中国見聞録

比べてみれば何が見える?

第19回「日中の清涼飲料比較~残暑はソフトドリンクで乗り切ろう~」

◆まだまだ残暑です……

「比べてみれば何が見える?」。今回は「日中の清涼飲料比較~残暑はソフ トドリンクで乗り切ろう~」です。今年の夏は例年になく天候に恵まれず、 冷夏とも言われています。そうはいっても残暑でやはり暑いですね。皆さん は冷たいビールで乗り切るでしょうか。ただまだ仕事中であったり、車の運 転を控えていたりしたら、残念ながらビールは飲めません。そんな時のお供 は冷たいソフトドリンク。今回はソフトドリンクを私たちに送り届けてくれ る清涼飲料業界の“熱―い”現状を、日中両国を比較する視点から見ていき たいと思います。

◇日本の清涼飲料業界~自販機大国、ニッポン!~

日本の清涼飲料水は2兆4000億円の市場規模を誇るといいます。そもそも清涼 飲料水(以下、ソフトドリンクと表記)とは、アルコール1%未満の飲料のこ と。分け方は色々ありますが、主にミネラルウォーター、炭酸系、野菜・果 汁系、茶系、コーヒー系、乳性、機能性(スポーツドリンクやカテキン系茶 などが例)などに分けられており、数多くのブランドが出されています。08 年の生産量は1800万キロリットル超。大まかにみると、茶系3割、炭酸系、コ ーヒー系がそれぞれ2割弱、野菜・果汁系、ミネラルウォーター、機能性が1 割程度を占めているようです。

さまざまな製品がひしめくこの業界。日本経済新聞によると、国内シェアは 日本コカ・コーラが3割で“ガリバー”です。これにビール系のサントリー 食品が2割、キリンビバレッジが1割強で続いています。ほかにも伊藤園、ヤ クルト本社など特定の分野で強みを持つメーカー、JT(日本たばこ産業)、 大塚製薬など飲料以外を本業とするメーカーなど、多種多様です。

さらに特徴として、自動販売機の多さを挙げなければなりません。日本は自 動販売機大国です。24時間、365日、どんな時も購入できる便利さが武器。ソ フトドリンクの自販機は04年で242万台に達するといいます。都市・田舎問わ ず、全国至るところにある自販機は飽和状態ともいえ、都心部では30人に1人 という密度です。

◆中国の清涼飲料業界~世界第2の飲料大国、急成長中~

中国は世界の清涼飲料大国です。08年の生産量は6000万キロリットルを初 めて超え、1980年の210倍、世界第2位の規模。この間の成長率は年率で21% という驚くべきスピードです。来年中には第1位に躍り出るともいわれていま す。10万社を下らないという無数の企業がひしめく中国の清涼飲料業界。07 年でおよそ1861億元(約2兆9000億円)の売上高を誇るこの業界は、品目別で みると、概ねミネラルウォーター4割、炭酸系3割、果汁系、茶系、機能性が それぞれ1割前後とみられています。

激しい競争を繰り広げるなか、業界シェアは品目別に、大手を中心に一定の 特徴がみられるようです。大手は主に地場系、台湾系、欧米系に分けられ、 地場系はミネラルウォーター、果汁系などに強み。ミネラルウォーターのパ イオニアともいえる娃哈哈(ワハハ)に加え、弊社の取扱銘柄では、野菜・ 果汁系の最大手である中国匯源果汁(01886)、リンゴ果汁を主力とする煙台 北方安徳利果汁(08259)などがあります。一方、茶系は台湾系が優位。ミス ター康(00322)は約半分のトップシェアを占め、これに同じ台湾系の統一企 業(00220)が続くかたちです。この両社は、ミネラルウォーター、野菜・果 汁系でも大きなシェアを占めており、台湾企業の中国ビジネスの強さが見て とれます。さらに、広い意味での茶系飲料として、「王老吉」という涼茶( 身体を冷やす目的で飲まれるお茶)があります。私も飲みましたが、漢方的 な感じがする甘めのお茶と表現すればいいでしょうか。中国独特で、缶入り では国内で一番の売上を誇る飲み物です。これは地場系の広州薬業(00874) が生産・販売しています。

一方、欧米系はコカ・コーラ(中国語では可口可楽)、ペプシコーラ(百事 可楽)の「両楽」が特に炭酸系で大きなシェア。地場系との合弁などを通じ た生産・販売も行っており、太古A(00019)と中国食品(00506)はコカ・コー ラ、深セン深宝実業(200019)はペプシコーラを生産。残念ながら日系の存 在感は全体的に薄いようです。

ある有力格付けサイトによると、国内のソフトドリンク10大ブランドとして、 コカ・コーラなどに加え、■鮮橙多(統一企業のオレンジジュース)、■椰 樹(ココナッツジュースの有名ブランド)、■康師傅冰紅茶(康師傅の代表 的な紅茶ブランド、私個人の印象はかなり甘めの味)、■匯源果汁(中国匯 源果汁の果汁ジュース、地場系の代表的なブランド)―――などが挙げられ ています。私は全体的に、日本に比べると少し味が濃い目であるように思い ますが、どれもおいしく、安いといえます。

◇共通点~変化の激しい業界、大手でも生き残りは大変~

それでは日中両国の清涼飲料業界、どんな共通点があげられるでしょうか。 まず、豊富な製品ラインナップでしょう。業界は季節の移り変わりによる影 響が大きく、製品サイクルも非常に速いといえます。さらに人は多くの種類 の飲料を飲みます。朝はコーヒー、昼はお茶という風に。そのため多くのラ インナップが必要となり、他社製品との差別化が重要になります。基本は味 ですが、普通の人にとって同じ系統の飲料で違いを見分けることは困難。こ のため差別化は容易ではなく、企業間の競争は激しいといえます。CMを含め た広告宣伝、マーケティングなどが売上を大きく左右することから、大手が 優位でしょう。

さらに消費者の好みが時代とともに変わりやすいという共通点もあります。 両国ともに趣向が多様化しているほか、目的も単なる「渇きを潤す」から、 「楽しみ、爽快感、栄養・健康」などに拡大。このため大手が優位とはいえ、 業界内の「下剋上」も起きやすい環境です。そもそも、ソフトドリンクの代 名詞であった炭酸系は、時代とともに健康、美容、安全志向の高まりを受け、 伸び悩んでいます。中国では今年1-3月のソフトドリンク生産量が前年同期 比で15%増えたものの、炭酸系は逆に3.5%減少。反対に好調なのが、茶系、 野菜・果汁系の飲料です。野菜・果汁系は健康志向を追い風に速いペースで の拡大が続いており、1-3月の生産量は前年同期に比べ33.29%も増えたとい います。

このように変化が激しいことに加え、典型的な内需型の消費セクターであ るという点も同じです。変化に対応し、その上で国内市場を奪い合う。この ためには製品構成の拡大、スケールメリットの追求は重要です。両国ともに 企業の合併・再編、買収が盛んであることは言うまでもありません。最近報 道されたキリンとサントリーの統合交渉も、清涼飲料業界の視点で見ればコ カ・コーラに匹敵する巨大な飲料メーカーの誕生を意味します。中国ではそ のコカ・コーラが昨年、中国匯源果汁の買収に乗り出しました。最終的には 官民からの地場系ブランドの保護圧力、独占禁止法への抵触懸念などもあっ たとみられ、当局は不許可の裁定。ただ、コカ・コーラが伸び悩む炭酸系飲 料に依存する体質からの脱皮に迫られており、成長分野である野菜・果汁系 の市場を取り込む強い必要性があることは明らかでしょう。

◆相違点~世界平均の5分の1、先進国の24分の1~

同時に違いも見られます。まず、販売手法、価格体系の違いが挙げられる でしょう。まず自動販売機の多さです。日本ではコンビニエンスストアなど に加え、販売機での販売も主流です。販売機ではメーカーが価格決定を主導。 80円自販機などは少数です。ほとんど缶入りは120円、ペットボトルは150円 で統一。メーカーにとって自販機は価格競争も少なく安定的に利益を上げら れる手法です。店舗での販売も実際はほとんど横並びの状態。しかし、中国 はかなり違います。まず自動販売機をあまり見かけません。上海など大都市 でもそうですから、郊外、農村部ではなおさらです。背景には硬貨の流通量 が日本と比較して少ないという事情があるのかもしれません。紙幣について も、グチャグチャで機械では読み取れないものをよく見かけます。さらに価 格体系の違いも背景にあると思われます。中国では日本のように“限りなく ”一定価格に据え置かれているわけではありません。メーカー、ブランド、 量によって一定の相違が見られます。価格競争の余地が日本より大きいため、 競争が日本よりも激しく、日本のような同一価格の自販機は、中国では消費 者が同じ価格に抵抗感を示すかもしれません。このほか、自販機設置のメリ ットに人件費の削減が考えられますが、中国は相対的に人件費が安いため、 その点でのインセンティブはあまり働きません。

販売手法、価格体系、色々な面で相違点があります。しかし最大の相違点は 市場が、成熟・縮小、あるいは成長・拡大市場であるかという点でしょう。 人口減少社会の日本は消費水準の高度化、販売機の飽和状態などを背景に、 パイは限られ、かつ縮小圧力下にあります。限られたパイを奪い合う現実が あり、だからこそ内需型の飲料メーカーが海外進出を真剣に検討しているの でしょう。一方の中国はこれまでの高成長に加え、今後も高い成長が見てと れます。中国の年間の1人あたりソフトドリンク消費量は世界平均の5分の1、 先進国の24分の1に過ぎません。世界一の人口を有するため、当然1人あたり では低い水準にとどまります。しかし、成長を続ける中国で、1人あたりの低 さは、今後の成長余地の大きさを意味していることもまた事実です。

◇結びにかえて~自販機に注目~

中国の清涼飲料業界の将来はどうなるでしょうか。恐らく、日本と同様に 味覚の多様化、健康・安全志向がますます進み、コカ・コーラ、ペプシなど 有力外資もさらに本腰を入れて中国市場の攻略にかかってくるでしょう。日 本企業の攻勢も強まるかもしれません。私は「自販機」に注目しています。 自販機は24時間、365日、好きな飲み物を簡単に購入できます。初期費用、一 定の維持費はかかるものの、一度設置すれば24時間無人で働いてくれます。 しかも立地条件はある程度関係するものの、大都市でも農村でも、地域はま ったく選びません。この自販機の展開をいち早く成し遂げた飲料メーカーこ そが、将来的に業界を引っ張る存在になると思います。中国企業はその点で 外資に比べ、全国津々浦々、特に内陸部での自販機設置について、有利であ るかもしれません。

暑い日はまだ続きます。でもまだ仕事が残っている、或いはこれから運転 で、ビールが飲めない。こんな時には、冷たいソフトドリンクが暑さを吹き 飛ばしてくれるはずです。それでは最後に、残暑お見舞い申し上げます。皆 さま、くれぐれもご自愛ください。

(中国部畦田和弘)

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