チャイナマンスリーレポート

4月号

2014年4月1日 内藤証券中国部

景気減速はほぼ織り込み済み、政策期待の高まりで反発へ

本土市場
景気減速の織り込みが進み下値は限定的

 3月の本土株式市場は月初こそ堅調に始まったものの、その後反落。中旬にかけて下値圏でのもみ合いが続いたが、月末には反発に転じた。

 2月終盤にかけて下げ止まりから回復に転じた上海総合指数だが、3月に入ると初日の3日こそ続伸したものの、その後はもみ合いに。2月の製造業購買担当者指数(物流協会算出、PMI)が3カ月連続で悪化するなど、足元の景気に対する不安が拡がる一方で、「両会」(中国人民政治協商会議、全国人民代表大会)の開幕に伴う政策期待の高まりが下支え要因となった。

 しかし、8日に発表された2月の輸出統計が予想を大きく下回ったうえ、9日発表の物価統計は内需の低迷を示唆する内容だったことから改めて中国経済に対する懸念が高まり、10日には前営業日比58.8ポイント(2.9%)の急落となり、2000ポイントの大台を割り込んだ。その後も、1-2月の工業生産、小売総額、固定資産投資などが軒並み市場予想を大きく下回ったことや、ウクライナ情勢への警戒感などから下旬に至るまで下値でのもみ合いが続いた。

 もっとも、月末にかけて反発、10日の急落前の水準まで戻した。さすがに2000ポイントを割り込むと割安感から押し目買いが入り、下値を支えた格好。HSBCの3月PMIは一段の悪化となったが、却って政策発動期待を高める結果となり、相場を押し上げた。

 足元で再度、調整気味の動きとなっている本土市場だが、早晩株価は反発に転じるものと考えている。2月の輸出を始めとする一連の統計は確かに低調な結果だが、株価にはほぼ織り込まれたと思われる。今後は経済指標の悪化はむしろ景気対策に対する期待感を高めるだろうし、好転は素直に買い材料となろう。実際、景気対策については、既に人民元の変動幅拡大に伴う人民元安が輸出産業支援の方向で動いているほか、新型都市化計画の推進はインフラ投資を通じて景気を下支えよう。金融政策も緩和方向に動く可能性が強く、株価にはプラス材料となろう。(3/27 村上)

香港市場
悪材料を消化し、徐々に資金流入も再開へ

 3月の香港株式市場は月初から軟調なスタートとなり、その後も中旬にかけて下値模索が続いたが、下旬には下げ止まりから反発の動きに。

 2月は比較的堅調な値動きとなったハンセン指数だが、3月に入ると一転、初日の3日には前営業日比336.2ポイント(1.5%)の急落となった。2月の物流協会製造業PMIが3カ月連続で悪化したことに加え、ウクライナ情勢をめぐる警戒感がロシア株の急落でさらに強まったこと、などにより大きく売られる結果に。

 その後、いったんは落ち着きを取り戻したものの、翌週明けの10日には再び急落。さらに、1日置いた12日から4日連続の下落となるなど下げが止まらず、20日にはザラ場で21137.61ポイントと年初来安値を更新した。2月の主要統計がいずれも事前予想を下回った、ウクライナ情勢への警戒感等を受けて世界的にリスクオフの動きが拡大、などから中国の景気減速、海外マネーの流出懸念が拡がったことが背景。

 もっとも、下旬にかけては底打ちから一進一退の展開に。ウクライナ情勢が引き続き懸念材料として残る一方で、HSBCの3月PMIの悪化が政策期待を一段と高める方向に働き相場の下支え要因となった。

 1月の新興国経済・通貨を巡る動揺による急落分を、2月にはほぼ取り戻したものの、3月には本土経済の減速懸念に加え、ウクライナ情勢の混迷、米FRBのイエレン議長発言などを背景に再び急落、まさに「往って来い」の展開となった。ただ、今回の景気減速は比較的軽微なものに止まる可能性が高いうえ、本土市場の株価にも既に織り込みが進んでいることから、今後の香港市場への影響も限られよう。ウクライナ問題についてもロシアによるクリミア併合により、これ以上の紛争拡大の可能性も低下していることから悪材料としての織り込みはほぼ終わったものと思われる。イエレン・ショックも一巡したことから徐々に海外資金の還流が期待できよう。(3/27 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

特集:全人代は構造改革重視の内容に、内需主導の安定成長を目指す

全人代が閉幕、構造改革重視の内容に

 中国経済の伸び悩みや混迷するウクライナ情勢を受け、足元の中国株市場は軟調。海外投資家の多い香港市場は特に調整している。こうしたなか、習近平体制が発足して初の全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)が先月13日に閉幕。昨年秋に確立した構造改革路線を鮮明にするかたちで、今年の政策目標、予算などが承認された。

 注目の成長率目標は7.5%と昨年と同じだが、実際は雇用安定を前提として一定の下振れを許容。国有企業が支配する経済構造や規制が強い金融・財政システムを見直し、改革を進める上では景気への悪影響は避けがたい一方で、安易な景気刺激策も難しいからだ。

改革のプラス面にも注目、目標達成の可能性は十分

 もっとも、中国が今年も多くの目標値をクリアし、安定成長を続ける可能性は十分にある。まず、改革はシャドーバンキング、地方債務、環境汚染など中国が抱える構造問題の改善や、国際競争力、潜在成長率の引き上げ等に寄与する見通し。また、この過程では環境ビジネスの普及、規制産業での民間資本の導入、自由貿易区の設立など、企業に新たな成長機会を提供することになろう。中国は内需型の経済モデルを目指しているが、その切り札となる都市化推進策が本格的に動き出すことも好材料だ。したがって、中国経済に対する過度の“悲観論”が現実となる可能性は低く、国内景気は今年も底堅く推移するものと考えられる。(3/26 畦田)

全人代で示されたマクロ経済の主要目標値 全人代を受けた主な投資テーマ

金蝶国際(キンディー)

00268〈N9230〉香港 株価チャート

中小企業向けERPソフト開発の国内最大手

 広東省深セン市を本拠地とし、統合基幹業務パッケージ(ERP、企業内の会計、販売、在庫や生産など、基幹業務に対して必要な情報を一元化管理するためのソフトウエア)の開発を手掛ける民営企業。主力製品は中小企業向けの「K/3」、小企業向けの「KIS」、大企業向けの「EAS」など。このほか、コンサルティングサービスなども行う。

経営のスリム化等によって黒字に転換

 13.12期の業績は、前年比9.3%減収となったものの、営業利益が2.4億元、純利益も1.3億元と、そろって黒字に転換。採算性の低い販売部門やコンサルティングサービス部門を中心に大規模なリストラを実施。これに伴って外部の販売パートナーを通じた間接販売を強化したことで利益率が向上。さらに、製品構成の見直しや経営効率の改善に努めたことで、売上原価が同35.9%減と大幅なコストダウンに成功。また、粗利益率に関しては75.3%と、前年に比べ10.3ポイントも上昇した。

アリババとの提携でEコマース向けの販路拡大が見込まれる

 中国では電子商取引の市場が急速に拡大している。ただ、多くの中小企業では生産、販売、流通に対する一連の情報管理体制の水準が依然として低いため、その対応に迫られている。

 こうした中、同社は電子商取引分野で国内最大手のアリババグループと昨年末、Eコマース向けERPソフトの発売に向けて提携すると発表した。アリババグループはオンラインショッピングモール「天猫」と国内最大規模のオンライン決済サービス「支付宝」を展開。一方、金蝶国際は業務管理ソフトウエアに関する提案力が高く、この提携によって多くの中小企業にERPソフトを提供することが可能となる。それゆえ、Eコマース市場での販路拡大が今後の成長の牽引役となろう。

移動通信技術の進化でERPとCCSの相乗効果が高まる

 また同社は、モバイルインターネットの普及を追い風にERPとクラウド・コンピューディング・サービス(CCS)の相乗効果を高めていく方針だ。

 その一環として、法人向けにCCSを無料で提供するSNS型プラットファーム「雲之家」を構築した。また、SaaS型ERP(ネット経由のERPソフト機能のうち、ユーザーが必要なものだけをオンラインで利用するサービス)の開発にも注力。昨年、「SaaSアプリ事業部」を立ち上げ、現在ではオンラインの会計ソフトERPサービス等を提供する国内で最大規模のプラットフォーム「友商網(youshang.com)」を運営している。さらに、次世代のオンラインERPアプリ「K/3 Cloud」などとの融合も進行中だ。「K/3 Cloud」は、顧客の注文や決済の状況をモバイル化して管理するとともに、連結決算業務、ネットバンキングなどのサービスを提供する。こうしたERPとCCSのシナジー効果や製品構成の高度化、モバイル化への注力が収益力の更なる強化に繋がろう。

 加えて第12次5カ年計画では、次世代IT分野が「戦略的新興産業」の1つと位置付けられた。そのなかで、同社は国家重点ソフト企業に認定されており、政府からの手厚い支援も見込めよう。(高)

部門別売上構成比(13.12期)
業績推移

中国旺旺(ワンワンチャイナ)

00151〈N0151〉香港 株価チャート

台湾系の食品大手

 「旺旺」ブランドの食品・飲料を製造販売する台湾系の大手食品企業。主力製品は飲料(乳飲料、缶コーヒーなど)、米菓(せんべいなど)、スナック菓子(キャンディー、ゼリーなど)。

 13.12期の業績は前年比13.7%増収、純利益で同24.1%増益。原材料価格の低下や製品構成の改善、コスト管理の徹底に加え、一部製品の値上げ効果もあり、利益率が向上。売上高純利益率は18.0%と、前年に比べ1.5ポイント上昇した。主力製品は揃って増収増益。特に、売上総額の5割程度を占める飲料部門が同17.0%増収、セグメント利益で同29.0%増と全体の伸びを牽引した。

積極的な投資の拡大で、更なる成長へ

 一人っ子政策に対する当局の規制緩和が進むなか、浙江省など、3つの省では「単独二胎」(夫婦のうち片方が一人っ子の場合にも2人目の出産を許す)政策を一部の地域で既に実行に移している。今後、適用地域は更に広がる見通しだ。これに対して同社は中国本土での投資ペースを速めていくもよう。実際、今期の投資金額は前期に比べ約2億米ドル増となる4.6億米ドルに上り、最新設備を導入した生産拠点の建設、工場や物流倉庫の用地確保などに充てる方針だ。

 加えて、情報技術を生かすSFAシステム(顧客情報や営業進捗度等のモバイル化管理を通じて経営効率を高める仕組み)の構築にも注力。高付加価値製品の拡充や生産性の向上を図ることで同社の競争力は一段と強化されよう。(高)

中国石油化工(シノペック)

00386〈N1980〉株価チャート

中国3大石油会社の一角、国内元売り最大手

 油ガス田の探査、開発から石油の精製、小売り、石油化学製品の製造、パイプラインの運営まで幅広く手掛ける。昨年末時点における原油天然ガスの確認埋蔵量は42億1700万石油換算バレルに上り、小売り分野では国内に3万店舗以上のガソリンスタンドを構える。

 13.12期の業績は、売上高が前年比3.6%増、純利益で同3.5%増。原油生産量が同1.3%増となったほか、天然ガスも同10.4%増加した。ただ、原油価格下落の影響を受けて探査採掘部門の営業利益が同21.8%減。逆に、精製部門は前年の114.4億元の損失から86.0億元の黒字となった。

品質基準の強化に伴い、石油の卸売価格は上昇

 政府当局は、大気汚染対策として自動車用ガソリンやディーゼル油の品質向上を打ち出している。ガソリンの場合、現在の「第Ⅲ基準」から14年末には「第Ⅳ基準」へと完全に移行し、18年までに全国規模で「第Ⅴ基準」を導入する計画だ。これに伴い、卸売価格も引き上げる方針。石油会社にとっては製造コストの増加に繋がるが、それ以上に販売価格上昇による恩恵を受けよう。また、昨年の三中全会では石油や天然ガス等の分野で価格改革を実施し、市場原理を導入する方針が示された。今後、石油製品の小売価格も徐々にではあるが上昇する見通し。一方で、同社は石油製品販売事業を民間資本に開放する意向を発表しており、経営効率の更なる改善が期待できよう。(有井)

TCL通訊(TCLコミュニケーション)

02618〈N2610〉香港 株価チャート

TCL集団傘下の大手携帯電話機メーカー

 広東省に研究開発や生産の拠点を置き、中国本土で「TCL」、海外では「Alcatel」のブランド名を用いて携帯電話機の販売を手掛ける。昨年の地域別売上比率は北米・南米45.0%、欧州・中東・アフリカ40.1%、アジア太平洋7.6%、中国7.3%。

 13.12期の業績は前年に比べ大幅に改善しており、売上高が193.6億HKドル、前年比60.9%増加。純利益も3.1億HKドルの黒字に転換した。スマートフォンへのシフトを図り、中高価格帯を中心とした製品ラインナップの充実が奏功。特に、海外部門の売上高が同72.3%増加し、好業績をけん引。携帯電話機の世界シェアも第5位まで躍進した(10-12月期)。

4G対応機種の投入、新生産拠点の効果に期待

 中国では昨年12月にTD-LTE規格の4Gサービスが本格的にスタート。現時点での4Gサービス関連の市場規模は小さいが、もう一つの4G規格であるFDD-LTEの商用化も近々始まると予想され、ユーザー数は中長期的に増加する見通し。こうした流れを踏まえ、同社は戦略機種「IDOL X+」を投入するなど、4G対応機を中心にラインナップを拡充。スマートフォンの新規需要や買い替え需要の取り込みを図る構えだ。

 また今上期、広東省に新たな生産拠点が完成する予定。製造工程の自動化が一層進むほか、年間生産能力も最大1.2億台まで拡大する見込み。これによる量産効果によって価格競争力は一段と高まるだろう。こうしたことから、同社は今後も中長期的に安定した成長を続けよう。(畦田)

招商銀行(チャイナマーチャンツバンク)

03968〈N3968〉香港 株価チャート

1987年に深セン市で創業した大手商業銀行

 国務院傘下の招商局集団を筆頭株主とする一方で、中国大手海運グループも大株主。東部沿海部を主な地盤とし、総資産で国内6位の規模を誇る。昨年6月末時点の預金残高は2兆8000億元、貸付残高で2兆1000億元。

 13.12期の業績(中国会計基準、速報ベース)は、純利益が前年比14.4%増。期末時点での貸付残高が同15.3%増となったほか、預金残高も同9.6%増加した。特に、個人や中小零細企業向けの小口融資が伸びているようだ。ただ、不良債権比率は前期末に比べ0.22ポイント悪化して0.83%となった。もっとも、9月末時点の0.79%と比べれば、0.04ポイントの僅 かな上昇にとどまった。

小口融資の伸びが好業績を牽引

 今後も、小口融資は大きく伸びる見通し。所得水準の向上や生活様式の変化に伴ってクレジットカード等の利用増加が見込めるためだ。また、中小零細企業の資金需要も旺盛。実際、同行における昨年上期末のクレジットカードローン残高は前年末比16.0%増、個人事業ローン残高も同42.9%増の高い伸び。しかし、小口融資は国内景気動向の影響を受け易く、不良債権の増加にも繋がりやすい。これに対して同行では昨年、株主割当増資を行い、400億香港ドル以上の資金を調達した。今後は高水準の預貸比率を引き下げるために預金獲得を図る必要があるが、富裕層向け資産管理業務の強化や顧客層の拡大を通じて改善が進もう。(有井)

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