中国株 業界レポート

航空関連業界 ~原油価格の動向がカギ~

2010年5月21日

市場動向 ~原油価格の下落もあり、足元では黒字に転換~

09年の業界規模:

航空旅客輸送量:2億3051万人(前年比19.7%増)、貨物輸送量:445万トン(同9.3%増)、営業収益:2971億元

航空関連業界の業績は改善傾向にある。09年は年後半からの景気回復を追い風に、旅客、貨物輸送の需要が増大。特に全体の9割を占める国内での旅客需要が、東部地区を中心に伸びた。さらに原油価格の水準が前年を下回ったことで採算性が改善。航空、空港などを含む業界全体の営業収益は3000億元に迫った。そのうち航空会社は2120億元を占め、税引き前損益は74億元の黒字に転換。一方、空港利用の各指数は軒並み過去最高を更新。旅客取扱量は4億8606万人、貨物は946万トンに達した。ただ、空港会社全体では5億元の減益。燃料、設備、システムなどを手がける航空関連会社も減益を強いられた。今後も国内の景気回復にともない、航空需要は堅調に推移するものと思われる。航空監督当局によると、10年の旅客、貨物輸送量は前年をそれぞれ13%、12%上回る見通しだ。

業界の特徴 ~外部要因に左右されやすいセクター~

主力事業面:

業界は実際の輸送を担う航空会社、空港運営を担う空港会社、さらに設備・燃料や関連サービスを提供する関連会社の3つに大きく分けられる。いずれも国有系が中心であり、業界の寡占度は高い。航空会社は繁閑の差が大きく、「春運」(旧正月の交通ダイヤ)など大型連休前後に旅客需要のピークを迎える。さらに国内・国際線ともに、天候状況、社会・治安情勢などの影響を受けやすい。航空機、燃料を海外から調達していることから外貨建て負債の比率が大きく、人民元高に傾くと有利。巨額の設備投資を必要とするため、強い財務基盤が求められる。燃料費がコストの大半を占めており、デリバティブなどでヘッジしているものの、原油相場の影響を非常に受けやすい。全体的に外部要因に左右されやすいセクターといえる。

本土には合計166の空港があり、利用者数が年間1000万人を超える空港は14港を数える。北京、上海、広州の3大空港が主要ハブ空港の役割を果たしている。3空港合計の旅客、貨物取扱量はそれぞれ全体の3割、6割を占める。

国際面:

中国は112カ国と航空協定を結んでおり、世界の主要航空会社の大半が乗り入れている。国際線(香港・マカオ路線を含む)の全体に占める割合を取扱量ベースでみると、09年で旅客が1割弱、貨物が3割に過ぎず、今後の成長余地は大きい。

政策面:

一種の官業であり、政府による規制も厳しく、参入障壁も低くない。航空料金は基本的に市場価格によるものの、その一部である燃油サーチャージは、徴収価格、徴収するかどうかを含め国が一元的に決定している。燃料油の価格基準も国が決定。09年からサーチャージと燃料油価格を連動させる新制度が導入されており、収益・コスト面で、国が価格決定に大きな役割を果たしている。空港使用料も同様に、市場と政府が決定する部分に分かれる。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~国有系企業による寡占状態~

業界は国有系企業が中心であり、集約度が高く、競争原理は働きにくい。航空会社では02年の再編を経て、中国国際航空(00753)、中国東方航空(00670)、中国南方航空(01055)の3大航空会社を中心とする陣容となった。3社は航空機保有ベースで全体の7割を占め、全国に航空路を張り巡らせるほか、国際線をほぼ独占して手がける。それぞれ北京、上海、広州のハブ空港を本拠とし、華北、華東、華南地方で高いシェアを持つ。地域ごとに山東航空(200152)など地場系の航空会社があるが、多くは3大航空会社の系列下。こうしたなか、海南航空(900945)は地方航空会社ではあるが、3大航空会社に次ぐ地位にまで成長している。

主要空港会社の多くは上場しているが、香港に上場するのは首都北京の玄関口である北京首都国際機場(00694)と、海南省の海南美蘭国際機場(00357)だけにとどまっている。北京首都国際機場は旅客、発着数で国内1位、貨物で2位の規模を誇る。関連分野をみると、02年の再編を経て国有系の中国航空機材進出口公司、中国航空油料集団公司、中国民航信息網路(00696)の3社がそれぞれ航空設備、燃料油供給、空港システムについて独占的に担当する体制ができている。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
国泰航空 00293 59,008 4,135 59,086
香港 1946年に創設された香港を代表する航空会社(フラッグ・キャリア)。今までに幾度も航空会社に関する国際的な賞を獲得するなど、評価は高い。航空会社コードは「CX」で、航空連合「ワンワールド」に加盟している。筆頭株主は英国系コングロマリットの太古A(00019)。本土の大手航空会社である中国国際航空と資本を持ち合い、幅広く提携していることが特徴。
海南美蘭国際機場 00357 401 181 3,880
香港 海南省の省都である海口市の海南美蘭国際空港を運営する地元政府系の企業。筆頭株主には、航空当局、地元政府、上海上場の海南航空などが発起人として名を連ねている。09年の旅客取扱量は839万人で国内14番目。同じ海南省で観光地として有名な三亜市の国際空港に対し、買収する意向を表明。これが実現すれば懸案であった同空港との競合問題が解決することとなる。
中国東方航空 00670 38,990 169 72,502
香港 上海市を拠点とし、3大航空会社の一角を占める国有系企業。国内線・国際線の旅客・貨物輸送に加え、関連する機内食などのサービスも手がける。航空会社コードは「MU」で、航空連合「スカイチーム」に加盟。上海にある浦東国際空港、虹橋空港の両空港をハブ空港としており、華東地区を拠点に国内外に航路を張り巡らせている。
北京首都国際機場 00694 4,965 301 17,194
香港 首都北京の国際空港である北京首都機場を運営する国有系企業。08年から第3ターミナルの供用を開始。09年の旅客数は6500万人を超え、国内1位、世界でも第3位の規模に達している。このほか、貨物取扱量も国内2番目の規模。主要事業は、◇航空系(航空会社への離着陸・旅客サービス施設の提供など)、◇非航空系(ターミナルビル内の免税店・店舗・レストランの賃貸など)に区分される。
中国民航信息網路 00696 2,620 776 10,417
香港 航空関連のITシステムを独占的に供給している企業。主力は航空券の予約販売サービスのプラットフォームとなるETD(電子旅行販売)システム、搭乗手続き・搭乗・預荷物管理などのAPP(空港旅行者処理)システムなど。筆頭株主は中央企業の中国民航信息集団公司。このほか、3大航空会社の親会社が、それぞれ大株主となっている。
中国国際航空 00753 51,393 4,854 123,064
香港 北京を本拠とするナショナル・フラッグ・キャリア。大手3社のなかで国際線の比率が最も高いことが特徴で、営業収益全体の3割を占める。航空会社コードは「CA」で、航空連合「スターアライアンス」に加盟。主要株主である香港の国泰航空との業務提携、上海拠点の機能強化などを通じて、北京以外でのシェア拡大にも努めている。澳門航空、深セン航空、山東航空など複数の地方航空会社に出資している。
中国南方航空 01055 54,802 330 47,840
香港 広州市の白雲国際空港をハブ空港とする大手航空会社。航空会社コードは「CZ」で、航空連合「スカイチーム」に加盟している。3大航空会社のなかでも、保有航空機、航路、旅客、貨物取扱量など各分野で国内最大のシェア。華南、西南地方で高いシェアを誇り、複数の地方航空会社を傘下に置く。
山東航空 200152 5,366 302 2,232
深セン 山東省済南市の国際空港を拠点とする地方航空会社。航空会社コードは「SC」で、中国国際航空の傘下にある。青島市では航空貨物物流センターを運営。ホテル経営も手がける。四川航空、済南国際機場、中国民航信息など複数の上場企業に出資している。
海南航空 900945 15,548 335 24,784
上海 海南省の航空会社。地方航空会社でありながら、全国規模で国内・国際線を運航し、3大航空会社に次ぐ規模まで成長している。航空会社コードは「HU」。中国新華航空、長安航空、山西航空などを子会社に持つ。地元政府系の企業が筆頭株主となっているほか、ハブ空港とする海口市の海南美蘭国際機場の運営会社も大株主になっている。

売上高・純利益は09年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル:0.881元。

時価総額は10年5月20日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル:7.778香港ドル

注目されるトピックス ~海外旅行の増加などが追い風に、ただ原油価格には注意が必要~

高速鉄道網との棲み分けは可能、海外旅行の増加などが追い風に:

旅客、貨物の国内輸送需要は増加のペースにあり、高速・遠距離輸送へのニーズは高い。中国では高速鉄道網の整備が急ピッチに進んでいるが、鉄道と航空は価格帯、ユーザー層ともに重ならない部分が多く、両者の棲み分けは可能。上海万国博覧会、広州アジア競技大会などのビッグイベントが国内需要を刺激する可能性もある。さらに所得水準の向上、ビザ要件の緩和などを背景に海外旅行が大きく伸びるなか、当局も10年から国際輸送サービスの営業税を免除するなど、追い風は吹いている。

国内外での再編動向に注目:

02年の大型再編から数年を経過し、業界再編の機運が高まっている。昨年は中国東方航空が同じ上海を本拠とする上海航空を吸収合併。大手による中小航空会社の買収は今後も続くだろう。さらに06年に実現した本土のフラッグ・キャリアである中国国際航空と香港の国泰航空(00293)による資本持合など、再編は海外を巻き込む可能性もある。

原油価格、国際的な不確定要因などがリスク要素:

航空会社にとって最大のリスク要因は原油価格の動向だ。原油価格が急騰した08年は航空会社が軒並み巨額の赤字を計上し、大手3社は国からの資本注入を受けた。デリバティブでヘッジしているものの、相場が読みと逆方向に向かった場合は多額の評価損を計上するリスクもあり、原油価格の変動は常に注意を要する。さらに新型インフルエンザ、或いはアイスランドでの噴火による欧州の空港閉鎖など、国際的な不確定要因が業績にマイナス影響をもたらす可能性もある。

国内空港の旅客取扱量、上位10空港一覧(09年実績)
2020年までの空港整備見取り図
主要航空3社の比較(09年実績、括弧内は前年費伸び率)

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