中国株 業界レポート

石油・石油化学業界 ~エネルギー・原材料の中核セクター~

2012年6月26日

市場動向 ~世界2位の消費国、需要鈍化も国内生産の低迷から輸入依存度が拡大~

11年の業界規模:

総生産高:11.28兆元(前年比31.5%増)、原油生産量:2.04億トン(同0.3%増)、輸入量:2.53億トン(同5.5%増)、見掛消費量:4.70億トン(同4.5%増)

中国は世界第2位の石油消費国。主要なエネルギー源、原材料として最重要資源に位置づけられる石油は、国内の経済成長を受け、需要は増加基調を維持している。しかし、11年は景気減速の影響から、伸びが鈍化。原油の見掛消費量は前年比4.5%増、輸入量が5.5%増、加工量も4.9%増と一桁台に後退した。それでも国内の原油生産量が低迷したことを受け、輸入依存度は56.5%に拡大。原油相場は乱高下したものの、全体的には昨年より高値で推移。川上の原油探査・生産部門は概ね好業績を確保した。一方でインフレ抑制のため石油製品価格の引き上げは抑えられたことから、川中・川下の石油精製・石油化学の各企業は収益環境が一層厳しくなった。

12年になると、欧州問題の影響から原油相場が調整局面に入り、原油探査・生産部門の利益が頭打ちに。川中・川下の企業はコストプレッシャーがやや和らいだものの、製品需要の低迷が続いている。それでも中長期的に見た場合、石油需要が引き続き拡大する可能性が高く、業界は資源確保、生産・加工設備の拡大・効率化などの動きを強めていこう。

業界の特徴 ~国有大手による寡占市場~

生産・販売面:

業界は大きく、①油田探査・採掘、原油生産などの川上、②原油からガソリンなど石油製品を生産する石油精製などの川中、③石油製品の小売や、ナフサをはじめとする石油製品からプラスチックなどの石油化学製品を製造する川下――の分野に分けられる。いずれも概ね国有大手による寡占状態。原油の販売価格は国際相場に大きく影響されるものの、価格上昇はこれを調達して石油製品を生産する川中の石油精製、さらに石油化学にとってコスト増となるため、川上と川中・川下の両方の収益向上を両立させることは容易ではない。石油精製は過剰気味の生産能力に加え、販売価格の低さなどの問題を抱えている。主力製品であるガソリン需要は自動車普及にともない拡大傾向。石油化学製品は基礎材料として幅広い製造業で使用されており、製造業全体の景気動向に左右される。

国際面:

世界の原油需要増加量の7割近くを中国が占めており、国際マーケットへの影響力は大きい。中国は政府と国有石油会社が一体となり、海外油田の獲得、開発を強化。輸入原油の半分以上を中東産が占める。

政策面:

業界は規制が厳しく、石油製品(特にガソリン)の販売価格は市民生活への影響が考慮され、政府により低水準に抑えられるなど、価格の市場・自由化は道半ば。川上分野では国産原油の販売価格が一定水準を上回った場合に、「特別収益金」を石油会社から徴収するほか、従価税方式の資源税が課税される。石油製品についても消費税が課されている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~3大石油会社による寡占、川上、川中・川下で明暗が分かれる結果に~

中国の石油・石油化学業界は国有系の3大石油会社が市場を寡占。このなかでも中国石油天然気(00857)と中国石油化工(00386)の両社は規模が飛びぬけている。いずれも幅広く事業を手がけるものの、それぞれ中国石油天然気は川上、中国石油化工は川中・川下の分野で大きなシェアを持つ。11年は原油高、石油消費量の増加を受け、両社とも売上高を前年比で30%以上拡大させた。だが、石油製品価格の引き上げ幅が足りず、精油部門が足を引っ張り、増益率は小幅だった。一方、両社を追いかける中国海洋石油(00883)は海底油田で圧倒的なシェアを誇る企業。川上に特化していることから、原油高の恩恵をそのまま享受し、最終利益は二桁増益を達成した。3大石油会社やその親会社は複数の上場企業を抱える。中国石油化工に属する上場企業では、石油加工専門の中国石化上海石油化工(00338)と化学繊維大手の中国石化儀征化繊(01033)は原油高と製品価格の低迷から、大幅減益に後退。一方で原油貯蔵・物流事業を主力とする中石化冠徳(00934)は買収による規模拡大の効果から、増収増益となった。中国海洋石油をみると、兄弟会社の中海油田服務(02883)は油田開発事業がリビア情勢の影響から損失を計上、小幅減益となった。一方、同じ兄弟会社の中海石油化学(03983)は生産規模を拡大し、業績を大きく伸ばした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
崑崙能源0013521,08746.504,65733.7499,071
レッド中国石油天然気(00857)の傘下にある資源開発会社。近年は天然ガスへの比重を高めているが、油田の探査・原油生産も手がける。本土のほか、カザフスタン、タイなど各国で事業展開している。
中国石化上海石油化工0033889,50924.15956▲65.4740,028
H株中国石油化工(00386)の傘下にある大手の石油化学会社。上海市を本拠とし、主力製品は合成繊維、樹脂・プラスチック、中間製品、燃料油など。特にエチレンに強みを持つ。原材料である原油が高止まりした一方、販売価格の引き上げは進まず、足元の収益環境は厳しい。生産設備の大型化・効率化、新製品の開発などを進め、差別化を図っていく方針。
中国石油化工003862,463,76731.2873,2252.01654,494
ハンセン大型の総合石油会社。売上規模は3大石油会社の中で最も大きく、川中の石油精製・石油化学、川下の石油製品販売では国内トップのシェアを誇る。油ガス田の探査・開発なども手掛けており、国内有数の油田である「勝利油田」などを保有。中国石化上海石油化工(00338)、中石化冠徳(00934)、中国石化儀征化繊(01033)など複数の上場企業を傘下に収めている。
山東墨龍石油機械005682,2731.29139▲39.046,054
H株山東省を本拠とする民営の石油採掘設備メーカー。主力製品は油井管。3大石油会社を顧客に持ち、良好な関係を築いている点が強み。製品の高付加価値化に向けて口径180ミリメートルの油井管の生産プロジェクトを進めており、この成否が今後の競争力を大きく左右しよう。
中国石油天然気008572,003,84336.74132,961▲5.021,995,664
ハンセン中国最大級の石油会社。国内最大の「大慶油田」を保有するなど、油ガス田の探査・採掘などの川上部門は他社の追随を許さない。「西気東輸」を含む国内の主要な石油・ガスパイプラインを保有している。燃料油や石油化学製品などの川中分野への進出も積極的。海外での資源獲得に大きな役割を果たしている。
中国海洋石油00883240,94433.8370,25529.12641,121
ハンセン資源開発に特化している大型の石油・天然ガス会社。3大石油会社の中で海底資源の開発に強みを持っており、渤海湾、南シナ海の西部・東部、東シナ海などの近海に加え、海外の海域まで開発範囲を広げている。新規参入した米国のオイルシェール事業を、今後の成長分野に位置づけている。
中石化冠徳0093416,34418.631779.1111,716
レッド中国石油化工(00386)の傘下にある石油関連の物流・貿易会社。主要事業は広東省恵州市での原油ふ頭・関連設備の運営や荷役・備蓄、原油・燃料油・石油化学製品の貿易など。親会社グループが最大の仕入・販売先になっている。親会社からの資産買収を通じて、将来性が見込める物流事業に経営資源を集約していく方針。
中国石化儀征化繊0103320,17923.44839▲31.6223,626
H株中国石油化工(00386)の傘下にある国内最大級の化学繊維メーカー。繊維産業が盛んな江蘇省を本拠とする。主力のポリエステルは国内最大、世界でも有数の生産量を誇る。主要原材料であるPTAなども生産していることが特徴。繊維・アパレル需要からの影響を大きく受ける銘柄。
中海油田服務0288318,4264.934,039▲2.1671,804
H株海底油田サービスの大手企業。海底油田の開発で最大手の中国海洋石油(00883)とは兄弟会社の関係。掘削リグ、各種作業船、石油タンカー、物理探査船などを保有し、掘削サービス、測定、掘削流体の供給などの各種サービスを展開。ノルウェーの同業大手に対する買収を手掛かりに、製品開発能力の強化を目指す。
中海石油化学039839,75642.071,98568.9621,252
H株国内最大手の窒素肥料メーカー。代表的な窒素肥料である尿素を生産、販売しており、同社の「富島」ブランドは国内で有名。原料である天然ガスを兄弟会社の中国海洋石油(00883)から安定的に調達できる点が強み。もう一つの主要原料であるメタノールの生産も行う。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年6月26日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

石油・ガス(業種別一覧) 化学(業種別一覧)

注目されるトピックス ~資源確保、販売価格の動向などに引き続き注目~

海外資源確保の動きはリスクも大きい:

原油の海外依存度の上昇は今後も避けられない見込み。業界は官民挙げて海外資源の獲得に巨額の投資を続ける一方、輸入先の多様化も進める。一方、海外事業の拡大は現地政府、住民との軋轢を招きやすいほか、政情不安に巻き込まれるリスクも。昨年は春先までの中東情勢の激変を受け、事業にストップがかかったケースも見られた。

川中・川下では販売価格の動向に注目:

石油製品は政府による統制価格のため、川中・川下の企業業績は政策・価格動向に大きく左右される。概ね価格は低めに設定されており、石油精製・販売は常に採算割れリスクが付きまとう。当局は価格の市場化を段階的に進めているものの、製品価格の引き上げはインフレ再燃に繋がりかねず、基本的に慎重姿勢を変えていない。

国際原油価格の変動要因は大きい:

国際原油価格の動向は業界全体に大きな影響を与える。国際原油価格は基本的な需給関係に加え、在庫、投機マネー、米ドル為替の状況など多くの変動要因がある。これらのリスクヘッジが経営の安定性を大きく左右する。(中国部 畦田)

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WTI原油相場の推移(米ドル/1バレル)
原油の国内生産量、輸入量の推移と伸び率(前年同月比)
国有系3 大石油会社による寡占状況(11年)

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