中国株 業界レポート

不動産業界 ~バブルの懸念が高まる一方、実需も底堅い~

2011年5月31日

市場動向 ~産業支援一辺倒の政策からバブル抑制へと転換~

10年の業界規模:

商品不動産取引金額:5兆2500億元(前年比18.3%増)、商品不動産販売面積:10億4300万平方メートル(同10.1%増)

10年の不動産市場は取引金額の前年比伸び率が75.5%→18.3%、販売面積の伸び率が42.1%→10.1%と大きく減速した。 成長鈍化のなかで顕著だったのが不動産価格の高騰。当局は同年4 月から次々と引き締め策を打ち出したものの、販売価格は高止まりの状況が続いた。潤沢なマネーとインフレという環境下で、特に都市部で不動産の投機熱が拡大。これに呼応し、デベロッパーの開発意欲も高まると、投資額は前年比で3 割以上増加、4兆8267億元に達した。ただ、各企業をみてみると、厳しい引き締め策の影響で企業間の優劣の差が益々大きくなった格好。

価格高騰は大きな社会問題となっており、当局の引き締め姿勢は当分続こう。ただ、都市化にともない、不動産の実需は依然として強く、政府は日本の公営住宅のような低所得者向け住宅の整備を重点項目に掲げている。これまで“沿海部を舞台にした投機”が目立っていただけに、徐々に“内陸部を中心とした実需に基づく住宅供給”が成長の中心となろう。

業界の特徴 ~政策と景気サイクルなどに大きく連動する産業~

主力事業面:

政府の政策や景気サイクルに大きく左右されるセクター。不動産投資そのものはGDPの約1割に相当するが、鉄鋼などの素材産業や消費への波及効果を考慮すると、経済全体への影響力はかなり大きい。中長期的には人口の増加と、都市化の進展が業界需要の堅実な成長をもたらす要因。参入障壁は低く、多くの企業が競争を繰り広げる。開発から販売、資金回収までの期間が長いため、資金調達力、財務基盤の良し悪しが企業の競争力に直結。

国際面:

基本的にドメスティックな産業ではあるが、不動産は投資・投機の対象となりやすく、人民元の切り上げ期待などを背景に、値上り益を狙った海外マネーも流入しやすいセクターである。香港系をはじめとしたアジア企業が中国進出を積極化している。

政策面:

土地はすべて国有であり、使用権が売買される制度。当局にとってマクロ経済コントロールの最重要分野であり、使用権の払い下げ、開発認可、税金など様々な手段を通じて安定的な成長を目指す。このため、不動産バブルの抑制に向け、当局は全力を傾けている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~不動産ブームに乗り大手は業績を拡大~

業界は集中度が低く、全国展開している企業は政府系シンクタンクなどが発表する「中国不動産デベロッパー100強」に載るような大手に限られる。不動産価格の上昇を背景に、業界全体では業績拡大の傾向。ただ、投機抑制策の影響が現れ、競争力の弱い企業などでは成長鈍化、あるいは業績悪化のケースがみられた。住宅開発は民営大手、政府系企業が優位。商業用不動産では香港系企業も上位に食い込む。最大手は万科企業(200002)で、最新のランキングでも第1位に輝き、強力なブランド力を背景に10年は40%近い増益率を達成。同社も含め、広東省に地盤を置く企業の活躍が目立った。このなかで最も業績を拡大させた企業が恒大地産集団(03333)で、地方都市重視の戦略が奏功した。同社を含め、碧桂園控股(02007)、雅居楽地産(03383)、広州富力地産(02777)などの民営大手が好業績を記録した。このほか、上海市では世茂房地産(00813)、北京市ではSOHO中国(00410)などが有力な民営企業であり、増収増益の決算となった。一方、政府系では中国海外発展(00688)が最大手。華潤置地(01109)、北京首創置業(02868)なども代表格で、各社は不動産ブームの流れに乗り業績を拡大させた。このほか、香港財閥系のデベロッパーが存在感を放っている。香港で蓄積したノウハウを活かし、長江実業(00001)と恒隆地産(00101)の大手2 社はそろって好業績となった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
長江実業 00001 28,630 35.3 23,068 35.0 274,465
ハンセン 香港一の富豪と知られる李嘉誠・主席が率いる長江グループの中核企業。香港や海外で不動産開発・賃貸、ホテル・サービスアパートメント経営などを中心に事業展開している。主力市場は香港だが、本土の主要各都市でも高級物件を中心に事業展開している。高いブランド力に加え、香港系デベロッパーの代表格として積み重ねたノウハウなどが強み。
恒隆地産 00101 10,504 188.9 19,389 438.8 142,178
ハンセン 香港系の不動産デベロッパー大手。有力コングロマリットである恒隆集団(00010)の傘下にあり、香港や本土で不動産開発、賃貸事業を手がける。バブルが懸念される住宅プロジェクトへの依存度を減らす一方、購買力の上昇を見込んで中国各地でショッピングモールの建設を加速させている。
SOHO中国 00410 18,215 145.7 3,636 10.2 35,073
香港その他 北京市を中心にオフィス・商業・住宅開発のプロジェクトを展開する大手デベロッパー。経営の実権を握る創業者夫婦は業界での知名度が高く、影響力も大きいとされる。同社は買収をテコに、引き続き大都市でのオフィス・商業開発に注力する方針。この分野は当局による引き締めの対象外であり、政策リスクも低い。
中国海外発展 00688 38,605 18.7 10,779 65.7 127,001
ハンセン 本土不動産業界のリーディングカンパニー。国有系で、中国建築(601668)の傘下にある。環渤海地区、長江デルタ、珠江デルタ、四川省など、主要都市の中心部や都市近郊の好立地物件を中心に住宅開発を手掛けるため、不動産価格の下落に対して比較的強い抵抗力を持つことが強み。ミドル・ハイエンドクラスの物件に注力。
世茂房地産 00813 21,789 27.9 4,672 33.0 36,416
香港その他 許栄茂・主席が創業した新興の大手不動産会社。上海市の西側(浦西)のランドマークである超高層ビル「上海世茂国際広場」を保有・賃貸するなど、同市を代表するデベロッパーといえる。大都市での大規模分譲マンション、商業ビルの開発に強みを持つほか、上海市内で5つ星ホテルを経営している。
華潤置地 01109 22,415 54.5 5,250 40.0 73,380
ハンセン 国有系の大手不動産会社。建築・装飾を含めた総合的な住宅コンサルティングのサービスも提供している。北京市や上海市、四川省成都市などで住宅・商業物件を開発。複合型物件の開発に豊富なノウハウを有しており、今後はこれを内陸部・中小都市に拡大させていく方針。
碧桂園控股 02007 25,804 46.7 4,290 95.9 57,946
香港その他 広東省を本拠に不動産開発事業を展開する民営企業。大都市近郊などを中心に、「碧桂園」シリーズの住宅などを開発。中国北部や中部の主要都市にも進出する。同社は引き締め策の影響が比較的に少ない地方都市近郊での開発を得意としており、今後も実需に基づき着実な販売実績を積み上げるものと考えられる。
広州富力地産 02777 24,642 35.4 4,350 50.0 33,964
H株 広東省を本拠とする民営の不動産デベロッパー。北京市、天津市、陝西省西安市、重慶市などでも事業を展開。各地に「富力城」や「富力桃園」ブランドなどの物件を開発。住宅は中間所得層をターゲットとしている。10年は本拠とする広州市でのアジア大会開幕という流れにも乗り、業績を大幅に拡大させた。
恒大地産集団 03333 45,801 700.4 7,589 625.2 82,350
香港その他 急成長を遂げた民営の大手不動産会社。同社は実需に基づく住宅供給、中小都市での事業拡大を重視しているため、引き締め策の影響が小さく、反対に売り上げを大きく伸ばしている。早くから地方の中小都市に進出していたため、土地備蓄が豊富であることも強み。他社に先駆けて値下げに踏み切り、販売が急拡大するなど、戦略面での巧みさも目立つ。
雅居楽地産 03383 20,520 53.9 5,976 220.4 45,909
香港その他 広東省を本拠に不動産開発事業を展開する民営企業。高級物件を中心に「雅居楽花園」シリーズの住宅などを販売。広州市と海南省が主要な収益源である一方、中小都市での戦略的な土地備蓄を進めており、土地取得のコストも相対的に低いことが特徴。
万科企業 200002 50,714 3.7 7,283 36.7 103,494
深センB株 国内で最大手の住宅デベロッパー。長く業界トップの座を維持しており、企業表彰や企業ランキングの常連。同社の王石・董事長も業界を代表する人物として有名となっている。深セン市を本拠に、全国各地で事業を展開。10年には国内勢で初めて年間販売額を1000億元台に乗せた。
上海陸家嘴金融貿易区開発 900932 2,754 ▲26.3 1,192 1.3 28,580
上海B株 上海市にある国家開発区「陸家嘴金融貿易区」の開発を手がける国策会社。土地使用権の譲渡収入が売上高の多くを占めていることが特徴に挙げられる。同区は金融を含めた第三次産業の中心地。同産業の発展にともない開発区の付加価値がより一層高まれば、好業績に結びつく。

売上高・純利益は恒隆地産(00101)が10年6月本決算。残りはすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル=0.871元

時価総額は11年5月30日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル、換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

不動産(業種別一覧)

注目されるトピックス ~不動産の“実需”に注目~

不動産の“実需”注目、目玉は低所得者向け住宅:

中国はマンションの価格が高騰。都市部への人口流入で住宅需要が膨らむ一方、特に低価格の賃貸物件の供給が不足しているため、市民の不満が高まっている。このため、当局は低所得者向け住宅の建設を加速。15 年までに3600万戸の建設を目指すとしており、新たな市場が創出される。この例でも分かるとおり、当局は不動産の“投機”は抑えるものの、“実需”については積極的に支援していく考え。今後は市場の中心も中小都市、内陸部に移るとみられており、この変化に柔軟に対応できる企業が競争に勝ち抜こう。

不動産引き締めの動向が最大のリスク要因:

高止まりする不動産価格はマンション購入を希望する市民は元より、政府にとっても頭の痛い問題。市場がバブル化し、弾けたならば、経済全体に与えるマイナス影響は計り知れない。これを防ぐため、物業税(固定資産税)の試験導入、頭金比率の引き上げ、購入制限を含む様々な政策が実施されてきたが、現時点で効果は不十分。引き締め策は株価を押し下げる要因になるため、動向には十分注意が必要だろう。

市場の集中度が引き続き上昇:

不動産向け融資の抑制策、上場審査の厳格化などを背景に、資金調達力はデベロッパーの生存を左右している。資金力に富む国有系デベロッパー、民営大手の上場企業は優位性を保つグループといえよう。これらの企業を中心に今後も業界再編が一層進み、市場の集中度は引き続き上昇すると考えられる。

不動産(業種別一覧)

不動産デベロッパー百強(2011年版)のうち、主な取扱銘柄を一部抜粋
全国70都市不動産価格指標(前年同月比)と不動産開発投資額の推移

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。