中国株 業界レポート

繊維・アパレル・宝飾品業界 ~世界の繊維大国も足元では苦戦~

2012年7月3日

市場動向 ~業界規模は圧倒的も、国内外の景気減速で収益環境は厳しい~

11年の業界規模:

輸出額:2479億米ドル(前年比20.0%増)、売上高:5兆2347億元(同16.6%増)、税引き前利益:2885億元(同0.8%減)

中国の繊維・アパレル業界は世界で圧倒的な規模を誇り、化学繊維の生産量は66%のシェアを有する。11年は新興国向けの輸出が伸び、輸出額は2割増を確保。ただ、欧州債務問題などの影響を受け、年後半は伸び悩んだ。主力の国内市場も景気減速の影響が徐々に現れ、業界全体で増収率が鈍化。インフレにより製造コストが嵩む一方、価格競争が激しく、在庫処理の負担も重なり、多くの企業が減益に転落した。

12年に入っても環境はあまり好転しておらず、3月末時点で輸出の伸びは大きく鈍化。国内市場も相変わらず競争が激しく、厳しい状況が続いている。今後はインフレ鈍化に伴い、収益環境はやや改善する見込み。それでも生き残りをかけて国内では業界再編が進むだろう。その中心は上場企業などの大手に限られるとみられる。

業界の特徴 ~典型的な労働集約・輸出型の重要産業~

生産・販売面:

繊維・アパレル業界は繊維から糸、生地などを生産する川上の紡績・紡織から、衣類を製作する川中のアパレル、さらに川下の小売、関連産業である紡績機械など多岐に渡り、数多くの企業がひしめくため、収益性は概ね低い。生産地は沿海部に集中しており、広東、浙江、江蘇、山東、福建、江西の6省で国内生産量の大部分を占める。売れ筋製品の変化が速く、臨機応変に対応する必要がある。香港のアパレル産業は歴史が古く、アジア有数の貿易拠点としての地位を有する。

国際面:

典型的な加工貿易・輸出型産業であり、価格競争、スケールメリットなどに強み。地場系、外資など多くの企業が広東省など沿海各省を拠点に、製品を世界各国に輸出している。中国製は大きなシェアを持つことから貿易問題に発展しやすく、人民元レートの動向も含め、輸出環境を左右する要因は多い。

政策面:

同業界は高い国際競争力を持つほか、労働集約的な産業であるために雇用吸収力が大きく、経済全体に与える影響は大きい。このため政府は重要産業と位置づけており、業界全体の高度化を模索している。税還付率をツールに輸出環境のコントロールに努めるほか、過剰気味の生産能力の淘汰・整備、業界再編、製品の高付加価値、地場系ブランドの発展などを支援している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手も含め多くの企業が苦戦するも、香港系企業は増益を確保~

11年は景気減速の影響を受け、特に年後半から国内外で衣類需要が減少。これを受け、川上から川下まで各企業が苦戦を強いられた。川上の紡績・紡織では、天然繊維に属する綿大手の魏橋紡織(02698)、サーキュラーニット(丸編み)の福田実業(00420)などの民営企業が多いが、いずれも業績が悪化。政府系といえども状況は同じで、化学繊維最大手の中国石化儀征化繊(01033)は減益に後退した。川中のアパレル製造は大手になると、川下の販売店まで展開しており、こちらも民営企業が目立つ。思捷環球控股(00330)は主力とする欧州市場の景気悪化を受け、利益を大きく減らした。スポーツアパレルの分野でも、業界のパイオニアである李寧(02331)や中国動向(03818)などの大手が在庫処理に追われて業績が後退。ただ、ダウンジャケットの波司登(03998)、婦人靴の百麗国際(01880)など、スケールメリットを活かし増益を確保した企業もみられた。こうしたなか、内陸部への積極出店や旺盛な高級品需要を追い風に、香港企業の健闘が目立つ。ファストファッション大手の佐丹奴国際(00709)、宝飾品最大手の周大福珠宝(01929)に加え、宝飾品大手の周生生(00116)が業績を伸ばした。アパレル商社として有名な利豊(00494)も買収・合理化効果から増益を確保した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
周生生00116 14,24646.5990744.4210,601
その他 宝飾品の小売販売を主力とする香港地場系企業。香港のほか、マカオ、本土や台湾にも進出しており、「周生生」のブランド名で市場に広く認知されている。香港・マカオでの観光客増加や、本土の奢侈品市場拡大が追い風となり、中核のジュエリー部門が大幅に拡大。本土の奢侈品市場の将来性を見据え、積極的に出店していく方針だ。
思捷環球控股00330 28,0360.1065▲98.1313,013
ハンセン 「ESPRIT」ブランドを展開する大手アパレルメーカー。女性物、男性物、子供服、アクセサリーなど幅広くカバーする国際的な著名ブランドに成長している。製造から販売までを一貫して手がけている点が特徴。売上高の大半を欧州市場が占めることから、欧州景気、ユーロ相場の動向から影響を強く受ける。
利豊00494 129,45525.884,40224.20124,766
ハンセン 香港を代表する大手商社。衣料産業の歴史が古い香港にあって、アジア有数のアパレル貿易商社として抜群の知名度を誇る。高品質とコスト競争力を有したサプライチェーンを掌握し、設計・開発から、原材料の仕入、委託生産工場の選択、生産・品質管理、出荷までを一貫して手がけられる点が強み。商品は主に米国や欧州を中心に輸出している。
佐丹奴国際00709 4,66118.6660435.578,754
その他 「Giordano」を主力ブランドとする民営の大手アパレル企業。20~35歳向けのファストファッションを主力とし、製品設計・開発から販売までを一貫して手がける。香港で創業後、30年余りでアジア屈指の規模まで成長した。中華圏を中心に世界各国で店舗を展開。中国も含めたアジアの消費拡大が追い風に働くと考えられる。
百麗国際01880 28,94422.104,25424.24113,525
ハンセン 婦人靴で国内最大級のシェアを誇る民営企業。婦人用革靴では国内トップのシェアを誇り、同社ブランドの「Belle」などは販売ランキングで上位を独占。紳士用革靴でも同社の「Senda」が上位に入る。スポーツ衣料も手がけており、「NIKE」ブランド製品の販売では国内最大手。製品設計から最終販売までの一貫体制を築いている。
周大福珠宝01929 46,97061.445,26479.2398,100
その他 香港・マカオに本拠を置く老舗の宝飾品業者。「周大福」ブランドは中華圏で高いブランド力を誇り、旺盛な高級品需要を取り込み急成長してきた。主力の宝飾品事業は原材料の仕入れから、デザイン・加工、卸小売までの一貫体制。創業者の鄭裕トウ・名誉主席は香港屈指の富豪として知られ、新世界発展(00017)の主席を務める。
安踏体育用品02020 8,90420.201,73011.5411,648
その他 福建省に本拠を置く民営の大手スポーツ用品メーカー。主力は「ANTA」ブランドのスポーツシューズ・ウエア。国際ブランド「FILA」の中国事業も買収している。イメージキャラクターとして有名スポーツ選手を起用するなど、広告宣伝活動を重要視。中国オリンピック委員会に協賛しており、オリンピックは大きなビジネスチャンス。
李寧02331 8,928▲5.80385▲65.194,804
その他 スポーツ用品のリーディングカンパニー。「LI-NING」ブランドで知られ、ロサンゼルス五輪の金メダリストである李寧・主席が創業した。国内各地で同ブランドの販売店を直営やフランチャイズで展開しており、主力商品はシューズ、ウエアなど。フランスの著名ブランド「AIGLE」をはじめ、複数の他社ブランド製品も販売している。
魏橋紡織02698 15,232▲14.85245▲84.913,452
H株 山東省の大型民営企業。綿紡績、生機(=きばた。染色加工前の織物)、デニムなどの製造・販売を主力とし、綿紡績では国内最大のシェアを誇る。国内外の大手アパレル企業を含め顧客層は厚い。主要取引先である伊藤忠商事とは複数の合弁会社を展開している。
波司登03998 8,37619.021,43612.5516,095
その他 ダウンジャケットなど羽毛服の国内最大手。研究開発、デザイン、原材料の仕入れ、販売までを一貫して手がける点が特徴。OEMや男性物アパレル事業も展開している。同社製品は「波司登」などのブランド名で有名。課題となっていた冬以外のシーズンについても、オールシーズン衣料の強化を進めており、その動向が注目される。

売上高・純利益は思捷環球控股(00330)が11年6月本決算、周大福珠宝(01929)と波司登(03998)が12年3月本決算。それ以外はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.463元。

時価総額は12年7月3日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

アパレル等(業種別一覧)

注目されるトピックス ~体力勝負のなか、海外企業買収、内陸部市場の獲得などがカギに~

業界は一層体力勝負の様相へ:

インフレ鈍化に伴い原材料価格の上昇ピッチは一服しそうだ。それでも綿花、原油相場などは上昇懸念が残るほか、政府は政策として最低賃金の引き上げを明言しており、人件費の増加傾向も続くとみた方がよい。業界は一層体力勝負の様相を呈していくだろう。川上の繊維企業は自前での原材料調達力、川中・川下のアパレル企業は販売価格への転嫁力が生き残りを左右するものと考えられる。

主力の輸出は懸念要素も残る:

輸出は主力とする先進国の景気動向しだいだが、米欧の景気先行きを考えると不透明感は拭いきれない。加えて、人民元高が一層進めば、輸出環境は基本的に厳しいものと考えられる。ただ、企業の海外展開を考える際、今後は単なる輸出ではなく、直接投資をともなった動きに注目するべき。中国企業によるレナウン買収をはじめとした実例が出てきており、単なる輸出企業から脱却できるかがカギとなる。

内需の高度化、多様化が一層進むことに:

輸出依存度の高い同業界にとって、内需拡大は安定的な成長にとって不可欠。こうしたなか、国内では大都市を中心にブランド志向が一層拡大。これを狙って欧米の高級ブランドが攻勢を強めており、一部は香港上場を果たして知名度向上を狙っている。中小都市・内陸部でも、多様なアパレル需要が拡大中。地場系ブランドにとって、単純な価格競争力だけでは早晩淘汰される可能性が高い。中小都市・内陸部の需要をうまく取り込む戦略を打ち出せるかがカギとなろう。(中国部 畦田)

アパレル等(業種別一覧)

繊維・アパレル業界の業績推移
世界の化学繊維生産シェア(11年、%)
上場する主要アパレル企業の自主ブランドを一部抜粋

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