中国株 業界レポート

ガス業界~供給面のボトルネックも緩和に、今後の成長余地も大きい~

2010年7月1日

市場動向 ~天然ガス需要は拡大傾向、今後の成長余地も大きい~

09年の業界規模:

天然ガス見かけ消費量:874.5億立方メートル(前年比11.5%増)、生産量:830億立方メートル(同7.7%増)

中国の天然ガス需要が拡大している。09年の天然ガス見かけ消費量は874.5億立方メートルを記録し、前年比で11.5%の増加。国内で約830億立方メートル(同7.7%増)を生産したものの、これらの需要を満たすことはできず、純輸入国に転じており、同年の輸入量は76.9億立方メートル、前年比で65.8%も急増した。ガス供給業者は天然ガスを主な原材料とするLNG(液化天然ガス)に加え、石油原料のLPG(液化石油ガス)、石炭原料の石炭ガスなどをユーザ-に販売。エネルギーの効率・環境性、廉価な価格設定、ガスインフラの整備拡大などを背景にガスの普及率、消費量は伸びており、供給が追いつかない状況。ただ、天然ガス消費量のエネルギー全体に占める割合は3.8%に過ぎず、世界平均の20%台に比べはるかに低い。都市部での天然ガス普及率も全国平均で17%にとどまっている。このため、ガス、特に天然ガス業界の今後の成長余地は非常に大きい。

業界の特徴 ~供給面のボトルネックが緩和の方向、成長も加速へ~

生産・販売面:

公益セクターであるガス業界はディフェンシブ色の強い業界。川上のガス田探査・開発、ガス生産は国有系の3大メジャーの寡占状態となっており、国内外で資源開発を強化している。川下のガス供給は集約度が低く、主に各地域のガス会社が担当。パイプラインを通じて都市ガス(LNGとほぼ同義)を提供するほか、LPGの販売、CNG(圧縮天然ガス)ステーションの経営などを手がける。暖房用需要が多く、冬季の気候状況などがガス販売量に影響する。一方、都市ガスの供給ではパイプラインなどインフラ整備が不可欠であり、設備投資の負担は重い。

収益面:

ガス供給業者の収益源はガス、ガス関連器具の販売収入、ガス管敷設料収入など。ただ、ガス料金は地方政府の決定事項であり、公共性を考慮して低く抑えられている。このため採算性は高くない。一方で安価な価格設定が、都市部での天然ガス普及率の押し上げに貢献している。普及余地が大きいなか、都市部の住宅不動産の建設が速いペースで伸びているため、ガス管敷設が当面、ガス供給会社の主要な収益源である。

国際面:

川上のガス資源開発では、国有大手を中心に海外での権益確保の動きを強めている。中央アジア・中国間の天然ガスパイプライン、国内での「西気東輸」(西部の天然ガスを東部に輸送)第2ルートの本格開通、及び沿海地域のLNGプロジェクト(LNG輸入基地など)の稼働などにより、中国は今後、本格的に天然ガス輸入の時代に入る。輸入規模も大幅に増える見込み。海外依存度は増すが、これまで供給が需要の拡大に追いついてこなかっただけに、供給面のボトルネック緩和の方向は業界全体の成長を加速させる可能性もある。

政策面:

販売価格が規制されるなど、当局の関与度は大きい。ただ石炭依存からの脱却をめざし、政府は天然ガスの利用促進に積極的である。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~川上は3大メジャーの独占、川下は民営、香港系企業の進出が目立つ~

川上である天然ガスの生産は、中国石油天然気(00857)、中国石油化工(00386)、中国海洋石油(00883)という国有系の3大メジャーの独壇場となっており、生産量全体の9割以上を占める。特に中国石油天然気は約7割を占める圧倒的なガリバー。一方、川下のガス供給分野は基本的に各地域の地元政府系企業が強い。ただ近年では全国展開する大手が育ってきており、民営、香港系企業の参入も目立っている。政府系では、国務院系の中国燃気(00384)、華潤燃気(01193)、地元政府系の鄭州燃気(03928)が挙げられる。香港・民営系企業としては、港華燃気(01083)、新奥燃気(02688)が代表格である。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
市場
売上高 純利益 時価総額
香港中華煤気 00003 10,882 4,559 138,619
香港 香港屈指の富豪である李兆基・主席が恒基地産(00012)などを通じて傘下に置く香港のガス会社。香港のガス市場をほぼ独占し、ガス供給、ガス管網の建設、ガス器具の販売などを手がける。子会社の港華燃気(01083)通じて、本土でのガス事業を加速させている。
中国燃気 00384 5,571 91 14,274
香港 本土の大手都市ガス会社。液化天然ガス(LNG)に加え、液化石油ガス(LPG)事業、CNG(圧縮天然ガス)車向けのガススタンド経営なども手がける。沿海地域にLNGの受入基地を設けている。国務院系の企業に加え、中国石油化工(00386)、インドガス公社、オマーンの国営石油会社など国内外の有力企業も出資している。都市ガス会社の中裕燃気(08070)に対してTOBを実施する計画。
中国石油化工 00386 1,315,915 61,760 777,853
香港 本土3大メジャーの一角を占める国有系の大手石油・天然ガス企業。油ガス田の探査・開発、原油、天然ガス、石油製品などの生産・販売、パイプラインの設置・運営など幅広い事業を展開する。ガス分野では川上のガス田開発、天然ガス供給などが主力で、各地の都市ガス業者に供給している。都市ガス大手の中国燃気(00384)に出資している。
中油燃気 00603 1,516 116 4,406
香港 民営の天然ガス事業者。中国石油天然気(00857)と提携するかたちで天然ガス事業を展開。都市ガス・液化天然ガス(LNG)の販売、天然ガススタンドの経営、ガス管網の設計・建設などを手がけている。
中国石油天然気 00857 1,019,275 103,387 2,173,931
香港 石油・天然ガス生産などで本土最大手の国有系企業。川上分野では圧倒的なシェアを誇る。油田、天然ガス田の探査、採掘のほか、燃料油や石油化学製品の製造・輸送・販売なども手がける。油ガス田探査・開発は四川盆地、オルドス盆地など国内のほか、中央アジア、中東など海外でも積極的に展開。輸送部門では原油、燃料油、天然ガスのパイプラインを建設している。
中国海洋石油 00883 105,195 29,486 603,034
香港 海底油田や海底ガス田の開発を強みとする国有系企業で、本土3大メジャーの一角を占める。原油や天然ガスの探査・開発・生産・販売を手がけ、中国近海、インドネシア、オーストラリア、ナイジェリアなどで事業展開する。このなかには日中間で争点となっているガス田も含まれる。海南島付近にある海底ガス田は、尿素やメタノールの原材料として、兄弟会社の中海石油化学(03983)に天然ガスを供給している。
港華燃気 01083 2,560 234 5,782
香港 香港中華煤気(00003)の傘下で本土でのガス事業を手がける企業。主力はガス管(導管)による天然ガスなどの販売、ガス管網の敷設、ガス器具の販売など。湖南省、江蘇省、四川省など各地で事業を展開する。本土系民営企業の百仕達控股(01168)、威華達控股(00622)も主要株主。
華潤燃気 01193 3,301 391 14,936
香港 本土で都市ガス事業を手がける国有系の投資持ち株会社。以前は半導体製造を手がけていたが、08年に矢継ぎ早に業態を転換。最終的に買収によりガス会社となった。四川省、浙江省、安徽省、江蘇省などの主要都市で、LNGやLPGなどの販売事業を展開している。事業拡大に積極的で鄭州燃気(03928)に対して買収提案を出している。
新奥燃気 02688 8,413 801 18,105
香港 民営のガス会社。ガスパイプラインの建設、住宅へのガス管接続・ガス販売、液化石油ガス(LPG)の販売、ガス器具の販売、ガススタンドの経営などを手がける。主に西北部と東部沿海部を結ぶパイプラインを利用し、北京市、山東省、安徽省など各地でガスを供給。07年には傘下企業が天然ガス、LPGなどの輸出入権を獲得した
鄭州燃気 03928 1,244 178 1,805
香港 河南省鄭州市の地元政府系のガス会社。ガス管による天然ガス供給、ガス器具(コンロ、給湯器など)や圧力調整器の販売、ガス管網の建設などを手がける。バスなど天然ガス自動車向けのガスステーションも経営している。

売上高・純利益は中国燃気(00384)が09年3月本決算、このほかは09年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル:0.881元。

時価総額は10年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。

注目されるトピックス ~M&A、価格、資源、供給源の確保などが注目ポイント~

スケールメリットが大きいため、M&Aによる業界の統合が進む余地も大きい:

都市ガスの供給企業にとって事業エリアの広さ、都市の規模が重要なポイントである。現在は中国燃気と新奥燃気が展開している都市数で強みを持ち、華潤燃気は各省の主要都市を幅広くカバーしている。スケールメリットが大きいため、近年は業界内のM&Aが活発化。大手都市燃料ガス供給業者の天然ガス販売シェアが既に05年の27%から08年に39%に大幅に高まり、今後もこの傾向が続くと考えられる。個別企業では、現時点で中国燃気が中裕燃気(08070)に、華潤燃気が鄭州燃気に買収提案を行っている。

天然ガスの価格引き上げ観測:

天然ガスの販売価格の動向も重要ポイント。需要が供給を上回っているにも関わらず、政府は国内価格を海外に比べかなり割安の水準に抑えている。海外からの輸入が増えるなか、採算性向上のためにも、業界内での価格引き上げへの期待は大きい。

ガス資源の確保、インフラ整備が需要に追いつくか:

寒波の影響で全国各地の天然ガス需給が逼迫し、大きな社会問題となるなど、供給不足の懸念は残る。このため増加する需要に見合うガス資源の確保、そして開発、インフラ整備などは最重要の事項となる。川上分野を担う3大メジャーを中心に資源権益を増やしているが、資金・開発リスクも高い。ロシア、中央アジアなど海外での資源開発を強化しているが、東シナ海のガス田問題などに見られるように、政治リスクもある。

ガス供給源の確保では国有企業がより有利:

川下分野でも、天然ガスの安定した調達力が業績を左右する。川上企業との提携関係が密な企業、大型国有系企業がより有利になるだろう。中国燃気は大株主の一つが中国石油化工であり、中国石油天然気との間も液化石油ガスの輸送及び販売面の提携で親密。また、華潤燃気の親会社は大手国有企業であり、優遇を受けやすいと考えられる。

天然ガスの生産・消費量 都市ガスユーザー数の推移(項目別)

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