中国株 業界レポート

食料品業界 ~内需拡大の恩恵を受ける巨大市場~

2011年6月1日

市場動向 ~インフレが圧迫要因になるも、消費の中核として成長を継続~

10年の業界規模:

糧食生産高:5億4641万トン(前年比2.9%増)、食品企業の売上高(1-11月):1兆119億元

中国13億人の胃袋を満たす食料品業界は、多くの分野で世界トップクラスの消費規模を誇り、広大な市場を持つ。消費関連の中核セクターとして成長を続けると、10年の食品企業の売上高は11月時点の累計ですでに09年通年の実績を上回り、1兆元の大台を突破。飲料品企業の売上高も8000億元を超えた。各種補助政策の効果もあり、10年の糧食生産高は5億トンを超える豊作。ただ、天候などの影響で農作物のインフレ傾向が強まると、業界全体の利益を圧迫。製品価格の引き上げに動いたものの、吸収しきれずに利益率が低下する企業もみられた。

11年に入っても依然として食の安全に対する懸念が残るほか、インフレ圧力も根強い。当局も企業に対して再編・規制強化の動きを強めている。業界全体で淘汰が進むが、大手については買収・合併を通じたシェア拡大への期待も。全体的な所得の底上げ、食の高級・多様化の流れもあり、引き続き安定成長を維持すると考えられる。

業界の特徴 ~景気よりも季節的要因の影響が大きい~

生産・販売面:

全体的に景気の影響が比較的小さいディフェンシブなセクター。国有系、民営、外資を含む多くの企業が激しい競争を繰り広げている。中国企業の多くは中小企業で、採算性、産業集積度は概ね低く、食品加工の初期段階に従事。市場全体としてビールは夏場、白酒、ワインなどは旧正月前後に消費シーズンを迎えるなど、季節的要因が生産・販売に与える影響は大きい。

国際面:

世界の主要な食料品メーカーが巨大市場の攻略を目指して進出済み。アサヒビールと青島ビール(00168)との提携、キリンビールによる清涼飲料水の分野での合弁など、日系企業も積極的に事業を展開。また、中国は世界的な農業、食品加工国でもあり、輸出も盛んだ。

政策面:

政府は内需拡大の一環として農村部などの振興を重視。農民の購買力の拡大は、都市部での消費レベルの高度化も加わり、業界には追い風。一方、直近でも大手メーカーのチルド肉に違法添加剤が検出されるなど、食の安全に関する課題は多い。政府は対策を強めており、品質面で問題のある企業は退場を迫られる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~市場拡大で売上増を果たすも、コスト増圧力の前に利益ベースでは明暗が~

食料品業界は食肉、清涼飲料品、乳製品、ビールなどのサブセクターに分かれており、それぞれで官民合わせて多くの企業があるものの、ブランド力などを背景に業界大手が有利な状況となっている。全体的に原材料価格上昇への対応状況が各社の業績の差に繋がった。即席めん、米菓、清涼飲料などの分野では中国旺旺(00151)、統一企業中国(00220)、ミスター康(00322)の台湾系3社が大手。いずれも増収を確保したが、販管費の膨らんだ統一企業中国は減益を強いられた。中央政府系の大型食料品企業としては総合食品の中国食品(00506)、農産物加工の中国糧油控股(00606)の両社が挙げられるが、ともに原材料価格の上昇を吸収しきれずに減益。飲料をみると果汁大手の中国匯源果汁(01886)と煙台北方安徳利果汁(02218)が減益に後退。一方、好調な業績を記録した飲料企業も多い。青島ビール(00168)、乳飲料の蒙牛乳業(02319)はいずれも国内トップクラスのブランド力を背景に販売価格の引き上げに成功し、堅調な業績を持続。ワイン文化の普及にともない大手の張裕葡萄酒(200869)が好決算を記録した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国旺旺 00151 15,187 31.2 2,423 14.6 98,488
香港その他 本土に進出した台湾系食料品メーカーの草分け。「旺旺」ブランドで有名であり、主力分野は米菓、飲料、スナック菓子など。特定の分野を得意とするほか、伝統的な個人商店を販売網の中心に据えているために、販管費も抑えられる。このため、利益率は業界全体でも比較的に高い
青島ビール 00168 19,898 10.4 1,520 21.6 58,727
H株 中国で最も長い歴史を持つ山東省のビールメーカー。業界のリーディング企業であり、「青島ビール」ブランドは国際的にも有名。アサヒビールと資本・業務提携を結ぶ。国内外での高いブランド力が同社の最大の強み
ミスター康 00322 45,217 31.5 3,228 24.4 132,686
香港その他 天津市を本拠とする台湾系の総合食品会社。「康師傅」商標で即席めん、飲料、焼き菓子などを生産・販売しており、多くの分野でトップクラスのシェアを獲得する業界のリーディングカンパニーである
中国食品 00506 17,386 18.6 373 ▲24.7 15,749
レッドチップ 国有系の中糧集団(コフコ)グループに属する食品会社。酒類、飲料、食用油、菓子などを主力事業とし、「福臨門」ブランドの食用油、「長城」ブランドのワインなどが有名。今後は合理化などの努力により主力のワイン事業が回復軌道に向かうと考えられ、悪材料の出尽くし感が出ている
中国糧油控股 00606 46,602 22.0 1,483 ▲12.8 33,357
レッドチップ 同じく中糧集団グループに属する農産物加工のリーディング企業。種子油、ビール用麦芽、米、小麦、小麦粉などの取扱製品はいずれも国内で大きなシェアを持つことが強み。ただ、原材料価格が上昇する一方、種子油の販売価格引き上げは難しく、採算性の低下に悩まされている
超大現代農業 00682 6,964 13.7 3,659 ▲8.2 12,796
香港その他 農作物生産に直接従事する数少ない民営企業。福建省を本拠とし、経済発展が著しい東部沿海地域を中心に、北は東北地方から南は海南省にかけて栽培拠点を設けている。川上の農作物生産はインフレに強い。さらに大手企業としてのメリットを活かし有機栽培を率先して導入し、ブランド力も向上。
中国緑色食品控股 00904 1,901 22.8 576 26.6 5,561
香港その他 福建省を中心に、農産物の生産から販売までを手掛ける食品の一貫メーカー。高い生産技術と食品の安全性を維持する。川上から川下までの一貫体制であるために、食品インフレは逆に収益力の向上につながり、事業の追い風になる点に注目。このほか、豆ジュース、野菜ジュースを主力とする「中緑」ブランドの飲料は健康ブームに乗り、高成長を続けている
雨潤食品 01068 18,707 54.8 2,377 56.3 45,995
香港その他 南京市に本拠を置く中国の食肉大手。主力は豚肉で、豚の仕入、屠畜・解体、各種加工までを一貫して手がけており、インフレに比較的強い。食肉は市場規模が大きい一方、企業化されていない。豚肉は中国人の食生活にとって、必要不可欠な食材であり、将来的な拡大余地は大きい
中国匯源果汁 01886 3,708 30.9 198 ▲15.1 7,124
香港その他 民営のフルーツ・野菜ジュースメーカー。「匯源」ブランドの果汁100%ジュースや果汁26~99%のジュースが主力。仏ダノンも出資している。利益率の高い果汁100%飲料などの分野でトップシェアを確保。消費者の健康志向の高まりが追い風となる可能性も
蒙牛乳業 02319 30,265 17.7 1,237 10.9 43,368
香港その他 内モンゴル自治区を本拠とする民営の乳業最大手。同社製品は「蒙牛」ブランドで販売されており、良質の乳製品を提供することで、消費拡大、高級化の恩恵を受ける可能性も。
張裕葡萄酒 200869 4,983 18.7 1,434 27.2 56,064
深センB株 山東省煙台市を本拠とする老舗ワインメーカー。主力製品である「張裕」ブランドのワインは国内で有名。食の西洋化にともないワインの消費量は拡大しており、業界大手として市場拡大の恩恵を享受できる立場にある

売上高・純利益は超大現代農業(00682)が10年6月本決算、中国緑色食品控股(00904)が10年4月本決算。 残りはすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年5月31日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。

食料品(業種別一覧)

注目されるトピックス ~市場全体のパラダイムシフトに対応できるか~

市場構造、趣向の変化に注目:

中国の食料品業界を見ると、食肉を典型例に個人事業者による分散型の市場が多い。ただ、全体的な流れは日本のような企業や協同組合を中核とした集中的な構造に向かっている。上場企業にとって、市場拡大の余地は依然として巨大。規模に加え、消費者の食料品に対する嗜好も多様化している。特に健康・安全志向、洋風化は都市部などで顕著にみられ、健康飲料、ワインなどの需要を押し上げている。

業界再編はより活発に:

スケールメリットが大きくものをいう業界であるだけに、国内外の大手・中小を巻き込んだ「合従連衡」の動きはより活発化していくものと考えられる。これまでは海外勢による買収が目立ったが、今後は海外進出を見据えた中国勢による積極的な動きが株価の刺激要因となるだろう。

食の安全、原材料の価格動向はリスク要因:

直近でも食肉の有名ブランド「双匯」で、一部製品から違法な添加物が見つかるなど、依然として食の安全に関わる問題を解決できてはいない。加えて、原材料である農作物・家畜類は依然として価格上昇圧力が強い。コスト面では食品企業にとって厳しい環境が続こう。

食料品(業種別一覧)

食品業界の業績(※10年は11月まで)
飲料業界の業績(※10年は11月まで)

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