中国株 業界レポート

非鉄金属業界 ~世界の非鉄大国~

2011年6月13日

市場動向 ~世界最大の生産・消費国、需要の急増で周辺国と軋轢も~

10年の業界規模:

10種ベースメタル生産量:3135万トン(前年比20.4%増)、非鉄金属の貿易総額:1203億米ドル(同43.7%増)、売上高(11月まで):2兆7122億元(同45.1%増)

中国は非鉄金属の生産、消費量ともに世界最大の規模を誇る。10年は世界的な景気回復の流れに乗り、輸出額は前年比で6割増とV字回復を実現した。国内では堅調な景気動向を背景に非鉄金属の需要が急速に拡大。業界は10種ベースメタルの生産量を2割増やすなど、積極増産に動いた。だが、国内では資源を賄い切れず、輸入額、貿易赤字が急増。市場価格も高止まりの状況が続いた。こうした良好な環境を背景に、業界は1-11月で45%増収、90%増益と、一気に好業績に転換。ただ、旧式の精錬設備、過剰気味の生産で、環境汚染などが問題化した。加えて資源を求めて海外に積極進出する一方、レアアースなどの輸出を抑制したため、諸外国との軋轢を生んだ。当局は今後5年のベースメタル生産量を年平均で8%前後に抑える方針。政府によるマクロコントロールが一層強まるとみられる。ただ、実需は引き続き旺盛と考えられるため、資源の安定調達、業界構造の改善、安全・適正な生産という3項目のバランスが重要になってこよう

業界の特徴 ~内外の市況の影響が大きいセクター~

生産・販売面:

非鉄金属業界は国内外の商品市況の影響を大きく受けるセクター。大きく川上の探査・採掘・選鉱、川中の精錬、川下の製品加工に分けられ、最終的に建設、電力設備、家電など幅広い業界に販売されるため、需要は設備投資、個人消費などの影響を受ける。また希少金属、特に金は安定資産としての役割もあり、投資需要も大きい。非鉄金属資源の多くは中西部に分布。資源大国であるものの国内だけでは需要をまかないきれず、海外から鉱石を輸入しているため、価格交渉は重要。採掘・精錬・加工の過程では大量のエネルギーを消費するため、環境対策も必要になるほか、電力など燃料価格の動向もコストに影響する。鉄鋼と同じく一部生産設備の「過剰、小規模、老朽化」という構造的な問題を抱えている。

国際面:

中国は世界でのレアメタル埋蔵量の大半を占めるなど金属資源が豊富。このため資源の輸出国でもあるが、国内需要を優先するため、希少資源については輸出制限の方向にある。日本とのレアアースを巡る緊張もこの流れで発生した。一方、国内の需要増を受け、オーストラリア、チリなどからの鉱石輸入は拡大しており、非鉄金属関連の貿易収支は赤字基調。こうしたなか、資源確保のため中国企業による海外進出が活発化している。

政策面:

国内の非鉄金属資源は国有であり、企業は採掘・使用権を有償で取得するほか、鉱石の生産に対して資源税が課せられる。政府は過剰気味な生産能力の整備、業界再編、製品の高付加価値化、海外進出などを推し進めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~川上・川中は政府系が強いが、川下では民営も健闘。いずれも業績が回復~

鉄鋼に比べ業界集約度は高い。川上・川中では大手は政府系企業に限られ、それぞれ複数の上場企業を持つ。金融危機による影響からようやく脱し、過剰気味の生産能力の淘汰が一定程度進んだことで、販売価格が上昇に転換。10年は各社ともに業績回復が目立った。主要金属ごとに「ガリバー」があり、業界売上高ランキング1位の中国リョ業公司は国有系のアルミ最大手。旗艦上場企業は中国アルミ(02600)で、10年は黒字転換を果たした。3位は地方政府系の江西銅業集団で、銅最大手の江西銅業(00358)の親会社。江西銅業は高止まりする銅相場の恩恵を享受し、利益額は金融危機前の金額を超えた。このほかタングステン大手の湖南有色金属(02626)の親会社が12位。湖南有色金属は生産効率が改善し、2年連続の赤字から脱却した。さらに金では紫金砿業(02899)、モリブデンでは洛陽欒川(03993)などが強く、いずれも好業績を記録した。一方、川下の製品加工などでは民営企業も目立ち、中国稀土(00769)はレアアース製品で大手の一角。価格の先高感を追い風に、利益を急拡大させた。金属リサイクル最大手の中国金属再生資源(00773)は事業エリアの拡大を背景に、こちらも大幅増益を達成。一方、金属貿易では国有企業の中国五砿集団公司が圧倒的なシェアを誇る。傘下の五砿資源(01208)は買収効果が表れ、大幅な増収増益を計上している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
江西銅業 00358 76,139 48.0 4,988 109.3 117,961
H株 中国の銅最大手で、世界でも有数の規模を誇る。銅はエレクトロニクス製品に必須であり、スマートフォンなど高付加価値化の流れを見据え、需要が今後も増える見込み。加えて銅は現在のコストで見合う資源埋蔵量が年々減っており、価格の先高感は強い。金、銀、モリブデンなどの希少金属を生産しており、レアメタル価格上昇を恩恵も受けやすい。
中国稀土 00769 1,150 8.9 116 57.6 4,347
香港その他 蛍光体を含む希土類(レアアース)製品、高温セラミックなど耐火材の生産・販売を手がける民営企業。製品は本土を中心に、日本、欧州、米国向けに販売している。数少ないレアアース関連の香港上場銘柄として、市場の注目を集めやすい。ただ、レアアース資源権益を保有しているわけではないので注意が必要。
中国金属再生資源 00773 19,609 148.3 773 85.3 10,152
香港その他 廃金属のリサイクル業を手がける業界最大手の民営企業。中国の大手鉄鋼・非鉄金属メーカーを主要顧客としている点などが強み。華南地方を主力市場とし、華東、華北などへの本格進出を加速させている。金属需要と環境保護を両立させるため、政府は金属リサイクル産業を重要視。政策的な恩恵も期待できる。
中信資源控股 01205 28,098 66.0 960 852.3 11,091
レッドチップ 政府系の大手コングロマリット(中国中信集団、CITIC)で、資源関連の事業を担当している企業。オーストラリアでアルミニウム、石炭などの権益を保有しており、関連鉱石、製品を中国に輸入している。このほか、香港メインボード上場の中信大モン(01091)を通じて、中国最大のマンガン鉱、世界最大規模のマンガン製造・販売会社を保有していることも特徴。
五砿資源 01208 24,243 117.1 2,768 89.7 30,045
レッドチップ 中国最大の非鉄金属貿易会社「中国五砿集団」の傘下にある国有系企業。主要事業は、アルミナなど非鉄金属の貿易、アルミ加工など。国内で最大規模の輸入アルミナの供給能力を持つことなどが強み。米アルミ大手・アルコアと長期のアルミナ供給契約を交わすことで、資源の安定調達を図っている。最近では海外企業の積極買収が目立つ。
招金砿業 01818 4,098 46.5 1,202 59.4 48,736
H株 山東省を本拠とする地方政府系の総合金会社。金の採掘、加工、精錬、販売を手がける。保有する金鉱には国内最大規模の地下金鉱が含まれる。主要製品は「招金」ブランドの延べ棒で高い品質を誇る。売上のほとんどを金関連の事業から挙げており、金相場の影響を特に受けやすい点が特徴。
中国アルミ 02600 120,995 72.2 778 黒転 146,392
ハンセン アルミナ・一次アルミニウムの生産などで国内最大手の国有系企業。世界でも有数の規模を誇る。原材料のボーキサイトの採掘なども手がける。親会社は世界的な資源大手であるリオ・ティント社の大株主でもある。この点を活かした今後の発展戦略には注目できる。
湖南有色金属 02626 21,594 19.7 12 黒転 10,007
H株 中国の大手非鉄金属メーカー。扱う金属製品は比較的に希少価値のあるものが多い。資源の豊富な湖南省を本拠としており、さらに販売までの一貫した体制を構築していることが強み。加えて筆頭株主が非鉄金属商社の最大手に切り替わったことで、販路拡大も期待できる。
紫金砿業 02899 27,769 37.4 4,813 35.5 113,306
H株 福建省を地盤とする地元政府系の大手金生産企業。主力とする金のほか、銅、亜鉛鉱など幅広い金属を手がける。規模と産出量で国内最大級の露天掘り金鉱など、複数の金鉱・銅山を保有。海外の資源会社に出資するなど、積極的に海外事業も展開している。10年は福建省で起こした環境汚染事故によるマイナス影響が大きかった。
新疆新キン砿業 03833 1,125 59.4 350 54.3 8,995
H株 新疆ウイグル自治区で非鉄金属事業を展開する地元政府系企業。採掘から加工まで一貫した生産体制を構築している。ニッケル、銅、コバルト、金、銀、プラチナなどの金属を生産。主力製品は国内2位のシェアを持つ電気ニッケルなど。中国政府が進める西部大開発で成長が見込める同自治区を本拠としていることが強み。
洛陽欒川 03993 4,396 44.3 966 91.8 31,744
H株 河南省洛陽市の政府系企業で、中国屈指のモリブデンメーカー。採掘、浮遊選鉱、焙焼、精錬、川下分野の加工などを一貫して手がける。タングステンの生産にも力を入れており、保有する鉱山は世界有数のタングステン埋蔵量を誇る。
オルドスカシミア 900936 11,733 44.5 841 113.7 17,253
上海B株 内蒙古オルドス市の多角経営企業。世界最大級のカシミアメーカーとして知られているが、近年は金属(フェロシリコン、シリコン、シリコンマンガンなど)、石炭生産などのの資源事業を強化。JFEスチール、三井物産という日本企業と戦略提携し、合金鉄を生産する。フェロシリコンは世界最大規模の生産能力を誇る点にも注目。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月10日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

非鉄金属(業種別一覧) 鉱業(業種別一覧)

注目されるトピックス ~生産環境が厳しくなるなか、資源の安定確保がカギ~

当局による強力なマクロコントロールの成否:

当局は同業界に対するマクロコントロールを強化。過剰気味の生産能力、エネルギー高消費・高汚染という体質を改善させることが目的であり、老朽化した設備淘汰を進めている。さらに地域を跨いだ業界再編を推進しており、今後も国有企業を中心に再編の波が加速するものと考えられる。こうした政策が今後も有効に機能すれば、業界の抱える構造問題の解決、小規模企業の淘汰、有力企業の競争力向上などにもつながろう。

生産環境は厳しさを増す:

今後、メーカーの生産環境が厳しくなることが予想される。電力不足や旱魃により、生産に必要な大量のエネルギー・水の調達に影響が出る恐れがあるからだ。加えて、原材料である鉱石の調達難、価格上昇なども業績の回復基調に水をさす可能性もある。

安定的な資源確保ができるか:

中国の非鉄金属需要は都市化の進展、所得水準の向上、工業製品の高付加価値化などの流れを背景に、今後も増加傾向をたどると思われる。安定的な資源確保は業界全体にとって最重要項目であり、中国企業による海外での資源獲得の動きは一層強まろう。一方でレアメタル・レアアースを始めとする国内資源が豊富な金属については、輸出抑制、業界保護の政策が続くと考えられる。

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非鉄金属の生産量と貿易収支の推移

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