前年同期に比べ0.8ポイント上昇して21.0%となった。直接仕入れの強化や商品回転日数の短縮などが、コスト抑制に寄与。加えて、新店舗の黒字化が進んだことで繰延税金資産を計上できたことも会計上の実効税率低下に繋がった。

都市化の進展とともに新規出店の加速が次の成長をけん引

 現在、中国本土は都市部での人口増加が急速に進んでおり、内需拡大の余地は依然として大きい。さらに、足元での個人所得の増加も購買力を向上させる要因となろう。このような下で、同社は今後も一定のペースでハイパーマーケットを新設し、更なる成長を目指す構えだ。実際、昨年6月末時点で158カ所の出店予定地を確保しており、建設中の物件は117カ所に上る。また、店舗網の拡充は仕入れにおける価格交渉力の強化など、スケールメリットを発揮することで成長のペースを一段と速めよう。

電子商取引の普及は新たな収益源の育成に繋がる

 同社は昨年半ば、ネット販売の子会社を設立した。これによって9月に電子商取引のプラットホームを立ち上げ、上海地区を対象に宅配サービスを始めた。将来的には営業エリアを全国規模に拡大する計画も立てている。一方で、実店舗との食い合いに関しては同社の場合、ネット通販と実店舗における品揃えを変えており、9割以上の商品が異なるため、ネット販売による実店舗への侵食は限定的であろう。ネット通 販子会社が黒字化するまでには暫く時間を要すると考えられるが、長期的に見れば、実店舗との相乗効果を図るなど、多彩な事業戦略を採用することで新たな収益源となろう。(高)

地域別の店舗構成比 進出地域の分布図

中国国際航空(エアチャイナ)

00753〈N0750〉香港 株価チャート

北京を本拠とする国内大手航空会社

 世界的な航空連合「スターアライアンス」のメンバーとして国際線に強みを持つ。昨年6月末時点で保有機体数は470機に上り、世界30カ国・地域の148都市に旅客便や貨物便を就航。実質筆頭株主を国務院直属の中国航空集団とする一方で国泰航空(00293)と相互に株式を保有しており、コードシェア便を運航するなど、資本業務提携関係にある。

 13.1-9月期の業績(中国会計基準)は、売上高が前年同期比3.3%減、純利益で同3.7%減。旅客数が同7.4%増、貨物取扱量も同1.1%増と比較的堅調だったものの、税制の変更や格安航空会社との価格競争等の影響で減収減益となった。また通期では、旅客数が前年比7.3%増加したが、貨物取扱量は香港、マカオ便の落ち込みが響き同0.3%減。

直近の人民元高が追い風に

 足元、人民元は対米ドルで緩やかながらも上昇傾向にある。昨年初めには1ドル当り6.2元台だった人民元相場が直近で6.08元前後と2%程度上昇しており、この動きは今後も続きそうだ。そのため、多くの物資を海外から調達する同社にとってはコストの削減に繋がろう。また、人民元高は中国人の海外旅行に対する需要を押し上げる要因ともなるだろう。

 一方、同社は今年から来年に掛けて航空機を100機以上調達する計画を立てている。1月の旅客数が前年同月比17.6%増加するなど、足元の輸送量も高い伸びとなっており、今期は増収増益に転じる見通しだ。(有井)

聯想集団(レノボグループ)

00992〈N2950香港〉 株価チャート

世界最大のPCメーカー

 中国を代表するグローバル企業。パソコン(PC)のほか、スマートフォンやタブレット端末、テレビといったモバイル機器、デジタル家電などの製造・販売も手掛ける。

 13.4-12月期も好業績が続き、売上高は前年同期比12.7%増の293.5億米ドル、純利益も同29.6%増の6.6億米ドル。製品構成の強化策が奏功。13年(1-12月)のPC販売台数は前年を約3%上回り、世界的な市場縮小傾向にも拘わらず安定成長を継続。また、モバイル機器・デジタル家電部門の売上高が同91.1%増の44億米ドルと急増。低価格帯を中心にスマートフォンの販売が伸び、13年の出荷台数は前年比91.7%増と、伸び率が世界上位5社の中でトップ。

大型買収を発表、中長期的には利益押し上げ要因に

 同社はPC以外の分野にも注力。今年に入り、IBMから低価格帯サーバー事業、更にはグーグルから携帯端末メーカーのモトローラを買収すると発表した。昨年1-9月の実績に基づくと、世界シェア約1%だった同社のサーバー事業は14%近くまで上昇する見通しだ。また、モトローラとの統合が完了すれば、昨年実績で世界3位のスマートフォンメーカーが誕生する。

 これによって先進国市場での知名度向上、製品ラインナップの拡充などに繋がる。加えて、グーグルが主要株主となることで提携関係の強化も期待できる。短期的には今回の買収がマイナスに作用する可能性もあるが、中長期では同社に新たな収益源をもたらすこととなろう。(畦田)

麗珠医薬(リジュイヤク)

01513〈N5860〉香港 株価チャート

民営の大手総合医薬品メーカー

 医薬品の研究開発から生産、販売まで手掛ける。漢方薬、西洋薬や診断用試験薬等、200種類以上の医薬品を取扱い、国内では「麗珠(LIVZON)」のブランド名で高い知名度を誇る。主力製品は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療に用いられる「麗珠得楽」、ヘルペス治療薬の「麗珠威」など。

 13.1-9月期の業績は前年同期比11.1%増収、純利益で同10.2%増益。癌治療補助薬の「参ジ扶正」、排卵誘発剤の「麗申宝」の販売量が、それぞれ同21.3%、17.9%増加。利益率の高い主力製品が売り上げを大きく伸ばした。ただ、原薬部門は需要の減少等が響き、苦戦を強いられた。一方、13.12期の業績は速報ベースで売上高が46.2億元、純利益も4.9億元となっており、二桁の増収増益を維持したもよう。

香港への市場替えが新たな転機に

 同社は今年1月、上場先を深センB株市場から香港市場に変更した。B株から香港H株への転換は、中国国際コンテナ(02039)に次ぎ、2例目。これを機に、会社側は出資構成の改善など、アクティブな戦略を採る構えだ。具体的には、業績連動型ストックオプション制度の導入、採算性の低い事業に対する分離計画など。また、国際的な金融市場でもある香港のネームバリューを生かし、海外での市場開拓に力を入れる見通し。昨年上期の輸出比率が1割弱と、海外市場の開拓が課題の一つであるだけに、今回の香港市場への上場が同社にとって大きな転換点となろう。(高)

北京金隅(BBMG)

02009〈N2009〉香港 株価チャート

北京を主な地盤とする地方政府系のセメントメーカー

 セメント事業を中心に建築資材の製造販売や不動産の開発ならびに管理、賃貸等を行う。主力製品のセメントは北京、天津、河北省で最大規模の市場シェアを占め、国家的なプロジェクトに多数採用されるなど、高い品質を誇る。また、家具や耐火材等を製造するほか、「TOTO」など、海外有名ブランド品の販売も手掛ける。一方、不動産開発部門は本拠地の北京だけでなく、天津、重慶などでも事業を展開しており、昨年6月末時点で開発用地を490万平方メートル保有する。

 13.12期の業績は、純利益で前年比0~15%の増益となったもよう。セメント及びクリンカー(中間体)の販売量が合計で同15.8%増となったほか、引き渡し済みの不動産販売面積も同40.0%増の117万平方メートルに達したようだ。

政府の余剰設備対策強化でセメント需給は改善へ

 中国政府はセメントなどの余剰設備対策を強化する方針。当局は環境基準を厳格化するとともに17年まで生産能力の増強を基本的に認めず、M&Aの推進や海外進出の支援等に力を入れる。これによって環境対策費用の増加など、業界全体ではコストアップの要因となるが、一方で大手企業を中心とした業界再編を促そう。また、効率の悪い工場の閉鎖等を通じて生産過剰が緩和され、需給バランスの改善から製品価格の上昇に繋がろう。同社の場合も近年、セメント価格の下落が利益率の悪化をもたらすことで業績の足を引っ張っていただけに大きな恩恵を受けよう。(有井)

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