中国株 業界レポート

石炭業界 ~エネルギー源の中核を担う~

2011年6月13日

市場動向 ~世界最大の石炭生産・消費国、景気回復の流れに乗り、業績が大幅に拡大~

10年の業界規模:

石炭生産量:33.8億トン(前年比10.8%増)、輸入量:1.6億トン(同30.9%増)、売上高(1-11月):2.1兆元(同41.8%増)

中国は世界最大の石炭生産・消費国であるとともに、資源保有量も世界有数の規模を誇る。石炭は生産・消費両面から見て1次エネルギー全体の7割前後を占め、エネルギーバランス上で極めて重要な位置づけにある。10年は景気回復を背景に大口の電力需要が高まり、業界の業績は大幅に拡大。前年の減益から一転、11月までで6割の増益を記録した。積極的な設備投資、業界再編が効果を発揮し、引き続き生産量が拡大。それでも旺盛な需要を賄いきれず、輸入量は昨年に続いて大きく膨らんだ。石炭の国内価格は1年を通じてブレが大きかったが、全体的には上昇傾向。需要ピークの冬季には石炭不足の状況が顕在された。

今後は昨年のような景気拡大が見込まれないため、主力である電力、鉄鋼向け需要の伸びは鈍化していく可能性が高い。政府によるマクロコントロールも一層強まるだろう。ただ、最大のエネルギー源であるだけに、需要は底堅く、徐々に安定成長のトレンドに移行していくものと考えられる。

業界の特徴 ~エネルギーの中核産業、構造的問題の解決がカギ~

生産・販売面:

国内エネルギーの中核を担う石炭業界は基本的にドメスティックな産業であるものの、海外の石炭価格動向の影響も受ける。中国は世界有数の石炭資源を有しているが、資源は山西省など内陸部に集中しており、主要消費地である沿海部と離れている。このため、鉄道を中心とする輸送インフラが重要となるが、輸送能力は不足気味。生産面では数多くの企業が乱立し、業界集約度は低い。小規模炭鉱の乱立、エネルギー多消費・環境汚染など構造的問題を抱えており、業界・炭鉱の再編がなど課題。電力、鉄鋼、建材、化学向けの需要が全体の8割を占め、暖房用需要の増える冬季が繁忙期。電力、鉄鋼会社との価格交渉が特に重要であり、動向は石炭、並びに顧客である電力、鉄鋼などの業界双方に影響を与える。

国際面:

国内炭だけでは需要をまかなえないため、中国の石炭輸入は拡大しており、大半をオーストラリアから買い付けている。ただ、交渉相手国に比べ、中国側の寡占度は低いため、価格交渉力は弱く、輸入価格も上昇基調にある。このため海外の石炭会社買収に積極姿勢を続けている。

政策面:

炭鉱は中央政府管轄の「国有重点炭鉱」、地方政府の「地方炭鉱」、政府以外が管理する「郷鎮炭鉱」の3種類に分けられるが、政府の目が届かない小規模炭鉱が多い。このため石炭は政府の規制色こそ強いものの、中央政府のコントロールが末端まで届きにくい。このため政府はマクロコントロールを強化しており、炭鉱閉鎖などで具体的な目標を定めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~集約度の低い業界、大手の大半は政府系~

中国の石炭業界は業界集約度が低く、09年の原炭生産上位10社の総生産量は全体の3割強に過ぎない。しかし、景気回復で電力需要が伸びたことで、10年の業界は全体的に好業績となった。大手企業の大半は政府系であり、主要産炭地の企業が中心。最大手の神華能源(01088)は販売価格の上昇の恩恵を受け、引き続き2ケタの増収増益を確保。業界2位でコークス、石炭関連設備を強みとする中煤能源(01898)も売上高が前年比で30%以上増加した。ただ、外部からの石炭購入コストなどが嵩み、増益率は小幅。このほかの大手上場企業をみると、ヤン州煤業(01171)は大規模に展開するオーストラリア事業での為替収益も加わり、前年の2倍以上の利益を稼いだ。内モンゴル自治区を拠点とする内モンゴル伊泰石炭(900948)も大幅な増収増益と業績が大きく回復。専門商社である中国秦発(00866)も、石炭貿易量の拡大を受け、大幅増益を達成した。このほか、石炭業界には他業種からの参入もみられ、鉄鋼大手の傘下にある首鋼資源(00639)は大幅な生産能力の拡大が奏功した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
首鋼資源 00639 4,829 24.0 1,571 60.1 24,482
香港その他 山西省で石炭、コークスを生産する企業。北京を本拠とする鉄鋼大手「首鋼集団」が香港上場の首長国際(00697)などを通じて支配している。鉄鋼大手の傘下として、主要顧客である鉄鋼メーカーとの関係の深さが特徴。
中国秦発 00866 6,456 64.4 377 191.3 3,901
香港その他 石炭の大手商社。民営ではトップクラスの事業規模を誇る。国内各地の石炭会社に加え、オーストラリアやベトナムなどから石炭を調達。大秦鉄道などの陸運、自前のバルク船を通じた海運を通じて国内に輸送し、国内の電力会社などに販売する。現在、広東省珠海市で専用の石炭ふ頭を建設中。中国各地を網羅する石炭物流網の完成を目指す。
モンゴリアンマイニング 00975 1,882 314.3 406 485.6 34,605
香港その他 モンゴル国の民営石炭会社。同国では石炭の生産・販売量で民営ではトップクラスの規模を誇る。中国とモンゴル国の貿易は資源分野を中心に拡大中。モンゴル国では初めてとなる香港上場企業として、注目度は高い。
神華能源 01088 152,063 25.3 38,132 20.3 679,462
ハンセン 中央政府直轄の国内最大手の石炭会社。石炭の生産・販売、発電、鉄道や港の経営など、石炭関連の事業を総合的に手がけている点が特徴。内モンゴル自治区、陝西省などで複数の炭坑を経営。自社経営の鉄道網、専用港などを保有している点などが強み。最大手として業界再編の恩恵を享受できる可能性も。
ヤン州煤業 01171 33,944 64.2 9,281 125.4 172,600
H株 山東省を本拠とする地方政府系の大手石炭会社。採炭、選炭、販売など石炭事業を幅広く手がける。鉄道施設も保有するほか、メタノール生産など石炭化学事業も展開していることが特徴。海外、特にオーストラリアでの事業拡大に積極的である点に注目。上場企業の買収など、海外での実績を積み上げている。
恒鼎実業 01393 2,437 63.0 670 65.9 13,012
香港その他 四川省を本拠とする民営の石炭会社。貴州省、雲南省での炭鉱買収を進め、西南部でのプレゼンス拡大を目指す新興企業である。主要顧客は西南部の鉄鋼メーカー。企業規模は大手と比べれば見劣りする分、積極的な買収戦略を採用している。
永暉焦煤 01733 8,078 75.5 809 80.3 12,585
香港その他 中国大手のコークス輸入業者。民営の新興企業であり、原料炭の大部分をモンゴルで買い付けた後に、国内の選炭工場で加工、鉄鋼メーカーなどに販売するというビジネスモデルを築いている。モンゴルからのコークス輸入では最大のシェアを占めている点が強み。
中煤能源 01898 70,303 32.2 7,466 0.8 149,322
ハンセン 生産量ベースで国内2位の大手石炭会社。中央政府直轄の企業で、山西省を拠点とし、華東、華北、西北地区などの炭田に、坑内掘りと露天掘りの炭坑を保有する。石炭輸出やコークス生産、採掘関連設備の製造などが強み。特に関連設備ではトップクラスのシェアを持つ製品も多く、業界全体の生産拡大の恩恵を受ける可能性が高い。
内モンゴル伊泰石炭 900948 14,293 30.0 5,051 60.8 60,431
上海B株 内モンゴル自治区を本拠とする民営の大手炭鉱会社。原炭の生産から輸送・販売までを手がける。自治区内に複数の炭鉱を保有しており、同社の石炭は「伊泰」ブランドで有名。このほか石炭輸送鉄道も経営。上海B株の中では圧倒的な時価総額を誇る。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月10日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

石炭(業種別一覧)

注目されるトピックス ~電力向け石炭の価格動向が焦点~

西部を本拠とする企業を中心に、業界再編は継続か:

当局は今後5年の生産能力の増加量を5.6億トン(年平均3.2%増)に抑える方針で、これは06~10年の実績8.9億トン(年平均6.6%増)を大きく下回る、業界にとっては厳しい内容。今後は少ない拡大余地を各企業が奪い合うかたちになる。この際、すでに7割近い生産量を占める山西、陝西、内モンゴルの西部3省・自治区の優位性は今後強まると考えられる。これらの地域を本拠とする企業を中心に、引き続き業界再編が進む可能性が高い。

環境・安全対策の優劣が競争力を左右:

石炭はほかのエネルギー源に比べてエネルギー効率の低さ、二酸化炭素排出量の多さなどが目立つ。加えて炭鉱事故の多さなど安全面での課題も多い。このため、当局は業界に対して一層の環境・安全対策などを求めるものとみられる。完全に代替できるエネルギー源がないために、石炭は今後も中心的な役割を担い続けるが、企業にとっては石炭化学を含めた有効利用の推進が一層重要となる。変化への対応力が競争力を益々左右していこう。

価格動向しだいではリスク要因にも:

石炭価格の変動要因は多く、急激な価格変化はリスク要因にもなりうる。スケールメリットから業界大手が有利。国内価格は基本的に市場に基づいており、国内需給バランス、国際価格などが影響。特に需要の約半分を占める電力業界向けは重要分野だ。電力会社の深刻な収益環境とこれによる電力不足を背景に、石炭会社に対する官民からの値下げ圧力は強い。仮に値下げを免れても、発電量が減少すれば、石炭会社にとっても収益が減る。石炭の国際相場に上昇圧力がかかれば、石炭、電力の両業界の利益を保つかたちでの価格交渉は一層難しさを増す。

石炭(業種別一覧)

中国の石炭企業大手20社の一覧(09年実績ベース)
国内石炭価格の推移(泰皇島市)

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