中国株 業界レポート

鉄鋼業界~世界の鉄鋼大国、構造的な課題の解決がカギ~

2010年7月1日

市場動向 ~世界の鉄鋼大国、消費増に加え再編進展で、安定的な成長期待~

09年の業界規模:

粗鋼生産量:5億6784万トン(前年比13.5%増)、大手・中型企業の売上高:2兆2478億元(同10.1%減)。

政府による4兆元の景気対策をはじめとする投資の拡大を背景に、09年の国内の鉄鋼生産、消費量はともに増加。粗鋼生産量は世界の半分近くを占め、過去最高の水準を更新した。さらに輸出、輸入の規模も大きく、中国は名実ともに「世界の鉄鋼大国」といえる。09年の国内市場は過剰気味の生産能力、競争激化などを背景に、販売価格は2割以上低下。鉄鉱石輸入も急増した。金融危機の影響により鋼材輸出量も前年比で5割以上も減少し、業界全体では減収減益となった。10年は海外経済の回復に伴い、鉄鋼の輸出も一定の回復が見込まれよう。国内の鉄鋼消費は工業化と都市化が進むことで今後さらなる拡大が期待でき、10年の鉄鋼消費量は6億トンに達する見込み。業界再編の推進を通じて過剰な生産能力という問題が緩和に向かえば、業界全体の収益性も高まり、大手を中心に安定的な成長が見込めよう。

業界の特徴 ~多くの企業が競争を繰り広げる業界、構造的な課題も~

生産・販売面:

中小を含め多くの鉄鋼メーカーが競争を繰り広げており、産業集積度は小さい。09年の大手メーカー(河北鋼鉄、宝山鋼鉄、武漢鋼鉄、鞍本鋼鉄、江蘇沙鋼の5大鉄鋼企業)の粗鋼生産量はわずか全国の29%。主な生産地は河北、江蘇、山東、遼寧省など。業界全体で生産設備の「過剰、小規模、老朽化」という構造的な問題を抱えており、価格競争、環境汚染にもつながりやすい。中国は遼寧省を中心に原材料である鉄鉱石資源を豊富に持つものの、国内需要を賄いきれず、海外の資源メジャーを通じて輸入。鉄鉱石の価格交渉は、電力、石炭などの価格動向とあわせ、製造原価に直結する。販売面では用途の半分以上を建設用が占め、これに機械、自動車などが続く。このため、固定資産投資、自動車販売などの動向が需要に一定の影響を与える。

国際面:

中国による鉄鉱石輸入、鋼材輸出の規模は大きく、国際市場に与える影響度も高い。輸出では特にアジア向けに強みを有している。一方、世界の主要鉄鋼メーカーは高付加価値品を中心に中国に輸出。さらに鉄鋼大手のメタジが湖南華菱に資本参加するなど、政府の規制緩和の方向を受け、直接投資にも積極的。

政策面:

政府は構造的な問題の解決、国際的な鉄鋼メーカーの育成などを目的に、マクロコントロールを強めており、新規プロジェクトの着工・推進、資金調達などを厳しく審査。さらに当局主導で業界再編を推し進めている。こうした再編を通じ、業界の集中度は一層の向上が図られ、コストの低下や収益力の向上、生産能力が立ち遅れている企業の淘汰が進む見通しである。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~大手の大半は国有系、規模も大きい~

業界大手の大半は国有系企業に限られ、生産高は世界でも屈指の規模。09年の生産高ベースでは河北鋼鉄が4020万トンで国内1位、世界2位。売上高ベースでは上海などを本拠とする宝山鋼鉄が最大手で、同社は中国最大級のメーカーである。国内上位には国有系、そして一部の民営企業が並んでいる。上場企業を見ると国有系が多く、北京を本拠とする首鋼総公司傘下の首長宝佳(00103)、首長国際(00697)、遼寧省の鞍本鋼鉄集団の傘下にある鞍鋼(00347)、本鋼板材(200761)、安徽省の馬鋼集団傘下の馬鞍山鋼鉄(00323)などが挙げられる。民営では中国東方集団(00581)が代表的な銘柄。一方、規制のため国内市場での外資の存在感は小さい。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
首長宝佳 00103 968 151 1,518
香港 ラジアルタイヤ用スチールコード生産を主力とする本土系企業。北京市を本拠とする国有系の鉄鋼大手「首鋼総公司」が首長国際(00697)を通じて支配している。ベルギーのベカルト社、香港の富豪として知られる李嘉誠氏も大株主。
馬鞍山鋼鉄 00323 50,412 392 29,561
香港 安徽省を本拠とする国有系の鉄鋼大手。主力製品は銑鉄、粗鋼、鋼材などで、鋼板コイル製品やH型鋼ではJIS(日本工業規格)の製品も製造するなど、高付加価値化に努めている。原料の鉄鉱石は大部分を海外から輸入。製品は主に本土で販売している。同社は歴史が古く、国産列車車輪の第一号を誕生させたことでも有名。
鞍鋼 00347 70,057 752 64,304
香港 国有系の大手総合鉄鋼メーカー。香港上場の鉄鋼メーカーでは最大級の経営規模を誇る。本鋼板材(200761)とは兄弟会社の関係。主要製品は熱延鋼板、冷延鋼板、めっき鋼板など幅広く、国内最大規模の鉄鋼輸出企業でもある。鉄鉱石の一大産地である遼寧省を本拠としていることが強み。独ティッセンクルップや三井物産との合弁事業も展開する。
中国東方集団 00581 20,589 884 6,328
香港 民営の鋼材メーカー。事業の大部分を本土で展開しており、主力製品のビレット、帯鋼では大手の一角を占める。鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルが2位株主となっている。
首長国際 00697 10,006 63 9,974
香港 国有系の鉄鋼メーカー。鉄鋼大手「首鋼総公司」の傘下にある。鋼材製品の製造・販売事業を展開するほか、首長宝佳(00103)を通じてラジアルタイヤ用スチールコードなども製造。さらに原材料供給の確保にも努めており、コークス生産の福山国際(00639)、鉱山経営のオーストラリア上場企業にも出資している。
重慶鋼鉄 01053 10,634 85 6,436
香港 地方政府系の鉄鋼メーカー。本拠の重慶市で大きなシェアを持つ。同社製品は「三峰」などのブランド名で有名。主力製品は、中厚板、形鋼、線材、冷間圧延鋼板、ビレット、副製品など。原材料の仕入先と製品の販売先に筆頭株主も含まれており、継続的な関連当事者取引がある。
中国冶金科工 01618 165,018 4,465 84,477
香港 国有系の大手プラント会社。製鉄所のEPC(設計、調達、施工)などを主力とし、中大手の鉄鋼メーカーの生産施設などを建設している。金属資源の開発事業も展開。海外を中心に鉄鉱石などの採掘権益を保有するほか、精錬も手がける。金属生産設備や鋼構造の製造も生産。
本鋼板材 200761 35,598 ▲1,545 17,233
深セン 遼寧省本渓市の政府系鉄鋼メーカー。粗鋼、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板、特殊鋼、連続鋳造ビレットの生産販売などを手がけている。鞍鋼(00347)とは兄弟会社の関係であり、ともに鉄鉱石の産地である遼寧省を本拠とし、東北地方で高いシェアを持つことが強み。

売上高・純利益は09年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル:0.881元。

時価総額は10年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。

注目されるトピックス ~課題克服に向けた業界再編、鋼材価格の動向がキーポイント~

政府主導の業界再編策の行方:

産業集積度の低さ、過剰な生産能力は業界が抱える最重要の問題。当局は問題解決に向け大鉈を振るっており、05年に発表された「鉄鋼産業発展政策」では、鉄鋼上位10社の国内生産量のシェアを10年までに50%、20年までに70%に高めるという。09年には新たに小規模・老朽化した生産設備の淘汰目標を発表。生産量が一定規模以下の企業は経営継続を認めないとした。中小規模の鉄鋼企業の閉鎖、大手を中心とした再編の流れは今後一層強化されると見られる。

環境対策

中国政府は、11月にGDP単位あたりの二酸化炭素排出量を20年までに05年比で40~45%削減するという目標を打ち出しており、鉄鋼産業は二酸化炭素の削減に向け、激しい圧力にさらされている。

鉄鋼価格の動向

鉄鉱石価格は、海外資源メジャーとの鉄鋼石などの資源価格交渉に左右される。価格急騰は、鉄鋼セクターにとって最大の利益圧迫要因となるが、国内の鉄鋼需要が高まるなか、上昇圧力がかかっている。さらに原油・石炭などの原燃料価格、及び海運賃価格が大幅に上昇したことも鉄鋼製品のコスト上昇に。販売価格への転嫁は容易ではないものの、10年の鋼材価格は一定幅の上昇が見込まれる。

09年世界粗鋼生産量のシェア 中国の粗鋼生産量と鉄鉱石の輸入量

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