中国株 業界レポート

食料品業界 ~内需拡大の恩恵を受ける巨大市場~

2012年6月13日

市場動向 ~インフレが圧迫要因になるも、消費の中核として成長を継続~

11年の業界規模:

販売額:7兆6540億元(前年比31.6%増)、税引き後利益(1-11月):4720億元(同38.2%増)

13億人の胃袋を満たす中国の食料品業界は、多くの分野で世界トップクラスの消費規模を誇り、広大な市場を持つ。所得水準の上昇、インフレ、食品嗜好の多様化などを背景に、業界全体の販売額は前年比で31.6%増加。原材料コストの上昇圧力も、大手などは製品価格の引き上げで概ね吸収し、好業績を維持した。一方で、11年も食肉などで安全性に関わる問題が発生。消費者の食の安全に対する関心は高く、当局も規制強化に動いた。

今年は農作物、食肉などの価格鈍化が見込まれ、食品会社にとっては仕入コストの削減に繋がろう。全体的な所得の底上げ、食の高級・多様化の流れも加わり、市場は安定成長を維持する可能性が高い。ただ、競争は年々激しくなっており、勝ち抜くために買収・合併、事業提携などの動きが一段と強まるものと考えられる。

業界の特徴 ~景気よりも季節的要因の影響が大きい~

生産・販売面:

全体的に景気の影響が比較的小さいディフェンシブなセクター。国有系、民営、外資を含む多くの企業が激しい競争を繰り広げている。中国企業の多くは中小企業で、採算性、産業集積度は概ね低く、食品加工の初期段階に従事。市場全体としてビールは夏場、白酒、ワインなどは旧正月前後に消費シーズンを迎えるなど、季節的要因が生産・販売に与える影響は大きい。

国際面:

世界の主要な食料品メーカーが巨大市場の攻略を目指して進出済み。キリンホールディングスと華潤創業(00291)による清涼飲料での合弁会社設立など、日本企業も積極的に事業を展開。台湾企業は即席めん、清涼飲料などの分野で大きな存在感を持つ。

政策面:

政府は内需拡大の一環として農村部の振興、水利整備を重視。これらの政策は農作物の安定供給、ひいてはインフレ鈍化に繋がる可能性も。農民の購買力の拡大は、都市部での消費レベルの高度化も加わり、業界には追い風だろう。一方、食の安全に関わる問題は市民の関心も高く、当局も対策を強化。零細企業・品質面で問題のある企業は早晩、退場を迫られるだろう。

主要企業、主な取扱銘柄 ~市場拡大で売上増を果たすも、コスト増圧力の前に利益ベースでは明暗が~

食料品業界はブランド力などを背景に業界大手が有利な状況となっている。全体的に原材料価格上昇への対応状況が各社の業績の差に繋がった。即席めん、米菓、清涼飲料などの分野では台湾系3社が大手。いずれも増収を確保したが、販管費が膨らんだ統一企業中国(00220)と康師傅(00322)の2社は利益を減らす反面、中国旺旺(00151)は製品構成の改善と値上げでコスト増を吸収し、3社で唯一増益を確保した。一方、本土勢は政府系企業が目立つ。国務院直轄の中糧集団が一大コングロマリットを形成しており、業界をリード。川中~川下分野を担う中国食品(00506)、川上~川中の中国糧油控股(00606)、乳業大手の蒙牛乳業(02319)という上場3社を傘下に収めており、いずれも積極的な販促策、生産能力の拡大などを受けて好業績となった。

アルコール飲料でも大手は政府系企業が多い。ビールは華潤創業(00291)の「雪花」、青島ビール(00168)の「青島」、北京控股(00392)の「燕京」の3つが有力ブランド。青島ビールは高価格帯の売れ行きが好調で二桁の増収益を達成した。一方、ワインは張裕葡萄酒(200869)の「張裕」、中国食品の「長城」、王朝酒業(00828)の「王朝」が3大ブランドだが、王朝酒業だけが販売・流通体制の変更による影響が長引き、業績を落とした。なお、白酒大手の安徽古井貢酒(200596)は贈答用需要がけん引し、好業績を記録した。民営企業は苦戦を強いられたケースも多く、食肉大手の雨潤食品(01068)は製品の安全性を疑問視する報道の影響が大きかった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国旺旺0015119,04331.302,71017.03123,547
ハンセン本土に進出した台湾系食料品メーカーの草分け。主力分野は米菓、飲料、スナック菓子などで、「旺旺」ブランドは国内で高い認知度を誇る。価格決定力が強く、利益率は業界内でも比較的に高い。岩塚製菓と資本・業務提携を構築。森永乳業から技術供与を受けている。
青島ビール0016823,15816.381,73714.3067,900
H株長い歴史を持つ山東省青島市のビールメーカー。日本のアサヒビールと資本・業務提携を結んでいる。業界のリーディング企業であり、海外でも通用する高いブランド力は同社の強みとなっている。タイ工場建設は中国ビールメーカーとしては初の海外進出。海外市場の開拓動向が注目される。
統一企業中国0022016,93134.48311▲39.9025,196
香港その他「統一」ブランドで知られる台湾系の大手食品・飲料メーカー。「来一桶」、「統一100」ブランドの即席めん、「統一緑茶」シリーズの茶飲料、「多」シリーズの果汁飲料などが主力製品。製品は国内の販売ランキングで上位に名を連ねている。果汁飲料の強化に向けて、大手の煙台北方安徳利果汁(02218)に資本参加している。
華潤創業0029191,46927.022,351▲50.0956,045
ハンセン中央政府系のコングロマリット「華潤集団」の中核企業。小売り、飲料、食品などの事業を展開する。飲料事業では国内最大のシェアを占める「雪花」ブランドのビールを製造販売。キリンホールディングスと清涼飲料事業の合弁会社を設立している。食品事業では食肉の「五豊行」ブランドが香港で有名。
康師傅0032250,84117.742,711▲12.01104,686
ハンセン台湾系の大手食品会社で、日本のサンヨー食品も大株主となっている。天津市を本拠に、即席めん、飲料、焼き菓子などの製造・販売事業を全国で展開。製品は「康師傅」の商標で知られ、多くの分野でトップクラスのシェアを占める業界のリーディングカンパニー。
中国食品0050623,25740.3653651.0019,591
レッドチップ各製品で高いシェアを誇る政府系の総合食品メーカー。大型食品コングロマリット「中糧集団」の傘下にある。主力製品は「福臨門」ブランドの食用油、「コカ・コーラ」ブランドの飲料(合弁生産)、「長城」ブランドのドライ赤ワインなど。
中国糧油控股0060668,37553.951,96639.1620,636
レッドチップ農産物加工のリーディング企業。食用種子油、種粕、ビール用麦芽、米・小麦、小麦粉、燃料エタノールなどの製造・販売・貿易などを展開しており、主に食品・流通業者を顧客とする。中国食品と同じく中糧集団に属しており、グループ内のリソースを活用できる点が強み。取扱製品の多くで国内有数の規模を誇る。
雨潤食品0106826,83150.491,493▲34.0614,017
香港その他南京市に本拠を置く民営の大手食肉メーカー。主力製品は豚肉で、豚の仕入、屠畜・解体、各種加工までを一貫して手がけており、インフレに比較的強い。食肉は市場規模が大きい一方、企業化されていない。豚肉は中国人の食生活にとって、必要不可欠な食材であり、将来的な拡大余地は大きい。
蒙牛乳業0231937,38723.531,58928.4536,945
香港その他内モンゴル自治区を本拠とする乳業大手。同社製品は「蒙牛」ブランドで知られており、人気番組とタイアップした積極的な広告宣伝を通じてブランド力を高めてきた。中国は乳製品の1人あたり消費量も少なく、製品種類も少ない一方で、国内市場の成長余地は大きい。大手として市場拡大の恩恵を受ける可能性も。
安徽古井貢酒2005963,30776.0456680.5224,247
深セン中国八大名酒の一つ「古井貢酒」(白酒)を生産販売する企業。白酒とはアルコール度数の高い中国の伝統的なお酒で、家庭での祝い事やビジネスの場などでは欠かせないもの。主力製品の「古井貢酒」は約1800年の歴史を有すると言われる。贈答用の高級白酒の売上高が急拡大し、11.12期は好業績を達成した。
張裕葡萄酒2008696,02720.961,90732.9851,714
深セン山東省煙台市を本拠とする老舗ワインメーカー。フランスのワイン大手「カステル社」と合弁事業を展開している。販売量ベースで11年も国内トップの座を維持した。主力の「張裕」ブランドは国内で有名。食の西洋化にともないワインの消費量は拡大しており、業界大手として市場拡大の恩恵を享受できる立場にある。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は11年6月13日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

食料品(業種別一覧)

注目されるトピックス ~市場全体のパラダイムシフトに対応できるか~

市場構造、趣向の変化に注目:

中国の食料品業界を見ると、食肉を典型例に個人事業者を主役とした分散型の市場が特徴となってきた。ただ、全体的な流れは日本のような企業や協同組合を中核とした集中的な構造に向かっている。上場企業にとって、市場拡大の余地は依然として大きい。規模に加え、消費者の食料品に対する嗜好も多様化している。特に健康・安全志向、洋風化は都市部などで顕著にみられ、健康飲料、ワインなどの需要を押し上げている。

国内勢による海外を含めた事業展開に注目:

スケールメリットが大きくものをいう業界であるだけに、国内外の大手・中小を巻き込んだ「合従連衡」の動きはより活発化していくだろう。今後は国内勢による海外進出を見据えた動きに注目。例えば、青島ビールは来年の操業を目指してタイに生産工場を建設中であり、国内業界では初の海外進出となる。

食の安全、原材料の価格動向はリスク要因:

昨年は統一企業中国の飲料品、雨潤食品の食肉加工品などに関して、安全性を疑問視する報道が流れた。依然として食の安全性をめぐるリスクは多くの企業に燻る。このほか、原材料である農作物・家畜類も引き続きインフレ圧力が根強く、コスト環境は食品企業にとって厳しさが残ろう。(中国部 畦田)

食料品(業種別一覧)

食品加工業第12次5ヵ年計画(11~15年)の概要
食品企業の月別売上高・営業利益の推移
消費物価指数の推移

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。