中国株 業界レポート

不動産業界 ~実需喚起とバブル抑制の両立が課題~

2012年6月19日

市場動向 ~引き締め策が不動産ブームに冷水、体力勝負の様相に~

11年の業界規模:

商品不動産販売額:5兆9119億元(前年比12.1%増)、販売面積:10億9946万㎡(同4.9%増)、在庫面積:2億7194万㎡(同26.1%増)

11年の不動産市場も減速が続き、取引金額の前年比伸び率が18.3%→12.1%、販売面積が10.1%→4.9%と縮小した。住宅バブルを抑えるために、当局は次々と不動産引き締め策を導入。新規着工面積の伸び率が40.7%→16.2%に低下するなど一定の成果をあげたが、肝心の住宅価格は高い水準にあり、引き締め策は年後半に至り、さらに強化された。こうしたなか、購入予定者の一部は価格下落を期待して買い控えを選択。景気低迷もマンションブームに冷水を浴びせた。一方で不動産物件は次々と竣工を迎え在庫が積み上がる状況となり、業界は体力勝負の様相に陥った。販売力や財務面で優位に立つ大手は概ね増収増益を確保。それに対して中小の多くは業績が悪化し、資金繰りに窮するケースも出てきた。

なお、今年に入っても市況低迷が続くことから、景気下支えを考慮し実需の刺激策が出てきている。ただ、実需喚起とバブル抑制の両立は一筋縄にいかないため、当面は政策の不透明感、厳しい経営環境が続こう。

業界の特徴 ~政策と景気サイクルなどに大きく連動する産業~

主力事業面:

政策や景気サイクルに大きく左右されるセクター。不動産投資そのものはGDPの約1割に相当するが、鉄鋼などの素材産業や消費への波及効果を考慮すると、経済全体への影響力はかなり大きい。中長期的には人口の増加と、都市化の進展が市場拡大をもたらす要因。参入障壁は低く、多くの企業が競争を繰り広げる。開発から販売、資金回収までの期間が長いため、資金調達力、財務基盤の良し悪しが企業の競争力に直結する。

国際面:

基本的にドメスティックな産業。不動産は投資・投機の対象となりやすく、人民元の切り上げ期待などを背景に、値上り益を狙った海外マネーが流入しやすい分野だ。香港系をはじめとしたアジア企業が積極的に進出してきている。

政策面:

土地はすべて国有・集団所有であり、使用権が売買される制度。政府にとってマクロ経済コントロールの重要分野であり、使用権の払い下げ、開発認可、税金、住宅の購入規制など、様々な手段を通じて安定的な成長を目指す。目下のところ、不動産バブルの抑制に向けて当局は全力を傾けている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~数多くの企業が乱立するなか、二極化の傾向が進む~

業界は集約度が低く、全国展開している企業は政府系シンクタンクなどが発表する「中国不動産デベロッパー100強」に載るような大手に限られる。不動産引き締めの強化、住宅市場の減速を受け、11年は業界全体で二極化が進んだ。住宅開発は民営大手、政府系企業が優位。商業用不動産では香港系企業も上位に食い込む。最大手は万科企業(200002)で、最新の販売額ランキングでも首位を譲らず、強力なブランド力を背景に二桁の増収増益を持続。広東省のオーナー企業、恒大地産集団(03333)が昨年に続いて業績を大きく伸ばし、販売額で2位に躍進した。民営企業の存在感が目立ち、広東省ではほかに碧桂園控股(02007)、広州富力地産(02777)、上海市では世茂房地産(00813)、北京市ではSOHO中国(00410)、重慶市では龍湖地産(00960)といった企業が大手に名を連ねる。これら大手の中でも業績の明暗が分かれた。

一方、政府系では中国海外発展(00688)が最大手、華潤置地(01109)も9位に躍進。両社とも全国規模で事業展開できる競争力を持ち、販売増に結び付いた。北京首創置業(02868)、遠洋地産(03377)なども代表的企業。海外勢をみると、長江実業(00001)、恒隆地産(00101)、新鴻基地産(00016)、新世界発展(00017)など、香港財閥系のデベロッパーが大きな競争力を持つ。各社は主力の香港に加え、これまで蓄積したノウハウを活かして本土市場でも存在感を放ってきた。しかし、高級物件に強みを持つことが引き締め政策下では逆風に働き、業績を落とす企業もみられた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
長江実業0000135,17028.9038,23971.62214,477
ハンセン香港一の富豪と知られる李嘉誠・主席が率いる長江グループの中核企業。香港や海外で不動産開発・賃貸、ホテル・サービスアパートメント経営などを事業展開している。主力市場は香港だが、本土の主要各都市でも高級物件を中心に事業展開している。
恒隆地産001012,54821.742,089▲26.39114,526
ハンセン香港系不動産デベロッパーの大手。有力コングロマリットの一角を占める恒隆集団(00010)の傘下にあり、香港や本土で不動産開発、賃貸事業を手がける。購買力の上昇を見込んで各地でショッピングモールの建設を加速している。
SOHO中国004105,684▲68.793,8927.0428,953
その他北京市を中心にオフィス・商業・住宅開発のプロジェクトを展開する大手デベロッパー。経営トップの創業者夫婦は業界での知名度が高く、影響力も大きい。同社は買収をテコに、引き続き大都市でのオフィス・商業開発に注力する方針。この分野は当局による引き締めの対象外であり、政策リスクが低い。
中国海外発展0068840,3389.6412,47521.44143,836
ハンセン不動産業界のリーディングカンパニー。国有系で中国建築(601668)の傘下にある。環渤海地区、長江デルタ、珠江デルタ、四川省など、主要都市の中心部や都市近郊の好立地物件を中心に住宅開発を手掛けるため、不動産の価格下落に対する抵抗力が比較的強い。
世茂房地産0081326,03119.475,72222.5040,899
その他許栄茂・主席が創業した新興の大手不動産会社。上海市の西側(浦西)のランドマークである超高層ビル「上海世茂国際広場」を保有・賃貸するなど、同市デベロッパーの代表格。大都市での大規模分譲マンション、商業ビルの開発に強みを持つ。
華潤置地0110929,72039.126,70034.4091,483
ハンセン国有系の大型コングロマリット「華潤集団」に属する大手デベロッパー。北京市や上海市、四川省成都市など国内各地で住宅・商業物件を開発。特に複合型物件の開発に豊富なノウハウを有しており、商業不動産の賃貸料収入は地場系でトップクラスにある。
碧桂園控股0200734,74834.665,81335.4957,788
その他民営の大手住宅デベロッパー。広東省に本拠を置き、大都市近郊などを中心に「碧桂園」シリーズの住宅などを開発している。同社は引き締めの影響が比較的少ない地方都市近郊での開発を得意としている。
恒大地産集団0333361,91835.1911,38149.9867,615
その他急成長を続けている民営の大手不動産会社。同社は実需に基づく住宅供給、中小都市での事業拡大を重視しており、引き締め策の影響が小さく、ここ数年で売上を大きく伸ばしてきた。中小都市進出の草分けであり、豊富な開発用地を有している点も強み。
雅居楽地産0338322,94411.814,105▲31.3035,184
その他広東省を本拠に中高級住宅、リゾート施設などを開発する民営企業。高級物件を中心に「雅居楽花園」シリーズの住宅などを販売しており、広州市と海南省が主要な収益源。高級物件を中心としているため、引き締め策の影響を比較的受けやすい。
万科企業20000271,78241.549,62432.15120,206
深セン国内最大手の住宅デベロッパー。長く業界トップの座を維持しており、企業表彰や企業ランキングの常連。同社の王石・董事長も業界を代表する人物として有名となっている。深セン市を本拠に、全国各地で事業を展開。年間販売額を1000億元台に乗せる唯一のデベロッパー。
上海陸家嘴金融貿易区開発9009324,16551.29984▲17.3524,466
上海上海市にある国家開発区「陸家嘴金融貿易区」の開発を手がける国策会社。土地使用権の譲渡収入が売上高の多くを占めていることが特徴。同開発区は金融を含めた第三次産業の中心地。同地域の地価が業績を大きく左右する。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。ただし、恒隆地産(00101)は決算期変更の関係で6カ月間の業績となっている。 単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.463元。

時価総額は12年6月19日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.759HKドル。

不動産(業種別一覧)

注目されるトピックス ~不動産の“実需”に注目~

不動産の“実需”注目、目玉は低所得者向け住宅:

都市部での住宅問題の解決に向け、当局は低所得者向け住宅の建設を加速しており、15年までに3600万戸の建設を目指す。さらに1件目の住宅購入については銀行に対して優遇金利の適用を奨励。当局は実需に基づく購入については積極的に支援しており、中低価格帯の住宅物件を主力とするデベロッパーは追い風が吹こう。

不動産引き締めの動向が最大のリスク要因:

一方で、不動産投機に対しては抑制策が一層強化される見込み。物業税(固定資産税)導入、2件目以降の頭金比率の引き上げ、購入制限を含む政策措置について、適用都市が広がるものと考えられる。引き締め策は不動産企業の株価を押し下げる要因になるため、動向には注意が必要だろう。

市場の集約度が引き続き上昇:

不動産向け融資の抑制策、上場審査の厳格化などを受け、デベロッパーにとって資金調達力が益々重要となっている。資金力に富む国有系デベロッパー、民営大手の上場企業は優位に立っているといえよう。これらの企業を中心に今後も業界再編が一層進み、市場の集約度は引き続き上昇すると考えられる。(中国部 畦田)

不動産(業種別一覧)

不動産開発投資額の推移
商品不動産の販売額と主要としの平均価格
デベロッパー販売額ランキング(11年実績)と最新のデベロッパー百強のランキング状況

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