中国株 業界レポート

自動車業界 ~世界最大の自動車大国にも減速感が漂う~

2012年6月15日

市場動向 ~世界首位の座は維持するも大きく減速~

11年の業界規模:

販売台数:1851万台(前年比2.5%増)、乗用車:1447万台(同5.2%増)、売上高:5兆313億元(同16%増)

中国は世界最大の自動車大国。11年の販売台数は1851万台と3年連続で世界1位となったが、伸び率はわずか2.5%と13年ぶりの低水準。3割以上も増えた10年に比べ、大きく減速した。購入支援策が打ち切られ、CUV(クロスオーバー車)や排気量1.6リットル以下の自動車などの販売が不振。これに景気減速、金融引き締め策などの影響が加わった。特に低価格帯・小型車で強みを有していた地場系自主ブランドのシェアが、海外ブランドの攻勢もあり前年比1.5ポイント減の30.7%に縮小。一方で、主力のセダンは伸びこそ鈍化したが、底堅い需要を確保した。富裕層の増加を受け、高級車、SUV(スポーツ型多目的車)、MPV(多目的車)の売れ行きが好調。こうした状況下で各社の業績も明暗が分かれた。12年も同じく逆風が強いとみられる。それでも在庫調整が一段落したなか、地方都市への販路拡大策などを手がかりに国内市場は安定増を確保か。今後は他の新興国を含めた海外市場への関心も高まっていこう。

業界の特徴 ~多くの企業が競争を繰り広げる巨大市場~

生産・販売面:

多くの自動車メーカーが乱立し、産業集積度は日本に比べると格段に低い。東北、長江デルタ、中部地区などが自動車産業の中心地。中国企業の多くは、日本のような基幹部品を含めた一貫生産や系列化が進んでおらず、多くは部品を他社から調達し、組立を行っている。経済発展、所得水準の向上、道路インフラの整備などを背景に、ここ数年でモータリゼーションが進展。一方で渋滞が深刻化したことで、一部の大都市では実質的な販売抑制策を採用するケースも出てきた。

国際面:

世界の主要自動車・部品メーカーのほとんどが進出済み。トヨタ、日産、ホンダの日系3社も、現地で合弁事業を展開している。輸出も昨年は81万台と規模こそ小さいが、伸び率は5割近くに達するなど、高成長を持続している。

政策面:

外資は規制を受けており、上限50%の合弁形式、同車種については合弁パートナー2社までしか認められていない。政策の方向性では渋滞緩和を目的とした北京市の走行規制、ナンバープレート供給制限措置など、需要を引き締める政策が目立っている。直接的な購入支援策もエコカー分野を除いて、その大半が終了した。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~国内市場の伸び鈍化を受け、業績を落とす企業も~

国内市場の伸びが頭打ちとなり、価格競争に巻き込まれると、多くの企業が業績を落とした。大手の中心は国有系で、それぞれ有力外資と合弁事業を展開し、海外ブランド車を主力車種とする。上海汽車、第一汽車などがリーディングカンパニー。上場企業をみると、東風汽車集団(00489)、広州汽車(02238)、長安汽車(200625)の大手3 社が減益に後退。東日本大震災によるサプライチェーン寸断などの影響を受けた。民営でも比亜迪(01211)がブランド力不足から薄利多売を迫られ、大幅減益に沈んだ。一方、高級車と SUV市場は引き続き好調を維持。地方政府系の華晨中国汽車(01114)は傘下に置く独BMWとの合弁会社からの利益計上が大きく貢献した。民営の長城汽車(02333)は自社SUVの販売増などを受け、大幅増益。同じ民営企業の吉利汽車(00175)も輸出を増やし、増収増益を確保した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
吉利汽車0017520,9644.311,54312.7920,557
香港その他華東地区を本拠とする大手の民営自動車メーカー。「吉利」(GEELY)ブランドで知られる。低価格帯、小型の乗用車が中心。親会社による「ボルボ」買収にともなうシナジー効果に注目。今後はマルチブランド戦略を展開し、ハイエンド市場に本格参入していく。
東風汽車集団00489131,4417.3910,481▲4.55110,631
H株湖北省に本拠を置く国内第3位の大手自動車メーカー。中央政府系の大型企業で、特にSUVではトップクラス、商用車では国内2位のシェアを持つ。日産、ホンダ、プジョーなどの有力外資と合弁事業を展開し、幅広い外資ブランド車のラインナップを有することなどが強み。
天能動力008195,43844.9161577.894,485
香港その他電動自転車用バッテリーの大手メーカー。前身である工場の工場長を務めていた張天任・主席が実質支配している。主力製品は電動アシスト自転車などに使われる鉛蓄電池。このほか電気自動車向けのニッケル水素電池なども生産している。製品は「天能」(TIANNENG)ブランドで知られる。
華晨中国汽車011146,442▲28.001,81242.6038,698
レッドチップ遼寧省政府系の大手乗用車メーカー。ワンボックスバン、セダンの製造・販売などを手がける。傘下に置くBMWとの合弁会社は、BMW3シリーズ、5シリーズをセミノックダウン生産。BMWは中国国内でもブランド力が強く、高級車市場の拡大に合わせて利益を拡大。同社の大きな収益源となっている。
比亜迪0121146,312▲0.801,384▲45.1356,675
H株広東省に本拠を置き、自動車事業と電池、IT部品事業を収益の柱とする民営企業。主力の自動車事業は「F3」が国内の新車販売市場で第1位を記録したこともある。二次(充電式)電池の製造でも世界大手であるだけに、ハイブリッド車、電気自動車などでも有名。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が大株主として出資している。
広州汽車0223810,98425.644,271▲0.5454,569
H株中国の大手自動車メーカー。広州市政府系の企業であり、傘下に広州トヨタ 、広州ホンダ、広汽日野など複数の有力外資との合弁会社を抱える。乗用車が大半を占め、ブランド力が高く、中・高級車に強み。販売力も大きい。このほか自動車産業の集積地である広東省に地盤を置くことも中長期的にはプラスとなろう。
長城汽車0233330,08930.903,42626.8660,193
H株河北省保定市に本拠を置く民営の自動車メーカー。主力とするピックアップトラック、SUVに強みを持つ。それぞれの主力ブランドの販売台数は国内トップクラスの規模。このほか、ロシアや欧州などの海外事業に積極的な点も特徴として挙げられる。
中国重汽0380836,603▲7.701,002▲32.3211,817
レッドチップ「中国重汽」(SINOTRUK)ブランドで知られる、大型トラック業界のリーディングカンパニー。積載重量14トン以上に限れば、2割程度の国内シェアを誇る。山東省政府系の中国重型汽車集団の傘下にある。ドイツの大手トラックメーカー「MAN」が大株主として名を連ねており、同社からの支援をてこに技術・ブランド力の向上を目指す。
長安汽車20062526,551▲20.80967▲52.4427,937
深セン重慶市を本拠とする国有系の大手自動車メーカー。自社ブランドとして、「長安之星」シリーズのバン、長安ブランドの小型トラックなどを製造・販売している。このほか、スズキ、フォード、マツダと合弁事業を展開。乗用車「アルト」(奥拓)、「カルタス」(羚羊)、「フィエスタ」(嘉年華)などを生産している。深セン上場の江鈴汽車(200550)を傘下に置いており、軽自動車、軽トラックを中心に事業展開している。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。

時価総額は11年6月14日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

自動車・二輪車(業種別一覧)

注目されるトピックス ~低成長時代に入り、地方都市・海外市場の攻略がカギに~

国内市場は低成長時代に入るも、地方都市市場は成長余地が見込める:

深刻化する渋滞・排ガス問題の解決に向けて当局は規制を強化しており、北京、上海などの大都市部では一部で販売鈍化の傾向が出てきている。しかし、中国の公共交通網は依然として不足気味である上に、自動車保有率も地方では低い水準。一昨年までの高成長は望み難いが、地方都市ではまだまだ成長余地が見込めよう。

海外市場に活路を見出す動きも:

海外、特に新興国市場に活路を見出す動きも出てきている。輸出の主役は地場系の民営企業であり、コストパフォーマンスを武器に販売を拡大。特に吉利汽車と長城汽車の両社は製品のハイエンド化が進み、輸出を伸ばした。一方、国有系企業は合弁相手の外資が中国を輸出基地として位置づけていないため、海外売上比率はわずかだ。

地場系ブランドの競争力引き上げが必須:

昨年の販売シェアからも分かる通り、海外ブランドが上位の多くを占めており、性能・ブランド面で地場系を大きく凌駕している。民営企業は苦戦しながらも自主ブランドで勝負しているが、国有系企業は外資に大きく依存しており、競争力の底上げが喫緊の課題となっている。

自動車・二輪車(業種別一覧)

自動車販売台数(11年)
生産企業別販売台数(11年)
ブランド別販売台数(11年)
ブランド保有企業別販売台数(11年)

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