中国株 業界レポート

銀行業界~金融緩和から徐々に引き締めへ転換に

2010年7月1日

市場動向 ~09年は貸出が急増、徐々に金融緩和から引き締めに~

09年の業界規模:

総資産:78.8兆元(前年比26.3%増)、貸出残高:42.6兆元(33.0%増)、不良債権比率:1.58%(0.84ポイント減)

世界金融危機にもかかわらず、中国の銀行業界は09年に貸出残高が10.5兆元も増加し、年末時点の残高は前年末比33.0%増の42.6兆元と大きく膨らんだ。当局の「積極的な財政政策」を背景に、政府向けプロジェクトなどを中心に貸出が拡大。さらに「適度に緩和された金融政策」を通じて通年のマネーサプライM2の伸び率が27.7%に達するなど、豊富な流動性を支えに、全体的に好業績を記録した。ただ、急激な貸出増加はバブル、不良債権リスクを高め、当局は預金準備率引き上げに踏み切るなど、徐々に金融引き締めへと舵を切り始めている。10年は貸出ペースが落ちるとみられるものの、景気回復を背景に資金需要は活発と考えられ、堅調な業績が期待される。

業界の特徴 ~規制色の強いセクター~

主力事業面:

銀行は経済の中核を占める重要セクター。市場のメインプレイヤーは四大国有商業銀行。資金調達面では中国の貯蓄率は高く、大量の預金を集めることができるほか、インターバンク市場からも調達している。運用面では、国有企業向けの貸出比率が高い。個人向けではマンションブームを追い風に住宅ローンが伸びている。好景気の局面では無尽蔵な貸出に走る傾向が強く、将来の不良債権化のリスクもある。金利は規制されており、銀行は常に一定の利ザヤが保証されている。

国際面:

世界の大手銀行はほとんどが進出済み。人民元業務の開放にともない、外資の進出は拡大しているものの、多くは沿海部に限られており、中国全体での市場シェアは小さい。一方、地場系の大手銀行も有力外資を戦略投資家として受け入れ、先進的な金融ノウハウの吸収に努めているほか、積極的に海外支店の設立、買収なども仕掛けている。

政策面:

規制色が非常に強い業界。預金、貸出ともに基準金利が設定されているほか、中央銀行に開設した預金口座の残高を一定の比率以上に保つ必要がある。中央銀行にとって、基準金利の上げ下げ(利上げ・利下げ)、比率(預金準備率)の調整は金融政策の主要ツールで銀行の業績、株価に大きな影響を与える。このほか直接的な貸出抑制の指示など、行政指導という手段も多い。健全性確保のために、銀行の規模ごとに自己資本比率の下限を設定するなど、当局の監視の目は厳しい。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~四大国有商業銀行を中心とする大手が中心~

銀行株は時価総額に占める比重が大きいため、相場全体への影響度が大きい。資産規模で上位は四大国有商業銀行が占める。最大手は中国工商銀行(01398)。これに中国建設銀行(00939)、中国銀行(03988)、そして上場間近とされる中国農業銀行が続いている。交通銀行(03328)を加えた5行は規模の面で他を引き離している。二番手には全国展開する株式制商業銀行が続いており、上海浦東発展銀行、中信銀行(00998)、招商銀行(03968)、中国民生銀行(01988)、興業銀行などがある。外資では匯豊控股(00005)とその傘下である恒生銀行(00011)のほか、東亜銀行(00023)といった香港系銀行が積極的に本土へ進出している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
匯豊控股 00005 537,128 39,852 1,318,477
香港 世界屈指の総合金融グループ。ロンドンに本部を置き、事業エリアは世界中に及ぶ。設立母体である傘下の香港上海匯豊銀行有限公司(HSBC銀行)は香港ドルの発券銀行であり、恒生銀行(00011)を傘下に置く。本土事業にも積極的。大手銀行の交通銀行(03328)、興業銀行、大手保険会社の平安保険(02318)などの大株主となっている。
恒生銀行 00011 28,921 11,652 201,699
香港 香港の大手銀行で、リテール分野に強みを持つ。匯豊控股(00005)の支配下にあり、リテールバンキング、商業銀行、法人・金融機関向け業務などを展開。ハンセン指数シリーズを発表する恒指服務有限公司(HSIサービシーズ)を傘下に置いていることでも有名。本土では現地法人を設置し、北京、上海、広東省広州市など主要都市に拠点を設けている。
東亜銀行 00023 8,979 2,261 58,615
香港 香港最大の地場銀行。香港、グレーターチャイナ(大中華圏)、米国、カナダ、英国などに拠点を設けている。リテールバンキング、コーポレートバンキング、資産運用、投資銀行業務などを展開。このほか保険事業も手がけている。本土では現地法人を設置し、個人や法人向けの人民元業務と外国為替業務を幅広く展開している。
工銀亜洲 00349 3,693 2,226 28,147
香港 中国工商銀行(01398)の香港子会社。2000年に、正式に同銀行グループの一員となった。同銀行から香港支店のコーポレートバンキング業務の注入を受け、顧客基盤を拡大。さらに華比富通銀行(フォルティス銀行系)のリテール・コマーシャルバンキングを買収したほか、華商銀行を買収するなど、人民元業務を重点的に推進している。
中国建設銀行 00939 269,314 106,756 1,556,125
香港 国内第2位の商業銀行。四大国有商業銀行の中では最初に上場した。主な業務はコーポレートバンキング、リテールバンキング、資金運用業務などとなり、特に住宅ローンやインフラ建設向け融資などで、大きなシェアを占める。本土に広大な支店網を持つほか、香港、ニューヨーク、東京など海外の主要都市に拠点を置く。米銀大手のバンクオブアメリカを戦略投資家として迎えている。
中信銀行 00998 40,983 14,319 238,022
香港 全国展開している株式制商業銀行。国有系のコングロマリットである中国中信集団公司(CITIC)の傘下にある。スペインの大手銀行も大株主。改革開放後に設立された全国規模の銀行としては第1号。法人顧客とアッパーミドルのリテール顧客の開拓に注力しており、経済発展が著しい東部沿海地区を中心にネットワークを広げている。
中国工商銀行 01398 309,411 128,645 1,714,726
香港 四大国有商業銀行の一角を占める、国内最大の商業銀行。金融機関で世界トップクラスの時価総額を誇り、国内に広大な支店網・顧客基盤を持つ。本土のほか、欧米やアジア各地などで幅広い金融サービスを提供するほか、クレジットカードの発行数でも高いシェアを持つ。ゴールドマン・サックスなどが戦略投資家として出資している。
中国民生銀行 01988 32,240 12,104 164,911
香港 民営企業が中心となって設立した株式制商業銀行。北京市に本店を置き、全国規模で事業を展開。主力は本土企業向けのコーポレートバンキング。リテールバンキングではアッパーミドル層からの預金受入などに積極的。このほかファイナンスリース会社や投資信託会社などを傘下に持つ。
中銀香港 02388 29,383 12.096 193,059
香港 中国銀行(03988)の香港子会社。傘下の中国銀行(香港)有限公司は香港ドルの発券銀行であり、香港で金融サービスを提供。地場系大手として人民元業務などで高いシェアを誇る。子会社を通じて本土各地にも支店を設けている。
交通銀行 03328 66,668 30,118 419,755
香港 上海市を本拠に全国規模で事業展開する大手の株式制商業銀行。財政部が筆頭株主となっているほか、世界的な金融グループである匯豊控股(00005)が戦略投資家として第2位株主に名を連ねている。法人、個人向けなどの各種金融サービスを提供しており、総合的な金融グループを目指している。ニューヨーク、東京など海外の主要都市にも進出。上海万国博覧会の公式スポンサーでもある。
招商銀行 03968 51,848 18,235 345,973
香港 広東省を本拠に全国規模で事業展開する大手の株式制商業銀行。珠江デルタ、長江デルタ、環渤海地区など、経済水準の高い地域を中心に事業展開している。富裕層向けのプライベートバンキング業務の拡大に積極的。海外では香港に分行(支店)を構えているほか、ニューヨークなどに進出している。国有系コングロマリットの招商局集団が大株主。
中国銀行 03988 232,616 81,068 1,031,545
香港 四大国有商業銀行の一角を占め、外国為替、国際業務などに強みを持つ国内第3位の銀行。本土各地に支店を設けているほか、海外にも広く事業を展開。中銀香港(02388)を通じて香港ドルの発券銀行である中国銀行(香港)有限公司を傘下に置くほか、マカオの分行(支店)は現地通貨のパタカを発行している。

売上高・純利益は09年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル:0.881元、1米ドル:6.831元。

時価総額は10年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。

注目されるトピックス ~金融引き締め、増資動向が最大の注目点~

銀行が増資に踏み切るか:

新BIS規制の適用開始に加え、貸出が急ピッチに増えていることから、中国の銀行は資本基盤の強化に迫られている。自己資本比率の向上に向け、銀行が大幅増資に踏み切る可能性はある。増資が完了すれば、財務基盤の安定につながる。ただ巨額の資金を市場から調達することになるため、株式需給の悪化は避けられない。

貸出残高増加額、マネーサプライの目標値:

中国政府は10年の貸出残高増加額の目標値を7.5兆元、マネーサプライM2の伸び率を17%前後に設定。当局は貸出増加のペースを抑える姿勢を鮮明にしている。銀行貸出の一部が違法なかたちで不動産や株式などに流入し、バブル懸念が高まっているからだ。当局は貸出抑制に向け、銀行への行政指導を強めている。

当局は利上げに踏み切るか:

金融危機を克服するために当局は金融緩和を継続してきた。ただ、景気回復の動きに加え、バブルの芽も出てきており、徐々に金融引き締めに方向転換する可能性が高い。引き締めの手段として預金準備率の引き上げ、売りオペによる資金吸収などがある。最も強い手段である利上げに当局が踏み切るかが注目される。

金融機関の貸出残高増加額とマネーサプライM2 消費者物価指数と金融政策

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