中国株 業界レポート

建材業界 ~堅調な内需、再編も加速か~

2010年5月31日

市場動向 ~世界有数の市場規模、固定資産投資の拡大を背景に成長を持続~

09年の業界規模:

工業生産(付加価値ベース):6532億元(前年比:19.3%増)、設備投資:5347億元(同48.4%増)、輸出出荷高:1422億元(同13.8%減)

中国はセメント、ガラスなど主要建材の大半で世界最大の生産量、生産能力を持ち、市場規模も大きい。09年の建材業界全体の工業生産は前年比で19.3%増と伸び率こそ03年以来の最低水準にとどまったものの、引き続き増加基調を維持した。けん引役は内需で、景気対策の効果により固定資産投資が拡大。市場規模の大きいセメントの生産量は16.5億トンと前年を17.9%上回った。業界全体の設備投資も50%近い伸びを記録。一方で、低付加価値、過剰気味の生産能力などの構造的な問題は依然として深刻。また、同年は金融危機の影響で、輸出高は前年実績に届かなかった。 10年は不動産引き締めの影響で需要減少の可能性があるほか、政府の規制も強まる見込み。ただ、新疆など西部地方のインフラ投資計画、「建材下郷」(農村での建材購入への補助政策)、保障性住宅(低所得者を主な対象とした住宅)の拡大などを背景に、実需は底堅いとみられる。業界再編などが進み、構造的な問題が緩和に向かえば、業界大手を中心に安定的な成長軌道に乗ることも可能だろう。

業界の特徴 ~過剰気味の生産能力という構造的な問題を抱える~

生産・販売面:

建材はセメント、ガラス、装飾用建材をはじめ多くの製品種類があり、いずれも多くの企業が激しい競争を繰り広げるなど、業界の集約度は低い。生産設備が旧式、過剰であり、エネルギー消費量、環境負荷が大きいという構造的な問題を抱えており、電力、石炭などの価格動向がコスト面を大きく左右する。セメントは山東、江蘇省などの沿海部が主な生産地となっている。販売面をみると、セメント、装飾用建材などはインフラと不動産建設向けが大きな柱。中国の住宅は内装の余地・自由度が高いことから、個人による建材消費量も多い。需要動向は政府、企業などの固定資産投資に大きく影響されるが、地方ごとにも違いがあり、足元では内陸部の伸びが高い。ガラスでは自動車販売の拡大を受け、同分野向けの需要が伸びている。

国際面:

基本的に内需型の業界であるが、近年では輸出比率が徐々に高まっている。最大の輸出先はアジアであり、香港、日本、韓国、インドなどが主要市場。一方で外資企業も中国市場に積極的に進出しており、英ピルキントンは合弁で上海耀華ピルキントン(900918)を設立。日本勢ではTOTOなどが主にハイエンド分野に進出している。

政策面:

過剰気味の生産能力という構造的な問題の解決に向け、当局は業界全体への締め付けを強めている。中心となるセメントでは、全体の2割を占めるといわれる旧式設備の廃棄を柱に、業界再編を織り交ぜながら生産設備の整理・統合を推進。10年に5000万トン、12年末までに3億トンというセメント生産能力の削減目標を掲げている。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~多くの企業が競争を繰り広げる業界~

政府系、民営、外資を含め、多くの企業が建材分野に参入しており、競争も激しい。大手はそれぞれの本拠地で高いシェアを持つものの、全国展開するガリバーは少数。主力のセメント分野では、クリンカーの生産能力で地元政府系の安徽海螺水泥(00914)が最大手。これを国内最大手の総合建材グループである中国建材(03323)、世界大手のセメント製造設備メーカー「中国中材」(01893)の傘下企業などが追うほか、台泥国際(01136)、華新セメント(900933)などの外資系企業なども業界大手に名を連ねる。ただ上位10社の合計生産量は全体の4割に過ぎない。ガラスでは中国南玻集団(200012)、洛陽玻璃(01108)などの地元政府系企業、外資系列の上海耀華ピルキントンなどの大手メーカーが上場。大手の民営企業も多く、方大集団(200055)はカーテンウォールで国内有数。中国忠旺控股(01333)はアルミ形材の分野で国内最大手、世界でも上位に入ってくる。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
安徽海螺水泥 00914 24,998 3,506 76,027
香港 国内最大手のセメントメーカー。高品質のセメントとクリンカー(半製品)が主力製品であり、華東や華南地域の良質で豊富な石灰資源を使い、新型乾式ロータリーキルン(回転窯)で生産している。同社製セメントは「海螺」(CONCH)ブランドで知られ、上海東方明珠電視塔、上海リニア鉄道の高架線、上海市の浦東国際機場などで使用された実績を持つ。地元政府系の企業が筆頭株主となっている。
台泥国際 01136 3,483 106 7,975
香港 台湾の大手企業グループ「台湾セメント」を親会社に持つ、大手セメント会社。香港でセメントの輸入・販売事業を展開するほか、本土などでセメントやクリンカー、スラグ・パウダー(鉄精粉)を製造・販売。フィリピン、米国などにも輸出している。買収に積極的であり、08年に香港に上場していた嘉新水泥を買収して華東地域に事業エリアを拡大。10年に大型買収を完了させ、事業規模の大幅拡大に成功した。
中国忠旺控股 01333 13,853 3,529 30,654
香港 遼寧省を本拠とする民営のアルミ形材メーカー。生産能力は国内最大手、世界でも屈指の規模を誇る。創業者の劉忠田・董事長は国内有数の富豪としても有名。交通・輸送分野の工業向けアルミ製品に注力しているものの、アルミサッシやカーテン・ウォール(CW)など建築向けアルミ製品も生産している。
中国中材 01893 30,368 720 16,036
香港 中央政府系の大手プラントメーカー。主力とするセメント生産ラインのEPC(設計、調達、施工)事業は世界有数の規模を誇り、新興国を中心に世界各地で事業を展開、大手セメントメーカーを顧客に持つ。複数の上場企業を傘下に置き、EPC事業に加えて、グラスファイバー、セメント、ハイテク素材(高強度グラスファイバー材料など)事業などに従事。セメント生産は国内屈指の規模に成長している。
北京金隅 02009 11,701 2,035 28,585
香港 北京市・環渤海地区で最大規模の建築材料メーカー。北京市政府が実質筆頭株主となっているほか、中国中材も大株主として名を連ねている。事業は川上のセメント、建築資材の生産から川下の不動産開発や投資まで多岐にわたり、社内でのシナジー効果を発揮。セメント事業は北京市などで大きなシェアを誇り、オリンピックのメイン会場建設で使用されるなど、高いブランド力が強み。建築資材では、家具、岩綿吸音板、壁材、耐火材などを生産。「TOTO」など海外製品の販売も手がける。
中国建材 03323 33,297 2,352 30,916
香港 中央政府系の総合建材企業。多くの分野で国内上位のシェアを誇り、セメントでは業界最大手の安徽海螺水泥に肉薄している。主な事業は、セメント、石膏ボードなど軽量建材、グラスファイバー・FRP(ガラス繊維強化プラスチック)・風力発電用ローターブレード、エンジニアリングサービスなど。石膏ボード、FRPの国内最大手を含む、複数の上場企業を傘下に置いている。
中国南玻集団 200012 5,279 832 22,859
深セン 広東省を本拠とする大手ガラスメーカー。高級フロートガラスなど建築用ガラス、ITOガラス、カラーフィルター、セラミックデバイスの研究開発・生産などを手がける。デバイス、電池用ガラス、ポリシリコン(多結晶シリコン)など、太陽光発電の分野にも参入していることが特徴。香港上場の深セン国際(00152)が実質筆頭株主となっているが、同株主は持ち株比率を徐々に引き下げている。
方大集団 200055 913 44 4,023
深セン 広東省を本拠とする民営の建築材料メーカー。カーテンウォール(CW)、アルミ複合板、LED照明、地下鉄のプラットフォームスクリーンドアなどの製造・販売を手がける。主力は大規模建築の外壁として使用されるCW。成長分野としてCW型太陽電池の事業拡大を狙っている。 
上海耀華ピルキントン 900918 2,164 ▲211 4,827
上海 大手ガラスメーカー。主力製品は透明フロートガラス、着色ガラス、家具用ガラス、中空ガラス、多層ガラス、めっきガラス、膜付低放射ガラス(Low-Eガラス)、自動車ガラスなど。同社は、日本板硝子傘下の英ピルキントン社と地元の上海市政府系の企業などが合弁で設立した。
華新セメント 900933 6,906 501 8,691
上海 湖北省を本拠とする大手セメントメーカー。同社の歴史は古く、セメント、クリンカーなどの製品は「華新」や「堡塁」のブランドで知られる。事業の中心は湖北省だが、江蘇省でも「金猫」ブランドで知られるセメント会社を合弁経営。筆頭株主はセメント世界大手のスイス・ホルシム社。地元政府系企業も大株主となっている。

売上高・純利益は09年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル:0.881元。

時価総額は10年5月28日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.802香港ドル。

注目されるトピックス ~業界再編の進展に加え、政策的な追い風も~

政策的な締め付けが強化、業界再編の起爆剤に:

建材業界はセメントを中心に、過剰気味の生産能力という大きな問題を抱えている。政府は旧式設備の廃棄などを柱とする締め付けを推し進めており、一部企業の資金調達を実質的に制限するほど。再編を通じた集約度の引き上げも目指しており、15年までに上位10社のセメント、クリンカー生産量の全体比を、それぞれ35%、50%以上に引き上げる計画。これらを背景に業界再編の動きは加速しており、大手にとっては事業地域、シェア拡大のチャンスが広がりそうだ。

地域ごとの振興策が追い風に:

中国は依然としてインフラ整備の余地は大きく、セメントなどの建材需要は今後も伸びる可能性が高い。昨年から地域ごとの振興策が相次いで打ち出されており、最近では新疆ウイグル自治区に向こう5年で2兆元を投資する計画が報道された。こうした政策は、対象地域で高いシェアを持つ大手企業に直接的な恩恵をもたらすことになる。

“建材下郷”により市場が一気に拡大する可能性も:

中央政府は「建材下郷」を計画。10年の中央政府一号文件で、内需拡大、農村振興策の一環として同政策への支持が強調された。報道によれば現在は制度設計中であり、早ければ11年にも始まる見通し。装飾用建材などが大きな恩恵を受けるとみられ、住宅の内外装市場が農村部にも一気に拡大する可能性がある。特に環境配慮型製品が高い競争力を持つと考えられることから、同分野の製品種類が豊富で、農村部での販売力に強みを持つ企業などが追い風を受けるだろう。

中国のクリンカー年産能力、上位20社(09年末時点)
省別のセメント生産量とシェア(09年)

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