中国株 業界レポート

通信業界 ~3G、スマートフォンの本格普及で競争はさらに激しく~

2012年6月11日

市場動向 ~スマートフォンがけん引役となり、加入件数も増加~

11年の業界規模:

営業収益:9880億元(前年比10.0%増)、携帯電話加入件数:9億8625万件(同14.8%増)、ブロードバンド加入件数:1億5649万件(同23.9%増)。

中国は世界最大の携帯電話市場であり、11年末の携帯電話加入件数は9億8625万件。日本の8倍余りの規模となる。11年の通信業者の営業収益は9880億元を記録。固定電話の伸びは頭打ちになっているものの、収益全体の約7割を占める主力の携帯電話事業は13.8%増収と堅調な伸びを示した。ユーザーの3Gへの切り替えが進むなか、スマートフォンがけん引役となり加入件数も順調に増加。ただ、競争激化で料金水準は低下した。ブロードバンド加入件数も拡大しており、ネット人口は5億人を超え世界最大の規模を誇る。それでも普及率は4割以下と成長余地は依然として大きい。11年は3Gの普及が更に進んだ。12年は「三網融合」(電信、放送、インターネット網の一体化=トリプルプレイ)を起爆剤に、より一層の成長が見込まれる。

業界の特徴 ~規制色の強い業界、成長源は携帯電話、ブロードバンド~

主力事業面:

国有系の通信キャリアが市場をほぼ寡占しており、携帯電話とブロードバンドが成長源。収入の多くを東部沿海地域で得ている。3Gサービスの普及が更に進み、携帯電話も多機能化が進行。スマートフォンの需要が急増した。このチャンスを捉えるために、各キャリアは独自のサービスを展開。市場シェアの拡大にしのぎを削っている。だが、サービス拡大にあわせ通信網などを整備する必要があり、巨額の設備投資の負担は重い。販売管理費の増加も悩みだ。すでに広く普及している携帯電話は、双方向の課金制、プリペイドカード方式などが中心であり、システムが日本とは大きく異なっている。

国際面:

本土では外資による通信サービス事業への参入は原則的に禁止されており、端末、通信設備などの周辺市場に限られているが、そこでの存在感は大きい。3Gの通信規格は国際規格であるW-CDMA、CDMA2000に加え、中国独自開発の「TD-SCDMA」がある。さらに将来的に4Gの可能性を考えると、中国主導の「TD-LTE」という規格も注目される。

政策面:

規制色の強い業界。当局は独自開発のTD-SCDMAの拡大を支援しているほか、端末機の購入補助などを通じて、携帯電話の内陸・農村部へのより一層の普及を狙っている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手による寡占状態、全体としては好業績を確保~

本土の通信業界は国有系大手3社による寡占状態。3社は特に成長分野の3Gで激しい競争を繰り広げている。業界最大手であり、中国独自の規格「TD-SCDMA」を担う中国移動(00941)は概ね安定成長の増収増益を維持。08年に移動通信に参入した中国電信(00728)は学生などをターゲットとした低価格帯スマートフォンの普及戦略が奏功。最後発組にもかかわらず、純増件数で第2位の中国聯合網絡通信(香港)(00762)に迫った。中国聯合網絡通信(香港)も、主力の「iPhone」に加え、低価格帯に属する1000元台のスマートフォンも投入するなど、機種ラインナップを充実化。「CDMA-2000」規格のデータ通信の優位性を前面に出し ARPU(1契約あたり平均月間収入)が増加に転じたことで、二桁の増収増益となった。堅調な業績を確保した通信キャリアを顧客とする中国通信服務(00552)と中信国際電訊(01883)の両社も、キャリアとの提携強化、海外市場の開拓などが奏功し、収入を伸ばした。

一方、香港の通信業界は財閥系企業が担う。大手の数碼通電訊(00315)は「iPhone」などスマートフォン・ユーザー拡大の恩恵を受け、11.6期も大幅増益、11.12期(中間)も利益を拡大させた。香港最大の富豪である李嘉誠氏が率いる和記電訊香港(00215)も好業績を記録した。一方、同氏の次男である李沢楷氏が創業した業界トップの電訊盈科(00008)は、本業は堅調だったものの、不動産評価益の減少により減益となった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
電訊盈科(PCCW) 00008 20,456 7.30 1,334 ▲16.56 21,090
香港その他 香港で最大規模の通信事業者。固定・移動・国際電話サービス、ブロードバンド、テレビ事業などを展開。クワドロプルプレイ(固定電話、ブロードバンド、テレビ、移動通信の複合サービス)を実現している点が特徴。実質筆頭株主の李沢楷主席は、香港一の富豪として知られる李嘉誠氏の次男。このほか、中国本土の大手キャリアである中国聯合網絡通信(チャイナユニコム)も大株主となっている。
和記電訊香港 00215 11,131 35.70 846 35.10 16,480
香港その他 香港の大手通信キャリア。香港とマカオで「3」ブランドの携帯電話サービスを提供するほか、「HGC」ブランドでブロードバンド、音声通話、国際通話など固定電話事業も手がける。携帯電話事業はGSM、3Gサービスを提供。NTTドコモや米アップル社、英ボーダフォンと提携している。香港一の富豪と知られる李嘉誠氏が、長江実業(00001)、和記黄埔(00013)を通じて支配している。
数碼通電訊 00315 5,505 67.57 626 156.71 15,128
香港その他 香港・マカオで携帯電話サービス事業、携帯電話端末の販売事業を展開する大手企業。郭炳江・主席などが率いる有力コングロマリット「新鴻基地産」(00016)の傘下にある。長年続けてきたボーダフォングループとの提携を解消し、現在は「SmarTone」ブランドでサービスを展開。10年からはアップルの「iPhone」の取扱いを開始した。
中国通信服務 00552 53,507 17.81 2,114 17.25 23,817
H株 中国電信集団(チャイナテレコム)の傘下にある通信事業のサポートサービス会社。通信事業者向けのBPO、アプリケーション・コンテンツなどの事業を展開する。「三網融合」を契機に通信事業者の設備投資意欲が強まるとみられるなか、同社がその恩恵を享受する可能性も。
中国電信 00728 245,041 11.45 16,502 7.53 284,073
H株 3大通信キャリアの一角。固定通信・ブロードバンドでは国内最大のユーザー数を誇るなか、携帯電話事業への参入を手がかりに業績は改善傾向。3Gに限ると、先行する2社に健闘している。12年3月には「iPhone」の取扱いも開始した。今後、通信事業者の総合力が問われる中、固定・ブロードバンドで大きな規模を誇る同社は注目を集めよう。
中国聯合網絡通信(香港) 00762 209,167 22.06 4,227 14.21 260,628
ハンセン 中国聯合網絡通信の傘下にある携帯電話事業の国内大手。2GではGSM、3GではW-CDMA規格の携帯電話サービスを提供するほか、再編により中国網通集団の固定通信事業を引き継いだ。移動、固定通信ともに国内第2位の規模。長らく「iPhone」を独占的に取り扱ってきた。
中国移動 00941 527,999 8.81 125,870 5.21 1,591,999
ハンセン ユーザー数で世界最大の携帯電話事業会社。国内で2位以下を大きく引き離している。GSM/GPRS規格の移動通信網を運営するほか、3Gでは中国独自の開発規格「TD-SCDMA」を通じた通信サービスを提供。さらにそれを発展した4G規格「TD-LTE」を展開しており、香港ではすでに商用サービスを開始。本土でも試験サービスを進めるなど、4G関連銘柄の代表格。
中信国際電訊 01883 2,654 7.76 380 14.19 3,388
レッドチップ 政府系コングロマリット「中信集団」(CITIC)に属する通信事業者。本土と香港・マカオの国際電話などで、通信キャリア向けに、音声通話、ローミング、ショートメールの中継サービス、モバイル向け付加価値サービスなどを提供する。

売上高・純利益は数碼通電訊(00315)が11年6月本決算。それ以外はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年6月11日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

情報通信サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~3Gの本格普及、スマートフォン市場の拡大がインパクトに~

3Gの本格普及、スマートフォンの市場拡大で業界構造も変化:

中国のスマートフォン市場は今年、世界最大の規模となる見通しだ。これを支えるのが、3Gの本格普及。元々、一定の新規ユーザー数が見込める中、依然として多くの利用者が2Gを使用しており、3Gへの切り替え需要が期待できる。業界構造もキャリア主導による、端末メーカー、販売店を巻き込んだ激しい競争環境に変わってきている。この中では、「iPhone」を含む端末機種のラインナップ、データ定額制の有無などが競争力を左右しよう。

“4G時代”の到来も見据え、財務能力も重要に:

世界は徐々に4G時代に入ってきており、中国も例外でない。3Gでは出遅れた国内勢だが、4Gでは中国移動が自前の「TD-LTE」技術を国際規格に据えるべく攻勢をかけており、香港ではすでに商用サービスを始めるなど積極的。市場の関心は日増しに高まっていこう。ただ、キャリアにとって設備投資の負担は重く、それに耐えられる財務能力が重要となってこよう。

「三網融合」のビジネスチャンスを狙い、提携・再編が加速する可能性も:

政府が進めている「三網融合」(電信、放送、インターネット網の一体化=トリプルプレイ)の政策も、キャリアにとってはビジネスチャンスとなり得る。「三網融合」を通じて、今後は高速データ通信、固定・移動通信を含めた総合的な通信サービスの提供能力が重要になってくるため、企業間での提携・再編が進む可能性が高い。(中国部 畦田)

情報通信サービス(業種別一覧)

主要3キャリアの比較
携帯電話加入件数シェア(11年末)、3G加入数シェア(11年末)

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。