中国株 業界レポート

IT・ソフトウエア業界 ~厳しい競争を繰り広げる成長市場

2010年7月1日

市場動向 ~引き続き成長トレンドは維持へ~

09年の業界規模:

売上高:9513億元(前年比25.6%増)、ソフトウエア輸出高:185億米ドル(14.0%増)、ネット普及率:28.9%

09年の中国IT業界は金融危機の影響などで成長率は鈍化したものの、8月から需要が回復に向かったことで成長トレンドは維持し、IT・ソフトウエア産業の売上高は前年比25.6%増の9513億元と1兆元に迫る規模に達した。日本向けなど外需は増加ペースに急ブレーキがかかったほか、国内の競争も激化し、中小企業などを中心に全体の収益率は悪化。だが、政策支援などを背景に、3G(第三世代移動通信)をはじめとした企業のシステム投資、家電販売などが徐々に活発となり、通年での国内需要は引き続き堅調だった。国内市場はソフトウエアの普及率・飽和度が国際的にも低く、成長余地は依然として大きい。今後は金融、通信などの分野で事業拡大にともなうIT需要の増加が見込まれる。多くの業界でIT化が加速する可能性もあり、電力業界での「スマートグリッド」(次世代送電システム)をはじめ、交通、医療なども成長分野。このほか外需も回復の兆しをみせており、10年のIT業界は引き続き成長トレンドを維持できると思われる。

業界の特徴 ~多くの企業が成長市場で厳しい競争を繰り広げる~

生産・販売面:

IT業界は民営・中小が大半を占め、3万社以上の企業が成長市場で激しい競争を繰り広げている。主にソフトウエア販売、システムインテグレーション(SI)、技術サービス、組み込み式システム・ソフトウエアなどに分けられ、売上高全体に占める割合はそれぞれ35%、23%、22%、18%。多額の設備投資の必要性が小さく、成長性も高い反面、安定的な資金調達力、優秀な人材の確保などが課題。さらに製品・サービスは技術革新が速い上に他社に真似されやすく、違法コピーも氾濫しており、業界の新陳代謝は速い。東部での売上高が全体の8割以上を占めており、中部、西部はまだ小さい。これはインターネットの普及程度と重なる部分が多い。ユーザーは都市部若年層が中心で、30歳以下が全体の6割を占める。

国際面:

中国企業は人材・コスト競争力などを武器に、日本をはじめとした海外企業からアウトソーシングの契約を受注するなど海外事業には積極的であり、規模も大きい。一方、外資の進出は進んでいるものの、規制の壁がその前に大きく立ちはだかっている。

政策面:

IT業界は特にネットメディアの分野で政府の規制が強く、ニュースサイトなどは外資による投資の禁止分野。このため、登記上では外国企業となる一部の地場系上場IT企業(騰訊控股(00700)、阿里巴巴(01688))などは、契約を交わすことで経営実体を支配下に置いている(CCF方式)。一方、当局は国内IT産業の発展に積極的。09年に発表された電子情報産業の振興策では向こう3年以内にソフトウエア・情報サービスの同業界内での売上比率を12%から15%に高めるという。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~主要プレイヤーは民営企業~

IT業界は民営・新興企業が多く成長性は高いものの、企業規模は概ね小さく、業界大手でも上位100社の合計売上高は2000億元強と全体の2割強に過ぎない。企業は沿海部に集中しており、大学発などのベンチャーも少なくない。多くの企業が本土創業板、香港GEM市場など新興企業向け市場に上場している。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手の騰訊控股、企業間電子取引(BtoB)最大手の阿里巴巴の両社は、国内外でも有名。ソフトウエアでは、業務用で金蝶国際(00268)、ゲーム用などで金山軟件(03888)が大きなシェアを持つ。このほか主要企業として、日本向けソフトウエア受託開発の大手である中訊軟件(00299)、北京大学系の方正控股(00418)とその傘下の方正数碼(00618)などがある。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
金蝶国際 00268 997 212 6,202
香港 深セン市を本拠とする民営のソフトウエア企業。「金蝶」を主力ブランドとし、中小企業向けの統合型(業務横断型)ソフトウエア(ERP)で国内最大のシェアを誇る。オンライン管理・電子商取引のサービスなども提供。米IBMと戦略提携している。
中訊軟件 00299 559 91 1,263
香港 日本での仕事経験を持つ創業者が設立したソフトウエアの受託開発企業。日本向けが業務の大半を占め、銀行、証券、電子商取引など幅広い分野を手がける。北京、上海、大連などに開発拠点を開設。日本に現地法人を設けている。 
方正控股 00418 1,685 20 526
香港 北京大学系の大手IT企業。主力事業はソフトウエア開発やSIなど。主力事業は印刷出版、電子出版などのメディア系、銀行、証券、保険、電子政府などの非メディア系に区分される。傘下に香港上場の方正数碼などを置き、ヒューレット・パッカード、華為3COM、アップルコンピュータなどの製品を販売している。
中国民航信息網路 00696 2,620 776 12,485
香港 政府系のITソリューションサプライヤー大手。空港旅客システム関連では国内で圧倒的なシェアを誇る。主力は航空券の予約販売サービスのプラットフォームとなる電子旅行販売システム、搭乗手続き・搭乗・預荷物管理などのAPP(空港旅行者処理)システム、電子航空券、データネットワークなど。本土の大手航空3社が支配している。
騰訊控股 00700 12,440 5,156 237,270
香港 「QQ」ブランドのインスタントメッセンジャー(IM)コミュニティーを運営する民営の大手IT企業。IMでの高いシェアを通じて、インターネット・携帯電話向け付加価値サービスなどを手がける。情報コンテンツ、オンラインゲーム、メール等の多彩なサービスを提供。南アフリカのナスパーズ、創業者の馬化騰・主席が大株主。
神州数碼 00861 37,290 565 13,188
香港 本土のIT大手「聯想控股有限公司」の系列に属する中核企業。中小企業向けを中心に、各種IT製品を販売。SIやアプリケーションソフトウエア開発などのサービスなども提供しており、主力事業の多くは本土で高いシェアを誇る。ジャスダック上場の(株)SJIを傘下に置いている。
阿里巴巴 01688 3,875 1,013 83,028
香港 浙江省杭州市を本拠とする民営企業で、企業間電子商取引の最大手。親会社には創業者の馬雲主席などのほか、ヤフーとソフトバンクが出資。このほか親会社が運営するネットショッピングサイト「淘宝網」は、同分野で高いシェアを誇る。
金山軟件 03888 1,022 387 4,653
香港 民営の大手ソフトウエア開発会社。ゲーム、アプリケーションソフトウエアなどが主力。本土の顧客が中心だが、台湾や東南アジア向けにもゲームソフトを販売。マルチプレイヤーオンラインロールプレイングゲーム「MMORPG」シリーズが有名。アプリケーションではセキュリティソフト「金山毒覇」、辞書ソフト「金山詞覇」が主力。
上海宝信ソフト 900926 2,273 202 6,855
上海 鉄鋼、都市交通、電力、医療などの分野でITソリューションを提供する企業。本土の鉄鋼最大手である宝鋼集団の傘下にある。ソフトウエア開発、SIなどを手がける。東京に日本宝信株式会社を設立するなど、日本での事業に注力している。 

売上高・純利益は神州数碼(00861)が09年3月本決算。このほかはすべて09年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル:0.881元。

時価総額は10年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル:7.777香港ドル。

注目されるトピックス ~IT化の推進、3G普及、内陸部など新たな成長余地は大きい~

業界再編、海外への積極進出が進む可能性も:

国内での過当競争から抜け出すために、大手を中心に買収・合併がより一層進む可能性が高い。昨年は阿里巴巴が企業向けASP企業を買収した。さらに昨年本土で創業板が開設され、IT企業にとって上場・買収などの環境が改善。業界再編の機運も高い。このほか海外市場への積極進出も増えており、騰訊控股はロシアの大手IT企業の買収計画を発表している。

IT強国に向けた政策的支援:

当局はIT産業の発展を重視し、様々な振興策を打ち出している。特に「核高基」(中核的な役割を担う電子デバイス、ハイエンド汎用チップ、基盤ソフトウエア)は重要プロジェクトに位置づけられており、今後15年間にわたり毎年40億元もの資金が投じられる見込み。

新たな成長分野の芽は多い:

中国は各業界でさらなるIT化が求められているほか、3Gの本格普及などIT業界にとって新たな成長分野の芽は着実に増えている。例えば3G普及はシステム投資に加え、各種の付加価値サービスの発展などが期待される。さらに、普及率が依然として低い農村・内陸部という未開拓の市場もある。中国でも携帯電話が主要なネット接続手段に育ってきており、携帯自体は農村でも普及が進んでいる。このような成長分野をいかに取り込めるかが、今後のカギとなろう。

IT業界の地域別売上高、上位10省・直轄市(09年)
中国のインターネット普及率(09年)

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