中国株 業界レポート

電力・電力設備・新エネルギー業界 ~石炭火力の依存度低下の流れへ~

2012年6月25日

市場動向 ~電力需要は堅調も石炭高から稼働率が低下、夏場は電力不足が深刻に~

11年の業界規模:

発電容量:10億5600万キロワット(前年比9%増)、発電量:4兆7217億 キロワットアワー(同12%増)、消費電力量:4兆6928億 キロワットアワー(同12%増)、設備投資額:7393億元(同5%増)

中国の発電容量は10億キロワットを超え、世界有数の規模を誇る。11年は特に内陸部の工業セクター向け需要が伸び、電力消費量は前年に続いて二桁の伸びとなった一方、主力の火力発電の稼働率が石炭高から低下し、特に夏場は電力需給が逼迫した。電力需要の増加を受け、川上の発電部門は営業収益が前年比2割増の5628億元に拡大したものの、発電コストが膨ら膨らみ利益は前年に比べ16%減少。反面、川下の送電部門は引き続き好業績を確保し、最大手の国家電網公司の営業収益は同9%増の1兆6760億元に上った。電力不足の解決、電源構成の改善などの動きが続き、一昨年に減少した設備投資額は再び増加。火力発電設備は不振だったが、送電網への投資額が増え、設備メーカーは概ね堅調な業績となった。

12年に入ると景気減速の影響が徐々に表れ、5月までの消費量は前年同期比6%増にとどまった。だが、石炭相場が下落に転じたため、発電会社の収益環境が大きく改善。電力価格の引き上げ観測も高まっている。当局は再生可能エネルギー、スマートグリッドなどを重要視しており、この分野での設備投資は引き続き好調を維持する可能性が高い。

業界の特徴 ~発電源は石炭火力、需要は工業向けが中心~

生産・販売面:

電力業界は基本的にディフェンシブ、ドメスティックなセクター。日本とは異なり、発電会社、送電会社と明確に分けられている。11年の電源構成比(発電量ベース)は火力83%、水力14%。風力、原子力、太陽光などは急速に伸びているものの、全体での比率はごくわずかに過ぎない。石炭火力が主力であるため、石炭をいかに低価格、安定的に調達できるかが、発電会社の経営を大きく左右する。送電会社は、送電網の未整備、非効率さなどが課題。需要面は工業向けが最も大きく、全体の7割強を占める。家庭向けは1割強に過ぎない。このため、製造業の景気動向が電力需要に直結し、同時に電力会社を取引先とする設備メーカーの経営に大きな影響を与える。設備業界は発電機器、送変電設備、制御装置などのサブセクターに分けられるが、全体的に主要部品、鋼材、銅をはじめとした主要原材料の価格動向が重要となってくる。

政策面:

電力価格は政府の統制下にあり、価格水準は概ね低い。電力会社の業績を改善するため、電力と石炭の価格連動性を導入したほか、今年7月からは家庭用向けに関して段階料金制度をスタートさせた。このほか、発電会社は環境に与える影響が大きいため、政府は「上大圧小」政策(小規模施設を撤去し、大型施設に入れ替える)を推進している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~政府系が主役、発電は石炭高、設備メーカーは過剰な供給能力が問題に~

発電会社の集約度は低い。そのなかでも発電容量の半分近くを占める国有系の5大発電集団が業界大手で、全国に事業展開し送電会社に電力を供給。華能集団、大唐集団、中国国電、華電集団、中国電力投資の5社は複数の上場企業を傘下に置いており、香港にはそれぞれ華能国際電力(00902)、大唐国際発電(00991)、龍源電力(00916)、華電国際電力(01071)、中国電力国際(02380)が上場している。上場5社の11年決算をみると、いずれも発電需要の増加で増収を確保した。しかし、石炭価格の高騰が重しとなり、龍源電力を除いて利益が大幅に減少。ただ、同じ国有系コングロマリット「華潤集団」に属する華潤電力控股(00836)は自社での石炭調達力が高いことから、減益率が小さかった。一方、風力などの再生可能エネルギーについては、大手5社が専門子会社を通じて事業を強化。このうち上場しているのは華能新能源(00958)、大唐新能源(01798)、龍源電力、華電福新能源(00816)、中国電力新能源(00735)の5社で、こちらは概ね好業績となった。なお、原子力発電は国有2社の寡占下にあり、大手の中国広東核電集団は傘下に中広核砿業(01164)を抱えている。

設備メーカーは川上の部品から川下の完成品メーカーまで幅広いが、川下の主役は政府系企業。11.12期は顧客である発電会社の業績悪化、価格競争、製造コスト高の影響を受け、苦境に陥る企業も見られた。上海電気(02727)、東方電気(01072)の両大手は発電設備・送電網のハイエンド化の需要を取り込み、哈爾濱動力設備(01133)も水力発電設備の需要が増加。3社とも二桁増益を確保した。一方、風力発電設備を得意とする新疆金風科技(02208)は業界全体が供給過剰の状況で、業績が悪化した。過当競争は川上の部品、特に再生可能エネルギーの分野が深刻。同分野は大手の民営企業も多く、太陽光電池の素材・部品サプライヤーである保利協キン能源(03800)、陽光能源(00757)、風力発電部品の中国高速伝動(00658)などが有名。いずれも価格競争に巻き込まれ、保利協キン能源を除いて業績が悪化した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中電控股0000276,08356.887,711▲10.10155,557
ハンセン香港に本拠を置き、長い歴史を持つアジア屈指の発電会社。香港の九龍・新界をカバーする電力最大手として安定性がある。本土でも広東省の原発などに出資。このほかオーストラリア、インド、台湾、タイでも事業展開する。ハンセン指数構成銘柄でも比較的ディフェンシブな銘柄として注目できる。
華潤電力控股0083650,40624.973,695▲9.2471,174
ハンセン国有系コングロマリット「華潤集団」で発電事業を担当する中核企業。東部沿海部を中心に全国各地で事業展開している。石炭火力が中心だが、炭鉱事業の規模を急速に拡大。石炭価格の上昇に対する耐性が強い。風力発電などの新エネルギー事業も積極的に行っている。
華能国際電力00902133,42027.901,180▲64.74104,606
H株5大発電集団で最大手の華能集団の中核企業。事業範囲は山東、江蘇、上海など東部を中心に広範囲にわたるほか、海外でもシンガポールの大手発電会社に出資している。最近では水力、原子力、風力などの分野を強化。最大手としてスケールメリットを発揮できる点が強み。
龍源電力0091616,15913.662,63731.0237,545
H株国内最大の風力発電会社。成長分野の風力発電で発電能力が国内トップ、高い競争力を持つ。風力発電は稼働率などの面で課題も多い。このため、洋上風力への投資を拡大し、安定的な発電量の確保に努めている。さらに火力発電の割合も大きく、他の風力発電会社と比べても安定性が高い。
大唐国際発電0099172,38119.301,971▲23.2980,051
H株京津唐地区(北京、天津、河北)を本拠とする発電大手。大唐集団の中核を占め、北部で高いシェアを誇る。火力発電が主力だが、雲南省や四川省での水力発電、内モンゴル自治区での風力発電事業も強化。さらに主要燃料の石炭についても、採掘、運搬、石炭化学など幅広く事業を展開している。
華電国際電力0107154,17819.8773▲56.5530,022
H株5大発電集団の一角を占める華電集団を親会社に持つ発電大手。主力市場は本拠とする山東省で、石炭火力が主力だが、水力、風力、バイオマス発電などにも参入している。山東省以外にも四川、安徽省、河南省などに傘下企業を持つ。さらに石炭の安定調達に向け、炭鉱買収を積極的に進めている。
東方電気0107242,91612.703,05618.6046,044
H株四川省を本拠とする大手の発電設備メーカー。中央政府系の企業で、タービン、ボイラーなどの発電設備は火力、水力、風力、天然ガス、原子力など主要電源をすべて網羅している。特に風力、原子力の分野は高い競争力を持つ。海外展開も積極的に進めており、南米、アフリカなどの新興国市場を開拓している。
哈爾濱電気0113328,487▲2.351,22822.738,949
H株政府系の大手発電設備メーカー。中国の製造業の発展を長く担ってきた東北地方のハルビン市に本拠を構える。火力、水力、原子力の発電設備などを製造。ほかの大手と比べても水力発電の比率が高い。海外でも事業展開しており、インド、エクアドルなどに進出している。
新疆金風科技0220812,755▲27.01606▲73.5018,859
H株風力発電が盛んな新疆ウイグル自治区を中心に風力発電設備の製造事業を展開する半官半民企業。主力の風力発電タービンはシェアが国内2位、世界5位。国内外の発電会社に販売している。このほか、風力発電関連のコンサルティング、風力発電所の建設・販売なども手がける。
上海電気0272767,9177.883,26717.3769,597
H株中国の総合機械メーカー。主力は電力設備で、火力に加え、水力、原子力、風力など幅広い分野を手掛けている。他社と異なり発電だけでなく送電網の設備を取り扱っていることも強み。さらに電力分野に加えて、交通設備、環境プラントなどでも強い競争力を持つ。上海市政府系の中核企業として、今後の業界再編でも中心的な役割を担う可能性が高い。
保利協キン能源0380021,17738.083,5496.2525,997
その他多結晶シリコンのトップメーカー。国内最大手、世界でも有数の事業規模を誇る。ポリシリコンやシリコンウエハを製造し、主に太陽光電池向けの部品として出荷している。ただ、同分野は過当競争に陥りやすいことから、発電事業にも参入。川下の太陽光発電にも進出している。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

電力・供熱(業種別一覧) 電気設備(業種別一覧)

注目されるトピックス ~電力不足の波を乗り切れるか~

自前での石炭調達能力が発電会社の今後を左右:

石炭火力が中長期的に電源の大部分を占めるとみられ、石炭価格の上昇は発電会社の懸念要因であり続ける。そのため大手各社は炭鉱開発に本腰を入れており、より安い値段での安定的な石炭調達に努力。自前での石炭調達力が今後も発電会社の経営を左右すると考えられ、体力のない中小発電会社の淘汰はさらに進もう。

電力価格改革が大きな柱に:

発電会社にとっては、電力価格の動向も収益環境を左右する。価格水準は政府により抑えられてきたが、エネルギー浪費の抑制、安定的な電力供給などを考えると、価格引き上げの必然性は十分にある。今年7月にスタートする段階料金制度は大量消費者の単価を高く設定することが可能。現在は家庭向けのみだが、工業向けに適用を広げる可能性もあろう。

新エネルギー発電の振興、石炭火力への依存度を下げられるか:

石炭火力事業は元々黒字確保が容易でない。加えて大量の温室効果ガスを排出する。そのため、官民挙げた再生可能エネルギー(水力、バイオマス、風力、太陽光発電など)へのシフトを進め、石炭火力への依存度を下げようとする流れが今後も続こう。同分野は戦略的新興産業に位置づけられており、手厚い政策支援が見込める。(中国部 畦田)

電力・供熱(業種別一覧) 電気設備(業種別一覧)

電力消費量の推移※毎年2月の数値は1~2月の合計値
発電量の推移

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。