中国株 業界レポート

ガス業界~規制色の強い一方、成長余地も大きい~

2011年6月24日

市場動向 ~拡大するガス需要をまかなうために、輸入も急増~

10年の業界規模:

天然ガス見掛消費量:1060億立方メートル(前年比20%増)、生産量:945億立方メートル(同12%増)、液化天然ガス(LNG)輸入量:934万トン(同75%増)

景気回復、都市ガス網の整備などを追い風に、中国の天然ガス需要が拡大している。10年の天然ガス見掛消費量は1060億立方メートルを記録し、前年比で2割の増加。安定供給のために、国内では過去最高の945億立方メートル(同12%増)の天然ガスを生産した(世界10位)。だが、依然として需要を満たすことはできず、LNG輸入量は昨年に続いて大幅増となった。ガス供給業者は天然ガスを主な原材料とするLNGに加え、石油原料の液化石油ガス(LPG)、石炭原料の石炭ガスなどをユーザ-に販売。主力のLNGは利ザヤが安定していることから、ガス会社全体の業績は増収増益となった。ただ、原油価格の上昇からLPG事業が重しに。今後も、エネルギーの効率・環境性、廉価な価格設定、ガスインフラの整備拡大などを背景にガスの普及率、消費量は伸びる可能性が高い。需要をまかなうため、ガス資源の積極開発、海外からの輸入拡大という流れも続くだろう。

業界の特徴~規制色の強いディフェンシブ・セクター、成長余地も大きい~

生産・販売面:

公益セクターであるガス業界はディフェンシブ色の強い業界。川上のガス田探査・開発、ガス生産は国有系の3大石油会社の寡占状態となっており、国内外で資源開発を強化している。川下のガス供給は集約度が低く、主に各地域のガス会社が担当。ガス導管網を通じて都市ガス(多くがLNG由来)を提供するほか、LPGの販売、CNG(圧縮天然ガス)ステーションの経営などを手がける。需要は分散しており、全体の6割が工業用向け。残り4割のうち家庭用、発電用がそれぞれ2割程度を占める。家庭向けでは特に暖房用需要が多く、冬季の気候状況などがガス販売量に影響する。

収益面:

ガス供給業者の収益源はガス、ガス関連器具の販売収入、ガス管敷設料収入など。ただ、ガス料金は地方政府の決定事項。一定の利幅は保たれる傾向にあるが、公共性を考慮して低く抑えられている。このため採算性は高くない。一方で安価な価格設定が、都市部での天然ガス普及率の押し上げに貢献している。普及余地が大きいなか、都市部の住宅不動産の建設が速いペースで伸びているため、ガス管敷設が当面、ガス供給会社の主要な収益源である。

国際面:

川上のガス資源開発では、国有大手を中心に海外での権益確保の動き強化。中央アジア・中国間の天然ガスパイプライン、国内での「西気東輸」(西部の天然ガスを東部に輸送)ルートなどの整備、及び沿海地域のLNGプロジェクト(LNG受入基地、ガス備蓄など)の稼働などにより、中国はすでに本格的に天然ガス輸入の時代に入った。足元での海外依存度は16%。ただ、天然ガスの安定調達は、長年続く供給面のボトルネックの緩和につながることも事実であろう。

政策面:

販売価格が統制されるなど、当局の関与度は大きい。ただエネルギー源の多様化を目指し、政府は天然ガスの利用促進に積極的である。

主要企業、主な取扱銘柄~国有系が独占する川上、民営企業の進出が目立つ川下、ともに業績を拡大~

ガス消費量の伸びを背景に、ガス業界は川上から川下まで概ね堅調な業績となっている。川上のガス生産は、中国石油天然気(00857)、中国海洋石油(00883)、中国石油化工(00386)という国有系3社の独壇場。10年は3社ともに天然ガス事業が全体の増収増益に大きく貢献した。特に中国石油天然気は販売量を630億立方メートルまで伸ばし、圧倒的な存在感を見せ付けた。一方、川下のガス供給は基本的に各地域の地元政府系企業が強い。ただ、最近では買収などをてこに全国展開する大手が育ってきており、民営、香港系企業の参入も目立つ。政府系では、国務院系の華潤燃気(01193)が地元政府系の鄭州燃気(03928)を傘下に収めるなど規模拡大に努め、業績を急拡大。一方、半官半民の中国燃気(00384)も中裕燃気(08070)を買収するなど積極的に事業を拡大させたが、デリバティブの損失などを受け、10年9月中間期では減益に後退した。香港・民営系では、港華燃気(01083)、新奥燃気(02688)が代表格であり、いずれも大幅増益を達成。他方、原油高によるLPGの採算悪化、都市ガスの価格水準の低さなどが、各社共通の課題として浮き彫りとなった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
香港中華煤気 00003 16,880 56.9 4,866 5.9 136,996
ハンセン 香港屈指の富豪である李兆基・主席が恒基地産(00012)などを通じて傘下に置く香港のガス会社。香港のガス市場をほぼ独占しており、経営・財務基盤の安定性に強み。子会社の港華燃気を通じて、本土でのガス事業を加速させている。
崑崙能源 00135 7,900 47.1 2,114 96.6 61,925
レッドチップ 国内最大の石油・天然ガス生産業者である中国石油天然気を親会社に持つ。グループ戦略に従い、天然ガス事業のプラットフォームとしての役割を担っていることが強み。親会社からのさらなる資産注入が見込める。これまでに陝西省-北京間のガスパイプライン、四川省などの天然ガス資産、LNG受入ターミナルなどを取得している。
中国燃気 00384 8,897 61.5 763 744.6 13,149
香港その他 大手都市ガス会社。LNGに加え、LPG、CNG(圧縮天然ガス)車向けのガススタンド経営なども手がける。半官半民の企業で、民間資本に加え、国務院系の企業、中国石油化工、インドガス公社など国内外の有力企業が出資している点が特徴。ただ、経営トップの不祥事が発覚するなど、ガバナンスの面で課題も抱える。
北京控股 00392 27,613 14.1 2,639 10.0 43,285
レッドチップ 北京市政府系のコングロマリット。上下水道、ビールなど手がける事業は幅広いが、主力は売上の半分近くを占めるガス事業。パイプラインと都市ガスの両方をカバーしている。都市ガスの事業エリアは地元の北京市など。北京市政府の関係が深く、経営の安定性が高い点などが強み。北京市のガス需要も今後、大きな増加が見込める。
中国石油化工 00386 1,876,758 42.6 71,800 13.7 805,062
ハンセン 国有系の大手石油・天然ガス企業。石油精製が主力事業だが、川上のガス田探査・開発、天然ガスの生産・販売なども展開。各地の都市ガス業者に供給している。都市ガス大手の中国燃気に出資している。注目のシェールガスでは、一大生産地とみられる四川省で開発プロジェクトを展開。15年までの商業生産を目指す。
中国石油天然気 00857 1,465,415 43.8 139,992 35.4 2,324,256
ハンセン 石油・天然ガス生産などで国内最大手の国有系企業。天然ガスについては、川上分野で圧倒的なシェアを誇る。タリム盆地、四川盆地、オルドス盆地などの国内の主要ガス田の大半を押さえているほか、沿海部の消費地まで輸送するパイプラインの相当部分を所有。天然ガスの探査・生産・輸送の分野で圧倒的な規模を持つ点が最大の強み。
中国海洋石油 00883 183,053 74.0 54,410 84.5 805,832
ハンセン 国有系の大手石油・天然ガス企業。海底ガス田の開発・生産では国内トップの規模・競争力を持ち、陸上のガス田を中心とする中国石油天然気とは一定の棲み分けができている。事業エリアは中国近海はもとより、オーストラリア、ナイジェリアなど世界各国を網羅。このなかには日中間で争点となっているガス田も含まれる。シェールガスについては、昨年参入した米国での事業を拡大させていく方針。
港華燃気 01083 2,597 2.6 380 64.4 9,841
香港その他 香港中華煤気の傘下にあり、本土で都市ガス事業を展開する企業。湖南省、江蘇省、四川省などで都市ガスの経営権を有し、大手5社の一角を占める。同社は利益の見込める工業ユーザーの比率が高いことが強み。
華潤燃気 01193 7,254 102.6 639 59.6 19,410
レッドチップ 国有系の大手コングロマリット「華潤集団」で都市ガス事業を担当する企業。四川省、浙江省、安徽省、江蘇省などの主要都市で、都市ガスに関する各種事業や、LPGの販売などを手がける。親会社からの資産注入、鄭州燃気(03928)に対する買収など、事業拡大に積極的。華潤集団の一員として、グループ内でのシナジー効果も見込める。
新奥能源 02688 11,215 33.3 1,013 26.2 26,254
香港その他 民営の大手都市ガス会社。ガスパイプラインの建設、住宅へのガス管接続・ガス販売、液化石油ガス(LPG)の販売、ガス器具の販売、ガススタンドの経営などを手がける。主に西北部と東部沿海部を結ぶパイプラインを利用し、北京市、山東省、安徽省など各地でガスを供給。

中国燃気(00384)の売上高・純利益は10年3月本決算。残りはすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月23日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

ガス(業種別一覧) 石油・ガス(業種別一覧)

注目されるトピックス~ガス生産ではシェールガス、販売では価格動向などに注目~

川上ではシェールガス事業が中長期的な注目点:

天然ガスの供給不足を解決するために、国有系企業を中心に国内外で資源確保の動きを強めているが、日本とのガス田問題が示す通り、事業リスクは高い。こうしたなか、近年、中国は世界最大級のシェールガス資源を有していることがわかってきた。シェールガスは非在来型のガス資源で、現時点では商業ベースに乗らないが、有望分野である点は業界の一致した見方。中国石油化工と中国海洋石油の両社がけん引するかたちで、投資が今後、急拡大するとみられる。

川下ではスケールメリットを目指した激しい競争が続く:

天然ガスの川下事業は規制により1都市1企業だけしか許されず、ライセンス期間も30年と長いため、一旦取得したら長期に安定した収益を稼げる。このため、事業エリアの広さが企業の優勝劣敗に直結、競争も激しい。先行者である大手が有利といえる。現在は中国燃気、新奥燃気、華潤燃気、港華燃気、北京控股(00392)の5社が事業展開する都市数で他を大きく引き離し、大手グループを形成している。

天然ガスの価格引き上げ観測:

政府に統制されているガス価格の引き上げは、業界全体にとって常に悲願であり続ける。インフレとの兼ね合いで、引き上げられても段階的なものにとどまるだろう。ただ、政府は天然ガスのエネルギー消費全体に占める割合を現在の5%前後から20年には10%程度まで引き上げる目標。天然ガスは重要産業であり、価格引き上げの流れは中長期的に続く可能性が高い。

ガス(業種別一覧) 石油・ガス(業種別一覧)

中国の天然ガス生産・消費量の推移
中国のガス企業の売上高・利益の推移
天然ガスパイプライン、受入基地などの計画図

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