中国株 業界レポート

石炭業界 ~エネルギー源の中核を担う~

2012年6月25日

市場動向 ~世界最大の生産・消費国、石炭高で好業績も年後半から変化の兆しが~

11年の業界規模:

原炭生産量:35.2億トン(前年比8.6%増)、輸入量:1.82億トン(同10.8%増)、売上高:3兆2594億元(同38.1%増)、税引き前利益:4342億元(同26.0%増)

中国は世界の石炭生産・消費量の約半分を占めているほか、資源保有量も世界有数の規模を誇る。石炭は生産・消費両面から見て1次エネルギー全体の7割前後を占め、エネルギーバランス上で極めて重要な位置づけにある。11年も旺盛な石炭需要が続き、販売価格も海外と比べても高値で推移。業界の業績は拡大し、2年連続の大幅な増収増益となった。積極的な設備投資で生産能力を1億トン近く増やし、引き続き生産量が拡大。それでも需要を賄いきれず、輸入量は前年実績を上回った。しかし、年後半にかけて国内外の景気減速傾向が深まるにつれ、石炭需要の伸びも鈍化。販売価格も調整に転じた。12年に入ると、この傾向が一層鮮明化。海外からの安価な石炭の流入、大口需要者による石炭事業への進出などが、石炭会社の業績に影を落とし始めている。政府によるマクロコントロールも一層強まる可能性が高い。ただ、最大のエネルギー源であるだけに、需要は底堅い。全体としては徐々に安定成長のトレンドに移行していくものと考えられる。

業界の特徴 ~エネルギーの中核産業、構造的問題の解決がカギ~

生産・販売面:

石炭業界は基本的にドメスティックな産業であるものの、海外の石炭価格動向の影響も受ける。中国は世界有数の石炭資源を有しているが、資源は山西省、内モンゴル自治区など内陸部に集中しており、主要消費地である沿海部と離れている。このため、鉄道、船舶を中心とする輸送インフラが重要となるが、輸送能力は不足気味。生産面では数多くの企業が乱立し、業界集約度は低い。小規模炭鉱の乱立、エネルギー多消費・環境汚染など構造的問題を抱えており、業界・炭鉱の再編などが課題。電力、鉄鋼、建材、化学向けの需要が全体の9割を占め、暖房用需要の増える冬季が繁忙期。電力、鉄鋼会社との価格交渉が特に重要であり、動向は石炭、並びに顧客である電力、鉄鋼などの業界双方に影響を与える。

国際面:

国内炭だけでは需要をまかなえないため、中国は海外から石炭を買い付けており、海外依存度は14%に達した。輸入の大半はオーストラリア産が占める。国内価格が昨年上昇し過ぎた分、足元では国際価格に相対的な割安感が出てきている。交渉相手国に比べ中国側の寡占度が低いことから、中国企業は海外の石炭会社を積極的に買収している。

政策面:

炭鉱は中央政府管轄の「国有重点炭鉱」、地方政府の「地方炭鉱」、政府以外が管理する「郷鎮炭鉱」の3種類に分けられるが、政府の目が届かない小規模炭鉱が多い。石炭は政府の規制色こそ強いものの、中央政府のコントロールが末端まで届きにくい。それでも政府はマクロコントロールを強化しており、炭鉱閉鎖などで具体的な目標を定めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~集約度の低い業界、大手企業の多くが11年に好業績を記録~

中国の石炭業界は業界集約度が低いものの、10年の原炭生産上位10社の総生産量は全体の4割弱まで上昇。上場する大手企業は再編を通じて規模拡大を図り、11年も好調な業績が続いた。多くは政府系企業であり、主要産炭地に炭鉱を有する。最大手の神華能源(01088)は石炭の生産・販売量の伸び率が加速、販売価格の上昇の恩恵も受け、引き続き2ケタの増収増益を記録。生産量ベースで業界2位の中煤能源(01898)は単価の高いスポット市場での販売量が伸び、同じく好業績となった。このほかの上場企業をみると、ヤン州煤業(01171)が海外事業の拡大から売上高を伸ばしたものの、前年から一転して為替損失が膨らみ、減益に後退。内モンゴル伊泰石炭(900948)も粗利益率が低下した。このほか、需要サイドから参入した炭鉱会社も増えてきており、鉄鋼大手の傘下にある首鋼資源(00639)は買収効果から増収増益となった。一方、好調な石炭市況を追い風に、流通を担う中国秦発(00866)、永暉焦煤(01733)、石炭採掘機械を製造する三一重装(00631)など、関連産業の利益も増えた。ただ、12年に入ると各企業の業績も減速が鮮明に。最大手の神華能源は1-3月期の増益率が一桁台に後退している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
三一重装006313,78040.977415.513,041
その他石炭採掘機械の大手メーカー。重機最大手の民営企業「三一集団」に属する。主力製品は岩盤切削機械で、国内屈指のシェアを誇る。石炭採掘で用いられる機械を幅広く製造。製品は国内各地の炭鉱のほか、海外でも使用されている。採掘の機械化率を引き上げる政策は追い風となり得る。
首鋼資源006395,92728.81,87325.111,929
レッドチップ山西省でコークスなどを生産する企業。北京を本拠とする鉄鋼大手「首鋼集団」が香港上場の首長国際(00697)などを通じて支配している。コークスは鋼材製造に不可欠の原料であり、納入先の鉄鋼メーカーとの関係の深さが強み。
中国秦発008669,97154.557051.22,283
その他石炭の大手商社。民営ではトップクラスの事業規模を誇る。国内各地の石炭会社に加え、オーストラリアやベトナムなどから石炭を調達。大秦鉄道などの陸運、自前のバルク船を通じた海運を通じて国内に輸送し、電力会社などに販売する。炭鉱会社の買収に踏み切るなど、自社の石炭比率の向上に努めている。
モンゴリアンマイニング009753,50995.576998.017,414
その他モンゴル国の民営石炭会社。石炭の生産・販売量に関して、同国では民営企業としてトップクラスの規模を誇る。中国とモンゴル国の貿易は資源分野を中心に拡大中。モンゴル国では初めてとなる香港上場企業として、注目度は高い。
神華能源01088208,19732.0545,67717.62541,801
ハンセン中央政府の直轄下にある国内最大手の石炭会社。石炭の生産・販売、発電、鉄道や港の経営など、石炭関連の事業を総合的に手がけている点が特徴。内モンゴル自治区、陝西省などで複数の炭坑を経営。自社で鉄道網、専用港などの輸送インフラを保有している点が強み。最大手として業界再編の主役に位置づけられている。
ヤン州煤業0117147,06538.668,928▲3.8198,477
H株山東省を本拠とする地方政府系の大手石炭会社。採炭、選炭、販売など石炭事業を幅広く手がける。鉄道施設も保有するほか、メタノール生産など石炭化学事業も展開している。買収などを通じて事業を拡大。国内では内モンゴル自治区、海外ではオーストラリアを重視している。海外事業の比重が大きい分、為替変動による影響を受けやすい。
永暉焦煤017339,64025.2287213.155,773
その他中国大手のコークス輸入業者。民営の新興企業であり、原料炭の大部分をモンゴルで買い付けた後に、国内の選炭工場で加工、鉄鋼メーカーなどに販売するというビジネスモデルを築いている。モンゴルからのコークス輸入では最大のシェアを占めている点が強み。
中煤能源0189887,77324.859,80131.28114,615
ハンセン生産量ベースで国内2位の大手石炭会社。中央政府直轄の企業で、山西省を拠点に華東、華北、西北地区などの炭田に、坑内掘りと露天掘りの炭坑を保有する。石炭輸出やコークス生産、採掘関連設備の製造などでも強みを有する。特に石炭関連設備は国内有数のシェアを持つ製品も多い。
内モンゴル伊泰石炭90094817,41321.845,4958.8067,039
上海内モンゴル自治区を本拠とする民営の大手炭鉱会社。原炭の生産から輸送・販売までを手がける。自治区内に複数の炭鉱を保有しており、同社の石炭は「伊泰」ブランドで有名。このほか石炭輸送鉄道も経営。上海B株の中では圧倒的な時価総額を誇る。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.463元。

時価総額は12年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.760HKドル。

石炭(業種別一覧)

注目されるトピックス ~電力向け石炭の価格動向が焦点~

西部を本拠とする企業を中心に、業界再編は継続か:

当局は今年3月に石炭業界の5カ年計画(11~15年)を発表。15年の生産量を39億トン以内に抑える一方、年産1億トン以上の企業を10社(10年時点で5社)、採掘の機械化率を75%以上(同65%)とする方針を明らかにした。さらに東部地区での炭鉱開発を抑制する一方、西部地区では奨励する考え。少ない増産余地をめぐる奪い合いが過熱し、業界再編がさらに加速する可能性も。この際、西部地区を本拠とする企業は有利な立場にあるといえよう。

環境・安全対策の優劣が競争力を左右:

石炭はほかのエネルギー源に比べてエネルギー効率の低さ、二酸化炭素排出量の多さなどが目立つ。炭鉱事故も多発するなど安全面での課題も多く、当局は環境・安全対策を強化している。それにとって代わるエネルギー源がないために、石炭は今後も中心的な役割を担い続けるが、企業にとっては石炭化学を含めた有効利用の推進が一層重要となろう。

価価格動向しだいではリスク要因にも:

石炭価格の変動要因は多く、急激な変化はリスク要因になりうる。スケールメリットから業界大手が有利。国内価格は基本的に市場に基づいており、国内需給バランス、国際価格などが影響。特に需要の約半分を占める電力業界向けの価格設定は重要だ。石炭高に起因した電力不足を受け、石炭業界に対する官民からの値下げ圧力は強い。電力会社も一方で自前での調達比率を高め、価格交渉を有利に進めようとしている。石炭、電力の両業界の利益を保つかたちで価格交渉が折り合えるか、注目される。(中国部 畦田)

石炭(業種別一覧)

中国の石炭大手企業20社(10年実績ベース)
石炭の生産量と価格動向
石炭業界の業績推移

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。