中国株 業界レポート

ガス業界~主要エネルギー源の一角、成長余地の大きさに注目~

2012年7月3日

市場動向 ~主要エネルギー源として、昨年も需要の増加が続く~

11年の業界規模:

天然ガス見掛消費量:1307億立方メートル(前年比21%増)、生産量:1025億立方メートル(同7%増)、輸入量:314億立方メートル(同89%増)

天然ガスは全体に占める比率こそ小さいものの、中国にとって石炭、石油に次ぐエネルギー源。経済成長、都市ガス網の整備などを背景に需要は一貫して増え続けており、11年の見掛消費量は前年比21%増の1307億立方メートルに達した。安定供給に向けて、国内では過去最高の1025億立方メートル(同7%増)の天然ガスを生産。だが、依然として需要を満たすことはできず、LNG輸入量は昨年に続いて大幅増となった。生産・販売量が増加し、川上の資源開発・生産企業が業績を拡大。川下の都市ガス供給業者も主力のLNGで販売価格が引き上げられたほか、一定の利ザヤを確保できていることから、増収増益が続いた。今後も、エネルギーの効率・環境性、廉価な価格設定、ガスインフラの整備拡大などを背景に、ガスの普及率、消費量は伸びる可能性が高い。安定調達に向けてガス資源の積極開発、海外からの輸入拡大という流れも続くだろう。

業界の特徴 ~規制色の強いディフェンシブセクターだが、成長余地も大きい~

生産・販売面:

公益セクターであるガス業界はディフェンシブ色の強い業界。川上のガス田開発・生産は国有3大石油会社の寡占状態となっており、国内外で資源開発を強化している。川下のガス供給は集約度が低く、主に各地域のガス会社が担当。ガス導管網を通じて都市ガスを提供するほか、LPGの販売、CNG(圧縮天然ガス)ステーションの経営などを手がける。需要は分散しており、全体の6割が工業用向け。残り4割のうち家庭用、発電用がそれぞれ2割程度を占める。家庭向けでは特に暖房用需要が多く、冬季の気候状況などがガス販売量に影響する。

収益面:

ガス業界の収益源はガス、ガス関連器具の販売収入、輸送収入、ガス管敷設料収入など。ガスの販売価格はいずれの段階でも政府の統制下にあり、一定の利幅は保たれる傾向にあるが、公共性を考慮して低く抑えられている。このため、特にガス供給会社とっては採算性が低い。普及余地が大きいなか、都市部の住宅不動産の建設が速いペースで伸びているため、ガス管敷設が引き続き、ガス供給会社の主要な収益源となる。

国際面:

川上のガス資源開発では、国有大手を中心に海外での権益確保の動きを強化。中央アジア・中国間の天然ガスパイプライン、国内での「西気東輸」(西部の天然ガスを東部に輸送)ルートなどの整備、及び沿海地域のLNGプロジェクト(LNG受入基地、ガス備蓄など)の稼働により、中国は本格的な天然ガス輸入の時代に入っている。11年の海外依存度は約22%に上昇したものの、輸入増加は長年続く供給面でのボトルネックを緩和すると考えられる。

政策面:

販売価格が統制されるなど、当局の関与度は大きい。ただエネルギー源の多様化を目指し、政府は天然ガスの利用促進に積極的である。

主要企業、主な取扱銘柄 ~国有企業が独占する川上、民営企業の進出が目立つ川下、ともに堅調な業績~

消費量の伸びを受け、サプライチェーン全体で概ね堅調な業績となった。川上のガス生産は中国石油天然気(00857)、中国海洋石油(00883)、中国石油化工(00386)という国有系3社による寡占。11年も3社ともに天然ガス事業が増収に寄与した。特に中国石油天然気は生産量を約680億立方メートルまで伸ばし、引き続き存在感を見せ付けた。しかし、国内の販売価格が低く抑えられており、輸入天然ガスで原価割れが発生し、利益を減らしている。一方、川下のガス供給は基本的に各地域の地元政府系企業が強い。ただ、最近では買収などを通じて全国展開する大手が育ってきており、民営、香港系企業の参入も目立つ。政府系では、中央政府系列の華潤燃気(01193)が河南省の上場企業を傘下に収めるなど規模拡大に努め、業績を急拡大。北京市政府系のコングロマリット、北京控股(00392)も都市ガス部門は好調だった。一方、半官半民の中国燃気(00384)は旧経営陣の不祥事による混乱から立ち直りをみせ、12.3期では大幅増益まで回復。香港・民営系では港華燃気(01083)、新奥燃気(02688)が代表格であり、いずれも大幅増益となった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
香港中華煤気0000318,62015.755,10610.11143,916
ハンセン香港屈指の富豪である李兆基・主席が恒基地産(00012)などを通じて支配する都市ガス会社。香港市場をほぼ独占しており、経営・財務基盤の安定性に強み。子会社の港華燃気を通じて本土でのガス事業を加速させており、11.12期の売上高は香港を上回った。
崑崙能源0013521,08746.504,65733.7499,552
レッド国内最大の石油・天然ガス生産業者である中国石油天然気を親会社に持つ。グループ内における天然ガス事業の中核子会社としての役割を担っている。親会社からガスパイプライン、天然ガス資産、LNG受入ターミナルなどの資産注入を受けており、事業規模を急速に拡大させた。
中国燃気0038415,72019.3779252.4116,962
その他大手都市ガス会社。LNGに加え、LPG、CNG(圧縮天然ガス)車向けのガススタンド経営なども手がける。半官半民の企業で、国務院系の企業に加え、英国、韓国のガス会社など国内外の有力企業が資本参加している。大株主の中国石油化工が新奥能源と組んで買収を提案しているが、12年6月時点で進展がない。
中国石油化工003862,463,76731.2873,2252.01650,355
ハンセン大手石油・天然ガス会社。石油精製が主力事業だが、川上のガス田探査・開発、天然ガスの生産・販売なども展開している。天然ガス事業の強化に向け、出資先の中国燃気に買収を提案している。このほか、シェールガスを戦略分野に定めており、一大生産地とみられる四川省でプロジェクトを展開。15年までに商業生産を目指す。
北京控股0039225,30010.352,3045.1854,092
レッド北京市政府系のコングロマリット。上下水道、ビールなど手がける事業は幅広いが、主力は最大の収益源である天然ガス事業。パイプラインと都市ガスの両方をカバーしている。地元政府の関係が深く、経営の安定性が高い点などが強み。主力市場の北京市は今後もガス需要の大幅な増加が見込める。
中国石油天然気008572,003,84336.74132,961▲5.022,012,888
ハンセン石油・天然ガス生産、資源保有量などで国内最大手の国有系企業。天然ガスについては、川上分野で大きなシェアを誇る。国内の主要ガス田の大半を押さえているほか、沿海部の消費地まで輸送するパイプラインの相当部分を所有。探査・生産・輸送の各分野で2位以下を大きく引き離している。
中国海洋石油00883240,94433.8370,25529.12698,268
ハンセン国有系の大手石油・天然ガス企業。海底ガス田の開発・生産では国内トップの規模・競争力を持ち、陸上のガス田を中心とする中国石油天然気とは一定の棲み分けができている。事業エリアは中国近海はもとより、オーストラリア、ナイジェリアなど世界各地に広がる。このなかには日中間で争点となっているガス田も含まれる。
港華燃気010833,58844.9458862.6314,196
その他香港中華煤気の傘下にある都市ガス会社。湖南、江蘇、四川など各省でガス供給のライセンスを保有し、本土で最大規模の都市ガス会社まで成長してきた。利益の見込める工業ユーザーの比率が高いことが特徴。親会社の良好な経営・財務基盤が同社の強みにもなっている。
華潤燃気0119311,21444.7499652.6027,616
レッド国有系の大手コングロマリット「華潤集団」で都市ガス事業を担当する企業。四川省、浙江省、安徽省、江蘇省などの主要都市で、都市ガスに関する各種事業や、LPGの販売などを手がける。親会社からの資産注入、鄭州燃気に対する買収など、事業拡大に積極的。華潤集団の一員として、グループ内でのシナジー効果も見込める。
天津天聯公用事業012651,058175.799018.512,759
H株天津市政府系のガス会社「天津市燃気集団」を親会社に持つ。天津市の河西区小海地や津南区の一部で、親会社から仕入れた天然ガスをガス管網を通じて販売。このほか内モンゴル自治区集寧市などで事業展開する。親会社からの資産注入が進めば、事業規模の拡大に繋がる。
新奥能源0268815,06834.361,25323.6929,811
その他民営の大手都市ガス会社。ガスパイプラインの建設、住宅へのガス管接続・ガス販売、液化石油ガス(LPG)の販売、ガス器具の販売、ガススタンドの経営などを手がける。主に西北部と東部沿海部を結ぶパイプラインを利用し、北京市、山東省、安徽省など各地でガスを供給。海外ではベトナムで事業展開している。

中国燃気(00384)の売上高・純利益は12年3月本決算。残りはすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元

時価総額は12年7月3日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

ガス(業種別一覧) 石油・ガス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~シェールガスの開発、価格制度改革は中長期的な刺激材料に~

川上ではシェールガス事業が中長期的な注目点:

天然ガスの供給不足を解決するために、各企業は国内外で資源確保の動きを強めている。こうしたなか、中国は世界最大級のシェールガス資源を有していることが明らかとなっており、将来的に商業ベースに乗れば供給不足の問題を一気に解決できる可能性が高い。この分野では中国石油化工と中国海洋石油の両社が先行しており、中国石油天然気が後を追う。

川下ではスケールメリットを目指した激しい競争が続く:

川下の都市ガス供給は規制により1都市1企業だけしか許されず、ライセンス期間も長いため、一旦取得したら長期に安定した収益を稼げる。このため、事業エリアの広さが企業の優勝劣敗に直結、先行者である大手が有利といえよう。中国燃気、新奥燃気、華潤燃気、港華燃気、北京控股の5社が大手グループを形成しており、今後もこの5社を中心に、買収などを通じた熾烈なシェア拡大競争が繰り広げられる可能性が高い。

天然ガスの価格引き上げ観測:

ガス価格の引き上げは業界の安定成長にとって不可欠と考えられ、政府も基本的に価格制度を改革する姿勢だ。昨年末には広東省と広西チワン族自治区に限定しているが、部分的に市場メカニズムを導入する改革が行われた。今後はインフレ動向を睨みつつ、時間をかけて価格が引き上げられる可能性が高い。これにより、業界全体の収益性が大きく向上する期待も。(中国部 畦田)

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天然ガスの生産・消費量の推移(実質ベース)
ガス業界の売上高推移
天然ガスパイプライン、受入基地などの計画図

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