中国株 業界レポート

IT・ソフトウエア業界 ~世界最大のネット大国、成長余地はなお大きい~

2011年5月31日

市場動向 ~世界最大のネット大国、高成長は変わらず~

10年の業界規模:

売上高:1 兆3364 億元(前年比31%増)、ネットユーザー数:4.57 億人(ネット普及率:34.3%)

中国IT業界の急成長が続いている。10年の業界売上高は前年に比べ31%増加し、一気に1兆元の大台を大きく突破。主力のソフトウエア開発を含め、いずれの分野も2ケタの伸びを示した。ネット接続の主要な手段である携帯電話で、3Gサービスやスマートフォン端末の普及などが刺激材料となり、ネットを通じた様々なサービスに対する需要がより一層増えた。ネットユーザー数は年間で7330万人も増加し、その総数は世界最大。それでも依然として普及率は3割強の水準であり、成長余地が大きい。元々の市場の大きさに加えて、引き続きサービスの多様化も進むと考えられる。当局は次世代ITを向こう5年間の戦略的振興産業の一つに設定。これには、「三網融合」(電信、放送、インターネット網の一体化=トリプルプレイ)、「物聯網」(モノのインターネット)など多くの注目分野が盛り込まれており、政策的支援が見込める。業界内での競争は厳しいものの、大手を中心に成長トレンドは続くものと考えられる。

業界の特徴 ~多くの企業が成長市場で厳しい競争を繰り広げる~

生産・販売面:

IT業界は民営・中小が大半を占め、数多くの企業が成長市場で激しい競争を繰り広げている。主にソフトウエア販売、システムインテグレーション(SI)、組み込み式システム・ソフトウエア、付加価値サービスなどに分けられ、売上高全体に占める割合はそれぞれ32%、22%、17%、16%。多額の設備投資の必要性が小さく、成長性も高い反面、安定的な資金調達力、優秀な人材の確保などが課題。さらに製品・サービスは技術革新が速い上に他社に真似されやすく、違法コピーも氾濫しており、業界の新陳代謝は速い。東部での売上高が全体の86%を占めており、中西部はまだ小さい。これはインターネットの普及度と重なる部分が多い。ユーザーは都市部若年層が中心で、30歳以下が全体の6割弱を占めている。

国際面:

中国企業は人材・コスト競争力などを武器に、日本をはじめとした海外企業からアウトソーシングの契約を受注するなど海外事業には積極的であり、規模も大きい。一方、外資の進出は進んでいるものの、規制の壁がその前に大きく立ちはだかっている。

政策面:

IT業界は特にネットメディアの分野で政府の規制が強く、ニュースサイトなどは外資による投資が禁止されている。このため、登記上では外国企業となる一部の地場系上場IT企業(騰訊控股(00700)、阿里巴巴(01688))などは、資本関係を持たずに契約を交わすことで経営実体を支配下に置いている(CCF方式)。一方、当局は国内IT産業の発展に積極的。特に戦略的新興産業に指定された分野には手厚い支援を行うとみられる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~厳しい競争下でも好業績の企業が続出~

IT業界は民営・新興企業が多く成長性は高いものの、企業規模は概ね小さい。それでも上場企業の多くは大手であり、急成長するIT市場のなかで好業績を記録している。IM(インスタントメッセージ)最大手の騰訊控股、企業間電子商取引(BtoB)最大手の阿里巴巴という国内外で著名な両社は、いずれもブランド力とユーザー数で強みを発揮し、50%前後の増収増益を記録。ソフトウエア販売では、業務用専業の金蝶国際(00268)が内陸部市場の開拓効果で好業績となった一方、ゲーム用が主力の金山軟件(03888)は提供するソフト数の少なさから減収減益を強いられた。SIの分野では最大手クラスの神州数碼(00861)が10年4-12月期まで増収増益の決算を持続。このほかシステム分野では専門ごとの大手も存在している。中国民航信息網路(00696)は業界では少ない大手の国有系企業で、航空関連では独占的なシェアを獲得。大学発のベンチャーである方正控股(00418)などもある。民営では安全計装システムの中国自動化集団(00569)、ITS(高度交通システム)の中国智能交通系統(01900)などが代表的企業。これらの企業はいずれも業界の高成長をけん引し、好業績を記録した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
金蝶国際 00268 1,437 44.1 272 27.9 11,324
香港その他 深セン市を本拠とする民営のソフトウエア企業。「金蝶」を主力ブランドとし、中小企業向けの統合型(業務横断型)ソフトウエア(ERP)で国内最大級シェアを誇る。内陸部の市場開拓に強みを持つほか、ソフトウエア販売だけに頼っていないことが特徴。オンライン管理・電子商取引のサービス収入増加などが足元の好業績を支えている。
方正控股 00418 1,952 17.2 55 171.3 486
レッドチップ 北京大学系の大手IT企業。主力事業はメディア系、非メディア系の企業に対するソフトウエア開発やSIなど。傘下に香港上場の方正数碼(00618)などを置き、有力ブランドのIT製品を販売している。国内トップクラスの北京大学から優秀な人材を確保できる点などが強み。電子出版システムの大手サプライヤーとしても注目できる。
中国自動化集団 00569 1,595 41.7 286 34.7 5,632
香港その他 安全計装を主力とするITシステムのサプライヤーで、製品は鉄道、石油精製、発電施設向けなど幅広い。インフラ整備が進むなか、最近の事故などを踏まえ、安全に関するニーズは高い。さらに政府は新五カ年計画のなかで各業界でのさらなるIT化を目指しており、これもプラス材料。
中国民航信息網路 00696 3,054 16.6 897 15.6 13,695
H株 政府系のITソリューションサプライヤー大手。空港旅客システム関連では国内で圧倒的なシェアを誇る。主力は航空券の予約販売サービスのプラットフォームとなる電子旅行販売システム、空港旅行者処理システムなど。本土の大手航空3社が大株主として出資しており、結びつきが強い。航空業界発展の恩恵を直接享受できる企業といえる。
騰訊控股 00700 19,646 57.9 8,054 56.2 401,035
ハンセン 民営の大手IT企業。IMコミュニティーでは「QQ」ブランドを通じて国内最大のシェアを誇るほか、SNSでも国内有数のユーザー数を持つ。オープンプラットフォーム戦略を採用しており、インターネット・携帯電話向けの様々な付加価値サービスなどを展開している点が特徴。
神州数碼 00861 43,715 18.6 718 28.6 15,979
香港その他 中国のIT大手「聯想控股有限公司」の系列に属する中核企業。中小企業向けを中心に、各種IT製品を販売。SIやアプリケーションソフトウエア開発などのサービスなども提供しており、主力事業の多くは国内で高いシェアを誇る。
阿里巴巴 01688 5,558 43.4 1,469 45.1 65,349
香港その他 浙江省杭州市を本拠とする民営企業で、企業間電子商取引の最大手。親会社には創業者の馬雲主席などのほか、ヤフーとソフトバンクが出資。このほか親会社が運営するネットショッピングサイト「淘宝網」は、同分野で高いシェアを誇る。
中国智能交通系統 01900 1,862 32.5 294 37.0 4,911
香港その他 高度交通システムのソリューションを提供する民営企業。高速道路、鉄道、都市軌道交通の主要3分野について、ハード・ソフトウエアの設計・開発・実装を行うほか、メンテナンス・フォローアップなどの付加価値サービスも提供する。交通網のIT化は今後5年間で巨額の投資が見込まれる有望分野。大手として同社のビジネスチャンスは多い。
金山軟件 03888 971 ▲5.0 372 ▲3.8 4,549
香港その他 民営の大手ソフトウエア開発会社。ゲーム、アプリケーションソフトウエアなどが主力。本土の顧客が中心だが、台湾や東南アジア向けにも事業を展開している。オンラインゲームの分野では中華圏でも高いブランド力を持っている点に注目。アプリケーションでもセキュリティソフト「金山毒覇」、辞書ソフト「金山詞覇」などが広く使われている。

売上高・純利益は神州数碼(00861)が10年3月本決算。この以外はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年5月30日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル

ITハードウエア(業種別一覧) ソフトウエア(業種別一覧)

注目されるトピックス ~IT化の推進、3G普及、内陸部など新たな成長余地は大きい~

急速に膨張し、変化するIT社会:

中国のIT社会は変化が速く、急速に拡大している。ブログのユーザーは3億人近くに達し、このうちTwitterに相当する「微博」は10年に本格的に普及。足元では6000万人を超え、有名人のブログは大きな影響力を持つ。特にIM、SNS大手の騰訊控股は「微博」を組み合わせたサービスを展開するなど、多くの企業がこの変化をビジネスチャンスとして捉えている。

戦略的新興産業の目玉「次世代IT」に注目:

政府が重要視する戦略的新興産業の一角に組み入れられた「次世代IT」は、成長余地が大きく、今後の業界動向を占う上で重要なポイント。次世代移動通信規格、「物聯網」(モノのインターネット、IoT)、「三網融合」(電信、放送、インターネット網の一体化=トリプルプレイ)、新型液晶パネル、クラウドコンピューティングなど、その範囲は多岐に及ぶ。

「両化融合」を含めた一層のIT化が商機に:

IT社会の拡大、次世代ITの普及による新市場の創設に加えて、既存設備の一層のIT化が多くの商機に繋がる可能性が高い。中国は各業界でさらなるIT化が求められており、特に製造業で急務。情報化と工業化を両立させる「両化融合」は中国自動化集団、中国智能交通系統などのITシステム会社、機械設備メーカーにとって、追い風となろう。

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中国のインターネット市場の急速な発展
インターネットの規模・普及率の推移
中国のネット普及率の分布

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