中国見聞録

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株式投資の実践

2011.04.26
―第17回「中国の時代」―

 中国は……「悠久の歴史→植民地からの解放・建国→毛沢東の時代を経て→トウ小平時代の市場経済・改革開放→国内総生産(GDP)世界第2位」……いくつかの矛盾を抱えながらも早晩、第1位の米国を抜くものと思われます。

 他方、残念ですが、わが日本の苦難は続きます。太平洋戦争敗戦→奇跡の復興と繁栄の40年→バブル景気崩壊→失われた20年→東日本大震災・フクシマ。この苦難は今後10年続くかも知れませんが、我々は頑張るしかありません。

 さて、私は仕事柄、手元にある過去1カ月の新聞や外電の切抜きを読み返してみました。まず、新興国とりわけ中国の政治経済両面での存在感、勢いを強く感じます。この勢いは、先ごろ中国海南省三亜で開かれた「BRICS」首脳会議でも見ることができます。

 今回の会議では従来のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)首脳会議から、中国の提言で南アフリカが加わった5カ国首脳会議に衣替えし、小文字の「s」が大文字の「S」となりました。中国のアフリカでの権益を考えれば当然の流れです。中国は国連加盟の時期からアフリカ諸国との協力関係にあり、特に2000年に中国・アフリカ協力フォーラムが創設された時から本格的な経済貿易での協力強化が始まっているのです。

 今回の「BRICS」首脳会議では「21世紀が平和・調和・協力と科学的発展の世紀」との合意がありましたが、この中の「調和・科学的発展」はまさに中国共産党のスローガンで、そのことからも中国がこの会議をリードしていることが読み取れます。

 中国が独自の国際的課題を打ち出す中国中心の「BRICS」になりつつあることは今回合意された「広範な国際準備通貨(SDR)システムの構築を支持する。今後5カ国は世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの国際金融機関の改革で重要な役割を果たすべきであり、各国間の貿易決済では自国通貨の利用を推進すべきだ」の文言が明確に物語っています。

 貿易決済に自国通貨を利用することについては、すでに中国は2009年に上海市と東南アジア諸国連合(アセアン)間など一部地域で元建てでの貿易決済を解禁しているのです。

 個別の首脳会談では、胡錦涛・国家主席とロシアのメドベージェフ大統領の間で、原子力や石油天然ガスなどのエネルギー分野での協力強化や経済貿易関係の拡大などで合意がなされました。また、ブラジルのルセラ大統領との会談で、二国間の貿易拡大などを盛り込んだ共同声明が発表されました。

 ロシアのメドベージェフ大統領はその後、香港で曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官と会談し、経済関係の緊密化で合意しました。資本調達→より多くのロシア企業の香港上場を目論むロシアと、中国の国際社会への「窓口機能」の強化を進める香港の思惑が一致したと言えそうです。いずれにしてもロシアやブラジルの中国重視の姿勢が読み取れます。

 中国は同じ時期の「ボアオ・アジアフォーラム」(アジア版ダボス会議)で温家宝首相が「アジア新興国への投資を拡大し、中国企業の海外進出を促進する」と表明しましたが、すでに中国の代表的な輸出企業、華為技術、中興通訊(ZTE)の2社に総額450億ドル(約3兆7660億円)の信用枠を中国の国家開発銀行(CDB)が与えています。CDBの資産規模は前述の代表的な国際金融機関である世界銀行の約2倍を誇ります。

 福島原発事故の影響で世界的に風力、太陽光発電といったクリーンエネルギーに注目が集まっていますが、クリーンエネルギー技術を世界に供与する争いでは、すでに中国が米国に対して断然優位に立っています。昨年、中国はクリーンエネルギー関連機器の供給で世界市場の過半数を占めるようになりましたが、中国企業の台頭を支えているのはCDBで、2010年には風力、太陽光発電の関連企業(サンテックパワー、LDKソーラー等)に総額2320億元(約2兆6400億円)の融資を行っています。ちなみに米国は同分野に供与したのは200億ドル(約1兆7000億円)となっており勢いの差を感じます。

 今後についても米国はエネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの開発を促進するプログラムに15億ドル(約1275億円)の予算を割くのですが、驚くことに中国はクリーンエネルギー関連プロジェクトに今後10年間に5兆元(約57兆円)投入するとしています。リーマンショック以降の世界経済の回復のきっかけになった2008年末の中国が打ち出した4兆元の景気刺激策を思い出します。

 チュニジアに端を発した民主化運動の波は、エジプトのムバラク政権を倒しました。その後、リビアに飛び火した反政府運動は、王室の専制や長期独裁政権が続く他の中東諸国を揺るがしています。そして“その火はイランや中国にまで波及する勢いだ”と西側メディアは報じていますが、それは少し間違っているようです。民主化と格差……この問題をめぐり中国の党と政府は今のところ克服しつつあると思っているからです。

 内戦状態に近いリビアで反政府派を支持する欧米先進国(日本も含む)は、リビア上空の飛行禁止区域設定を提案しましたが、BRICs4カ国(すべてが理事国)は国連安全保障理事会でそろって棄権票を投じ、その後は反対を明言して存在感を示しました。欧州で最も力を持つドイツも棄権票を投じました。

 この一連の動きから、近い将来、国際機関での採決においてBRICSが中核となり、従来の欧米先進国に取って代わる場面を目撃するかもしれません。今回のリビア空爆で足並みの乱れを露呈した世界最大の軍事同盟「北大西洋条約機構」(NATO)の地盤沈下は必至です。ちなみにBRICSの5カ国はGDPが年内にユーロ圏を抜く見込みです。

 以上、新聞・外電の切り抜きを読みながら、中国をめぐる多様なテーマを足早に考えてみました。日本にとって一番大事なことは、政治経済の両面において再度、中国との友好協力関係を築くよう努力することだと思います。加えて両国の国民の善隣友好関係を大切にすることだと思います。映画好きの私は、張芸謀(チャン・イーモウ)監督の日中合作映画『単騎、千里を走る。』(高倉健主演)……を見れば、日中両国民はすぐ仲良くなれると思うのです(笑)。

(内藤証券 廣瀬政弘)

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