チャイナマンスリーレポート

5月号

2014年5月1日 内藤証券中国部

景気は底入れから反転の方向、株価も緩やかな上昇局面へ

本土市場
景気減速は織り込み済み、株価も徐々に上向きに

 4月の本土株式市場は月初から堅調なスタート。その後、中旬にかけて一段高となったが、後半には失速、再度もみ合いの動きに。

 3月終盤にかけて調整気味の動きが続いていた上海総合指数だが、4月に入ると強含みに転じ、1日、2日と続伸。3月の製造業購買担当者指数(物流協会算出、PMI)が、4カ月ぶりに改善したことで景気減速への警戒感が和らいだことや、QFII(適格海外機関投資家)の投資枠拡大観測などが相場を押し上げた。ただ、清明節の連休を控えていたこともあり、上値は重かった。

 一方、連休明けの8日には前営業日比39.4ポイント(1.9%)の急騰、さらに10日にも前日比29.0ポイント(1.4%)の上昇となり、2月下旬以来の2100ポイント台回復。中国政府が今月にもインフラ建設加速などの景気刺激策を発表すると伝わったことや、中国本土と香港の両証券当局が合同で「互聯互通」(株式クロスボーダー投資)に関する声明を発表、香港からの資金流入期待が高まったこと、などが背景。

 もっとも、10日をピークにその後は一転して弱含みの動きに。15日には中国人民銀行(中央銀行)が旧正月以降で最大規模の売りオペを実施したことが嫌気され大幅安。21日も前週末までに中国証券監督管理委員会が28社のIPOの目論見書の草稿を公表したことでIPO再開が近いとの観測が広まり、需給悪化懸念から大きく売られるなどで、再び2100ポイント割れでの推移となった。

 4月半ばまでに発表された一連の経済指標は引き続き低調な結果に終わったが、株価には既に織り込み済み。4月号で指摘したように、足元では経済指標の悪化はむしろ景気対策に対する期待感を高めることになり、もはや売り材料ではなくなってきた。ただ、一方で景気指標の好転は景気対策への期待感の後退を招き、逆に悪材料となっている。しかし、これは本末転倒であり、一過性の現象だろう。HSBCの4月PMI反転に続いて、5月以降に発表される経済指標には改善、底打ちの兆しが出てくる可能性が高く、改めてそれを評価する形で株価も上向きに転じよう。(4/24 村上)

香港市場
「互聯互通」への期待も加わり、資金流入が継続へ

 3月の香港株式市場は上旬まで堅調な動きが続いたが、その後失速、下旬にかけて弱含みの推移となった。

 3月下旬から回復色を強めていたハンセン指数だが、4月に入っても基調は変わらず、初日の1日には前日比297.4ポイント(1.3%)の大幅高、2日、3日も続伸し、22000ポイント台半ばまで買われた。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の発言で米国の早期利上げ懸念が後退、株式市場への資金流入が続くとの期待が高まったうえ、3月の物流協会PMIが市場予想を上回り、かつ前月から改善したことも好感された。

 その後、いったんは足踏みとなったものの、8日からは3日連続で大幅な上昇、10日には終値で23186.96ポイントと本年1月23日以来の23000ポイント回復となった。背景は、中国政府が今月にもインフラ建設加速などの景気刺激策を発表すると伝わったことに加えて、「互聯互通」に関する声明の発表により、中国本土の個人投資家にも香港株に直接投資できる道が開かれることとなり、本土からの資金流入への期待感が一気に拡がったこと、など。

 もっとも、本土市場同様に10日を高値に月半ば以降は反落、弱含みの展開に。第1四半期のGDP成長率など一連の統計発表で足元の景気減速が再確認されたほか、本土でのIPO再開観測も重しとなり、利益確定の売りに押された。

 3月は本土経済の減速懸念に加え、ウクライナ情勢の混迷、米FRBのイエレン議長発言などを背景に下旬まで急落、3月20日には21137.61ポイントまで売られたが、以降は急反転、4月10日には23224.54ポイントまで買われ、値幅にして2100ポイント弱、率にして10%弱の上昇となった。足元ではやや調整気味の動きとなっているが、①本土景気は5月に向けて底打ちの可能性があること、②海外情勢も当面は比較的安定した推移が予想されること、③「互聯互通」に対する中期的な期待感、などを背景に香港市場への資金還流が続きそうだ。(4/24 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

特集:本土・香港の証券当局が株式クロスボーダー投資構想を発表

株式クロスボーダー投資構想が大きな刺激材料に

 4月の中国株市場は景気刺激策への期待感、堅調な企業業績などを背景に回復基調。特に香港市場が好調だった。1-3月期のGDP成長率が政府目標を下回るなど、足元の経済指標は概ね景気減速を裏付けたが、事前予想の範囲内に収まり、逆に経済政策への思惑買いに繋がった。

 また、10日に本土・香港の証券当局が共同で発表した「互聯互通」(株式クロスボーダー投資)の構想が大きな刺激材料となった。約半年の準備期間を経て、限度額はあるものの香港の投資家は大型の上海A株を取引でき、本土の機関投資家や一部の個人も香港の主力銘柄を売買できるようになるという。資本取引の規制緩和に向けた一里塚であり、両市場で新規マネー流入への期待感が広がった。

個人投資家の新規参入、香港株の支援材料に

 このなかで特に注目されるのが、本土投資家による香港株投資(港股通)。これまではQDII(適格国内機関投資家)の枠内で国内の一部ファンドだけが投資してきたが、ピーク時でも香港市場の売買代金の5%程度に過ぎなかった。元高が進み、リーマンショック、欧州危機などの影響から運用成績が低迷してきた。しかし、QDIIに加えて港股通が導入されれば、今度は膨大な資金を持つ個人投資家が新規参入することになり、中長期的な支援材料となろう。

 この際、個人はこれまで投資できなかった、A株未上場の有力企業に注目する可能性が高い。日頃から商品・サービスに慣れ親しんでいる国内の大手企業、或いはグローバルに事業展開している海外企業が、その候補となろう。(4/24 畦田)

香港の売買代金に占める本土投資家の割合 ハンセン指数とCNY/HKDレートの推移 本土投資家による香港株投資のスキーム A株未上場の有力企業

海爾電器(ハイアール・エレクトロニクス)

01169〈N1690〉香港 株価チャート

世界最大の洗濯機メーカー

 主な製品は洗濯機と給湯器。昨年、「海爾」ブランドの洗濯機は販売台数で5年連続の世界一位となり、市場シェア13.3%。給湯器も国内シェアで2割程度を占め、業界トップ。また、多様な顧客ニーズに応えるため、主力の「海爾」ブランドのほか、「Casarte」や「Leader」などのブランド名でも事業を展開。さらに、統合チャネルサービス事業としてグループ内で調達した家電の流通、電子商取引、アフターサービスなども手掛ける。

13年12月本決算は二桁の増収増益

 13.12期の業績は、前年比12.0%増収、純利益で同20.2%増益。昨年半ばの省エネ家電補助制度の終了や海外需要の低迷による影響が多少あったものの、買い替え需要の高まりを背景とした高付加価値製品の販売増が好業績に寄与。また、モジュール生産方式によるカスタマイズ型の家電製品が人気を集めたことで「Leader」ブランドの洗濯機やエアコン等の販売台数が前年に比べ大幅に増加したこともプラスに。加えて、統合チャネルサービス事業も電子商取引の拡大等を受け、同14.1%増収、営業利益で同42.8%増と全体の業績を押し上げた。

アリババとの提携で統合チャネルサービス事業が高成長へ

 昨年12月、電子商取引の分野で国内最大手のアリババグループと戦略的提携関係を結び、同グループから総額28.2億香港ドルに上る投資を受け入れると発表した。なかでも、統合チャネルサービス事業「日日順物流」の担当子会社への出資が総額の6割以上を占める。同子会社は全国規模の流通網を敷き、特に中小都市での家電配送事業に強みを持つ。配送拠点から半径150キロ以内であれば24時間、250キロ以内であれば48時間以内に品物を配達するとのことだ。今後、アリババグループのオンラインショッピングモール「天猫(Tmall.com)」を経由した配送サービスの利用拡大が見込めよう。

 こうした巨額の戦略投資を受け、同社は3PLサービス(荷主と運送業者の間に立つ第三者として荷主に最適な物流モデルを提案することで物流業務を一括受託し、遂行すること)の運営規模を一段と拡大する構え。加えて、物流倉庫の拡充やラストワンマイル(最終配達拠点から消費者に商品を届ける過程)をカバーするネットワークの構築、大型家具などの配送・組建てサービスの提供も目指している。このような物流インフラの整備や新規サービスの導入が業績拡大に繋がろう。

スマート家電事業が新たな成長エンジンに

 移動通信技術が進化する中、スマート家電の流行が拡大している。同社のスマート家電はWi-Fiを通じてインターネットと繋がり、携帯などの移動端末機で遠隔地から監視や操作ができる。昨年末にはPM2.5(微小粒子状物質)を計測できる最新鋭のスマートエアコン「天樽」を発売。さらに、ユーザーの入浴習慣をデータ化して最適な給湯パターンを自動的に設定できるスマート給湯器など、個性的な家電製品も投入しており、人気を博している。同社は国内屈指の家電メーカーとして消費者のニーズを取り込み、インテリジェント・デザインを徹底することで次世代分野のスマート家電でも業界をリードしよう。(高)

事業別の営業利益構成比(13.12期) 事業別の営業率推移

招商局国際(チャイナマーチャンツ)

00144〈N0600〉香港 株価チャート

大手港湾会社、13.12期は増益

 国務院系コングロマリット「招商局集団」の傘下にある大手港湾会社。国内外の主要港湾都市でコンテナ・バルク(ばら積み貨物)埠頭を運営する。

 13.12期の売上高は保税物流・不動産開発子会社が連結対象から外れたことで前年比29.6%減。一方、純利益は同10.4%増と、3期ぶりの最終増益を確保した。主力の港湾事業が同5.5%増収、同11.9%増益と堅調だったことが背景。特に、コンテナ取扱量はグループ全体で同18.5%の増加。海運世界大手である仏CMA CGM社との合弁事業が昨年6月から始まり、海外市場での貨物取扱量が一気に拡大したためだ。また、国内のコンテナ取扱量も同4.3%増。

国内外で安定的な貨物取扱量の増加が見込める

 景気減速の影響から国内港湾業界は厳しい状況だ。ただ、こうした中でも同社は引き続き堅調。今1-3月のコンテナ取扱量は2割以上も増加した。さらに今後は海外での新規プロジェクトや合弁事業がフルに寄与する見通し。

 また、国内港湾事業に関しては本拠である深セン市を中心に積極的に設備投資を実施。珠江デルタ地域では業界全体として貨物取扱量が低迷しているが、政府による輸出振興策などを背景に下期から回復する可能性が高い。加えて、中期的には当局が深セン市・前海地区で建設中の金融・サービス特区も追い風となりそうだ。こうしたことから、国内の貨物取扱量も安定した伸びが見込めよう。(畦田)

中国民航信息網絡(トラベルスカイ)

00696〈N6960〉株価チャート

航空・旅行サービス関連のIT大手

 筆頭株主は国務院直属の中国民航信息集団。国内三大航空会社も大株主。電子航空券の予約システム(ETD)や搭乗手続き等を処理する旅客処理システム(APP)を通じて航空関連の情報技術ソリューションサービスを提供。このほか、決済サービス、空輸周辺業務をカバーするデータネットワーク事業も手掛ける。

 13.12期の業績は、前年比11.1%増収、純利益で同6.4%増益。航空市場の需要回復を追い風にETDによる予約件数が同11.1%増の3.9億件に上った。ただ、付加価値税の導入に伴う予約手数料の低下や経営規模拡大による一時費用の増加などを受けて営業利益率が27.4%と、前年に比べ2.6ポイント悪化した。

航空輸送量の増加とともに高成長を維持する見通し

 現在、中国では個人所得の向上やビザ発給要件の緩和等を背景に海外への旅行者が急増している。昨年の出国者数は9819万人に上り、03年の4.9倍まで拡大した。また、当局は20年までに年間出国者数が1.5億人に達し、航空機による旅客輸送量が年平均10%以上伸びると予想。

 このような中、同社は近年、航空需要の拡大と共に右肩上がりの成長を続けてきた。足元では国家重点ソフトウエア企業として優遇税制も享受している。さらに北京市で新たな運営センターの建設も進んでおり、スケールメリットを今後フルに享受することで更なる成長を遂げよう。(高)

華潤セメント(チャイナリソーシーズセメント)

01313〈N1313〉香港 株価チャート

華潤集団傘下の大手セメントメーカー

 石灰岩の採掘からセメント、クリンカー(中間体)、コンクリートの製造販売まで一貫して手掛ける。主な生産拠点を華南地方に置き、同地域ではセメント分野で最大手。また近年、山東省や内モンゴルなど、内陸部でも事業を展開。

 13.12期の業績は売上高が前年比15.8%増、純利益で同43.6%増。セメントやクリンカーの平均販売単価が若干下がったものの、販売量がセメントで同20.1%増、コンクリートも同13.4%増と大幅な伸び。逆に、セメント製造原価のうち4割程度を占める石炭に関して購入単価が前年に比べ1割以上低下したほか、単位当り消費量も減少。さらに単位当りの電力消費量も同7.7%減となるなど、コスト低下も寄与した。

セメントの需給関係改善を受け、販売単価は上昇へ

 現在、中国政府は深刻化する大気汚染対策の一環として老朽化したセメント生産施設の廃棄を推し進めている。一方、都市部での人口増加などを背景にインフラ投資が拡大、つれてセメント需要も増加する見通し。これによって需給関係の改善からセメントの販売単価は上昇に転じよう。実際、同社でもセメントやクリンカーの価格上昇を受けて今1-3月期の業績が大幅な増益となったもよう。

 また、同社はM&A等を通じて経営基盤の強化を図る構え。具体的には、セメントの年間生産能力を足元の7550万トンから16年を目処に9450万トンまで引き上げ、進出地域での市場シェアを25%以上に持っていく方針だ。(有井)

長城汽車(グレートウォール・モーター)

02333〈N2330〉香港 株価チャート

ピックアップやSUVに強みを持つ民営の自動車メーカー

 ピックアップトラック「風駿(Wingle)」、SUV「哈弗(Haval)」やセダンなど、自社ブランド車の製造販売を手掛け、なかでもピックアップとSUVの分野では国内最大手。また中国本土のみならず、ロシアやブルガリアなど、海外にも複数の工場を持つ。昨年の自動車販売台数は77.1万台。

 13.12期は売上高が前年比31.6%増、純利益で同44.5%増。主力車種の「哈弗H6」や小型の「長城M4」など、SUVの販売台数が同50.1%増と急拡大、好業績を牽引した。ただ、他の車種はピックアップが同0.4%減、セダンで同3.1%増と、ほぼ横ばいであった。一方、今期に入ってもSUVの売れ行きが堅調で1-3月期の業績(中国会計基準)は前年同期比15.5%増収、純利益で同5.8%増益。

国内SUV市場の拡大を背景に新型車を続々と投入

 近年、国内のSUV市場は急速に拡大している。08年には50万台にも満たなかった販売台数が昨年は約300万台に上り、乗用車市場のうち16.7%を占めた。こうしたなか、同社はSUVの強化を一段と図る構え。今年4月には新型モデルの「哈弗H8」を投入。また今年中に「哈弗H2」を上市する予定だ。加えて、「M2」、「M4」、「H6」のモデルチェンジも控えている。さらに年末から来年にかけ、「H7」、「H9」といった中高価格帯SUVの発売も計画。足元では他社もSUVのラインナップ拡充に動いており、競争の激化が予想されるが、高いブランド力を背景に高成長を続けよう。(有井)

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