中国株 業界レポート

娯楽・観光業界 ~世界の観光大国として存在感を高める~

2012年6月18日

市場動向 ~内需拡大の柱として、成長は持続~

11年の業界規模:

観光業総収入:2兆2500億元(前年比20.8%増)、国内観光収入:1兆9300億元(同23.6%増)、外国人旅行者による観光収入:485億米ドル(同5.8%増)。

長い歴史と広大な土地を有する中国は、多数の世界遺産・遺跡などに恵まれた観光大国。11年の観光業収入は引き続き前年比で2割台の伸び率を記録した。有給休暇制度の整備、所得水準の向上、レジャーの多様化などを背景に、国内の旅客数は前年比13.2%増の26.4億人に拡大。上海万博のような一大イベントは少なかったものの、政府が「中国旅行デー」を正式に制定し、内需拡大の柱として旅行需要を喚起し、旅客数の伸びは加速した。世界的な景気減速の影響を受け、海外からの観光客数、外貨収入はいずれも伸びが鈍化。一方で海外旅行ブームはさらに高まり、渡航者数は前年比2割増の6900万人に増加。香港、マカオの観光業界は本土からの観光客増に支えられた。

今期は国内外の景気減速の影響から、旅行需要の伸びが鈍化する可能性も。特に欧米などからの観光客数は下振れリスクが大きい。それでもホテル・交通網の整備、最低賃金の引き上げ、有休制度の徹底などが下支えとなり、大手を中心に競争力のある企業は堅調な業績が続くと考えられる。

業界の特徴 ~国内外の様々な要因に左右されやすいセクター~

主力事業面:

数多くの企業がひしめき、競争が激しいなか、景気などの外的要因に影響を受けやすいセクター。海外からの観光客も多いため、海外景気の影響を大きく受ける。災害・伝染病といった特殊要因によるリスクもある。10月の長期連休や夏休みなどの行楽シーズンと閑散期との差が大きいことも特徴。鉄道、航空路線など交通アクセスの整備状況も需要を左右する。

国際面:

世界の主要なホテルが巨大市場の攻略を目指して中国に進出。さらに中国人の海外旅行というマーケットが年々成長しており、各国は旅行客の取り込みに向けて、積極的に手を打っている。

政策面:

政府は15年までに、国内旅行者数を33億人(年平均10%増)、入国旅行者数を1.5億人(同3%増)、出国旅行者数を8800万人(同9%増)に引き上げるとともに、旅行総収入を年平均10%増、観光業の付加価値をGDPの4.5%にするなどの目標を掲げた。これを踏まえ、海南省に「免税特区」を設立するなど、矢継ぎ早に具体策を講じている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~観光業収入の伸びに比例し増収を確保、カジノ企業は好業績に~

観光業界には政府系・民営を問わず、多くの企業が参入。零細企業も多く、価格競争から利益率は低めだ。それでも大手が大半の上場企業は観光業収入の伸びに比例して、各社ともに増収を確保した。上海市を本拠とする上海錦江国際酒店(02006)は、ホテル部門の上海錦江国際酒店発展(900934)、旅行会社の上海錦江国際旅游(900929)などを傘下に置く総合観光グループ。11.12期は前年の上海万博の反動で売上が伸び悩んだが、海外事業に助けられて増収増益を確保した。一方、中央政府系の香港中旅(00308)は主力とする香港、広東省でホテル事業が堅調だったほか、国内各地で展開するテーマパーク事業が利益貢献した。安徽省の景勝地「黄山」を管理する黄山旅行開発(900942)も安定増収を確保した。

一方、民間の大手企業は外資系が多い。マレーシア系の高級ホテルグループ「香格里拉(亜洲)(00069)」は、財務費用が嵩み減益に後退した。本土からの観光客は引き続き“カジノ天国“のマカオに押し寄せ、経営ライセンスを持つ6社はいずれも好業績を記録した。6社のうち最大手はマカオの富豪であるスタンレー・ホー氏ファミリーが率いる澳門博彩控股(00880)。同ファミリーは新濠博亜娯楽(06883)も支配している。香港系の銀河娯楽(00027)も大手で、新規カジノ場の開業に沸いた。一方、米ラスベガスの大手もマカオに進出しており、金沙中国(01928)、永利澳門(01128)、美高梅中国(02282)の3社は高級感を前面にVIP向けで強みを発揮し、利益を急拡大させた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
銀河娯楽0002734,196113.82,494234.378,133
香港その他香港の著名実業家である字志和ファミリーが支配するマカオのカジノ事業者。「スターワールド」は国内外で高い知名度を誇る。11年5月にコタイ地区に大型カジノリゾート「ギャラクシー・マカオ」をオープン。この効果で、市場シェアを一気に引き上げた。
香格里拉(亜洲)0006912,35721.401,635▲11.8846,475
香港その他 マレーシア華僑財閥系のホテル会社。アジア各地や欧米で、高級ホテル「シャングリラ」(香格里拉)を経営している。日本でも東京駅の前に5つ星ホテルを開業。香港や、中国本土の主要都市に進出している。アジアを代表する高級ホテルとして、ブランド力に定評がある。
新濠国際00200107-232黒字転換7,601
香港その他スタンレー・ホー氏ファミリーが支配するマカオの大型コングロマリット。主力はカジノ事業で、豪クラウン社と合弁で設立した新濠博亜娯楽(06883)を通じて高級カジノ場、新都市型娯楽リゾート、ゲーム機カジノ場を経営。レジャー分野では有名レストラン「珍宝海鮮舫」や中国本土のスキー場を運営する。
香港中旅003083,614▲2.51577347.588,226
レッドチップ 国有系の大手観光サービス会社。香港に本拠を置き、本土では広東省を中心に国内各地で事業を展開。旅行取扱、旅客輸送の業務に加え、ホテル、テーマパーク・風景区、リゾート施設、ゴルフ場の経営など、観光事業を幅広く手がけている。旅行需要が活発な華南エリアで有力な地位を築いている点が強み。
澳門博彩控股0088062,69932.034,40649.1279,050
香港その他 マカオのカジノ最大手。長きにわたってマカオのカジノ産業を独占支配していた企業を前身とし、老舗の「カジノ・リスボア」や「グランド・リスボア」などを経営している。創業者のスタンレー・ホー主席は“マカオのカジノ王”として業界内でも圧倒的な存在感を放つ。ただ、同氏はすでに高齢で、後継者をめぐり混乱が起きる不安も。
永利澳門0112824,49231.464,91633.9089,433
香港その他 マカオでカジノホテルリゾート事業を展開する米国系企業。ナスダックに上場するウィン・リゾーツの傘下にあり、24時間営業のカジノ、高級小売店、レクリエーション施設などを備えた高級カジノホテル「ウィン・マカオ」を経営する。
金沙中国0192831,54417.837,32270.01200,466
香港その他 ラスベガスを本拠に世界各国でカジノ事業を展開するラスベガス・サンズの中国子会社。マカオで最初のラスベガス式カジノを開業後、次々と大型の総合カジノリゾートをオープンしてきた。総合カジノリゾート「サンズ・コタイ・セントラル」は第1期が今年春にオープン。14年末までに順次、開業していく見通しで、注目される。
上海錦江国際酒店0200612,6537.0253638.425,085
H株上海最大の観光グループ「錦江集団」の中核企業。地元政府系の企業で、ホテル経営の上海錦江国際酒店発展(900934)、旅行代理の上海錦江国際旅游(900929)、タクシー・物流事業の上海錦江国際実業投資(900914)を傘下に置く。クラシック、豪華、ビジネス、エコノミーホテルなど、幅広いスタイルのホテルを経営している。
美高梅中国0228216,84963.202,722109.3945,144
香港その他 マカオのカジノホテル事業者。ニューヨーク上場のMGMリゾーツ・インターナショナルの傘下にある。スタンレー・ホー氏の娘も主要株主として名を連ねる。07年12月に開業したマカオ半島のカジノリゾート「MGMマカオ」を経営している。
黄山旅行開発9009421,60110.8125610.887,219
上海中国屈指の名山として知られ、世界自然遺産にも認定されている黄山の観光サービス会社。黄山風景区の入園チケット販売、ロープウエー運営、ホテル経営、旅行会社経営などを手がける。黄山は商都「上海」を中心とした長江デルタ地域と距離的に近い。交通アクセスは益々便利になってきており、観光客の一層の増加も見込める。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.463元。

時価総額は12年6月18日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.759HKドル。

娯楽・観光(業種別一覧)

注目されるトピックス ~交通網の整備を追い風に、需要の変化をチャンスに~

国内観光は需要の変化に注目:

上海万博、広州アジア競技大会のような重要イベントがなくとも、国内観光の起爆剤は多い。特に所得水準の向上、休暇制度の充実などを背景に、個人旅行ブームが到来。観光需要に変化の波が訪れている。変化に敏感な企業にとっては、大きなビジネスチャンスが転がっているといえよう。

高速交通網の整備が追い風に:

国土の広い中国では観光地へのアクセス状況が観光客の数を左右する。こうしたなか、急ピッチに進む高速交通網の整備は業界全体にとって追い風。黄山旅行開発(900942)が管理する世界自然遺産「黄山」のように、大都市とのアクセスに強みを持つ観光地には、観光客の一層の増加が見込まれよう。

香港・マカオ企業は本土観光客の動向次第:

市民にとって海外旅行は年々身近なものになってきており、主要な渡航先は香港・マカオがまず挙げられる。香港系の観光銘柄、マカオのカジノセクターにとって、本土からの観光客の動向は重要の関心事といえよう。人民元高、所得水準の上昇、交通インフラの整備が進めば、観光客の増加に繋がろう。

リスク要因:

同セクターは外的要因に左右されやすく、特に海外からの旅行者の増減は天災・疫病・紛争などの影響を受けやすい。このほか、原油高で航空など輸送手段の価格上昇が進めば、観光需要の減少をもたらす。場合によっては、デモによる混乱など政治的リスクも考慮に入れる必要があろう。(中国部 畦田)

娯楽・観光(業種別一覧)

マカオのカジノ収入の推移(四半期別、1HKドル=1.03パタカ)
マカオでのカジノ経営ライセンスを保有する6社の比較

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