レポート

【中国株レポート】中期的な買いゾーンに入ってきた中国株式市場

12.03.19

中国部長 村上哲也

 昨年後半にかけて大きく下落した中国株式市場だが、今年に入ってからは堅調な戻り局面が続いている。欧州債務問題に対する懸念が後退、米国でも低金利政策の継続に加え、足元での景気指標の好転、などを背景に世界的にリスクオンの動きが拡大。一方、国内では預金準備率再引下げなど、引締め緩和の進展が再確認されたほか、年初の温家宝首相の株式市場支援発言を皮切りにQFIIの認可スピード加速、年金資金の株式投資解禁の流れなどこのところ株式市場に対する支援策も目立ってきた、などが買い材料となっている。

 ただ、これまでの株価の戻りは海外要因に押し上げられた側面が強く、国内要因の好転は未だ株価に織り込まれていないものと考えている。今後は、

  1. これまで株価の頭を抑えてきた金融引締めが終了、2年ぶりの金融緩和で市中の流動性が回復へ
  2. 株価は反発局面にあるが、バリュエーションは依然として割安
  3. 景気、企業収益は引き続き順調でハードランディングの可能性は遠のきつつある

などを背景に年後半にかけて本格反転が期待できよう。

中国本土株、香港株ともに現在の株価は半年、1年タームでの投資が十分に報われる水準にあると考える。

金融引締め緩和の進展を再確認

 昨年12月に続いて2月には預金準備率が再度引下げられるなど、引締め緩和の進展が再確認された。10年1月に金融引締めに転じて以来、約3年ぶりの金融緩和だ。上海総合指数の動きを見ると07年秋にかけての大相場のあと08年の暴落を経て、09年夏には3500ポイント近くまで戻ったが、そこをピークに右肩下がりの動きとなっている。この間、景気・企業収益が好調を続けてきたなかで、株価の下落が止まらなかったのは金融引締めの継続による株式市場からの資金の流出が大きな要因と考えられる。しかし、今回金融緩和に転じたことで、ようやく株式市場への資金流入が期待できる条件が整いつつある。

金融政策と株価

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流動性(マネーサプライ)回復で株価も反転方向へ

 金融情勢と株式市場の関係については、図の通りマネーサプライと(M1)と株価(上海総合指数)にはかなり強い相関性があるように見受けられる点でも明らかである。総じてM1の伸び率が高まる局面では株価の上昇率も高まり、その逆も同様である。市中に出回る資金量が増えれば株式市場に回ってくるお金も増えるということだろう。

 ところでそのM1の伸び率だが最近の動きを見ると10年1月をピークに低下の一途を辿っており、株価も途中、反発場面はあったものの、結局、戻りきれずに1月初めにはここ2年来の安値を付けている。

 一方、経験的にはM1の伸び率は10%を割れた時点で底打ち、反転しており、株価もその前後で底打ち、反発に転じている。最近のM1伸び率は9月に8.9%増と10%を割り込んで以来、10月8.4%増、11月7.8%増、12月7.9%増、1月3.1%増、2月4.3%増と6ヵ月連続で10%を下回っている。リーマンショック時にも5ヵ月連続で10%を割り込んだが、既にそれを上回っている。したがって、過去のパターンからするとボトム圏に入ってきている可能性が高く、今後は反転、拡大に転じる公算が大きい。とすれば株価も同様に早晩、反転、上昇に向かうのではないか。

マネーサプライ(M1)と上海総合指数(前年比)

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PER、PBRは引き続き極端ともいえる低水準

 株価はこのところリバウンドしてきているが、上海総合指数の予想PERは10.1倍(3/9)と依然としてリーマンショック時を下回る水準。PBRも1.95倍と同様に低水準。また、ハンセン指数についても予想PERは10.7倍、PBRが1.54倍と大幅な割安水準にある。業績好調が続く中で、株価が大幅に下げてきたことが背景だが、バリュエーション的には既にリーマンショックレベルの危機を織り込んでいるわけで、下値不安は極めて小さいと考える。

予想PER(上海総合指数)

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PBR(上海総合指数)

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予想PER(ハンセン指数)

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PBR(ハンセン指数)

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中国経済はソフトランディングへ

 ただし、バリュエーション、特に予想PERが如何に低く見えても、今後、景気が急減速し企業収益が大きく落ち込むようなことになれば、現在の低PERも意味を成さないことになる。従って、今後の景気・企業収益の見通しが重要なポイントになってくる。

 下表はOECD、世界銀行、IMFの最新の世界経済見通しだが、これによると中国の12年の成長率は8%台の前半から半ばが予想されている。また、13年についてもOECD、IMFが成長率加速、世界銀行は若干の減速という見方だ。いずれにせよ8%台をキープする見通しで、一部で懸念されている中国経済のハードランディングの可能性は低い。企業収益についても順調な増益が続く見通しだ。


OECD、世界銀行、IMFの経済見通し

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業績集計(2012/2/8)

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レポート中の用語について

QFII

人民元建の中国A株の取引は原則として中国国内投資家に限定されていますが、一定の要件を満たす海外機関投資家に取引を認める制度のこと。

バリュエーション

現在の株価が割安か割高かを示す指標。

預金準備率

商業銀行などが中央銀行に預けておかなければならない預金割合。これを政府が変動させることによって市中にあるお金の量をコントロールしている。

マネーサプライ(M1)

市中に出回っているお金の量のこと。M1は現金に預金を加えた額。

PER(株価収益率)

現在の株価が一株当たりの純利益に対して何倍まで買われているかを見た指標。

PBR(株価純資産倍率)

現在の株価が一株当たりの純資産に対して何倍まで買われているかを見た指標。

1σ(シグマ)

1標準偏差ともいう。過去の株価推移状況から見て、68%の確率でこの範囲に収まっているのが適正とした指標。



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