中国株 業界レポート

医薬関連業界 ~医療制度改革が追い風に

2010年7月1日

市場動向 ~世界有数の市場に成長~

09年の業界規模:

医療支出総額:1兆6119億元(前年比10.9%増)、医薬品・機器・設備の販売高:9916億元(前年比21.4%増)

世界最大の人口大国である中国は元々、医薬関連業界の市場規模が大きい上に、30年以上、一貫してGDPを大幅に上回る成長率を維持している。新型インフルエンザの蔓延に見舞われた09年は政府による医療制度改革などを背景に、全国の医療支出総額は前年に比べ10.9%増加。業界全体の販売高も、1兆元に迫る規模まで拡大した。長年の課題である医療制度の整備が徐々にではあるが進んでおり、高齢化、健康志向、生活習慣病の増加など複数の要因も重なった。政府は09年から3年にわたり計8500億元という巨費を投じて、保険制度の拡充などを柱とした医療制度改革を推進。これを受け業界の成長は10年も続くとみられ、国内の医薬市場は11年に日本に次ぐ世界3位に、医療機器・設備も数年内に日本を抜いて世界2位の規模に成長すると予想されている。

業界の特徴 ~ディフェンシブな内需型セクター、規制色も強い~

生産・販売面:

医薬関連は概ねディフェンシブの内需型セクター。製薬をはじめ、医薬品の卸・小売り、医療機器・設備の製造販売、関連サービスなど複数のサブセクターに分けられる。中心となる製薬は大きく西洋、漢方薬に分けられ、多くの企業が厳しい競争を繰り広げる。輸出品の大半は低付加価値品である原料薬に甘んじているほか、自主開発力に乏しいため製品は概ねジェネリック医薬品に限られる。医薬品は市販薬として卸・小売り業者を通じて消費者に届けられる。このほか、日本と同様に病院を通じて処方薬として販売されるが、日本のような医師・薬剤師の分業は進んでいない。

国際面:

中国の医薬品貿易の主力は漢方薬であり、09年の輸出高は14.6億米ドルに上った。ただ製剤能力は足りず、漢方製剤では貿易赤字となっている。主要な外資企業は大半が進出しており、高付加価値市場では圧倒的な市場シェアを握っている。

政策面:

人々の健康を担う重要産業であるだけに、政府の規制は厳しい。09年から始まった国家基本薬品制度に採用された医薬品は保険の対象になり、製薬会社にとって自社製品が選ばれることが重要となる。ただ、基本薬品は市場で流通する医薬品のすべてをカバーしているわけではなく、医療費高騰の一因にもなっている。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~政府系・民営など多くの企業が事業を展開~

政府系、民営を含め多くの企業が存在しており、集約度は低く、世界上位に名を連ねる企業はない。08年の税引き前利益ベースで製薬会社をみると、地元政府系の上海医薬集団、広州医薬集団、天津市医薬集団の3社と、中央政府系の中国医薬集団が10億元を越えている。取扱い銘柄をみると、漢方薬に強い北京同仁堂科技(08069)、広州薬業(00874)、原薬を主力とする山東新華製薬(00719)などの規模が大きいほか、中国生物製薬(01177)、麗珠医薬(200513)などの民営企業も健闘。一方、卸売りでは国薬控股(01099)が一致薬業(200028)を傘下に置き、業界トップクラスのシェアを誇る。医療機器・設備では山東威高集団医用高分子製品(08199)、関連サービスでは臍帯血バンクを経営する金衛医療(00801)などの民営企業が挙げられる。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
山東新華製薬 00719 2,295 100 3,059
香港 山東省の地元政府系の製薬会社。原薬、製剤、化学工業製品などの開発・製造販売を手がけている。主力は原薬で、国内では「新華」ブランドとして知られているほか、欧米にも輸出している。
金衛医療 00801 439 50 2,707
香港 北京市を本拠に本土で医療関連事業を展開する民営企業。医療設備の開発・製造・販売、病院管理サービス、漢方薬の研究・開発・販売など幅広く事業を手がける。医療設備事業は、自己血回収装置などが主力。臍帯血関連は、担当企業が米国での上場に成功。このほか英国とアイルランドで漢方薬の店舗をチェーン経営している。
広州薬業 00874 3,802 215 8,340
香港 広州市を本拠とする地元政府系の漢方薬大手。主力製品は糖尿病、末梢循環不全、熱や目の痛み、下痢止め、咳止めなどに効果がある。小売事業も手がけており、漢方薬の「采芝林」、西洋薬の「健民」をチェーン経営。このほか清涼作用のある「王老吉涼茶」を製造・販売しており、同飲料は本土で夏場を中心に多くの人に飲まれている。
中国製薬 01093 6,195 855 7,107
香港 河北省を地盤とする製薬会社。内モンゴル自治区や河北省石家荘市に生産拠点を設けており、ビタミンC・ペニシリンなどの原薬や、医薬品(ブチルフタリド)を主力製品としている。輸出比率も高い。大手IT企業である聯想控股有限公司が実質支配者となっている。
国薬控股 01099 47,046 846 65,446
香港 医薬品卸売で国内トップのシェアを誇る半官半民の企業。中央政府系の中国医薬集団総公司が実質筆頭株主となっているほか、民営系コングロマリットの復星国際(00656)も大株主に名を連ねている。国内外の製薬会社の製品を病院や卸小売業者に販売しているほか、本土の主要都市で小売事業も展開。このほか一致薬業、国薬集団薬業股フン有限公司を傘下に置いており、製薬事業も手がけている。
中国生物製薬 01177 2,858 350 14,697
香港 本土で漢方医薬品、西洋医薬品の生産・販売を行う民営企業。主力製品は肝臓疾患薬、心臓・脳血管薬、抗がん剤、鎮痛剤など。合弁会社は厚生労働省の外国製造業者に対する医薬品GMP適合性調査をクリアしており、日本の製薬会社が開発・販売する無菌製剤の生産を受託し、日本に輸出することができる。
北京同仁堂科技 01666 1,308 173 2,983
香港 国内外で著名な「北京同仁堂」が上海上場の北京同仁堂股フン有限公司を通じて支配している漢方薬メーカー。「北京同仁堂」は漢方薬の老舗で、1669年に創業。雍正帝の時代に宮廷御用達となった。顆粒剤、丸薬、錠剤、カプセル剤などの製品に特化。海外販売も強化しており、マレーシア、カナダ、マカオ、インドネシアにも小売店を設けている。
山東威高集団医用高分子製品 08199 1,878 634 38,531
香港 山東省を本拠とする大手の民営医療機器メーカー。米国医療機器メーカーのメドトロニック社も資本参加している。同社製品は「潔瑞」ブランドで有名であり、主力は使い捨ての点滴・輸血器具、整形器具、血液透析設備、心臓ステントなど。病院、血液センター、卸売会社などに販売するほか、海外にも輸出。本土での人工透析器の生産について、日本の日機装と合弁会社を設立する計画を明らかにしている。
一致薬業 200028 10,950 193 8,898
深セン 広東省深セン市を本拠とする医薬品会社。薬品の研究開発・生産、薬品・健康品・医療器械の卸売りなどを手がける。卸売りが売上の大部分を占めており、積極的に南部での事業拡大に努めている。筆頭株主の国薬控股は中央政府系の大型製薬会社と民営のコングロマリットなどが出資している半官半民の企業。
麗珠医薬 200513 2,596 482 10,049
深セン 広東省珠海市を拠点に医薬品の研究開発から生産、販売までを手掛ける総合医薬品メーカー。上海上場の民営企業「健康元薬業集団股フン有限公司」が実質筆頭株主となっている。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療薬、整腸薬、ヘルペス治療薬などが主力。医薬品の大半は「麗珠」のブランドで販売しており、国家商標総局の「著名商標」に認定、国内での信頼性と知名度は高い。

売上高・純利益は金衛医療(00801)が09年3月本決算。このほかはすべて09年12月本決算。 単位は百万元。換算レートは1香港ドル:0.881元。

時価総額は10年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。

注目されるトピックス ~“看病難、看病貴”の解決へ、医療制度改革が追い風に~

“看病難、看病貴”という構造的な問題の解決:

中国は“看病難、看病貴”(診療機会の難しさ、医療費の高さ)という構造的な問題を抱えている。優秀な医師は不足している上に大都市部に集中。都市部と農村部の医療インフラの格差は大きい。さらに過度な市場競争を背景に医療費の高騰も深刻化。こうしたなか医療保障制度が未整備のため、多くの人々にとって、病気になる経済的リスクは非常に高い。これらの問題が解決されれば、医療へのアクセスがより容易になり、医薬関連業界の発展につながる。

医療制度改革の進展:

当局は問題解決のために中長期的な医療制度改革を進めており、①国民皆保険の実現、②薬価制度の改革、③基層診療体制の確立、④公衆衛生の促進、⑤公立病院改革――の5項目が柱。これら改革が構造的な問題の解決につながれば、都市部低所得者層、農民層の医療支出は大きく増えると考えられ、中・低付加価値分野を得意とし、内陸部での事業展開が得意な中国企業は、大手を中心に成長余地がさらに広がろう。

医療需要の高度化、多様化も

SARS、食品の安全問題、新型インフルエンザなどを経験した市民にとって、医療・健康への関心は増している。さらに成人病をはじめとする生活習慣病の割合が増え、高齢化も進展していることから、都市部を中心に医療ニーズの高度化、多様化の傾向もみられる。このため製薬会社にとって技術力・規模の拡大が益々重要になるほか、医療関連のサービス需要も高まろう。

中国の制約会社の税引き前利益ランキング(08年)
中国の医薬品流通業の販売規模ランキング(08年)
09年販売高の内訳

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