中国株 業界レポート

保険業界 ~潜在的需要の大きさに注目~

2011年6月24日

市場動向~生保は1兆元を突破、損保も自動車保険がけん引役に~

10年の業界規模:

保険料収入:1兆4528億元(前年比30%増)、うち生保1兆632億元(同29%増)、損保3896億元(同35%増)、資産総額:5兆482億元(同24%増)

中国の保険業界は金融危機の後遺症が残る諸外国を尻目に、10年も好業績を維持した。主力の生保は所得水準の向上、農村市場の開拓、資産運用商品としてのプレゼンスの上昇などを背景に、保険料収入は初めて1兆元の大台を突破した。損保はモータリゼーションの進展により自動車保険がけん引役となり、収入の伸び率は生保を上回る水準。支払い面では08年の四川地震のような大規模な天災などがなかったことで、十分に対応できる範囲内に収まった。ただ、投資面をみると、株式市場を含む資本市場全体が弱含んだ相場になったこともあり、一部で苦戦。これは特に生保の収益力に影響を与えた。中国の保険資産の対GDP比は10%強で、米国などを大きく下回っており、保険の浸透度は国際的にまだ低い。こうしたなか、特に農村部において、所得底上げ効果で保険加入者の増加傾向は続こう。都市部ではより一層、投資・運用面での重要度が増すものと思われる。利上げサイクルが証券投資の収益率に下振れ圧力となる可能性はある。ただ、最大の投資手段である預金で金利収入の拡大が期待できる。減速感はやや続くが、今後も成長トレンドに大きな変化はないだろう。

業界の特徴 ~保険の潜在的需要は大きい~

主力事業面:

国有系を中心とした大手数社の市場シェアが高い。保険商品は大きく生命、損害、医療、年金保険などに分けられ、全国的な社会保障制度がまだ確立されていない中国においては、保険の潜在的な需要は大きい。生保では年金、資産運用の要素を強めた保険の販売が拡大。損保では自動車販売の急増で、自動車保険の販売が好調。損保保険料収入の約7割を占めており、自動車販売の動向に左右されやすい。近年、内陸部での保険販売が増加しており、保険料収入に占める内陸部のシェアは約4割に達している。一方、保険金の支払いは自然災害などで一気に膨らむリスクもあり、支払い余力(ソルベンシー・マージン比率)は保険会社の健全性の指標となっている。

保険会社にとって資産運用は重要な要素であり、機関投資家としての役割も持つ。預金、債券、株式などで運用しているが、金融政策、資本市場などの影響を大きく受ける。

国際面:

外資系保険会社が数多く進出済み。日系では日本生命が合弁で参入し、大手損保は営業拠点を構えている。ただ、外資のシェアは大きくない。一方、中国系の大手保険会社は適格国内機関投資家(QDII)の資格を取得し、香港など海外市場での証券投資を強化している。

政策面:

規制色が強い業界。契約者保護をより確保するために、09年に基本法である「保険法」が改正された。同時に保険会社の運用対象が不動産などにも広がった。生保の場合、外資の出資比率は50%以下との規制がある。損保は、出資比率規制はないが、自動車損害賠償責任保険への外資参入は認められていない。

主要企業、主な取扱銘柄~上位3社による寡占的な市場、業績にはばらつきも~

保険業界は地場系を中心に比較的に寡占度が高い。10年の保険料収入ベースで見ると、生損保とも、それぞれ上位10社の合計シェアは9割弱に上る。特に上位3社は生保が全体の56%、損保が66%を占め、他を大きく引き離している。10年の企業業績をみると、国有系を中心とする本土系企業は保険料収入が堅調に拡大し、増収増益を確保。ただ、ばらつきもみられ、生保最大手の中国人寿保険(02628)はコストが膨らみ、小幅増益にとどまった。損保最大手の中国人民財産保険(02328)は主力である自動車保険の引受が好調で、上場来の最高益を更新している。生保・損保ともに2番手に位置している平安保険(02318)は銀行・証券業も本格的に展開する総合金融グループ。総合力の強みを発揮し、2ケタの増収増益を達成した。同じく好決算となった太平洋保険(02601)は生保・損保いずれも手がける大手では平安保険に次ぐ事業規模。これら2社に規模面で大きく遅れをとっているが、中国太平(00966)も業績を大きく拡大している。

一方、外資系の保険会社も中国で事業を展開。このなかでもAIG傘下の友邦保険(01299)は昨年に大型上場を成功させ、業績も急拡大させた。英国の保誠(02378)、カナダの宏利金融(00945)もいち早く香港に上場している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
ミン信集団 00222 70 ▲11.7 210 39.6 1,907
レッドチップ 福建省政府系の投資持ち株会社で、金融サービス(保険、銀行)を主力事業としている。保険業はビン信保険有限公司が担当しており、自動車保険が主力商品。銀行業では廈門国際銀行に投資している。
中国太平 00966 44,890 52.7 1,956 171.9 28,743
レッドチップ 本土の保険大手で、国有系の「中国太平保険集団」の傘下にある上場旗艦企業。「太平」ブランドで生保、損保の各種保健サービスを提供している。保険料ベースの市場シェアは生保が7位、損保が13位。香港を拠点にアジア各国で展開している再保険事業に強みを持つ。
友邦保険 01299 124,491 ▲3.3 18,280 54.0 322,779
ハンセン 世界有数の競争力を持つ米国の保険会社「AIG」の傘下にあって、アジア太平洋地域を担当している企業。香港を本拠とし、事業エリアは日本を除く東アジア、東南アジア、オセアニアに広がる。特に東南アジアでトップクラスのシェアを誇る点が強み。香港上場の際には、当時で香港単独の企業では最大となる205億HKドルを調達した。
平安保険 02318 195,814 28.1 17,311 24.7 501,320
ハンセン 国内の生保、損保市場で業界2位のシェアを占める大手保険会社。広東省深セン市に本拠を置き、匯豊控股(00005)を筆頭株主に持つ民営企業でもある。傘下に信託投資会社、証券会社、銀行などを持ち、総合的な金融サービスを提供できることが特徴。深セン発展銀行を傘下に収めるなど、総合金融グループに向けた事業拡大に積極的。
中国人民財産保険 02328 154,307 28.8 5,212 192.3 136,598
H株 損害保険の国内最大手。親会社は国有企業の中国人民保険集団公司で、AIGも戦略投資家として資本参加している。車両保険、企業向けや一般家庭向けの損害保険、賠償責任保険、事故傷害保険などを取り扱う。モータリゼーションの拡大は、主力である自動車保険の販売にとって追い風。
太平洋保険 02601 141,327 35.6 8,557 16.3 230,344
H株 上海市を本拠に全国で事業展開する総合保険会社。傘下企業を通じて生保、損保商品を販売するほか、資産運用サービスも行う。保険料収入をみると、生保は業界4位、損保は業界3位の規模。前身は1991年に新中国で初めて設立された全国規模の総合保険会社「中国太平洋保険公司」。
中国人寿保険 02628 385,838 13.7 33,626 2.3 641,444
ハンセン 国内最大の保険会社であり、生命保険の最大手。親会社は中央政府直轄の中国人寿保険(集団)公司。農村部を含め、全国規模の販売ネットワークを持っていることが強み。主力商品は個人向け・団体向けの生命保険や事故傷害保険、健康保険、年金保険などで、特に個人向け保険の競争力は強い。このほか、国内有数の機関投資家としても有名。

友邦保険(01299)の売上高・純利益は10年11月本決算。残りはすべて10年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1米ドル=6.768元、1香港ドル=0.871元

時価総額は11年6月23日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万香港ドル。換算レートは1米ドル=7.778香港ドル

保険(業種別一覧)

注目されるトピックス~新たな収益源の確保に向け、各社が競争を展開~

保険料収入の伸び鈍化を受け、新たな収益源の確保へ:

保険契約者の利益を保護するために、当局は販売チャネルに関する監督・管理を強化。特にバンカシュランス(銀行窓口での保険販売)の規制強化は、当面の販売鈍化に繋がる可能性がある。自動車販売の減速感で損保の伸び悩みも懸念されるなか、各社は新たな収益源の確保に向け、対策を強化。農村でのマイクロ保険、貯蓄型保険商品、自動車以外の損保などが注目されており、新たな競争分野となっている。

運用環境は流動的:

保険会社の運用環境は流動的な部分が多い。利上げ局面では預金金利の収入増加が見込める一方、利上げにより株安に転じれば、含み損が膨らむ。投資できる金融商品も当局により種類・限度額などで規制下にあり、政策しだいという面が大きい。こうした状況下で安定した投資収益を確保していくことは、至難の業といえる。

業種の垣根を超えた再編:

業界の垣根を超えた買収・提携が進んでいる。すでに平安保険が深セン発展銀行を傘下に収めるなど、保険会社による銀行への積極投資は継続。一方で、銀行の保険業進出も目立ってきており、中国工商銀行(01398)がフランス資本の合弁保険会社の経営権を取得するなど、再編は外資を巻き込む段階まで発展してきている。

保険(業種別一覧)

生命保険の市場シェア(10年、%)
損害保険の市場シェア(10年、%)

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