中国株 業界レポート

IT・ソフトウエア業界 ~世界最大のネット大国、成長余地はなお大きい~

2012年7月3日

市場動向 ~世界最大のネット大国、高成長は変わらず~

11年の業界規模:

売上高:1兆8468億元(前年比32.4%増)、ネットユーザー数:5.13億人(ネット普及率:38.3%)

中国IT業界の急成長が続いている。11年の業界売上高は前年に比べ32%増加し、2兆元の大台超えを視野に入れた。主力のソフトウエア開発を含め、いずれの分野も2ケタの伸びを維持した。ネット接続の7割を占める携帯電話で3Gサービスやスマートフォン端末の普及などが引き続き刺激材料となり、ネットを通じた様々なサービス需要が増加。特に電子商取引(Eコマース)は取引額が8060億元と前年を55%上回る規模に急成長した。ミニブログ「微博」の利用者も急増。こうしたサービス事業者の主な収入源である広告収入も2倍近くに増加。ネットユーザー数の年間増加数は5580万人とやや落ち込んだが、その総数は世界最大だ。それでも依然として普及率は4割弱の水準であり、成長余地が大きい。今後もネット接続のインフラ整備を追い風に、引き続きサービスの多様化も進むと考えられる。当局は次世代ITを15年までの戦略的振興産業の一つに設定。これには、「三網融合」(電信、放送、インターネット網の一体化=トリプルプレイ)など多くの注目分野が盛り込まれており、政策的支援が見込める。

業界の特徴 ~民営企業が主役の成長市場、一方で規制も多い~

生産・販売面:

IT業界は民営・中小が大半を占め、数多くの企業が成長市場で激しい競争を繰り広げている。主にソフトウエア開発、付加価値サービス、システムインテグレーション(SI)などに分けられ、売上高全体に占める割合はそれぞれ33%、27%、21%。成長性が高い反面、安定的な資金調達力、優秀な人材の確保などが課題。さらに製品・サービスは技術革新が速い上に他社に模倣されやすく、違法コピーも氾濫しており、業界の新陳代謝は速い。東部での売上高が全体の85%を占めており、中西部はまだ小さい。これはインターネットの普及度と重なる部分が大きい。

国際面:

中国企業は人材・コスト競争力などを武器に、日本をはじめとした海外企業からアウトソーシングの契約を受注するなど海外事業には積極的であり、規模も大きい。一方、外資の進出は進んでいるものの、規制の壁がその前に大きく立ちはだかっている。

政策面:

IT業界は特にネットメディアの分野で政府の規制が強く、ニュースサイトなどは外資による投資が禁止されている。このため、登記上では外国企業となる一部の地場系上場IT企業(騰訊控股(00700))などは、資本関係を持たずに契約を交わすことで経営実体を支配下に置いている(CCF方式)。一方、当局は国内IT産業の発展に積極的。特に戦略的新興産業に指定された分野には手厚い支援を行うとみられる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手は概ね増益を確保するも、法人・官庁向けが主力の企業は苦戦~

IT業界は民営・新興企業が多く成長性は高いものの、企業規模は概ね小さい。大手の上場企業は米国や香港・本土などに上場している。香港上場企業をみると11.12期は二極化の傾向が進んだ。ネット大手の騰訊控股は「QQ」ブランドで多くのサービスを提供できる総合力が強みとなり、11.12期も引き続き好業績を記録。このほか、IT製品の販売、SIの有力企業である神州数碼(00861)が12.3期まで増収増益を持続。民営中心の業界で、国有系企業の中国民航信息網路(00696)は航空システムの分野で独占的なシェアを持っており、増益を確保した。

一方で、大手の中でも業績不振の企業もみられ、準大手やその他の企業ではその傾向が目立った。景気減速で経費節約の姿勢が強まる中、企業向けのソフトウエア企業が全般的に不振。中小企業向けに強い金蝶国際(00268)、大学発ベンチャーの方正控股(00418)が利益を減らしたほか、地方政府系の浪潮国際(00596)も広告宣伝費などの負担に苦しみ、業績を落とした。鉄道インフラのITシステムを担当する中国自動化集団(00569)と中国智能交通系統(01900)の両社は、公共投資の縮小による影響を大きく受けた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
金蝶国際002682,02240.78144▲46.643,548
その他深セン市を本拠とする民営のソフトウエア企業。「金蝶」を主力ブランドとし、中小企業向けの統合型(業務横断型)ソフトウエア(ERP)で国内最大級シェアを誇る。内陸部の市場開拓に強みを持つほか、ソフトウエア販売以外の収益源を強化している。それでも法人向けソフトウエアの需要の影響を受けやすい。
方正控股004181,367▲26.4941▲20.55260
レッド北京大学系の大手IT企業。主力事業はメディア系、非メディア系の企業に対するソフトウエア開発やSIなど。傘下に抱える方正数碼(00618)はプリンターなどのIT機器を販売している。国内トップクラスの北京大学から優秀な人材を確保できる点などが強み。電子出版システムの大手サプライヤーとしても注目できる。
中国自動化集団005691,98124.21195▲31.451,837
その他安全計装・制御システムの構築を主力とする民営企業。カバーする範囲は鉄道、石油精製、発電施設向けなど幅広い。鉄道事故などを踏まえ、インフラの安全ニーズは高い。さらに政府は新5カ年計画のなかで各業界でのさらなるIT化を目指しており、これもプラス材料。ただ、インフラ投資そのものが縮小した場合、業績悪化のリスクが高まる。
浪潮国際005961,844▲4.9441▲71.68934
レッド山東省政府系のIT企業。米マイクロソフトが資本参加している。ソフトウエア開発、SI、電子部品の貿易などを展開しており、ITサービスは企業、税務、通信、金融、政府など幅広い分野を対象としている。クラウドコンピューティングを今後の成長分野に位置づけている。
中国民航信息網路006963,67220.221,04717.1011,500
H株政府系のITソリューション大手。空港旅客システム関連では国内で大きなシェアを誇る。主力は航空券の予約販売サービスのプラットフォームとなる電子旅行販売システム、空港旅行者処理システムなど。本土の大手航空3社が大株主として出資しており、結びつきが強い。航空業界の発展による恩恵を直接享受できる企業といえる。
騰訊控股0070028,49645.0510,20326.69427,829
ハンセン「QQ」ブランドで様々なインターネットサービスを提供する大手IT企業。IM(インスタントメッセンジャー)、SNS、ミニブログ、オンラインゲームなど、多くの分野で業界トップクラスの規模を誇る。オープンプラットフォーム戦略を採用しており、ソフト会社が開発した豊富なゲーム、アプリなどを迅速に提供できる点が強み。
神州数碼0086158,38623.791,03323.8114,796
その他国内有数のIT企業。MBOを通じて経営陣が大株主となっているほか、その前まで筆頭株主だったパソコン最大手の聯想控股有限公司と関係が深い。企業向けを中心に、各種IT製品を販売。SIやアプリケーションソフトウエア開発などのサービスも提供している。「スマートシティ」に関連する業務を新たな成長事業に位置づけている。
金山軟件038881,0205.06324▲12.824,078
その他民営の大手ソフトウエア開発会社。ゲーム、アプリケーションソフトウエアなどが主力。オンラインゲームの分野では中華圏でも高いブランド力を持つほか、アプリケーションでもセキュリティソフト「金山毒覇」、辞書ソフト「金山詞覇」が広く使われている。筆頭株主に迎えた騰訊控股との提携関係に注目。日本では「キングソフト」の名前で知られる。

売上高・純利益は神州数碼(00861)が12年3月本決算。それ以外はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年7月3日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

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注目されるトピックス ~スマートフォン向けサービスの提供力がカギに~

変化の速いIT社会、スマートフォン利用者のニーズを取り込めるか:

中国のIT社会は変化が速く、ペースこそ落ちたが拡大を続けている。このなかでTwitterに相当する「微博」は11年に爆発的に普及し、前年の6300万人から2億5000万人近くに急増。スマートフォン利用者のニーズをうまく捉えた。多くの企業がこの変化をビジネスチャンスとして捉えており、IM、SNS大手の騰訊控股は「微博」を組み合わせたスマートフォン向けサービスの強化に取り組んでいる。

戦略的新興産業の目玉「次世代IT」に注目:

政府が重要視する戦略的新興産業の一角に組み入れられた「次世代IT」は、成長余地が大きく、今後の業界動向を占う上で重要なポイント。次世代移動通信規格(4G)、「物聯網」(モノのインターネット、IoT)、「三網融合」(電信、放送、インターネット網の一体化=トリプルプレイ)、新型液晶パネル、クラウドコンピューティングなど、その範囲は多岐に及ぶ。

生き残りのために合従連衡が加速か:

IT業界は成長分野であるものの、競争は激しく、生き残りは容易でない。こうした中、世界的にIT企業間でのM&A、事業提携などの動きが盛んとなっており、中国でも動画配信大手の「土豆網」と「優酷網」が今年3月に経営統合の計画を発表。業界に少なからぬ衝撃を与えた。今後もこの動きが加速する可能性が高く、大手企業の動向が注目される。(中国部 畦田)

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中国のインターネット市場の発展状況
インターネットの規模・普及率の推移
インターネット広告の市場シェア

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