中国株 業界レポート

医薬関連業界 ~新GMP の影響で淘汰・再編が加速か~

2011年6月1日

市場動向 ~医療制度改革の恩恵を受け、高成長は変わらず~

10年の業界規模:

医療支出総額:1兆9603億元(前年比22%増)、処方薬規模:4520億元(同23%増)、市販薬規模:1739億元(同17%増)

世界最大の人口を抱える中国は、医薬関連業界の市場規模が大きい上に、30年以上にわたり一貫してGDPを大幅に上回る成長率を維持している。医療制度改革の進展を追い風に、市民がより医療にアクセスしやすくなると、10年の医療支出総額は2兆元に迫る水準まで拡大。伸び率も10ポイント近くアップした。これを受け、医薬品・機器・設備など関連業界の販売高も引き続き高い伸び率を維持。11月までに1兆元の大台を突破し、世界で第3位の市場規模とみられている。主力の医薬品は6000億元を超えるマーケットに拡大。医療機器・設備の市場規模も1000億元を超え、世界第2位に躍進した。ただ、全体的に低付加価値の製品に甘んじているほか、一部では薬害などの問題もみられる。このため、政府は新たなGMP(製造管理及び品質管理基準)を制定しており、5年以内にクリアできない企業は市場から退場となる。医療制度改革の進展で市場規模の拡大が見込まれるなか、市場プレイヤーは競争による淘汰・再編で集約化が進もう。これは大半が大手の上場企業にとっては有利な状況となる。

業界の特徴 ~ディフェンシブな内需型セクター、規制色も強い~

生産・販売面:

医薬関連は概ねディフェンシブの内需型セクター。原薬・製薬をはじめ、医薬品の卸・小売り、医療機器・設備の製造販売、関連サービスなど複数のサブセクターに分けられる。中心となる製薬は大きく西洋、漢方薬に分けられ、多くの企業が厳しい競争を繰り広げる。輸出品の大半は低付加価値品である原料薬に甘んじているほか、自主開発力に乏しいため製品は概ねジェネリック医薬品に限られる。医薬品は市販薬として卸・小売り業者を通じて消費者に届けられる。このほか、日本と同様に病院を通じて処方薬として販売されるが、日本のような医師・薬剤師の分業は進んでいない。

国際面:

中国の医薬品貿易の主力は漢方薬であり、輸出額の規模も大きい。ただ製剤能力は足りず、漢方製剤では貿易赤字となっている。主要な外資企業は大半が進出しており、高付加価値市場では圧倒的な市場シェアを握っている。

政策面:

人々の健康を担う重要産業であるだけに、政府の規制は厳しい。09年から始まった国家基本薬品制度に採用された医薬品は保険の対象になり、製薬会社にとって自社製品が選ばれることが重要となる。ただ、基本薬品は市場で流通する医薬品のすべてをカバーしているわけではなく、医療費高騰の一因にもなっている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~集約度の低い業界だが、業績は拡大傾向~

政府系、民営を含め、目下のところ7100社以上のメーカー、1万3000社を超える流通業者が激しい競争を繰り広げている。業界全体の成長にともない各企業の業績も拡大傾向。ただ、集約度が非常に低く、09年通年の販売実績でみると100億元を超えた企業は計8社。10年の医薬品の市場規模に占める上位3社の比率も2割前後に過ぎない。こうしたなかで大手は積極的な拡張戦略を通じて10年度の業績を拡大。流通最大手で売上高トップ、半官半民の国薬控股(01099)は2ケタの増収増益を記録した。これに続く2番手の上海医薬(02607)は、前年に多額の売却益を計上した影響で増益幅は小幅。一方、5位にランクインした広州医薬集団傘下の広州薬業(00874)は漢方薬の需要増加などを背景に、増益率は3割台に達した。同じく漢方薬に強い北京同仁堂科技(01666)は保健食品の分野が急成長し、増益に寄与。これらは政府系の企業だが、香港上場では各々の得意分野を前面に出した民営企業の活躍が目立つ。銘源医療(00233)はガン検査試薬、四環医薬(00460)は心血管薬、山東威高集団医用高分子製品(01066)は使い捨て医療器具、瑞年国際(02010)はサプリメント、山東羅欣薬業(08058)は抗生物質という主力製品がけん引し、いずれも2ケタ増益を記録した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
銘源医療 00233 367 6.7 106 59.5 2,272
香港その他 がん検査試薬を主力事業とする民営の大手メーカーで、国内の病院や生命保険会社向けに生産販売している。バイオ医薬品に属するプロテインチップが好業績のけん引役。同分野は政策支援などが見込まれるなか、競争力のある大手として大きな恩恵を受ける可能性が大きい。
四環医薬 00460 1,037 46.3 522 60.0 25,159
香港その他 心血管薬や脳循環改善薬の分野で国内有数のシェアを誇る新興の民営企業。全国規模の販売網を通じ、各地の病院などに販売している。10年10月に上場した際は、著名投資家のジョージ・ソロス氏が資本参加したことも話題となり、募集段階では申込が殺到した。
広州薬業 00874 4,403 15.8 280 30.1 12,556
H株 華南地区で最大規模の総合医薬グループ。大手として地場系の中では製品開発力、ブランド力ともに高いランクにあるほか、競争力のある漢方薬を主力としている点が強み。バイオ医薬など成長分野も手がけているほか、販売ルートでも華南地区で大規模な販売網を構築。漢方薬を利用した同社の清涼飲料水「王老吉」は夏場の定番飲料となっている。
山東威高集団医用高分子製品 01066 2,463 31.1 799 26.1 46,107
H株 山東省を本拠とする大手の民営医療機器メーカー。中心ブランドは「潔瑞」で、医療機器としては初めて「中国著名商標」に認定された。使い捨ての点滴・輸血器具、整形器具などを主力製品としており、病院、血液センター、卸売会社などに販売するほか、海外にも輸出。成長が見込まれる医療機器市場のなかでリーディングカンパニーとしての存在感を発揮している。
国薬控股 01099 69,234 31.5 1,209 25.0 67,033
H株 医薬品の流通分野で国内トップのシェアを誇る半官半民企業。中央政府系の中国医薬集団が実質筆頭株主となっているほか、民営系コングロマリットの復星国際(00656)も大株主に名を連ねる。一致薬業(200028)を傘下に置き、製薬事業も展開。業界大手として買収・再編の主役と目されており、一層のスケールメリットの発揮が期待される。
北京同仁堂科技 01666 1,579 16.8 198 12.5 2,780
H株 国内外で著名な「北京同仁堂」が上海上場企業を通じて支配している漢方薬メーカー。「北京同仁堂」は1669年に創業した漢方薬の老舗であり、ブランド力の高さが強み。天然素材を用いる漢方薬をベースとした顆粒剤、丸薬、錠剤、カプセル剤、保健食品などの製品に特化。海外販売も強化しており、国際漢方薬市場の開拓において尖兵役となっている。
瑞年国際 02010 1,357 59.6 352 68.0 6,145
香港その他 各種サプリメントの生産販売を主力とする江蘇省の民営企業。健康志向の高まりを背景に同市場の成長性に注目が集まるなか、同社はアミノ酸サプリメントの分野で国内トップのシェアを保持。主力の「瑞年」や「霊児」はブランド力に強みがあり、市場拡大の恩恵を受ける可能性が高い。このほか、広東省などで夏季に好んで飲まれる漢方茶「涼茶」などを生産販売している。
上海医薬 02607 37,382 19.7 1,368 5.5 57,230
H株 上海政府系の総合医薬品企業。製薬では国内3位、流通では2位の市場シェアを誇る。再編を経て事業を垂直統合型化し、製造販売から流通・小売りまでを手がけている点が強み。最大手として経済力のある華東地区の市場を押さえている点も評価できる。製造する医薬品は処方薬が大部分。流通分野では全国規模の販売ネットワークを構築しており、スケールメリットを発揮できる。
神威薬業 02877 2,038 24.8 822 7.1 15,200
香港その他 民営の漢方薬メーカー。製品は「神威」、「五福」、「神苗」のブランド名で知られ、漢方の軟カプセル剤の分野では国内トップクラスのシェアを誇る。このほか漢方の注射液でも国内最大のサプライヤーであり、製品は処方薬、一般用医薬品として血管疾患、呼吸器疾患、風邪、発熱、消化器疾患などの治療に用いられる。
山東羅欣薬業 08058 1,342 47.9 383 42.7 5,523
H株 山東省を本拠とする民営の製薬会社。「フォーブス」中国版で10年まで3年連続で「潜在力のある中国中小企業」に名を連ねるなど、その成長性は国内外から高く評価されている。製品は各種抗生物質、薬剤、腫瘍薬、解熱鎮痛剤など幅広い。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1香港ドル=0.871元

時価総額は11年5月31日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル

医薬・医療機器(業種別一覧)

注目されるトピックス ~GMP ショックで業界再編は一層加速か、政策リスクなどには要注意~

GMP ショックも加わり、業界再編は一層加速か:

中国政府は10年に新たなGMPを制定した。これは先進国並みの厳しい基準となっており、5年以内にクリアできない製薬会社は実質廃業となる。加えて対応には巨額の設備投資が必要とされるため、競争力の弱い企業の淘汰は一層進もう。当局は新GMPをてこに業界再編を加速させる考え。今後5年以内に年商1000億元を超える大型医薬グループを数社育成するとしており、上場企業のような大手にとっては合併・買収のチャンスが増えるものと考えられる。

“看病難、看病貴”という構造的問題が緩和すれば、新たなビジネスチャンスも:

中国は“看病難、看病貴”(診療機会の難しさ、医療費の高さ)という構造的な問題を抱えている。政府はこの問題の解決を重要視しており、このために①国民皆保険の実現、②薬価制度の改革、③基層診療体制の確立、④公衆衛生の促進、⑤公立病院改革――の5項目を柱とする医療制度改革を推進している。元々、少子高齢化の進展で医療ニーズの増加も見込まれるほか、経済的事情で医療にアクセス困難であった所得層が底上げされれば、新規需要が創出、ビジネスチャンスも広がる。

政策リスク、薬害リスクには注意が必要:

医薬関連業界は医薬品の承認、価格などが当局によって統制されており、政策変動による影響が非常に大きい。特に薬価の動向には注意が必要。研究開発の支出が嵩むなか、政府は薬価引き下げのスタンスを採っているからだ。加えて一旦薬害が発生したら経営が立ち行かなくなる可能性もあり得る。

医薬・医療機器(業種別一覧)

医療支出総費用の推移(億元)
一人あたりの平均年間医療支出(元)

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