チャイナマンスリーレポート

6月号

2014年6月2日 内藤証券中国部

景気は回復方向、「互聯互通」、「資本市場改革」も支援材料に

本土市場
輸出の拡大、内需底打ちで景気は回復方向へ

 5月の本土株式市場は下値圏でのもみ合いでスタート。中旬にはいったん反発したが続かず、再び安値でのもみ合いに。

 4月終盤にかけて調整気味の動きが続いていた上海総合指数だが、月末には下げ止まり、メーデー連休明けにかけてはもみ合いの動きに。4月の製造業購買担当者指数(物流協会算出、PMI)が、2カ月連続の改善となり、景気減速への警戒感が和らいだことはプラス材料となったが、新規公開(IPO)再開による需給悪化懸念が引き続き足枷となり、上値の重い展開が続いた。

 ただ、週明けの12日には前営業日比41.7ポイント高と2%を超える急上昇に。前週末の金曜日に国務院が新たな資本市場改革方針を発表。金融デリバティブ商品の普及、地方債発行の容認、適格機関投資家制度の要件緩和・投資枠拡大などが盛り込まれており、これが刺激材料となった。4月に公表された上海・香港両市場間の「互聯互通」(株式クロスボーダー投資)と同様に、株式市場への資金流入期待を高める結果となった。

 もっとも、反応したのは1日だけでその後は再び弱含みに。発表された4月の主要経済指標が総じて事前予想を下回る低調な結果に終わったことや、中国金融当局が金融機関による同業者向け投融資業務に対する規制を明らかにしたこと、などが嫌気された。さらに月末にかけても方向感に乏しい動きが続いた。

 5月に入って発表された経済指標は一部に底打ち、改善の兆しが見られるものの、内需を中心に景気の低空飛行が続いていることを示唆する内容となった。これを受けて既に内需下支え策がいくつか動き出している。また、輸出についても昨年の水増し分の影響が一巡する5月以降は、欧米など先進国向けが牽引役となり拡大基調が確認されよう。したがって、今後の景気は緩やかながらも回復に転じる可能性が大きい。

 株価もそれを織り込む形で徐々に上向きに転じよう。4月に発表された「互聯互通」(株式クロスボーダー投資)、5月発表の資本市場改革案なども折に触れ支援材料となろう。(5/26 村上)

香港市場
「互聯互通」、「資本市場改革」への期待もあり、上昇基調が継続へ

 5月の香港株式市場は出足こそもたついたものの、その後反発に転じ、月間を通して堅調な値動きが続いた。

 4月中旬から調整局面が続いていたハンセン指数だが、5月に入っても基調は変わらず、初日の2日こそ小幅に上昇したものの、その後5日、7日と2営業日連続で1%を超える下げとなった。HSBC算出の4月のPMI(確報値)が市場予想に反して速報値から下方修正されたことや、ウクライナ情勢の緊迫化などから、海外の株式市場が軒並み下落したことが響いた。

 ただ、8日以降は6営業日連続の上昇と順調に回復。ニューヨーク市場が高値追いに転じるなど海外環境の好転に支えられたほか、中国政府が発表した資本市場改革プランが好感され、株式市場への資金流入期待が高まった、ネット大手の騰訊控股(00700)が発表した1-3月期決算が大きく上振れし、企業業績への期待感が高まった、などが背景。

 その後もウクライナ情勢や中越関係の緊迫化などから足踏みする場面があったものの、上昇基調を継続、22日にはザラ場で4月半ば以来の23000ポイント回復となった。本土A株のIPO(新規公開)再開について、年末までの上場数が予想を下回る見通しとなり、安心感が拡がったうえ、5月のHSBC中国製造業PMI(速報値)が市場予想を大きく上回ったこともプラスに。

 海外環境については、ウクライナ情勢やベトナムとの領有権問題など一部地政学上の不安材料も残るものの、経済・金融面では比較的安定した状況が続いている。特に、ニューヨーク市場中心に株式市場は世界的に堅調な動きを続けており、香港市場への資金流入が継続する環境は整っている。本土景気も足元では引き続き低空飛行が続いているが、年後半に向けては回復トレンドに乗る可能性が大きい。また、本土市場同様に「互聯互通」、「資本市場改革」に対する中期的な期待も加わった。バリュエーション面での割安感も残っていることから株価の回復トレンドは当面続きそうだ。(5/26 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

特集:構造改革が着実に進展、国有企業改革と民営企業への支援策に注目

景気底入れの兆しも、市場は構造改革を好感

 中国経済に底入れの兆しが見え始めている。4月の輸出額は事前予想に反してプラス成長を確保。5月のHSBC中国製造業PMI(速報値)も5カ月ぶりの高水準となった。これを好感し、香港株は回復トレンド。A株市場はIPO(新規公開)再開への警戒感から低迷しているが、一方で下値は固まってきている。

 この間、政府は景気刺激策を最小限にとどめているが、底割れを回避できているのは、構造改革が着実に進んでいるからだろう。特に経済の屋台骨を担う国有企業の改革と、経済構造の転換に向けた民営企業の底上げは重要な政策目標。政府は矢継ぎ早に施策を講じており、これにより企業の競争力が高まることを、株式市場は期待している。

国有企業改革と民営企業への支援策に注目

 長らく続いてきた「国退民進」(国有部門の縮小と民間企業の成長)も、ここ数年は状況が変化。護送船団方式に守られた国有企業の力が再び強まり、批判が集まるようになった。

 これを受け、国有企業改革では資本導入を通じて国有寡占の業界に民間の活力を引き入れる考え。同時にモデルプロジェクトや規制緩和などを進め、まずは民営企業の本格参入・成長を支援していく。この動きは今後も加速していく可能性が高い。上場する大型の民営企業は中長期的な追い風が見込めよう。一方、国有企業にとっては競争激化に繋がるが、改革を通じて競争力を高められれば、傘下の上場企業に対して好材料となろう。国有・民間の双方にウィンウィンの改革となるか、今後もその動向が注目されよう。(5/23 畦田)

国内興行企業の販売高(企業所有別) 国有企業・民営企業 国有寡占の企業における国有・民間セクターの動向

北控水務(BEウォーター)

00371〈N0371〉香港 株価チャート

水道事業を展開する北京市政府系の投資持ち株会社

 国内各都市で上水供給、汚水処理・再生水のサービスを提供するほか、汚水処理場や浄水場等のBT(建設・譲渡)、BOT(建設・運営・譲渡)、TOT(譲渡・運営・譲渡)などを含む水処理場の建設・運営事業、関連する技術コンサルティング事業も展開。また、海外ではマレーシアで汚水処理場と再生水プラントの建設なども手掛ける。

13年12月本決算は大幅な増収増益

 13.12期の業績は前年比71.9%増収、同44.5%増益。主力の水処理場の建設・運営事業と、汚水処理・再生水事業、給水が好調、大幅な増収増益となった。

 部門別では、水処理場の建設・運営事業の売上高が同90.7%増の37.6億香港ドル、セグメント利益で7.5億香港ドル、同63.0%増と急増。広西チワン族自治区、遼寧省、雲南省、北京市、貴州省、そのほかマレーシアを含め計9件の水処理プロジェクトが進行中。特に、広西チワン族自治区、雲南省、貴州省での新規プロジェクトが収入を拡大させ、全体の好業績に大きく貢献した。

 また、汚水処理・再生水事業も売上高が21.4億香港ドル、同50.2%増、セグメント利益で10.0億香港ドル、同43.0%増と大幅な伸びを達成した。大型買収やBOT、TOTなどを通じて、国内で稼働中の水処理能力が同29.3%増の1日当り668万トンまで拡大。こうした処理能力の大幅な増強が好業績を牽引した。

 さらに、給水サービス事業の売上高も3.8億香港ドル、同263.4%増、セグメント利益が1.5億香港ドル、同11.5倍と急成長。主因としては国内での給水能力が同29.1%増となる1日当り275万トンまで拡大したほか、ポルトガルの水道事業会社の買収効果も大きかった。

水処理需要の増大を背景に高成長が続く見通し

 中国では経済成長に伴い都市化が進む一方、全土的に水不足が深刻化しており、河川の水質汚濁も広がっている。そのため、政府は発展戦略の一環として環境保全を重視し、汚染対策を厳格化する方針。また、工業廃水や再生水、汚泥の処理、水浄化膜などへの投資を盛り込んだ総額2兆元の「水汚染防止行動計画」が国務院で承認される見通し。これは業界にとって水処理需要の拡大に繋がるほか、海水の淡水化、工業廃水・汚泥処理など、関連ビジネスの増加も見込める。

 このような中、同社は昨年、買収などを通じて水処理能力を大幅に増強。水処理事業の収益は今年も大きく増加する見通し。昨年末時点の水処理能力(稼働中と未稼働・受渡未了の分の合計)は1671万トン、前年比で59.2%増加。そのうち未稼働・受渡未了の分が722万トン含まれているが、これらが今後、順次稼働することで収益の増加に繋がるだろう。さらに、同社では引き続き企業買収等を通じて水処理事業の拡大を図るもよう。特に、国内の経済発展を既に遂げた地域で水処理場の拡大を加速させる構えだ。加えて、汚泥処理や廃棄物処理技術に関する研究開発を強化し、海水の淡水化事業にも積極的に取り組む。これら新事業の育成も今後の成長を支えよう。(高)

部門別売上構成比(13.12期) 業績推移

香港交易所(ホンコンエクスチェンジ)

00388〈N3880〉香港 株価チャート

香港証券取引所の運営会社

 証券取引を手掛ける「香港聯合交易所有限公司」、デリバティブ取引の「香港期貨交易所有限公司」や決済機構の「香港中央結算有限公司」などを傘下に置く。また、12年にはロンドン金属取引所(LME)を買収。

 13.12期は売上高が前年比21.0%増、純利益で同11.5%増。LMEの買収効果に加え、香港株式市場における一日当りの売買代金が同16%増加するなど、各市場の取引量が拡大したため。ただ、LME関連の人件費やIT費用等が増えたことで利益率は悪化。一方、今1-3月期の業績は前年同期比5.1%増収、純利益で同1.7%増益。商品市場が活況だったほか、新規公開企業数も前年同期に比べ増加した。

「滬港通」が年内にも導入される見通し

 4月上旬、本土と香港の両証券当局による「互聯互通(クロスボーダー取引)」の認可を受け、上海証券取引所と香港証券取引所は「滬港交易通(トレーディング・リンク)」について合意したと発表。対象銘柄が限定されるなど、一部に制限は残るものの、個人を含む投資家に互いの上場銘柄の売買注文を取り次ぐ。現在、半年以内の取引開始を目指して準備を進めており、同制度の運用開始とともに市場の厚みが増すこととなるだろう。特に、香港市場の場合、一日当りの投資上限額が105億元に設定されている。これは、香港株式市場における昨年の一日当り売買代金626億香港ドルに対して2割程度に上り、取引量の大幅な増加に繋がろう。(有井)

華能国際電力(ファネンパワーインター)

00902〈N2640〉株価チャート

五大電力グループの一つ、中国華能集団傘下の発電会社

 山東省、浙江省、上海市など、東部沿岸地域を中心に国内19の省・自治区・直轄地で発電事業を手掛ける。また、08年にはシンガポールの大手電力会社を買収し、海外にも進出。昨年末の発電設備容量(持分ベース)は6.0万メガワットに上り、そのうち9割程度を石炭火力が占める。

 13.12期は売上高が前年比0.1%減、純利益で同89.1%増。シンガポールでの事業は、競合他社による設備増強等の影響で市場シェアが低下するなど、苦戦を強いられたが、国内事業が堅調。特に、石炭価格の下落に伴う燃料コスト低下が利益率の向上に寄与した。この傾向は今期に入っても続いており、1-3月期の業績(中国会計基準)も前年同期比2.1%増収、純利益で同44.2%増益と好調。

発電量の増加と燃料コストの低下を受け、今期も増益に

 同社は今期、国内における発電量の目標を前年実績比2.4%増となる3250億キロワット時に設定した。1-3月の実績では発電量が前年同期比4.0%増の772.9億キロワット時、販売量も同4.2%増の731.4億キロワット時と、順調に推移している。また、来年度中には総発電容量(少数持ち株分等を含む)を昨年末に比べ2割増の8.0万メガワットまで引き上げる計画を立てており、今後も発電量は拡大する見通し。一方、燃料費に関しては国内の石炭価格が軟調なことから単位当りのコストは低下する見込み。天然ガスの供給不足など、リスク要因もあるが、増益基調が続こう。(有井)

中国鉄建(CRCC)

01186〈N1186〉香港 株価チャート

国務院傘下の大手総合建設グループ

 得意分野である鉄道をはじめ高速道路、空港、港湾など、インフラ全般の設計や建設を手掛ける。このほか、建設機械の製造販売、不動産開発等も行う。また、国内だけでなく、アフリカや中近東など、海外でも事業を展開。

 13.12期は売上高が5867.9億元、前年比21.2%増、純利益で103.4億元、同19.9%増と過去最高益を更新。売上全体の約8割を占める工事請負事業だけでなく、各事業ともに総じて堅調だった。なかでも不動産開発ならびに物流の両事業が粗利益で同25.2%、25.4%増と大幅な伸び。一方、新規受注に関しては8535億元に上り、期末の受注残高も1兆7438億元に達した。続く今1-3月期の業績も前年同期比21.2%増収、同23.0%増益と好調だ。

政府の鉄道関連予算が再度増額、過去最高に迫る規模

 国内の鉄道インフラ投資を統括する中国鉄路公司は4月末、今年の鉄道関連予算を8000億元まで引き上げると決めた。当初、6300億元に抑えられていた予算額は、その後2度に亘って7000億元、7200億元と増額修正され、今回で3度目となる。また、これは過去最高だった10年の実績額8426億元に迫る規模。国内景気の減速が懸念される中、都市部での慢性的な交通渋滞や大気汚染の対策として有効な鉄道インフラ整備が景気支援策として選考されたようだ。さらに、今後の景気動向次第では一段の引き上げも期待でき、都市交通システム等で高い市場シェアを有する同社は大きな恩恵を受けよう。(高)

新疆金風科技(ゴールド・ウインド)

02208〈N2208〉香港 株価チャート

風力発電設備の国内最大手

 新疆ウイグル自治区を本拠地とする国内最大の風力発電設備メーカーで世界でも第2位のシェアを持つ。一昨年まで2年連続で大幅減益だったが、昨年は業績が回復。13.12期の売上高は前年比8.7%増の122.0億元、純利益で同179.4%増の4.3億元に上った。発電設備の販売が総容量ベースで2923MWと、3年ぶりに増加(同13.2%増)。タービンの大型化をはじめとした製品のハイエンド化が奏功した。

 今年に入っても業績の改善が続いており、1-3月期の純利益は前年同期比56.5%増。受注残も3月末時点で8000MWを超え、経営陣は今上期の純利益を3.2億~3.7億元、同250~300%増の大幅増益になると見込んでいる。

業界最大手としての強みを活かし、安定成長へ

 風力発電設備業界は、ここ数年、生産過剰と過当競争に悩まされ、国内市場が低迷した。ただ足元、エネルギー需要の増加や大気汚染の拡大に対応するため、政府は風力発電に注目。業界の最悪期は既に過ぎ去り、成長市場へと戻りつつある。

 こうしたなか、同社は今後、中長期的に安定した成長を続ける見通し。技術力やサービスに関して一定の評価がなされる一方、コンサルティング分野を含めたトータルソリューションを提供できるためだ。また、得意とする低風量型製品への新規需要の増加も見込まれる。さらに、欧米メーカー等の製品に比べ割安ながらも、国際的に主流の規格を採用していることから新興国での需要の取り込みも期待できる。(畦田)

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