中国株 業界レポート

繊維・アパレル業界 ~世界の繊維大国~

2010年5月31日

市場動向 ~圧倒的な繊維大国~

09年の業界規模:

国内販売高:2兆9712億元(前年比14.7%増)、輸出額:1713億米ドル(同9.7%減)、衣類生産量:238億枚(同6.9%増)

中国の繊維・アパレル業界は世界で圧倒的な規模を誇り、主要繊維である化学繊維は世界全体の6割以上を生産している。09年は金融危機の影響で外需が減少し、輸出額は前年比で10%近く減少した。だが、景気対策の効果で内需は年央から回復。主要点百貨店の衣類売上高は15.6%増の1兆2400億元を記録し、業界全体での国内販売高(一定規模以上の企業)は前年を14.7%上回った。今後は輸出環境の改善がキーポイントとなるが、人民元高、景気の二番底などのリスク要素は残り、楽観視はできない。ただ、元々内需は好調であるほか、個人消費を刺激する政策的な支援も期待できる。さらに過剰気味の生産能力、製品付加価値の低さなどの課題も当局主導で徐々にではあるが改善傾向。このため、同業界の成長トレンドは今後も続こう。

業界の特徴 ~典型的な労働集約・輸出型の重要産業~

生産・販売面:

繊維・アパレル業界は繊維から糸、生地などを生産する川上の紡績・紡織から、衣類を製作する川中のアパレル、さらに川下の小売りなど多岐に渡り、数多くの企業がひしめく、裾野の広い産業。国内販売高に占める各サブセクターの割合は、紡織・紡績が61%、アパレルが27%、化学繊維が10%、紡織機械が2%となっており、化学繊維、機械の割合が低い。生産地は沿海部に集中しており、広東、浙江、江蘇、山東、福建、江西の6省で全体の8割以上を占める。全体的に過剰気味の生産能力、低い技術・ブランド力などが課題。収益性も概ね低く、主要原材料の石油、綿花などは輸入比率が年々高まっており、国際価格の動向は人件費とともにコストに直結する。一方、香港のアパレル産業は歴史が古く、アジア有数の貿易拠点としての地位を確立している。

国際面:

典型的な加工貿易・輸出型産業であり、価格競争、スケールメリットなどに強み。地場系、外資など多くの企業が広東省など沿海各省を拠点に、製品を生産、世界各国に輸出しており、衣類が輸出額全体の6割以上を占める。輸出先の上位は欧州、米国、日本、香港などで、中国製は圧倒的なシェア。このため貿易問題に発展しやすく、人民元高の動向も含め、輸出環境を左右する要因は多い。

政策面:

同業界は非常に高い国際競争力を持つ一方、労働集約的な産業であるために雇用吸収力が大きく、経済全体に与える影響は大きい。このため政府は重要産業と位置づけており、業界全体の高度化を模索している。税還付率をツールに輸出環境のコントロールに努めるほか、過剰気味の生産能力の淘汰・整備、業界再編、製品の高付加価値、地場系ブランドの発展などを支援。09年に繊維産業の振興策を発表し、11年までの具体的な政策目標値を明らかにしている。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~川上では世界有数の規模を誇る企業も、アパレルでは民営企業が活躍~

同業界は民営、政府系、外資を含め数多くの企業が厳しい競争を繰り広げており、集約度は低い。川上の紡績・紡織では、石油を原料とする化学繊維で国有系の中国石化儀征化繊(01033)が最大手。一方の天然繊維は綿で魏橋紡織(02698)、丸編みで香港系の福田実業(00420)、カシミアでオルドスカシミア(900936)など、民営企業が活躍。これらの大手は世界でも有数の生産量を誇る。川中のアパレル製造は大手になると、川下の販売店まで自前、或いはフランチャイズで展開している。民営企業が多く、香港系の思捷環球控股(00330)、佐丹奴国際(00709)の両社はそれぞれ欧州、アジアで大規模に事業を展開。これら衣類の国際的な流通には香港系の利豊(00494)をはじめとする商社が大きく関与している。起業して有力ブランドまで成長させたケースも多く、波司登(03998)はダウンジャケットの分野で国内最大手。スポーツ人口の増加を追い風にスポーツアパレルの分野も伸びており、業界のパイオニアは李寧(02331)。これを安踏体育用品(02020)、中国動向(03818)などが追っている。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
思捷環球控股 00330 30,381 4,180 57,197
香港 「ESPRIT」(エスプリ)ブランドを展開する大手アパレルメーカー。女性物、男性物、子供服、靴、アクセサリー、生活用品など幅広くカバーする国際的に著名なブランドに成長しており、主力市場は全体の8割以上を占める欧州。このほか、北米、アジアなど世界各地で事業展開している。香港に本拠を置き、デザイン、フランチャイズ経営、卸小売などを手がける。
経緯紡織機械 00350 3,498 ▲79 4,271
香港 中央政府系の大手紡織機械メーカー。天然繊維・化学繊維用の紡績機や織機、関連部品を製造する。本土各地で販売するほか、海外にも輸出している。事業の多角化を志向しており、過去に不動産業に参入したことがある。最近では湖北省の自動車メーカーへの出資計画を明らかにしている。
利豊 00494 92,046 2,968 131,768
香港 香港を代表する大手商社。1906年に広州市に設立された企業を前身とし、1937年に香港に進出した。主力商品はアパレル。高品質とコスト競争力を有したサプライチェーンを掌握し、設計・開発から、原材料の仕入、委託生産工場の選択、生産・品質管理、出荷までを手がける。主にアジアを原産とする商品を調達し、米国や欧州を中心に輸出。最近では買収を通じてアパレル製造の分野に積極進出している。
佐丹奴国際 00709 3,729 254 5,206
香港 アジア有数のアパレル販売会社。カジュアルウエア、アクセサリーなどの販売を主力としており、「Giordano」(ジョルダーノ)のブランド名で知られる。香港に本社を置き、香港・マカオ、本土、台湾、シンガポールなど大中華圏(グレーター・チャイナ)のほか、東アジア、東南アジア、中東などで事業展開。日本では関西地方に店舗を設けている。
中国石化儀征化繊 01033 13,225 386 23,694
香港 江蘇省に本拠を置く化学繊維メーカー。主力のポリエステルは国内最大、世界でも有数の生産量を誇る。ポリエステルの主要原材料である高純度テレフタル酸(PTA)なども生産していることが特徴。親会社は国内最大手の石油化学企業である中央政府系の中国石油化工(00386)。
安踏体育用品 02020 5,875 1,251 33,111
香港 民営の大手スポーツ用品メーカー。主力は「安踏」(ANTA)ブランドのスポーツシューズ・ウエアなどで、福建省にある生産拠点から全国規模の卸小売ネットワークを通じて製品を販売。国際ブランド「FILA」の中国における事業も買収している。イメージキャラクターとして有名スポーツ選手を起用するほか、中国オリンピック委員会とパートナーシップ協定を交わすなど、広告宣伝活動を強化している。
李寧 02331 8,387 945 27,934
香港 スポーツ用品のリーディングカンパニー。「李寧」(LI-NING)ブランドで知られ、ロサンゼルス五輪の体操金メダリストである李寧・主席が創業した。同氏は北京五輪でも最終聖火ランナーを務めた有名人物。本土で同ブランドの販売店を直営やフランチャイズで展開しており、主力商品はシューズ、ウエアなど。フランスの著名ブランド「AIGLE」をはじめ、複数ブランドの製品も販売している。
魏橋紡織 02698 14,333 892 5,769
香港 山東省の大型民営企業。綿紡績、生機(=きばた。染色加工前の織物)、デニムなどの生産販売を主力とし、綿紡績では国内最大のシェアを誇る。国内外の大手を含め取引先は非常に多い。主要取引先である伊藤忠商事とは複数の合弁会社を展開している。
波司登 03998 4,275 748 14,223
香港 ダウンジャケットなど羽毛服の本土最大手。研究開発、デザイン、原材料の仕入れ、販売までを一貫して手がける。OEMや男性物アパレル事業も展開。同社製品は「波司登」などのブランド名で知られる。実質筆頭株主は創業者の高徳康・董事長。
オルドスカシミア 900936 8,117 393 10,959
上海 内蒙古オルドス市の大型民営企業。世界最大級のカシミアメーカーとして知られ、「鄂爾多斯」(オルドス)や「1436」ブランドのアパレル製品を販売。欧米、日本などにも輸出している。その一方で経営の多角化を図り、金属生産、石炭生産、発電事業、上下水道事業などにも従事。カシミアや金属生産などの分野で、三井物産と提携している。

売上高・純利益は思捷環球控股(00330)が09年6月本決算、波司登(03998)が09年3月本決算。このほかはすべて09年12月本決算となっている。換算レートは1香港ドル:0.881元。

時価総額は10年5月28日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.802香港ドル。

注目されるトピックス ~一定の成長余地が見込める内需、一方の外需には不透明感も~

振興策を手がかりに構造的な問題は改善方向へ:

昨年発表された同業界に対する振興策では11年末までに、◇工業生産(付加価値ベース)の年率10%成長、◇ハイテク技術・設備の比率を5割に高める、◇230万トン相当の化学繊維の生産設備淘汰、◇主要企業100社の育成、◇自主ブランドの輸出割合を2割に高める――といった目標が掲げられている。これらが達成されれば、業界の構造的問題の改善はさらに進み、上場企業をはじめとする大手の競争力は高まろう。

生産・販売ともに重要性を増す内陸部:

中央政府は11年までに中西部の生産割合を2割にまで高める計画。沿海部を中心に給与水準が高まり、従来の生産体制に懸念が示されるなか、生産拠点の内陸部への移転を進めている。これは成長余地が大きい内陸部の市場を開拓する意図もある。輸出依存度の高い同業界にとって、内需の拡大は安定的な成長にとって不可欠であり、その中心は内陸部であろう。

輸出は外部要因次第:

懸案の輸出については、主要輸出先の欧州で景気後退の懸念が高まるなど、不透明感は拭いきれない。さらに人民元の先高感が強まるなか、元高は輸出にマイナスに働く。各国との通商問題の動向も意識せざるを得ず、輸出は外部要因次第という面が大きい。

世界化学繊維生産シェア(09年、%)
中国の10大アパレルブランド(10年版)

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