中国株 業界レポート

電力・電力設備・新エネルギー業界 ~石炭火力の依存度低下の流れへ~

2011年6月20日

市場動向 ~電力消費は伸びるも、石炭価格の上昇が重しに~

10年の業界規模:

発電容量:9億6219万kW(前年比10%増)、発電量:4兆1413億kWh(同13%増)、消費電力量:4兆1923億kWh(同15%増)、設備投資額:7051億元(同8%減)

中国の発電容量は9.6億kWに達し、世界有数の規模を誇る。10年は景気回復にともない特に大口の工業セクター向け需要が伸び、電力消費量は4兆kWhの大台を突破。発電設備の増強に努め、発電量を4兆kWh台の水準に乗せたほか、下期からは一部製造業に対して電力供給の制限措置を実施。これでも一部で需給バランスの悪化が避けられなかった。電力需要の増加と歩調を合わせ、川上の発電、川下の送電部門はともに11月までで前年比20%前後の増収を確保。送電部門は大幅増益に転じたが、発電部門は主力燃料の石炭価格の上昇が重しとなり、小幅増益にとどまった。一方、10年の設備投資額は前年比で8%減少。前年の積極投資の反動に加え、主力の火力発電の設備投資が抑制傾向となったことが影響した。ただ、政策の後押しもあり、再生可能エネルギーの分野は積極投資が続き、特に風力発電の伸びが著しかった。11年は電力消費の伸びがやや鈍化の傾向か。石炭価格の高止まりが続くと考えられるなか、電力価格引き上げの先行きは不透明。火力発電会社の厳しい経営環境、設備投資の抑制傾向が持続する可能性はある。ただ、当局は再生可能エネルギー、スマートグリッドなどを重要視しており、この分野の投資は一層活発になるという期待が高い。

業界の特徴 ~発電源は石炭火力、需要は工業向けが主力~

生産・販売面:

電力業界は基本的にディフェンシブ、ドメスティックなセクター。日本とは異なり、発電会社、送電会社と明確に分けられている。発電容量の比率は火力73%、水力22%。風力、原子力、太陽光などは急速に伸びているものの、全体での比率はごくわずかに過ぎない。石炭火力が主力であるため、石炭をいかに低価格、安定的に調達できるかが、発電会社の経営を大きく左右する。送電会社は、送電網の未整備、非効率さなどが課題。需要面は重工業のシェアが最も大きく、全体の7割を占める。家庭向けは1割強に過ぎない。このため、製造業の景気動向は電力需要に直結する。これは電力会社を取引先とする電力設備業界の経営に大きな影響を与える。設備業界は発電機器、送変電設備、制御装置などのサブセクターに分けられるが、全体的に主要部品、鋼材、銅をはじめとした主要原材料の価格動向が重要となってくる。

政策面:

電力価格は政府の統制下にあり、概ね低い水準に抑えられている。電力会社の業績を改善するために電力価格と石炭価格の連動性が導入された。発電会社は環境に与える影響が大きいため、政府は「上大圧小」政策(小規模施設を撤去し、大型施設に入れ替える)を進めている。さらに送電網の整備を重視。目玉政策として次世代送電システム(スマートグリッド)分野への巨額の投資計画を打ち出している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~政府系が主役、全体では業績回復の傾向も石炭火力は苦戦気味~

発電会社は発電容量で全体の半分近くを占める国有系の5大発電集団が業界大手で、全国に展開。上位2社は華能集団、大唐集団で、両社は発電容量が1億kWを超える。これに中国国電、華電集団、中国電力投資の残り3社が続く。5大発電集団はそれぞれ複数の上場企業を傘下に置いており、それぞれ華能国際電力(00902)、大唐国際発電(00991)、華電国際電力(01071)、中国電力国際(02380)が中核企業。上場5社の10年業績をみると、いずれも発電需要の増加で増収を確保した。ただ、石炭価格の高騰が重しとなり、利益ベースでは明暗が分かれた格好。一方、急成長中の風力をはじめとした再生可能エネルギーでも、大手5社はそれぞれ専門子会社を設立して事業を強化。このうち上場しているのは、華能新能源(00958)、大唐新能源(01798)、龍源電力(00916)、中国電力新能源(00735)の4社だが、こちらは軒並み大幅増益を計上した。国有系以外では地方政府系の企業も目立ち、広東電力(200539)、浙江東南電力(900949)などが代表的な銘柄。

電力設備の関連企業をみると、川上の部品から川下の完成品メーカーまで幅広いが、業界の主役は政府系企業。上海電気(02727)、東方電気(01072)、哈爾濱動力設備(01133)、新疆金風科技(02208)が大手であり、いずれも大幅増益となった。川上の部品などでは、特に再生可能エネルギーの分野で民営企業の健闘が目立つ。保利協キン能源(03800)、陽光能源(00757)、創益太陽能(02468)の民営3社は太陽光電池の素材・部品サプライヤー。3社ともに好業績を記録した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中電控股 00002 50,887 15.3 9,001 26.1 158,084
ハンセン 香港に本拠を置き、長い歴史を持つアジア屈指の発電会社。香港では1903年から電力供給を始めており、九龍・新界をカバーする最大手として抜群の安定性を持つ。本土でも広東省の原発などに出資している。このほかオーストラリア、インド、台湾、タイでも事業展開する。ハンセン指数構成銘柄でも比較的にディフェンシブな銘柄として注目できる。
中国高速伝動 00658 7,393 30.9 1,384 43.2 10,793
香港その他 工業用トランスミッションを開発、設計、製造する大手民営企業。風力発電用ギアでは国内市場シェア約9割と最大手である。高い技術力が評価され、国内の大手メーカーだけでなく米、独、仏、日をはじめとした先進各国の企業にも風力発電用ギアを供給している。風力発電用だけでなく、船舶、建設機械、鉄道向けなどの製品も手がけている点も特徴。
華潤電力控股 00836 42,321 46.3 4,272 ▲7.8 68,103
ハンセン 国有系の大型コングロマリット「華潤集団」で発電事業を担当する中核企業。主な事業エリアは東部沿海部を中心に全国各地に幅広い。石炭火力が中心だが、石炭価格の上昇に対応するために採掘事業の規模を急速に拡大している点が特徴。さらに、風力発電などの新エネルギー事業を積極的に展開している。
華能国際電力 00902 104,318 35,7 3,348 ▲32.1 72,984
H株 5大発電集団で最大手の華能集団の中核企業。発電所の建設・買収・運営などを手がけている。事業範囲は山東、江蘇、上海など東部を中心に広範囲にわたり、発電した電力は全国各地の送電会社に販売。シンガポールの大手発電会社にも出資している。最近では水力、原子力、風力などの分野を強化。最大手としての優位性に注目。
龍源電力 00916 14,213 45.9 2,019 125.8 53,295
H株 国内最大の風力発電会社。成長分野である風力発電で発電能力が国内トップ、高い競争力を持つことが強み。直近ではより安定している洋上風力の分野を積極的に展開。依然として安定性・稼働率などの面で課題も多いが、同社は火力発電の割合も大きい。石炭も一定程度は自前での調達ができ、他の風力発電会社と比べても収益、財務基盤が安定。
大唐国際発電 00991 60,672 26.6 2,570 67,2 75,579
H株 京津唐地区(北京、天津、河北)を本拠とする発電大手。5大発電集団のなかでも上位に数えられる大唐集団の中核を占め、北部で高いシェアを誇る。火力発電が主力だが、雲南省や四川省での水力発電、内モンゴル自治区での風力発電事業も強化。さらに主要燃料の石炭についても、採掘、運搬、石炭化学など幅広く事業を展開している点が強み。
華電国際電力 01071 45,198 24.0 170 ▲85.3 23,119
H株 5大発電集団の一角を占める華電集団を親会社に持つ発電大手。主力市場は本拠とする山東省で、石炭火力が主力だが、水力、風力、バイオマス発電などにも参入している。山東省以外にも四川、安徽省、河南省などに傘下企業を持つ。さらに石炭の安定調達に向け、炭鉱買収を積極的に進めている。
東方電気 01072 37,604 14.7 2,601 54.9 57,623
H株 四川省を本拠とする大手の発電設備メーカー。中央政府系の企業で、タービン、ボイラーなどの発電設備は火力、水力、風力、天然ガス、原子力など主要電源をすべて網羅している。特に風力、原子力の分野で高い競争力を持つ点が強み。海外展開でも競争力があり、南米、アフリカなどの新興国市場を開拓している。
新疆金風科技 02208 17,475 63.8 2,290 31.2 42,210
H株 風力発電が盛んな新疆ウイグル自治区を中心に風力発電設備の製造事業を展開する半官半民企業。主力の風力発電タービンは国内2位、世界5位のシェアを誇り、国内外の発電会社に販売している。このほか、風力発電関連のコンサルティング、風力発電所の建設・販売なども手がける。
上海電気 02727 62,957 9.3 2,784 13.5 92,799
H株 中国の総合機械メーカー。主力は電力設備で、火力に加え、水力、原子力、風力などの分野にも進出している。全体的にバランスが取れているほか、他社と異なり発電だけでなく送電網の設備を取り扱っていることも強み。さらに電力分野に加えて、交通設備、環境プラントなどでも強い競争力を持つ。さらに上海市政府系の中核企業として、今後の業界再編でも中心的な役割を担う可能性が高い。
保利協キン能源 03800 16,093 273.7 3,506 黒転 58,690
香港その他 中国本土でトップクラスのシリコンメーカー。ポリシリコンやシリコンウエハを製造し、主に太陽光電池向けの部品として出荷している。さらに、発電事業にも従事。発電設備に関しては、石炭火力発電が中心。同社はシリコン生産能力を積極的に拡大中。過当競争による価格下落の懸念もあるが、一方でスケールメリットの発揮も見込まれる。
広東電力 200539 12,642 3.3 766 ▲34.3 16,135
深センB株 広東省の大型発電会社。石炭火力が中心。電力はすべて地元の送電会社に販売している。地元政府に加え、最大手の華能集団も出資している。燃料の多様化を推進。液化天然ガス、風力、水力のほか、オイルシェールやオリマルジョンなど、新エネルギーを採用した発電所を省内で建設している点に注目。

売上高・純利益はすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月17日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

電力・供熱(業種別一覧) 電気設備(業種別一覧)

注目されるトピックス ~電力不足の波を乗り切れるか~

石炭価格の動向がリスク要因:

石炭火力への依存度を下げる動きは活発であるが、圧倒的な発電シェアは中長期的に変わらない。業界にとって石炭価格の上昇は最大の懸念要因だが、今年に入り価格上昇が一層深刻化。発電するほど損失が膨らむというケースが増え、沿海部を中心に発電設備の稼働率が低下している。特に夏場の電力不足が懸念されており、体力のない中小企業の淘汰は一層進もう。大手にとっても再編で事業拡大の余地はあるが、政府が電力価格の引き上げを認めるかは不透明であり、基本的に石炭火力の収益環境は厳しい。自前での石炭調達力が経営を左右すると考えられる。

新エネルギー発電の振興、石炭火力への依存度を下げられるか:

石炭火力の収益性悪化もあり、官民挙げた再生可能エネルギー(水力、バイオマス、風力、太陽光など)へのシフトは一層進もう。政府は発電量の割合を20年までに3割まで高める目標であり、このために総額2兆元の投資が行われる見込み。過当競争の懸念はあるものの、成長分野であることは確かだろう。

「スマートグリッド」を柱とした送電網の整備が進む:

低効率・不十分な送電網がボトルネックとなっていただけに、「スマートグリッド」の重要性は高い。国家電網公司が中心となって、すでに具体的な整備計画が進んでいる。これは特に電力設備業界にとってプラスに働こう。

電力・供熱(業種別一覧) 電気設備(業種別一覧)

発電量の伸び率と電源別の発電量
発電消費量の伸び率と内訳(※毎年2月は年初から2月分の数値

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