中国株 業界レポート

船舶運輸・港湾業界 ~世界の貿易、港湾大国~

2011年6月13日

市場動向 ~世界景気の回復、旺盛な消費力を背景に輸出入ともに急増~

10年の業界規模:

輸出入総額:2兆9728億米ドル(前年比35%増)、主要沿海港湾貨物取扱量(1-11月):73.5億トン(同116%増)、コンテナ取扱量(1-11月):1億3298万TEU(同120%増)

中国は「世界の工場、市場」として、輸出入ともに世界有数の規模を誇る。海運・港湾業界は貿易の主役。10年は金融危機の影響も薄まり輸出が急回復。輸入も国内の旺盛な消費力を背景に伸び、貿易総額は3兆ドル目前まで急増するなど、V字回復を遂げた。国内の動向を示す港湾景気指数も概ね上昇基調を維持。海運・港湾会社ともに業績の回復傾向が顕著だった。国内主要港湾の貨物取扱量は11月までで大幅に増加。引き続き鉄鉱石など資源輸入が活発だったほか、製品輸出も増えた。中国は1億トン級の大型港湾が22カ所に上り、世界の取扱量上位20港湾に多くの名を連ねる。このほか、香港もアジアで歴史のある自由貿易港であり、中国本土と海外との中継貿易の拠点。11年は主要国の景気回復の鈍化、人民元高などにより、輸出が鈍る可能性も。一方、輸入は内需が引き続き堅調とみられるほか、資源高の影響も加わり、上振れ圧力が強い。強弱双方の要因が見られるが、引き続き安定成長のトレンドは確保しよう。

業界の特徴 ~外需、内需両方の影響を受けるセクター~

外需面:

船舶運輸・港湾はともに外需の影響を強く受けるセクター。輸送品目は大きくバルク・タンカー輸送、コンテナ輸送に分けられるが、需要はそれぞれ海外の資源価格・需給、輸出先である先進国などの景気動向に大きく左右される。さらに港湾業のコンテナ業務でも輸出向けが約8割以上であり、特に深セン港、寧波-舟山港は同比率が高い。

内需面:

船舶運輸・港湾業界は石炭や鉄鉱石など資源の輸入、ならびに産地から消費地への国内輸送について、中心的な役割を担っている。沿海部の港湾を利用した沿海輸送網、並びに長江など多くの大河を利用した河川輸送網が発達。石炭などの取扱量は内需による影響が大きい。

投資面:

貿易量の拡大にともない、船舶会社は保有船隊の規模拡大に積極的。その分輸送能力の過剰、競争激化による運賃価格の低下などへの懸念も強い。さらに巨額の設備投資負担、注文から引渡しまでの期間の長さなどもリスク要因。一方、中国の港湾建設は安定成長期に入っている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~政府系企業が中心、業績回復の傾向が目立つ~

船舶運輸・港湾ともに政府系企業が中心。船舶運輸は国有系大手の寡占状態で、それぞれ傘下に複数の上場企業を持つ。サブセクターごとに、遠洋輸送は中国遠洋運輸、沿海輸送は中国海運、フォワーダー・河川輸送は中国外運長航が強い。輸出の回復、バルク輸送の増加などを背景に運賃相場が持ち直し、大手各社の10年業績は回復傾向が目立った。遠洋輸送最大手の中国遠洋控股(01919)が黒字に転換。中国海運の傘下企業では、コンテナ輸送大手の中海コンテナ運輸(02866)がV字回復を遂げたほか、中海発展(01138)は主力とする石油・石炭輸送の市況が好転し、業績改善に寄与した。港湾企業も貨物取扱量の増加にともない、増収増益の決算が続いた。本土で全国展開する大手は中遠太平洋(01199)、招商局国際(00144)などの国有系が大半。多くの港湾は各地方政府が経営しており、天津港(03382)、大連港(02880)、廈門国際港務(03378)などが代表的な銘柄として挙げられる。さらに長江実業(00001)などの香港系コングロマリットが香港などで港湾事業を展開。このほか関連企業として、コンテナ製造の中国国際コンテナ(200039)、港湾機械の上海振華重工(900947)などがあり、両社はそれぞれの分野で世界トップクラスのシェア。造船業では広州広船国際(00317)などが挙げられる。多くが堅調な業績となったが、上海振華重工については金融危機の影響から抜け出せず、最終赤字に転落。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
招商局国際 00144 5,063 62.0 5,119 81.5 73,783
ハンセン 国務院系コングロマリット「招商局集団」の傘下にある港湾大手。香港、珠江、長江デルタ、環渤海地区などで、コンテナふ頭やバルクふ頭の運営、関連運輸などを手がける。新たな成長源を求めて、海外での港湾建設の強化、珠江船務(00560)との提携を通じた河川ふ頭事業への進出などを進めている点に注目。
中遠国際控股 00517 7,551 431.7 1,106 50.4 6,175
レッドチップ 海運最大手の中国遠洋運輸の傘下で、船舶関連の各種サービスを担当する会社。主力は船舶の建造・売買・リースの代理業務、海上保険、船舶・コンテナ用塗料など。塗料事業では関西ペイントと提携。親会社とのシナジー効果を最大限に発揮し、競争力の向上を目指す。
珠江船務 00560 964 20.3 119 18.0 1,467
レッドチップ 珠江デルタ地区の河川で船舶輸送を手がける地元政府系の企業。東莞市や仏山市など珠江デルタ地区の主要都市や香港でふ頭・貨物倉庫を経営。同地域でのフォワーダーサービス、コンテナ輸送なども手がけている。上場する河川輸送の専門業者は少なく、注目に値する。
中国外運 00598 42,547 54.0 616 55.2 7,946
H株 フォワーダー最大手の中国外運長航の傘下にある上場旗艦企業。主力のフォワーダーに加え、エクスプレスサービスなども手がける。華東地区を中心に、本土の主要都市で事業を展開。海運に加え、陸運、空運も手がけており、物流企業としての総合力に強み。
中海発展 01138 11,284 29.3 1,717 61.2 31,239
H株 沿海輸送最大手の中国海運を親会社に持つ大型船会社。主に原油・燃料油、石炭、乾貨物などの輸送を手がけ、沿海輸送に強みを持つ。12年末までに新船の投入が相次ぎ、輸送能力の大幅増強が見込まれている。中海コンテナ運輸(02866)とは兄弟会社の関係。
中遠太平洋 01199 3,019 27.8 2,443 109.4 37,911
ハンセン 海運最大手「中国遠洋運輸」が中国遠洋控股(01919)を通じて支配する港湾会社。環渤海、長江、珠江デルタ地区などでコンテナふ頭を経営するほか、スエズ運河やアントワープ、ギリシャなど海外の港湾会社にも出資。コンテナリース事業も展開している。
中国遠洋控股 01919 96,439 40.9 6,858 黒転 94,971
H株 中国の大手海運会社で、コンテナ船輸送、ばら積み船輸送、埠頭の運営管理、物流サービス、コンテナリースなどを手掛ける。子会社の中国遠洋物流を通じて物流サービスを、中遠太平洋(01199)を通じてふ頭業務などを営む。遠洋運輸の最大手として、中国の貿易拡大の恩恵を受けることができる銘柄といえる。
中海コンテナ運輸 02866 34,809 76.3 4,203 黒転 44,790
H株 中国海運の傘下で、コンテナ海上輸送などを担当する大手海運会社。国際・国内航路に、定期便・チャーター便を就航させている。使用船舶は自社保有のもののほか、賃借したものもある。中海発展(01138)とは兄弟会社の関係。
大連港 02880 3,317 9.9 834 10.7 18,062
H株 大連港を運営する企業。大連は東北振興策の中心となる都市であり、数少ない国際港として戦略的に重要。通常のコンテナターミナルに加え、自動車ターミナル、石油備蓄基地などの機能も備えていることなどが特徴。
廈門国際港務 03378 2,242 8.5 326 58.9 3,953
H株 福建省アモイ市の港湾を運営する地元政府系の企業。アモイ港にある複数のコンテナふ頭、バルクふ頭などを経営する。主な業務はコンテナ・バルクの積卸・保管、港湾関連サービスなど。アモイ港は経済関係の緊密化が進む対台湾貿易の窓口として、地理的な優位性を有する。
天津港 03382 13,114 20.3 497 54.1 10,161
レッドチップ 天津港で最大規模のコンテナふ頭を運営する地元政府系の企業。天津発展(00882)などが大株主となっている。コンテナバースに加え、非コンテナふ頭も経営しており、食糧、鋼材、鉄鉱石などの積卸業務にも従事。天津は3大海運センターの一角としての地位を有しており、政策的な恩恵も見込める。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月10日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

運輸・物流サービス(業種別一覧) 海運業(業種別一覧)

注目されるトピックス ~港湾整備や河川輸送網の発展に注目~

当局は港湾整備に引き続き積極的:

当局は今後5年の発展計画で合計440カ所の深水バースの建設目標を掲げるなど、港湾整備に積極姿勢を示している。同時に一層の国際競争力の向上に向け、上海を中心に、大連、天津を含めた3大海運センターの建設を目指す。港湾の貨物取扱能力の拡大は業界への追い風となろう。

内陸部の河川輸送網に注目:

近年、内陸部での河川輸送に注目が集まっている。元々、中国は複数の大河を有しており、長江を利用した貨物輸送量は年間15億トンと世界トップの規模。それでも、石炭などの資源をはじめとした輸送需要には足りないため、当局は10年1月に河川輸送に関する発展計画を発表。20年までに全体の輸送量を30億トン規模に引き上げるなどの目標を掲げている。

主要国の景気動向、原油相場、通商環境をはじめリスク要因は多い:

米国、欧州など主要国の景気しだいでは、海運・港湾業界の業績に大きなブレが生じるリスクがある。加えて安定成長に不可欠である良好な通商環境についても、今後は貿易摩擦や人民元高により悪化する可能性が指摘できる。原油高は海運会社のコスト高に直結。これらのリスク要因には十分留意する必要があるだろう。

運輸・物流サービス(業種別一覧) 海運業(業種別一覧)

中国の貿易取扱額上位10税関
貿易取扱額上位10税関(10年実績)
港湾景気指数の推移

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