中国株 業界レポート

鉄鋼業界 ~世界の鉄鋼大国、住宅市場の回復がカギ~

2012年6月19日

市場動向 ~世界最大の鉄鋼大国、収益環境は大幅に悪化~

11年の業界規模:

粗鋼生産量:6億9550万トン(前年比8.9%増)、大手・中堅企業の売上高:3兆6186億元(同18.2%増)。

中国は世界最大の鉄鋼大国。輸出入の規模も大きいほか、11年の国内粗鋼生産量は7億トンに迫り、世界全体の45.5%を占めた。だが生産能力が元々過剰気味であるなか、景気減速、住宅市況の悪化などの影響を受け、下期から鋼材価格が急落。鉄鉱石、コークス、電力など原材料・燃料コストも嵩むと、業界全体の収益環境は大きく悪化し、大手といえども赤字に追い込まれた。

12年も景気低迷、不動産引き締め策などから、鋼材需要の中心である住宅市場の伸びは期待薄か。4月末時点でも業界全体で赤字構造から抜け出せずにおり、引き続き厳しい経営環境にあるといえる。それでもインフレ鈍化、旧式設備の淘汰・業界再編などが進めば、大手の業績悪化の傾向は底打ちする期待も持てる。

業界の特徴 ~多くの企業が競争を繰り広げる業界、構造的な課題も~

生産・販売面:

中小を含め多くの鉄鋼メーカーが競争を繰り広げており、産業集積度は小さい。大手10社の粗鋼生産量は全体の5割弱と前年に比べわずかに拡大したに過ぎず、業界再編の動きは鈍い。主な生産地は河北、江蘇、山東、遼寧など。生産設備の「過剰、小規模、老朽化」という構造的な問題を抱えており、価格競争、環境汚染につながりやすい。中国は遼寧省を中心に原材料である鉄鉱石資源に恵まれているものの、低品質な鉱石が多く、コスト高に繋がることから、資源メジャーを通じて海外の高品質の鉱石を輸入。経済発展にともない輸入鉄鉱石の需要は高まっている。鉄鉱石の価格交渉は電力、石炭などの価格動向とあわせ、製造原価に直結する。販売面では用途の半分以上を建設用が占め、これに機械、自動車などが続く。このため、固定資産投資、自動車販売などの動向が需要に大きな影響を与える。

国際面:

中国による鉄鉱石輸入、鋼材輸出の規模は大きく、国際市場に与える影響度も高い。輸出では特にアジア向けに強みを持つ。一方、世界の主要鉄鋼メーカーは高付加価値品を中心に中国に輸出している。

政策面:

政府は構造的な問題の解決、国際的な鉄鋼メーカーの育成などを目的に、マクロコントロールを強めており、新規プロジェクトの着工・推進、資金調達などを厳しく審査。さらに当局主導で業界再編を推し進めている。こうした再編が進めば、業界の集中度は一層の向上が図られ、コストの低下や収益力の向上、生産能力が立ち遅れている企業の淘汰が進む見通し。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手の国有系企業も含め、各社が苦戦~

大手は国有系企業が中心で、生産量は世界でも屈指の規模。11年の生産高ベースで河北鋼鉄が7000万トンを超え国内1位、世界2位。これを鞍山鋼鉄、宝山鋼鉄、武漢鋼鉄、首鋼総公司が追い、これら上位クラスは生産量がいずれも3000万トンを超え、規模面で他社を大きく引き離している。しかし、これら大手を含めて業界全体が11年に入り収益環境が再度悪化。国内外の景気減速、不動産引き締めの影響で需要が減少すると、各社は販売増のために薄利多売に追い込まれた。さらに原燃料価格の上昇や在庫整理も重しとなり、鞍鋼(00347)が赤字転落、馬鞍山鋼鉄(00323)が大幅減益と、両大手が散々たる結果に。首鋼グループに属する首長宝佳(00103)、首長国際(00697)も利益を減らした。重慶鋼鉄(01053)は高い成長を続ける西南地区に地盤を置く強みを活かして売上を伸ばしたが、赤字に転落した。こうしたなか、民営大手の中国東方集団(00581)、国有系の中信泰富(00267)などは製品の高付加価値化を進め、増益を確保できた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
首長宝佳001031,4746.742▲98.24558
レッドラジアルタイヤ用スチールコードの生産を主力とする鉄鋼メーカー。北京市を本拠とする国有系大手「首鋼総公司」が首長国際(00697)を通じて支配している。銅線で世界大手のベカルト社(ベルギー)と資本・業務提携を結んでいる。顧客であるタイヤメーカーの業績に左右されやすい。
中信泰富0026783,10141.747,6663.8240,144
ハンセン政府系の大手コングロマリット(中国中信集団、CITIC)に属する旗艦上場企業。鉄鋼生産、資源採掘、流通などの事業を担当する。このうち鉄鋼部門は自動車など向けの特殊鋼を専門としており、地場系のなかでは総じてハイエンド分野に強い。加えてオーストラリアで鉱山開発を進行中。12年中の本格生産を目指しており、実現すれば鉄鉱石の安定調達に繋がる。
馬鞍山鋼鉄0032386,84233.6469▲93.6919,789
H株安徽省を本拠とする国有系の鉄鋼大手。主力製品は銑鉄、粗鋼、鋼材などで、鋼板コイル製品やH型鋼ではJIS(日本工業規格)の製品も製造するなど、高付加価値化に努めている。鉄鉱石の大部分を海外から輸入するため、海外相場による影響を受けやすい。製品は主に国内で販売しており、高速鉄道用の車輪生産で実績を持つ。
鞍鋼0034790,207▲2.17▲ 2,163赤字転落34,721
H株国内2位の国有系鉄鋼グループ「鞍山鋼鉄」の中核企業。香港上場の鉄鋼メーカーで最大級の事業規模を誇る。主要製品は熱延鋼板、冷延鋼板、めっき鋼板など幅広く、国内最大規模の鉄鋼輸出企業である点も特徴。鉄鉱石の一大産地である遼寧省を本拠としていることが強み。ただ、製品の高付加価値化で遅れをとっており、利益面にとどまらず、販売面でも苦戦が目立つ。
中国東方集団0058138,59628.081,24116.855,714
その他民営の鋼材メーカー。事業の大部分を国内で展開しており、主力製品のビレット、帯鋼では大手の一角を占める。中核子会社は河北津西鋼鉄。大株主として名を連ねる世界最大手のアルセロール・ミタルから支援を受け、製品レベルの引き上げを進めている。
復星国際0065656,81627.273,403▲19.4826,521
その他華東地区を地盤とする民営の大手コングロマリット。主力は鉄鋼事業で売上高の半分以上を占める。中核子会社は南京鋼鉄で、中鋼板では国内有数の生産規模を誇る。用途別では石油タンク用で国内トップ。このほか、鉄鉱石の鉱山を海南省に保有。自社で不動産開発も手がけており、コングロマリットとしての総合力が注目される。
首長国際0069717,72034.65126▲69.523,134
レッド国有系の鉄鋼メーカー。鉄鋼大手「首鋼総公司」の傘下にある。鋼材製品の製造・販売事業を展開するほか、首長宝佳(00103)を通じてラジアルタイヤ用スチールコードなども製造。コークス生産の首鋼資源(00639)、鉱山経営のオーストラリア上場企業などに出資するなど、原材料供給の確保に努めている。
安徽天大石油管材008394,53042.3963▲36.971,149
H株安徽省を拠点とする民営のシームレス鋼管メーカー。主要製品はケーシングパイプなどの油井管、船舶用やボイラー用のシームレス鋼管など。製品は海外にも輸出しているが、貿易摩擦の対象となった場合に、悪影響は大きい。
重慶鋼鉄0105323,53241.12▲ 1,471赤字転落4,983
H株重慶市政府系の鉄鋼メーカー。内陸部の経済中心として注目される同市で大きなシェアを持つ点が強み。同社製品は「三峰」などのブランド名で有名であり、主力の中厚板の生産は国内有数の規模を誇る。親会社との資産再編を計画しており、今後の動向が注目される。
本鋼板材20076150,43110.38795▲14.0016,331
深セン遼寧省本渓市に本拠を置く、地元政府系の鉄鋼メーカー。粗鋼、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板、特殊鋼、連続鋳造ビレットの生産販売などを手がけている。遼寧省を本拠とし、東北地方で高いシェアを持つことが強み。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年6月19日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

鉄鋼(業種別一覧)

注目されるトピックス ~鉄鋼重要回復の前提となる住宅市場の動向がカギに~

政府主導の業界再編策の行方:

産業集積度の低さ、過剰な生産能力は業界が抱える最重要の問題。当局は問題解決に向け大鉈を振るっており、05年に発表された「鉄鋼産業発展政策」では、鉄鋼上位10社の国内生産量のシェアを20年までに70%に高めるという。同時に、政府は小規模・老朽化した生産設備の淘汰を強化。企業が成長の見込めるハイエンド分野で設備投資を進めるには、既存設備の再編が不可欠となる。これら構造的変化の歩みは遅いが、着実に優良企業の競争力を強める方向に働こう。

鉄鋼需要の増加には住宅市場の回復が必要:

景気の緩やかな減速、当局による引き締め強化などを背景に、主力の建設向け需要の先行きは厳しい。在庫整理もまだ時間がかかりそうだ。減速感が漂う国内の住宅市場が回復に転じるまでは、こうした状況が続く恐れがある。

鉄鋼価格の動向:

鉄鉱石価格は、海外資源メジャーとの鉄鋼石などの資源価格交渉に左右される。価格急騰は、鉄鋼セクターにとって最大の利益圧迫要因となる。さらに原油・石炭などの原燃料価格、及び海運賃価格の上昇も、鉄鋼製品のコスト増加に繋がる。今年に入りこれら原燃料の価格は調整色を強めているが、常に上振れ懸念は燻っている。(中国部 畦田)

鉄鋼(業種別一覧)

世界の鉄鋼大手上位20社(11年、粗鋼生産量ベース)
粗鋼生産量と販売価格の推移
一定規模以上の鉄鋼企業の売上高、在庫高、利益率の推移

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