中国株 業界レポート

空運関連業界 ~航空市況も底入れか、旅行ブームの恩恵が見込める~

2012年6月26日

市場動向 ~世界2位の航空市場、国内外の景気減速、原油高が重しに~

11年の業界規模:

航空旅客輸送量:2億9317万人(前年比9.5%増)、貨物輸送量:558万トン(同1.0%減)、空港旅客利用者数:6億2054万人(同10.0%増)、営業収益:5001億元(同21.2%増)、税引き前利益:363億元(同13.9%減)

中国の航空市場は米国に次ぐ世界2位の規模を誇る。11年の旅客輸送量は引き続き増加したものの、伸び率は一桁台に低下し、3億人の大台を超すことができなかった。所得水準の向上で一定の旅客需要は確保したものの、海外景気の低迷から国際線の座席稼働率が低下。さらに貿易環境の悪化は単価の高い航空貨物の利用抑制に繋がり、全体の貨物輸送量は前年実績を割り込むこととなった。航空会社の営業収益は前年比17.9%増の3532億元に上ったが、原油高による燃料コスト増に苦しめられ、税引き前利益は17.7%の減少。空港会社も収益の伸びが鈍化するなか、減価償却費などが嵩み減益となった。欧米の景気後退が進むなか、12年に入ると国内景気の減速も鮮明に。貨物部門の不振はさらに深まっている。年初から人民元安が続いており、為替収益も見込みにくい。一方で原油高は一服してきておりこの傾向が年後半も続けばコスト圧力が大きく減る。貨物輸送の先行きは依然として厳しいが、旅客需要に関しては旺盛な海外旅行熱による恩恵が見込める。このほか、政府による支援策も見込まれ、市況は今年で底入れする可能性が高い。

業界の特徴 ~外部要因に左右されやすいセクター~

主力事業面:

業界は実際の輸送を担う航空会社、空港運営を担う空港会社、さらに設備・燃料や関連サービスを提供する関連会社の3つに大きく分けられる。いずれも国有系が中心であり、業界の寡占度は高い。航空会社は繁閑の差が大きく、「春運」(旧正月の交通ダイヤ)など大型連休前後に旅客需要のピークを迎える。天候状況、社会・治安情勢などの影響を受けやすい。航空機、燃料を海外から調達していることから外貨建て負債の比率が大きく、人民元高に傾くと有利。巨額の設備投資を必要とするため、強い財務基盤が求められる。燃料コストの比率が世界平均より高く、原油相場の影響を非常に受けやすい。全体的に外部要因に左右されやすいセクターだろう。本土には11年末時点で計180の空港があり、利用者数が年間1000万人を超える空港は21を数える。北京、上海、広州の3大都市の空港が主要ハブ空港の役割を果たす。

国際面:

中国には世界の主要航空会社の大半が乗り入れている。国際線(香港・マカオ路線を含む)の全体に占める割合を取扱量ベースでみると、11年で旅客が1割弱、貨物が4割強に過ぎず、今後の成長余地は大きい。

政策面:

一種の官業であり、政府による規制も厳しく、参入障壁は高い。航空料金は基本的に政府指導価格を基準とした一定の範囲内で定められる。料金の一部に含まれる燃油サーチャージは、徴収価格、徴収するかどうかを含め国が一元的に決定している。一方、燃料油も統制価格に属するため、収益・費用の両面で国が価格決定に大きな役割を果たしている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~主役である国有大手を含め、各社が利益を減らす~

航空会社は中国国際航空(00753)、中国東方航空(00670)、中国南方航空(01055)の国有系3社が中心。各社は旅客部門に支えられ、11.12期、12.1-3月期ともに増収となったが、利益は大きく減らした。貨物輸送の不振、為替収益の減少、原油高が足を引っ張る結果に。中国国際航空は国際線比率の高さなどの優位性を活かし、売上高、純利益ともに業界トップの規模を維持したが、老朽化した航空機の減損を計上し、大幅減益に後退した。地方政府系の航空会社は山東航空(200152)のように、大手3社の系列下にあることが多い。こうしたなか、海南航空(900945)は独立系として業界4位まで成長してきたが、同年は原油高により減益に後退。航空業界の不振は世界的に共通のもので、香港のフラッグキャリアである国泰航空(00293)も業績が悪化した。

  一方、上場している空港会社は少ないが、その中でも首都北京の玄関口である北京首都国際機場(00694)、海南省の海南美蘭国際機場(00357)の両空港は、11.12期に好業績を確保した。コスト削減効果や、非航空事業の好調さが主因。関連分野をみると、国有系の中国航空機材進出口公司、中国航空油料集団公司、中国民航信息網路(00696)の3社がそれぞれ航空設備、燃料油供給、空港システムについて独占的に担当する体制。このなかで中国民航信息網路は空港のシステム化が更に進み、二桁の増収増益を継続した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
国泰航空0029381,7069.924,567▲60.8448,229
ハンセン1946年に創設された香港を代表する航空会社(フラッグ・キャリア)。これまでに幾度も航空会社に関する国際的な賞を獲得するなど、海外からの評価が高い。航空会社コードは「CX」で、航空連合「ワンワールド」に加盟。本土の大手航空会社である中国国際航空と株式を持ち合い、幅広く提携している。
海南美蘭国際機場0035756415.9028921.642,068
H株海口美蘭国際空港を運営する地元政府系企業。11年の旅客取扱量は国内19番目の1016万人に達し、初めて1000万人の大台を突破した。海南省は国内屈指のリゾート地であり、観光需要の拡大による恩恵が見込める。一方、競合問題の解決に向けた三亜鳳凰国際空港に対する買収計画は、12年6月時点でも難航している。
中国東方航空0067082,40311.654,575▲7.7148,177
H株上海の浦東国際空港をハブ空港とする大手航空会社。航空会社コードは「MU」。3大航空会社の一角を担い、航空需要の大きい華東地区を地盤としている点が強み。業績不振の打開策として、格安航空輸送(LCC)に進出する計画。ジェットスター航空との間で合弁会社の設立に合意しており、今後の動向が注目される。
北京首都国際機場006946,50012.521,11387.1720,918
H株北京の国際空港である北京首都国際空港を運営する国有系企業。11年の旅客取扱量は7867万人を数え、国内1位、世界でも2位に入った。貨物取扱量でも国内2位に位置する。国際線利用者の増加で、非航空事業(ターミナルビル内の免税店など)の成長性に期待できる。改修工事、親会社からの資産買収を通じて、ターミナル施設の拡充を進めている。
中国民航信息網路006963,67220.221,04717.1011,588
H株航空関連のITシステムを独占的に供給する国有系企業。主力は航空券の予約販売システム、搭乗手続き・搭乗・預荷物管理システムなど。3大航空会社の親会社が、それぞれ大株主となっている点も特徴。
中国国際航空0075398,40919.307,082▲41.0082,359
H株北京を本拠とするナショナル・フラッグ・キャリア。航空会社コードは「CA」で、北京首都国際空港をハブ空港とする。大手3社のなかで国際線の比率が比較的高く、財務体質も概ね良好。香港のフラッグ・キャリアである国泰航空と資本・業務提携を結んでおり、華北地方以外でのシェア拡大に努めている。
中国南方航空0105590,39518.175,110▲11.7749,177
H株広州市の白雲国際空港をハブ空港とする大手航空会社。華南、西南地方で高いシェアを誇る。航空会社コードは「CZ」で、航空連合「スカイチーム」に加盟している。3大航空会社のなかでも、保有航空機、航路、旅客取扱量などの指標で最大手に位置する。12年6月の資本注入を受け、財務体質の改善が見込まれる。
山東航空2001529,66632.5677121.573,708
深セン山東省済南市の済南遥墻国際空港を拠点とする地方航空会社。航空会社コードは「SC」で、中国国際航空の傘下にある。青島市では航空貨物物流センターを運営。ホテル経営も手がける。四川航空、済南国際機場、中国民航信息など複数の上場企業に出資している。
海南航空90094526,27321.042,631▲12.6925,655
上海海南省の航空会社。航空会社コードは「HU」。地方航空会社でありながら、全国規模で国内・国際線を運航し、3大航空会社に次ぐ規模まで成長してきた。海南省は中国有数のリゾート地。今後もレジャー需要の拡大を背景に利用者数の増加が見込める。同省は島であるため、高速鉄道との競合もない。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年6月26日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.758HKドル。

空運業(業種別一覧)

注目されるトピックス ~国際線の成長に期待、安定成長に向け新5カ年計画を制定~

国内線は高速鉄道網との棲み分けは可能、国際線の成長余地は大きい:

旅客、貨物の国内輸送需要は増加のペースにあり、高速・遠距離輸送へのニーズは高い。中国では高速鉄道網の整備が急ピッチに進んでいるが、鉄道と航空は価格帯、ユーザー層ともに重ならない部分が多く、両者の棲み分けは可能。加えて欧州債務問題が落ち着けば、国際線需要の拡大余地が大きい。所得水準の上昇、余暇の多様化、海外ビザの緩和などを背景に、中国人の海外渡航の伸びが期待できるからだ。

航空業界の新5カ年計画:

航空業界の新5カ年計画(11~15年)によると、15年の旅客輸送量を4億5000万人、貨物輸送量を900万トンまで引き上げる計画。年率の増加率は10~11%を想定している。加えて空港発着枠量の不足を解決するために、空港数を230カ所まで増やす方針。燃油高で苦しむ航空会社には公的資金を注入するなど、政策支援の姿勢は明確だ。

原油価格、国際的な不確定要因などがリスク要素:

航空会社にとって最大のリスク要因は原油価格の動向だ。原油価格が急騰した08年は航空会社が軒並み巨額の赤字を計上。11年の上昇局面も同様だった。デリバティブでヘッジしているものの、相場が読みと逆方向に向かった場合は多額の評価損を計上するリスクもあり、原油相場の変動は常に注意を要する。さらに新型インフルエンザ、地震、紛争などの多くの不確定リスクが付きまとう。 

空運業(業種別一覧)

主要航空4社の比較(11年実績、カッコ内は前年比伸び率)
国内航空会社による旅客輸送推移
国内航空会社による貨物輸送推移
中国の上位10空港(旅客利用者数ベース、11年)

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