中国株 業界レポート

繊維・アパレル業界 ~圧倒的な繊維大国~

2011年6月20日

市場動向 ~国内外の景気回復を背景に販売を伸ばす~

10年の業界規模:

輸出額:2065億米ドル(前年比21%増)、売上高:4兆6900億元、利益額:2550億元

中国の繊維・アパレル業界は世界で圧倒的な規模を誇り、主要繊維である化学繊維は世界全体の6割以上を生産している。10年は世界的な景気回復の追い風に乗り、輸出額が前年比で2割増とV字回復を達成。主力の国内市場も前年に続いて販売状況は良好だった。業界全体の売上高は4兆6900億元、利益額は2550億元を記録。この5年で年平均18%の増収ペースだった。国内外ともに売り上げが概ね堅調である一方、コスト面の圧力も増大。天然繊維では綿花などの原材料が年間を通じて上昇基調。化学繊維でも原材料である原油の上昇圧力は強い。加えて国内のインフレに追いつくために給与水準を引き上げる必要があり、輸出にしても人民元高による価格競争力の低下懸念が残る。こうした懸念は今後も継続すると考えられ、生き残りをかけて国内では業界再編が進むだろう。ただ、上場企業などの競争力のある大手にとっては、逆にチャンスにもなり得る。

業界の特徴 ~典型的な労働集約・輸出型の重要産業~

生産・販売面:

繊維・アパレル業界は繊維から糸、生地などを生産する川上の紡績・紡織から、衣類を製作する川中のアパレル、さらに川下の小売り、関連産業である紡績機械など多岐に渡り、数多くの企業がひしめく。生産地は沿海部に集中しており、広東、浙江、江蘇、山東、福建、江西の6省で全体の多数を占める。全体的に過剰気味の生産能力、低い技術・ブランド力などが課題。収益性も概ね低く、主要原材料の原油、綿花などは輸入比率が年々高まっており、国際価格の動向は人件費とともにコストに直結する。一方、香港のアパレル産業は歴史が古く、アジア有数の貿易拠点としての地位を有する。

国際面:

典型的な加工貿易・輸出型産業であり、価格競争、スケールメリットなどに強み。地場系、外資など多くの企業が広東省など沿海各省を拠点に、製品を生産、世界各国に輸出している。輸出先の上位は欧州、米国、日本、香港などで、中国製は圧倒的なシェア。このため貿易問題に発展しやすく、人民元高の動向も含め、輸出環境を左右する要因は多い。

政策面:

同業界は非常に高い国際競争力を持つ一方、労働集約的な産業であるために雇用吸収力が大きく、経済全体に与える影響は大きい。このため政府は重要産業と位置づけており、業界全体の高度化を模索している。税還付率をツールに輸出環境のコントロールに努めるほか、過剰気味の生産能力の淘汰・整備、業界再編、製品の高付加価値、地場系ブランドの発展などを支援している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~川上では世界有数の規模を誇る企業も、アパレルでは民営企業が活躍~

同業界は民営、政府系、外資を含め数多くの企業が厳しい競争を繰り広げており、集約度は低い。川上の紡績・紡織をみると、化学繊維、天然繊維ともに需要が拡大し、販売価格も上昇。化学繊維で最大手の中国石化儀征化繊(01033)が大幅増益となった。一方の天然繊維は綿で魏橋紡織(02698)、丸編みで香港系の福田実業(00420)、カシミアでオルドスリソーシズ(900936)などの民営企業が活躍しており、いずれも直近の本決算で増益を確保。これら大手は世界でも有数の生産量を誇る企業が多い。川中のアパレル製造は大手になると、川下の販売店まで展開しており、民営企業が目立つ。思捷環球控股(00330)は主力市場の欧州の景気悪化を背景に、減収減益が続いた。一方、香港系の佐丹奴国際(00709)は中華圏を主力とするために業績を大きく拡大。本土系ではダウンジャケット最大手の波司登(03998)、紳士服大手の中国利郎(01234)、婦人靴最大手の百麗国際(01880)などが高いブランド力を生かし、増益基調が続く。スポーツアパレルでは、業界のパイオニアである李寧(02331)に加え、後を追う安踏体育用品(02020)、中国動向(03818)などの大手がいずれも増益を確保。ただ、アパレル業界全体をみると、原材料価格・人件費の上昇を背景に生産コストが嵩んだほか、販売競争も熾烈。対応力の差で減益、あるいは小幅増益にとどまった企業もみられた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
思捷環球控股 00330 29,389 ▲2.2 3,682 ▲10.9 33,100
ハンセン 「ESPRIT」ブランドを展開する大手アパレルメーカー。女性物、男性物、子供服、アクセサリーなど幅広くカバーする国際的な著名ブランドに成長している点が強み。売上高の8割以上を欧州市場が占めることから、欧州景気、ユーロ相場の動向の影響を強く受ける。
経緯紡織機械 00350 6,988 117.2 245 黒転 6,934
H株 国有系の大手紡織機械メーカー。天然繊維・化学繊維用の紡績機や織機、関連部品を製造する。国内各地で販売するほか、海外にも輸出している。不動産業への参入経験、自動車メーカー、金融会社への出資など、事業の多角化を志向している点が特徴。
利豊 00494 108,129 18.8 3,727 27.0 114,845
ハンセン 香港を代表する大手商社。アパレル産業の歴史が古い香港にあって、アジア有数のアパレル貿易商社として抜群の知名度を誇る。高品質とコスト競争力を有したサプライチェーンを掌握し、設計・開発から、原材料の仕入、委託生産工場の選択、生産・品質管理、出荷までを一貫して手がけられる点が強み。商品は主に米国や欧州を中心に輸出している。
佐丹奴国際 00709 4,122 11.8 468 86.5 9,717
香港その他 アジア有数のファストファッションブランド「Giordano」を展開する香港系企業。香港・マカオ、本土、台湾、シンガポール、東南アジアなどで事業を展開。中華圏では高いブランド力、大規模な販売網を有している点が強み。所得水準の向上、ファッション意識の高まりというトレンドのなかで恩恵を受ける可能性が高い。
中国石化儀征化繊 01033 16,348 23.6 1,231 219.0 32,215
H株 江蘇省に本拠を置く化学繊維メーカー。主力のポリエステルは国内最大、世界でも有数の生産量を誇る。ポリエステルの主要原材料であるPTAなども生産していることが特徴。親会社は国内最大手の石油化学企業である中央政府系の中国石油化工(00386)。
百麗国際 01880 23,706 20.0 3,425 35.2 121,959
ハンセン 婦人靴で国内最大級のシェアを誇る民営企業。婦人用革靴では国内トップのシェアを誇り、同社ブランドの「Belle」などは販売ランキングで上位を独占。紳士用革靴でも同社の「Senda」が上位に入る。スポーツ衣料も手がけており、「NIKE」ブランド製品の販売では国内最大手。製品デザインから最終販売までの一貫体制を築いていることが強み。
安踏体育用品 02020 7,408 26.1 1,551 24.0 34,168
香港その他 民営の大手スポーツ用品メーカー。主力は「ANTA」ブランドのスポーツシューズ・ウエアなど。国際ブランド「FILA」の中国における事業も買収している。イメージキャラクターとして有名スポーツ選手を起用。中国オリンピック委員会とパートナーシップ協定を交わすなど、広告宣伝活動を強化している点が特徴。
李寧 02331 9,479 13.0 1,108 17.4 13,703
香港その他 スポーツ用品のリーディングカンパニー。「LI-NING」ブランドで知られ、ロサンゼルス五輪の体操金メダリストである李寧・主席が創業した。国内各地で同ブランドの販売店を直営やフランチャイズで展開しており、主力商品はシューズ、ウエアなど。フランスの著名ブランド「AIGLE」をはじめ、複数ブランドの製品も販売している。
魏橋紡織 02698 17,887 24.8 1,627 82.4 6,163
H株 山東省の大型民営企業。綿紡績、生機(=きばた。染色加工前の織物)、デニムなどの生産販売を主力とし、綿紡績では国内最大のシェアを誇る。国内外の大手を含め取引先は非常に多い。主要取引先である伊藤忠商事とは複数の合弁会社を展開している。
波司登 03998 5,738 34.2 1,079 44.2 15,389
香港その他 ダウンジャケットなど羽毛服の国内最大手。研究開発、デザイン、原材料の仕入れ、販売までを一貫して手がける点が特徴。OEMや男性物アパレル事業も展開。同社製品は「波司登」などのブランド名で知られる。課題となっていた冬以外のシーズンについても、オールシーズン衣料を強化しており、その進展が注目される。
オルドスリソーシズ 900936 11,733 44.5 841 113.7 17,951
上海B株 内蒙古オルドス市の大型民営企業。世界最大級のカシミアメーカーとして知られ、「鄂爾多斯」(オルドス)や「1436」ブランドのアパレル製品を販売。欧米、日本などにも輸出している。一方で経営の多角化を図り、金属・石炭生産、発電事業、上下水道事業などにも従事している。

売上高・純利益は思捷環球控股(00330)が10年6月本決算、波司登(03998)が10年3月本決算。このほかはすべて10年12月本決算。 単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月13日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

衣服・履物・アパレル(業種別一覧)

注目されるトピックス ~コスト増加の環境下では、直接投資、内陸部市場などが注目点に~

生産コストの増加圧力は続く:

原材料価格は、昨年の綿花、原油相場の高騰にみられるように上昇要因が多い。加えて、政府は政策として最低賃金の引き上げを明言しており、人件費の増加傾向も続くとみた方がよい。生産コストの増加圧力を受け、業界は一層体力勝負の様相を呈していくだろう。川上の繊維企業は自前での原材料調達能力、川中・川下のアパレル企業は販売価格への転嫁能力が生き残りを左右するものと考えられる。

主力の輸出は懸念要素も残る:

輸出は主力とする先進国の景気動向しだいだが、米欧の景気先行きを考えると不透明感は拭いきれない。加えて、人民元高が一層進めば、輸出環境は基本的に厳しいものと考えられる。ただ、企業の海外展開を考える際、今後は単なる輸出ではなく、直接投資をともなった動きに注目するべき。中国企業によるレナウン買収をはじめとした実例が出てきており、単なる輸出企業から脱却できるかがカギとなる。

内需の高度化、多様化が一層進むことに:

輸出依存度の高い同業界にとって、内需拡大は安定的な成長にとって不可欠。こうしたなか、国内では大都市を中心にブランド志向が一層拡大。これを狙って欧米の高級ブランドが攻勢を強めており、一部は香港上場を果たして知名度向上を狙っている。一方、中小都市・内陸部でも、多様なアパレル需要が拡大中。地場系ブランドにとって、単純な価格競争力だけでは早晩淘汰される可能性が高い。中小都市・内陸部の需要をうまく取り込む戦略を打ち出せるかがカギとなろう。

衣服・履物・アパレル(業種別一覧)

世界の化学繊維生産シェア(10年、%)
上場する主要アパレル企業の自主ブランドを一部抜粋

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