中国株 業界レポート

航空関連業界 ~国際線の成長余地は大きい~

2011年6月14日

市場動向 ~国内外の景気回復を背景に、過去最高の利益を計上~

10年の業界規模:

航空旅客輸送量:2億6699万人(前年比16%増)、貨物輸送量:557万トン(同25%増)、営業収益:4115億元(同37%増)

国内外の景気回復傾向を背景に、航空関連業界の業績は大幅に拡大した。10年は旅客、貨物輸送の両方で需要が増大。主力である国内需要が引き続き高い伸びを示したほか、国際線の需要もいち早く金融危機の影響を脱し、各指標の伸び率はいずれも国内線を上回った。原油高によるコスト増圧力も、人民元高がある程度相殺。航空、空港などを含む業界全体の営業収益は4000億元を超え、税引き前利益も過去最高の437億元まで達した。なお、空港利用の各指数も軒並み過去最高を更新。旅客取扱量は5億6431万人、貨物は1129万トンに上った。業界の先行きを見通すと、原油高の圧力が次第に増す可能性は否定できない。特に高速鉄道との競争を迫られる国内の旅客輸送は成長鈍化のシナリオも考えられる。ただ、市民の所得水準の向上、人民元高の傾向は続くとみられ、国際線の成長見通しは明るい。航空監督当局によると、11年の旅客、貨物輸送量の伸び率はいずれも10%を超える見通しだ。

業界の特徴 ~外部要因に左右されやすいセクター~

主力事業面:

業界は実際の輸送を担う航空会社、空港運営を担う空港会社、さらに設備・燃料や関連サービスを提供する関連会社の3つに大きく分けられる。いずれも国有系が中心であり、業界の寡占度は高い。航空会社は繁閑の差が大きく、「春運」(旧正月の交通ダイヤ)など大型連休前後に旅客需要のピークを迎える。さらに国内・国際線ともに、天候状況、社会・治安情勢などの影響を受けやすい。航空機、燃料を海外から調達していることから外貨建て負債の比率が大きく、人民元高に傾くと有利。巨額の設備投資を必要とするため、強い財務基盤が求められる。燃料費がコストの大半を占めており、デリバティブなどでヘッジしているものの、原油相場の影響を非常に受けやすい。全体的に外部要因に左右されやすいセクターといえる。本土には合計175の空港があり、利用者数が年間1000万人を超える空港は16港を数える。北京、上海、広州の3大都市の空港が主要ハブ空港の役割を果たしている。3都市の空港の旅客、貨物取扱総量は凡そ、それぞれ全体の3割、6割を占める。

国際面:

中国には世界の主要航空会社の大半が乗り入れている。国際線(香港・マカオ路線を含む)の全体に占める割合を取扱量ベースでみると、10年で旅客が1割弱、貨物が3割強に過ぎず、今後の成長余地は大きい。

政策面:

一種の官業であり、政府による規制も厳しく、参入障壁も高い。航空料金は基本的に政府指導価格によるものの、その一部である燃油サーチャージは、徴収価格、徴収するかどうかを含め国が一元的に決定している。燃料油の価格基準も国が決定。09年からサーチャージと燃料油価格を連動させる新制度が導入されており、収益・コスト面で、国が価格決定に大きな役割を果たしている。空港使用料も同様に、市場と政府が決定する部分に分かれる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~主役である国有大手は軒並み好業績を記録~

02年の再編を経て中国国際航空(00753)、中国東方航空(00670)、中国南方航空(01055)の国有系3社が中心とする陣容となった。3社は航空機保有ベースで全体の7割弱を占め、国際線をほぼ独占して手がける。10年の業績をみると、中国東方航空と中国南方航空の2社が特に大幅な増益を達成。両社ともに過年度までの業績が原油高の影響で特に悪化していた分、回復ペースが目立った。中国国際航空は国際線の比率の高さ、コスト競争力などの優位性を発揮し、3社でトップの利益額を計上した。地方航空会社をみると、山東航空(200152)などの地場系大手は大半が好業績を記録。海南航空(900945)は地方航空会社ではあるものの、3大航空会社に次ぐ地位にまで成長している。このほか、香港ではフラッグキャリアの国泰航空(00293)が業績を拡大。需要の持続的回復や資産売却益などが貢献した。

主要空港会社をみると、香港上場で首都北京の玄関口である北京首都国際機場(00694)が旺盛な航空需要を取り込み、増益率は100%を超えた。関連分野をみると、国有系の中国航空機材進出口公司、中国航空油料集団公司、中国民航信息網路(00696)の3社がそれぞれ航空設備、燃料油供給、空港システムについて独占的に担当する体制。特に中国民航信息網路は主力の航空券予約サービスで国際線予約が急回復した恩恵を受け、2ケタの増収増益を継続した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
国泰航空 00293 77,993 33.7 12,239 199.3 71,360
ハンセン 1946年に創設された香港を代表する航空会社(フラッグ・キャリア)。これまでに幾度も航空会社に関する国際的な賞を獲得するなど、海外からの評価が高い。航空連合「ワンワールド」に加盟。本土の大手航空会社である中国国際航空と資本を持ち合い、幅広く提携していることが特徴。
海南美蘭国際機場 00357 487 21.6 239 31.0 3,880
H株 海南美蘭国際空港を運営する地元政府系企業。10年の旅客取扱量は877万人で国内19番目。同じ海南省で観光地として有名な三亜市の国際空港に対して、買収を進めている。これが完了すれば同空港との競合問題が解決し、経営規模を拡大できる。海南省の観光需要の恩恵を受ける銘柄。
中国東方航空 00670 73,804 89.3 4,958 2837.8 57,925
H株 上海を本拠とする中国三大航空会社の一角。10年本決算は主力の航空輸送需要が大きく増加し、大幅な増収増益を達成。1-3月期も2ケタの増収増益を確保した。輸送需要の大きい華東地区を主力市場としている点が強み。加えて足元の人民元高が利益を押し上げる要因になりうる。
北京首都国際機場 00694 5,777 16.4 595 101.1 15,288
H株 北京の国際空港である北京首都国際空港を運営する国有系企業。10年の旅客数は7395万人を超え、国内1位、世界でも上位に入る。このほか、貨物取扱量も国内2番目の規模。国際線の旅客数増加で、非航空事業(ターミナルビル内の免税店など)の成長性に期待できる。今後のターミナル施設の拡張計画が中長期的なプラス材料に。
中国民航信息網路 00696 3,054 16.6 897 15.6 13,548
H株 航空関連のITシステムを独占的に供給する国有系企業。主力は航空券の予約販売システム、搭乗手続き・搭乗・預荷物管理などのシステムなど。3大航空会社の親会社が、それぞれ大株主となっている点も特徴。
中国国際航空 00753 82,488 60.5 12,005 147.3 122,010
H株 北京を本拠とするナショナル・フラッグ・キャリア。北京首都国際空港をハブ空港とする。大手3社のなかで国際線の比率が最も高いことが特徴。国内で高い知名度を誇るほか、財務体質では他の2社よりも良好。主要株主である香港の国泰航空との業務提携、上海拠点の機能強化などを通じて、北京以外でのシェア拡大に努めていることなどが強み。
中国南方航空 01055 76,495 39.6 5,795 1656.1 71,866
H株 広州市の白雲国際空港をハブ空港とする大手航空会社。航空会社コードは「CZ」で、航空連合「スカイチーム」に加盟している。3大航空会社のなかでも、保有航空機、航路、旅客、貨物取扱量など各分野で国内最大のシェアを持つ点が強み。特に華南、西南地方で高いシェアを誇る。
山東航空 200152 7,293 35.9 634 109.9 3,916
深センB株 山東省済南市の国際空港を拠点とする地方航空会社。航空会社コードは「SC」で、中国国際航空の傘下にある。青島市では航空貨物物流センターを運営。ホテル経営も手がける。四川航空、済南国際機場、中国民航信息など複数の上場企業に出資している。
海南航空 900945 21,706 39.6 3,014 800.6 34,053
上海B株 海南省の航空会社。地方航空会社でありながら、全国規模で国内・国際線を運航し、3大航空会社に次ぐ規模まで成長している点に注目。海南省は中国有数のリゾート地であり、所得拡大を背景に今後も中国各地から観光客が訪れる見込み。海南省は島であるため、高速鉄道との競合もない。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月13日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

空運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~国際線の成長に期待、安定成長に向け新5 カ年計画を制定~

国内線は高速鉄道網との棲み分けは可能、国際線の成長余地は大きい:

旅客、貨物の国内輸送需要は増加のペースにあり、高速・遠距離輸送へのニーズは高い。中国では高速鉄道網の整備が急ピッチに進んでいるが、鉄道と航空は価格帯、ユーザー層ともに重ならない部分が多く、両者の棲み分けは可能。加えて今後は国際線需要の拡大余地が大きい。海外との貿易協定締結で貨物需要の伸びが期待できるほか、所得水準の上昇、余暇の多様化、海外ビザの緩和、人民元高などを背景に、旅客需要の伸びも見込めるからだ。

航空業界の新5カ年計画:

15年までの航空業界の発展に大きな影響を与える新5カ年計画が発表された。これによると、政府は今後5年で年間の旅客輸送量を4億5000万人、貨物輸送量を900万トンまで引き上げる計画。年率の増加率は10~11%を想定している。加えて空港発着枠量の不足を解決するために、空港数を230カ所まで増やす方針。業界全体の安定成長に向け、政策的な環境も整っている。

原油価格、国際的な不確定要因などがリスク要素:

航空会社にとって最大のリスク要因は原油価格の動向だ。原油価格が急騰した08年は航空会社が軒並み巨額の赤字を計上し、国は大手3社への資本注入を強いられた。デリバティブでヘッジしているものの、相場が読みと逆方向に向かった場合は多額の評価損を計上するリスクもあり、原油価格の変動は常に注意を要する。さらに新型インフルエンザ、地震、紛争などの多くの不確定リスクが付きまとう。

空運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

国内空港の旅客・貨物取扱量の上位空港一覧(10年度実績)
国内航空会社による旅客輸送推移
国内航空会社による貨物輸送推移
2020年までの空港整備計画

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