中国株 業界レポート

建材業界 ~堅調な内需、再編も加速か~

2011年5月31日

市場動向 ~世界有数の市場規模、問題を抱えながらも成長を継続~

10年の業界規模:

販売高:3兆6000億元(前年比:33.4%増)、セメント販売量:18.6億トン(同14.7%増)、ホームセンター販売高:1兆1000億元(同22.0%増)

中国はセメント、ガラスなど主要建材の大半で世界最大の生産量、生産能力を持ち、市場規模も大きい。10年の建材業界全体の販売高は3兆6000億元に達し、前年比で33.4%増と高い伸びをみせた。堅調な景気動向が続くなか、固定資産投資が安定増。さらに当局主導で旧型設備の淘汰、業界再編などが進んだことを受け、主要建材の価格も上昇基調になると、業界全体で堅調な業績となった。全体の販売高の2割を占め、最も規模の大きいセメントは販売量が前年比で15%近く増加。このほか、不動産ブームで個人による建材・内装需要が増えると、ホームセンターの販売高も2ケタの伸びを示した。ただ、旧式なうえ過剰気味の生産設備、過当気味の競争などの構造的問題が依然として存在するほか、原材料・燃料価格の上昇圧力も続く。11年も高成長を維持するかは、構造改革の進展如何にかかってくるといえよう。

業界の特徴 ~競争の激しい業界だが、市場規模は拡大傾向~

生産・販売面:

建材はセメント、ガラス、装飾用建材をはじめ多くの製品種類があり、いずれも多くの企業が激しい競争を繰り広げるなど、業界の集約度は低い。生産設備は旧式、過剰であり、エネルギー消費量、環境負荷が大きいという構造的な問題を抱えており、電力や石炭など価格動向がコスト面を大きく左右する。セメントは沿海部が主な生産地となっている。販売面をみると、セメント、装飾用建材などはインフラと不動産建設向けが大きな柱。中国の住宅は内装の余地・自由度が高いことから、個人による建材消費量も多い。需要動向は政府、企業などの固定資産投資に大きく影響される。ガラスは建材としてよりも、自動車販売の拡大を受け、同分野向けの需要が伸びている。

国際面:

基本的に内需型の業界であるが、近年では輸出比率が徐々に高まっている。最大の輸出先はアジアであり、香港、日本、韓国、インドなどが主要市場。一方で外資企業も中国市場に積極的に進出している。

政策面:

過剰気味の生産能力という構造的な問題の解決に向け、当局は業界全体への締め付けを引き続き強化。中心となるセメントでは、業界再編を織り交ぜながら生産設備の整理・統合を推進していく。一方で大型の公共事業が需要・価格の押し上げにつながる可能性も。加えて10年に新規参入に厳しい条件を設定し、悪性競争の防止に努めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~政府系を中心とした大手は好業績を記録~

旺盛な需要に加え、再編効果で販売価格が上昇に転じ、10年は好業績を記録した企業が目立った。大手の多くは政府系企業でそれぞれの本拠地で高いシェアを持つが、全国展開するガリバーは少数。主力のセメントは、安徽省政府系の安徽海螺水泥(00914)がクリンカーの生産能力で最大手。これを国内最大手の総合建材グループである中国建材(03323)、セメント製造設備メーカーの中国中材(01893)、北京市政府系の北京金隅(02009)などが追っている。いずれも大手としての優位性を存分に発揮し、好業績を記録した。外資系企業も業界大手に名を連ねており、台泥国際(01136)は積極的な買収を背景に業績を急拡大させた。ただ、同じ外資の華新セメント(900933)は湖北省のセメント相場が低迷したことで、増益率は他社よりも低い。ガラスも市況回復の追い風に乗り、地元政府系で建設ガラス大手の中国南玻集団(200012)が大幅増益。外資系の上海耀華ピルキントン(900918)も黒字回復を果たした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
安徽海螺水泥 00914 34,508 38.0 6,163 75.8 159,260
H株 安徽省を本拠とする地元政府系のセメントメーカー。同社が優位性を持つ華東や華南地域で、良質・豊富な石灰資源を使い、高品質のセメントとクリンカーを提供できることが強み。国内最大級の生産量を誇り、ブランド力も高い。上海東方明珠電視塔などで使用されるなど実績も豊富だ。懸念される電力不足については、同社は大手で生産効率性が高いために、影響は軽微か。反対に事業拡大のチャンスにもなり得る。
台泥国際 01136 7,079 105.5 683 552.0 15,193
香港その他 台湾の巨大企業グループ「台湾セメント」を親会社に持つ、大手セメント会社。主に本土でセメントやクリンカーなどを製造・販売。海外にも広く輸出している。買収に積極的な点が同社の特徴であり、08年に香港に上場していた嘉新水泥を買収して華東地域に事業エリアを拡大。10年に大型買収を完了させ、事業規模の大幅拡大に成功した。
中国中材 01893 44,246 45.7 1,090 51.6 25,929
H株 中央政府系の大手プラントメーカー。主力のセメント生産設備は世界屈指の規模を誇り、新興国を中心に世界各地で事業を展開。川下のセメント生産でも国内有数の規模まで成長しており、グループ全体のシナジー効果が見込める。加えてハイテク素材などの成長分野も手がけている点にも注目。
北京金隅 02009 21,998 65.8 2,716 42.5 59,850
H株 北京市政府系の建築材料メーカー。北京市・環渤海地区で最大規模の市場シェアを持つ。事業は川上のセメント、建築資材の生産から川下の不動産開発や投資まで多岐にわたり、社内でのシナジー効果を発揮できる点が強み。建築資材では「TOTO」など海外製品の代理販売も手がけており、「建材下郷」の恩恵を享受できる銘柄だろう。
中国建材 03323 51,988 56.1 3,369 43.2 83,793
H株 中央政府系の総合建材企業。手がける製品種類が豊富で、同時にその多くで国内上位のシェアを占めている点が強み。主力製品はセメント、石膏ボードなど軽量建材、グラスファイバー、風力発電用ローターブレードなど。製品は「建材下郷」のほかに、新エネルギー、新材料などの戦略的新興産業の範囲にも含まれており、政策的な追い風も強い。
中国南玻集団 200012 7,744 46.7 1,455 74.9 32,107
深センB株 広東省を本拠とする大手ガラスメーカー。高級フロートガラスなど建築用ガラス、ITOガラス、カラーフィルター、セラミックデバイスの研究開発・生産などを手がける。デバイス、電池用ガラス、ポリシリコンなど、太陽光発電の分野に参入していることが特徴。同発電市場の成長は同社にとって追い風となる。
方大集団 200055 1,162 27.3 55 25.0 4,086
深センB株 広東省を本拠とする民営の建築材料メーカー。カーテンウォール(CW)、アルミ複合板、LED照明、地下鉄のプラットフォームスクリーンドアなどの製造・販売を手がける。主力のCWではCW型太陽電池を成長分野に位置づけて事業を強化。このほか、中国各都市の地下鉄整備による恩恵も期待できる。
上海耀華ピルキントン 900918 2,686 24.1 194 黒転 9,488
上海B株 大手ガラスメーカー。主力製品は透明フロートガラス、着色ガラス、家具用ガラス、中空ガラス、多層ガラス、めっきガラス、膜付低放射ガラス(Low-Eガラス)、自動車ガラスなど。同社は、日本板硝子傘下の英ピルキントン社と地元の上海市政府系の企業などが合弁で設立した。
華新セメント 900933 8,469 22.6 573 14.4 18,139
上海B株 湖北省を本拠とする大手セメントメーカー。同社の歴史は古く、セメント、クリンカーなどの製品は「華新」や「堡塁」のブランドで知られる。事業の中心は湖北省。筆頭株主はセメント世界大手のスイス・ホルシム社。地元政府系企業も大株主となっている。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル=0.871元

時価総額は11年5月30日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

ガラス・建設資材(業種別一覧)

注目されるトピックス ~業界再編の進展に加え、政策的な追い風も~

構造的問題の解決もあり、業界再編の流れは継続か:

業界再編が進み、改善に向かったとはいえ、過当競争をはじめとした問題が存在している。これを解決するためには、業界再編の推進、旧式設備の淘汰、環境対策の徹底、製品の高付加価値化などが政府主導で進められる見込み。昨年に続いて、大手を中心とした買収・合併に業界の注目が集まるだろう。

政策的支援も見込まれ、需要は堅調:

建材需要に大きな影響を与える政策動向を見通すと、新5カ年計画の初年度である11年は明るい材料が多い。低所得者向け住宅の整備、重要地域の振興策、交通インフラの整備などの重要プロジェクトが本格始動、需要を喚起するとみられるためだ。加えて、近い将来に「建材下郷」(農村での建材購入への補助政策)が本格的に実施される見込み。これは装飾用建材などに大きな恩恵をもたらすとみられ、住宅の内外装市場が農村部にも一気に拡大する可能性がある。

電力不足、原材料価格の上昇など、生産環境の厳しさも:

昨年は各地方政府が省エネ目標を達成するために電力供給の制限を実施。建材業界の生産に影響が出た場面もみられた。ただ、11年は特に夏場にかけて全国的に電力不足になる見込みで、操業に支障をきたす可能性が高い。石炭価格の上昇など生産コストの圧力も強く、生産環境の厳しさは大きなリスク要因と考えられる。

ガラス・建設資材(業種別一覧)

中国のクリンカー生産能力上位企業(10年末時点)
中国のセメント販売量と業界全体の収益動向

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