中国株 業界レポート

建材業界 ~再編が一段と加速、政策的な追い風も~

2012年6月22日

市場動向 ~世界有数の市場規模、5カ年計画の初年度で需要は高まるも、後半から失速~

11年の業界規模:

売上高:3兆3780億元(前年比:38.5%増)、税引き前利益:2798億元(同45.3%増)、セメント生産量:20.9億トン(同11.7%増)、ホームセンター販売高:1兆2800億元(同16.3%増)

中国はセメント、ガラスなど主要建材の大半で世界最大の生産量、生産能力を有し、市場規模も大きい。11年の建材業界全体の売上高は3兆3780億元、税引き前利益は2798億元に達し、それぞれ前年比で40%前後の高い伸びを示した。5カ年計画の初年度を迎え、低所得者向け住宅など重要プロジェクトが次々とスタート。これを受け、建材需要も増加、販売価格も高値で推移した。しかし、徐々に引き締め強化に伴う公共事業の減少、景気減速の影響が出始めると、年後半にかけて需要が鈍化。旧式・過剰気味の生産設備、過当気味の競争という構造的問題の解決も道半ばで、販売価格は調整に転じた。12年に入ると景気低迷の影響が一段と強まり、各企業の業績も悪化。1-3月期の税引き前利益は全体で前年同期比5.4%の減少となり、このうちセメントの減益率は60%に達し、平板ガラスに至っては赤字に転落した。一方、景気下支えを目的に政府は5月からインフラ投資を再び増やす傾向にある。景気対策が本格化すれば、年後半にかけて市況が改善する可能性もあろう。

業界の特徴 ~集約度が低く競争が激しい業界、過剰気味の生産能力が課題~

生産・販売面:

建材はセメント、ガラス、装飾用建材をはじめ多くの製品種類があり、いずれも多くの企業が激しい競争を繰り広げるなど、業界の集約度は低い。生産設備は多くが旧式、過剰であり、エネルギー消費量、環境負荷が大きいという構造的な問題を抱えており、電力や石炭など価格動向がコスト面を大きく左右する。セメントは沿海部が主な生産地となっている。販売面をみると、セメント、装飾用建材などはインフラと不動産建設向けが大きな柱。中国の住宅は内装の余地・自由度が高いことから、個人による建材消費量も多い。需要動向は政府、企業などの固定資産投資に大きく影響される。ガラスは建設用のほか、自動車向けの需要も注目される。

国際面:

基本的に内需型の業界であり、輸出比率は大きくない。最大の輸出先はアジアであり、香港、日本、韓国、インドなどが主要市場。一方で外資企業も中国市場に積極的に進出している。

政策面:

過剰気味の生産能力という構造的な問題の解決に向け、当局は業界全体への締め付けを引き続き強化。中心となるセメントでは、業界再編を織り交ぜながら生産設備の整理・統合を推進していく。一方で大型の公共事業が需要・価格の押し上げにつながる可能性も。このほか、新規参入に厳しい条件を設定し、過当競争の防止に努めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手は政府系が中心、セメントは地域ごとにマーケットリーダーが異なる~

低所得者向け住宅をはじめとした政府の重要プロジェクトの本格稼働にともない、11年は大手企業が全般的に好業績を記録した。セメント業界では大手が軒並み大幅な増収増益を継続。地域別にマーケットリーダーは異なり、生産能力で業界首位(単体ベース)の安徽海螺水泥(00914)は国内の東部を幅広く網羅。華南は華潤セメント(01313)、華中は華新セメント(900933)、華北は北京金隅(02009)がそれぞれしっかりとした地位を築いている。一方、国内最大の総合建材グループを形成している中国建材(03323)は各地に子会社を持ち、グループ全体での生産能力は安徽海螺水泥を凌駕。また、セメント設備で最大手の中国中材(01893)はセメント生産にも進出し、西北地域を中心に展開。これら大手の多くが政府系企業で、当局とのパイプの強さを発揮した。一方、アルミ形材の中国忠旺(01333)は数少ない民営大手として有名だが、輸出の不振で利益を大きく減らした。ガラス業界も大手を含めて価格低迷、製造コストの増加に見舞われ、業績が悪化。日本板硝子が大株主として名を連ねている中国玻璃(03300)と上海耀皮玻璃(900918)の両社は大幅減益に後退した。

12年に入ると多くの企業で業績が悪化した。特に好業績だったセメント大手の苦戦が目立ち、1-3月期で多くの企業が減益に後退。ガラス大手の上海耀皮玻璃は赤字に転落した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
安徽海螺水泥0091448,65340.9911,58688.10105,362
H株安徽省を本拠とする地元政府系の大手セメントメーカー。競争力を持つ華東や華南地域で、良質・豊富な石灰資源を使い、高品質のセメントとクリンカーを提供できることが強み。国内最大級の生産量を誇り、ブランド力も高い。
台泥国際011369,35438.651,359108.907,053
その他台湾の巨大企業グループ「台湾セメント」を親会社に持つ、大手セメント会社。主に本土でセメントやクリンカーなどを製造・販売。海外にも広く輸出している。買収を積極的に進めており、08年に香港上場の嘉新水泥を買収して華東地域に事業エリアを拡大。10年も大型買収を成功させ、事業規模を大幅に拡大した。
華潤セメント0131319,29664.33,469104.833,183
その他中央政府系の大手コングロマリット「華潤集団」でセメント事業を展開する企業。福建、広東省など華南地区を地盤とし、同地域では最大のシェアを誇る。買収などを通じた規模拡大に努めており、足元では華北地区への進出を重視している。
中国忠旺控股0133310,305▲2.061,105▲57.4315,949
その他遼寧省を本拠とする民営の大手アルミ形材メーカー。実質支配者は創業者の劉忠田・董事長。主力は工業向けだが、アルミサッシやカーテン・ウォール(CW)など建築向けのアルミ製品も生産しており、北京国際空港、北京オリンピック会場、上海万国博覧会会場で使用された。
中国中材0189350,70213.951,46032.788,750
H株中央政府系の大手プラントメーカー。主力のセメントプラント事業は世界屈指の規模を誇り、新興国を中心に各地に進出。川下のセメント生産でも国内有数の規模まで成長しており、グループ全体でのシナジー効果が見込める。加えてハイテク素材などの成長分野を手がけている点も注目。
北京金隅0200927,41024.283,42824.4235,873
H株北京市政府系の建築材料メーカー。北京市・環渤海地区で高い市場シェアを持つ。事業は川上のセメント、建築資材の生産から川下の不動産開発や投資まで多岐にわたり、事業間でのシナジー効果が見込める。建築資材では「TOTO」など海外製品の代理販売も手がけており、「建材下郷」の恩恵を享受できる銘柄といえよう。
中国玻璃033002,946▲ 6.6182▲ 40.41,643
その他老舗のガラスメーカー。色ガラスとコーティングガラスでは国内屈指のシェアを誇る。本拠とする江蘇省はガラスの原料の産地である点が強み。日本板硝子が大株主として資本参加している。
中国建材0332380,05853.998,015137.8847,997
H株中央政府系の総合建材企業。製品種類が豊富、その多くで国内上位のシェアを占めている点が特徴。主力製品はセメント、石膏ボードなど軽量建材、グラスファイバーなど。製品は「建材下郷」の恩恵が見込めるほか、新エネルギー、新材料などの戦略的新興産業の範囲にも含まれており、政策的な支援が期待できる。
中国南玻集団2000128,2706.801,178▲19.0318,871
深セン広東省深セン市を本拠とする地元政府系の大手ガラスメーカー。高級フロートガラスなど建築用ガラス、ITOガラス、カラーフィルター、セラミックデバイスの研究開発・生産などを手がける。デバイス、電池用ガラス、ポリシリコンなど、太陽光発電の分野にも参入している。
上海耀皮玻璃9009182,421▲9.8577▲60.125,770
上海大手ガラスメーカー。主力製品は透明フロートガラス、着色ガラス、家具用ガラス、中空ガラス、多層ガラス、めっきガラス、膜付低放射ガラス(Low-Eガラス)、自動車ガラスなど。同社は日本板硝子傘下の英ピルキントン社と上海市政府系の企業などの合弁で設立された。
華新セメント90093312,63849.221,07587.7914,498
上海湖北省を本拠とする大手セメントメーカー。同社の歴史は古く、セメント、クリンカーなどの製品は「華新」や「堡塁」のブランドで知られる。事業の中心は湖北省。筆頭株主はセメント世界大手のスイス・ホルシム社。地元政府系企業も大株主となっている。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.463元。

時価総額は香港株が12年6月22日、B株が6月21日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.760HKドル。

建設資材(業種別一覧)

注目されるトピックス ~業界再編の進展に加え、政策的な追い風も~

構造的問題の解決もあり、業界再編の流れは継続か:

改善が図られたとはいえ、過当競争をはじめとした問題が存在している。これを解決するために、業界再編の推進、旧式設備の淘汰、環境対策の徹底、製品の高付加価値化などが政府主導で進められる見込み。今後も大手を中心とした買収・合併に業界の注目が集まるだろう。

重要プロジェクトの加速、建材下郷など政策的な追い風も:

建材需要に大きな影響を与える政策動向は、今年後半にかけて明るい見通しが持てる。景気刺激策として、低所得者向け住宅の建設、内陸部の振興策、交通インフラの整備などの重要プロジェクトが加速するとみられるからだ。加えて、「建材下郷」(農村での建材購入への補助政策)の試験エリアが拡大する観測も。これは装飾用建材などに大きな恩恵をもたらすとみられ、住宅の内外装市場が農村部にも拡大する可能性がある。

電力不足、石炭価格が懸念材料も、生産環境には改善の兆しが:

ここ数年、夏場にかけて全国的に電力不足に見舞われ、建材メーカーの操業に支障をきたすケースが目立っている。このほか主要なコスト要因である石炭価格も懸念材料。ただ、今年に入りインフレ傾向は全般的に落ち着いてきた。昨年に比べれば生産環境は改善してきたといえよう。(中国部 畦田)

建設資材(業種別一覧)

中国のクリンカー生産能力上位企業(11年末時点)
主要都市のセメント価格の推移(圧縮強度32.5の高炉セメント、元/トン)

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