中国株 業界レポート

石油・石油化学業界 ~エネルギー・原材料の中核セクター~

2011年6月20日

市場動向 ~旺盛な消費を満たすため、原油輸入が大幅増~

10年の業界規模:

総生産高:8.88兆元(前年比34.1%増)、原油生産量:2.03億トン(同6.9%増)、輸入量:2.4億トン(同17.4%増)、見掛消費量:4.49億トン(同12.3%増)

中国は世界有数の石油消費国。主要なエネルギー源、原材料として最重要資源に位置づけられる石油は、国内の経済成長を受け、需要は常に増加基調を維持している。景気回復、モータリゼーションの進展などを背景に、10年の原油の見掛消費量は前年に比べ12.3%増、原油加工量も13.4%増と高い伸びを示した。旺盛な需要をまかなうため、国内の油田は7%近い増産に成功。これでも消費量には遠く及ばないため、原油輸入量は2.4億トン、輸入依存度は55%に拡大した。国内外で原油高が継続するなか、石油製品の販売価格も一定の上昇幅を確保。石油化学の市場規模は初めて米国を抜き去り世界第1位となるなど、業界全体の規模拡大が直接業績に結びつき、増収増益に転じた。11年も引き続き原油相場の上昇要因は多い。原油高は川上の石油開発には恩恵をもたらす可能性が高い。一方、川中・川下の石油精製・石油化学はインフレ抑制策との兼ね合いで値上げがより困難になる恐れがある。

業界の特徴 ~国有大手による寡占市場~

生産・販売面:

業界は大きく、①油田探査・採掘、原油生産などの川上、②原油からガソリンなど石油製品を生産する石油精製などの川中、③石油製品の小売や、ナフサをはじめとする石油製品からプラスチックなどの石油化学製品を製造する川下――の分野に分けられる。いずれも概ね国有大手による寡占状態。原油の販売価格は国際相場に大きく影響されるものの、価格上昇はこれを調達して石油製品を生産する川中の石油精製、さらに石油化学にとってコスト増となるため、川上と川中・川下の両方の収益向上を両立させることは容易ではない。石油精製は過剰気味の生産能力に加え、販売価格の低さなどの問題を抱えている。主力製品であるガソリン需要は自動車普及にともない拡大傾向。石油化学製品は基礎材料として幅広い製造業で使用されており、製造業全体の景気動向に左右される。

国際面:

中国は政府と国有石油会社が一体となり、海外石油資源の獲得の動きを加速化。10年だけで300億米ドルを超える資金を買収に費やした。これらの努力が奏功し、同年の海外での原油生産量は前年比15%増、6000万トンを突破した。

政策面:

政府は石油・石油化学業界を重要産業として位置づけており、資源開発などで積極的に支援している。一方で規制も厳しく、石油製品(特にガソリン)の販売価格は市民生活への影響が考慮され、政府により低水準に抑えられるなど、価格の市場・自由化は道半ば。川上分野では価格が一定水準を上回った場合に、「特別収益金」を石油会社から徴収するほか、石油製品についても消費税が課されている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~3大石油会社による寡占状態~

中国の石油・石油化学業界は国有系の3大石油会社が市場を寡占。このなかでも中国石油天然気(00857)と中国石油化工(00386)の両巨頭は規模が飛びぬけている。両社とも幅広く事業を手がけるものの、それぞれ中国石油天然気は川上、中国石油化工は川中・川下で大きなシェアを持つ。10年は両社いずれも景気回復にともなう石油消費量の増加を背景に、売上高を前年比で40%以上拡大させた。ただ、石油製品価格の引き上げ幅が足りず、中国石油化工の増益率はやや小さい。一方、両社を追いかける中国海洋石油(00883)は海底油田で圧倒的なシェアを誇る企業。川上に特化していることから、原油高の恩恵をそのまま享受し、過去最高の利益を計上した。3大石油会社はそれぞれ親会社を含めたグループ全体として複数の上場企業を抱える。中国石油化工に属する上場企業では、石油加工専門の中国石化上海石油化工(00338)と化学繊維大手の中国石化儀征化繊(01033)が製品価格の上昇などを背景に大幅増益を達成。一方で中石化冠徳(00934)は貿易事業を縮小させたために、減収減益を強いられた。中国海洋石油の兄弟会社である中海油田服務(02883)と中海石油化学(03983)も、それぞれ主力とする海底油田開発、化学肥料の生産で安定的な業績を確保した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
崑崙能源 00135 7,900 47.1 2,114 96.6 63,015
レッドチップ 中国石油天然気(00857)の傘下にある国際石油開発会社。油田の探査や原油・天然ガスの生産を手がける。本土のほか、カザフスタン、タイなど各国で事業展開。グループ戦略の一環で天然ガス関連事業の中核企業と位置づけられており、天然ガスの需要拡大の恩恵が期待できる銘柄。
中国石化上海石油化工 00338 72,096 52.3 2,772 74.2 57,467
H株 中国石油化工(00386)の傘下にある大手の石油化学会社。上海市を本拠とし、主力製品は合成繊維、樹脂・プラスチック、中間製品、燃料油など。特にエチレンに強みを持つ。
中国石油化工 00386 1,876,758 42.6 71,800 13.7 807,359
ハンセン 3大石油会社の一角を占める超大型の総合石油会社。川中の石油精製・燃料油、石油化学製品、川下の石油製品販売では、国内最大のシェアを持つ。このほか川上分野である油ガス田の探査・開発、原油・天然ガスの生産・貿易も手がけており、国内有数の油田である「勝利油田」などを保有。さらに、中国石化上海石油化工(00338)、中石化冠徳(00934)、中国石化儀征化繊(01033)など複数の上場企業を傘下に収めている。
中国石油天然気 00857 1,465,415 43.8 139,992 35.4 2,330,505
ハンセン 3大石油会社の一角を占める中国最大級の石油会社。国内最大の「大慶油田」を保有するなど、油田、天然ガス田の探査、採掘など川上分野では圧倒的な規模を誇る点が強み。燃料油や石油化学製品などの川中分野への進出も積極的。油田探査は国内のほか、中国企業の尖兵として海外での資源獲得で大きな存在感を持つ。今後は天然ガスをより強化していく方針。
中国海洋石油 00883 183,053 74.0 54,410 84.5 797,792
ハンセン 川上分野の原油・天然ガス資源の開発で特に海底資源に強みを持つ、大手の石油・天然ガス会社。3大石油会社の一角を占める。渤海湾、南シナ海の西部・東部、東シナ海など近海のほか、遠く海外の海域まで開発範囲を広げている。10年に米国のオイルシェール事業に参入。非在来型の化石燃料を強化する方針で、今後の動向が注目される。
中石化冠徳 00934 14,456 ▲22.0 171 ▲0.6 4,282
レッドチップ 中国石油化工(00386)の傘下にある石油関連の物流・貿易会社。主要事業は広東省恵州市での原油ふ頭・関連設備の運営や荷役・備蓄、原油・燃料油・石油化学製品の貿易など。親会社グループが最大の原料仕入先と販売先になっている点が特徴。将来性が見込める物流事業に経営資源を集約させていく方針。
中国石化儀征化繊 01033 16,348 23.6 1,231 219.0 32,217
H株 中国石油化工(00386)の傘下にある国内最大級の化学繊維メーカー。繊維産業が盛んな江蘇省を本拠とする。主力のポリエステルは国内最大、世界でも有数の生産量を誇る点が強み。主要原材料であるPTAなども生産していることが特徴。繊維・アパレルの需要の影響を大きく受ける銘柄。
中海油田服務 02883 17,561 ▲1.8 4,128 31.7 81,274
H株 海底油田サービスの大手企業。海底油田の開発で最大手の中国海洋石油(00883)とは兄弟会社の関係。掘削リグ、各種作業船、石油タンカー、物理探査船などを保有し、掘削サービス、測定、掘削流体の供給などの各種サービスを展開。ノルウェーの同業大手に対する買収をテコに、一層の競争力の向上を目指す。
中海石油化学 03983 6,867 18.5 1,175 19.4 28,352
H株 国内最大手の窒素肥料メーカー。代表的な窒素肥料である尿素を生産、販売しており、同社の「富島」ブランドは国内で有名。原料である天然ガスを兄弟会社の中国海洋石油(00883)から安定的に調達できる点が強み。もう一つの主要原料であるメタノールの生産も行う。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月17日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル

石油・ガス(業種別一覧) 化学(業種別一覧)

注目されるトピックス ~資源確保、販売価格の動向などに引き続き注目~

川上では資源確保の動きがさらに加速か:

石油の海外依存度の上昇は今後も避けられない見込み。業界は官民挙げて海外資源の獲得に巨額の投資を続ける一方、輸入先の多様化も進める。地域別では地政学的リスクも大きい中東・北アフリカ以外からのシェアを拡大。製品別ではオイルサンド、オイルシェールをはじめとした非在来型石油の拡大が見込めよう。同分野が競争力向上の源泉となる。

川中・川下では販売価格の動向に注目:

石油製品は政府による統制価格のため、川中・川下の企業業績は政策・価格動向に大きく左右される。概ね価格は低めに設定されており、石油精製・販売は常に採算割れリスクが付きまとう。ただ、当局は年内にも価格の市場化を進める方針。「国際相場で22営業日平均の変動幅が平均4%達した場合に見直す」という現行の基準を緩めるとみられ、実現すれば、業界にとって大きな追い風となる。

国際原油価格の変動要因は大きい:

国際原油価格の動向は業界全体に大きな影響を与える。国際原油価格は基本的な需給関係に加え、在庫、リスクマネー、米ドル為替の状況など多くの変動要因があり、直近では中東・北アフリカ情勢が大きなリスク要因。これらのリスクヘッジが経営の安定性を大きく左右する。

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原油の国内生産量、輸入量の推移(万トン)
WTI原油価格の推移(米ドル/1バレル)

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