中国株 業界レポート

海運関連業界 ~貿易の中心を担う業界、景気低迷から苦境に~

2012年6月27日

市場動向 ~貿易大国の屋台骨を担う業界、国内外の景気減速から苦境に~

11年の業界規模:

輸出入総額:3兆6421億米ドル(前年比23%増)、港湾貨物取扱量:100億トン(同12%増)、コンテナ取扱量:1億6367万TEU(同12%増)

中国は「世界の工場、市場」として、輸出入ともに世界有数の規模を誇る。海運・港湾業界は貿易の主役といえよう。11年は国内外の景気減速の影響が徐々に強まり、輸出入ともに伸び率が鈍化。特に最大の貿易相手である欧州連合(EU)が債務問題に苦しみ、輸出環境の悪化を招いた。港湾の貨物、コンテナ取扱量も伸び率が低下。それでも貿易量は前年実績を上回ったほか、内陸の河川物流網の発展が進んだことから、港湾企業は概ね堅調な業績を確保。1億トン級の大型港湾も26カ所まで増加した。香港もアジアで歴史のある自由貿易港を有し、本土と海外との中継貿易の拠点となっている。一方、海運会社は上期が運賃価格の低迷と原油高、下期が世界経済の低迷の影響を受けて業績が大幅に悪化。運賃価格の低迷は世界的に船舶の供給過剰が深刻化したことが要因。海運・港湾会社を顧客とする造船、港湾機械メーカーも需給関係の悪化、原材料価格の高騰の煽りを受け、利益を落とした。12年に入るとコスト圧力はやや和らいだものの、貿易環境は依然として不透明だ。中国政府は今年の貿易成長率を10%に設定。仮に目標をクリアできても、拡大ペースが落ちるのは避けられないだろう。

業界の特徴 ~外需、内需両方の影響を受けるセクター~

外需面:

海運関連の業界は外需の影響を強く受けるセクター。輸送方法は大きくバルク・タンカー輸送、コンテナ輸送に分けられるが、需要はそれぞれ海外の資源価格・需給、輸出先である先進国などの景気動向に大きく左右される。さらに港湾業のコンテナ業務でも輸出向けが約8割以上であり、特に深セン港、寧波-舟山港はその比率が高い。

内需面:

海運・港湾会社は石炭や鉄鉱石など資源の輸入、ならびに産地から消費地への国内輸送について、中心的な役割を担っている。沿海部の港湾を利用した沿海輸送網、長江など複数の大河を利用した河川輸送網が発達。石炭などの取扱量は国内景気の影響を受けやすい。

投資面:

海運各社はこれまで投資を増やし、船隊規模の拡大に努めてきたが、それが過剰な輸送能力、運賃価格の下振れ圧力という業界の構造的問題に繋がった。船舶の建造は巨額になりやすい一方、注文から引渡しまでの期間は長く、設備投資のリスクは元々大きい。

主要企業、主な取扱銘柄 ~国有系大手が中心、海運業界の不振が目立つ~

本土の海運・港湾業界は政府系企業が中心。海運は国有系大手の寡占状態で、それぞれ傘下に複数の上場企業を持つ。サブセクターごとに、遠洋輸送は中国遠洋運輸(コスコ)、沿海輸送は中国海運(チャイナシッピング)、フォワーダー・河川輸送は中国外運長航が強い。11.12期は運賃低迷、原油高から収益環境が悪化し、大手といえでも業績を落とした。遠洋輸送最大手の中国遠洋控股(01919)が赤字に転落。中国海運の傘下企業でも、コンテナ輸送を担う中海コンテナ運輸(02866)が赤字を計上し、バルク・原油の中海発展(01138)も利益を減らした。他方、フォワーダーが主力の中国外運(00598)は影響が比較的小さく、小幅ながらも増収増益を確保。なお、香港地場系の海運大手である東方海外(00316)も大幅減益に沈んだ。

港湾企業の業績も減速したが、海運に比べると踏みとどまった。全国展開する大手は中遠太平洋(01199)、招商局国際(00144)などの国有系企業に限られ、両社とも増収を確保。多くの港湾は各地方政府が経営し、天津港(03382)、大連港(02880)、廈門国際港務(03378)などが代表的な銘柄として挙げられるが、11.12期の業績はまちまちだった。なお、香港では長江実業(00001)などのコングロマリットが港湾を経営し、本土にも進出している。

海運・港湾企業を顧客とするのが、コンテナ製造の中国国際コンテナ(200039)、港湾機械の上海振華重工(900947)、造船の広州広船国際(00317)をはじめとした各メーカ-。多くの企業が製造コスト高、販売価格の低迷に苦しんだ。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
招商局国際001447,86262.974,623▲5.2256,791
ハンセン政府系コングロマリット「招商局集団」の傘下にある大手港湾企業。香港、珠江、長江デルタ、環渤海地区などでコンテナ・バルクふ頭の運営、関連運輸などを手がける。新たな成長源を求め、珠江船務(00560)との提携を通じて河川ふ頭事業へ進出。海外での港湾建設も進めており、ベトナム、ナイジェリア、スリランカに進出している。
東方海外0031638,855▲ 0.41,176▲ 90.323,217
その他中華圏を代表する香港の海運グループ。初代行政長官を務めた董建華氏の父親が創業した。香港を拠点に世界各国に航路を張り巡らせ、各種貨物を輸送。運送にとどまらない全面的な物流ソリューションを提供している。11.12期は運賃価格の低迷に苦しみ、利益を大きく減らした。
広州広船国際003178,29618.28518▲26.768,909
H株華南地区で最大規模の政府系造船会社。国内二大造船グループの一つ「中国船舶工業集団」の支配下にある。主力事業の造船はハンディーサイズの石油タンカーやケミカルタンカーなどを建造しており、国内外で高いシェアを誇る。欧州の海運会社を中心顧客とするため、欧州債務問題の影響が懸念される。
中遠国際控股005178,84722.95324▲69.234,511
レッド海運最大手の中国遠洋運輸の傘下で、船舶関連の各種サービスを担当する会社。主力は船舶の建造・売買・リースの代理業務、海上保険、船舶・コンテナ用塗料など。塗料事業では関西ペイントと提携している。不動産事業を担当してきた遠洋地産(03377)を売却し、本業に注力する方針を明らかにしている。
中国外運0059843,7472.826424.235,481
H株フォワーダー最大手の中国外運長航の傘下にある上場旗艦企業。主力のフォワーダーに加え、エクスプレスサービスなども手がける。華東地区を中心に、本土の主要都市で事業を展開。海運に加え、陸運、空運も手がけており、物流企業としての総合力が強み。
熔盛重工0110115,90425.571,7200.1112,740
その他新興の大手造船メーカー。国内有数の富豪である張志熔・主席が創業した。華東地区を地盤とし、受注残ベースで国内屈指の規模を誇る。主な製品はばら積み船、タンカー、コンテナ船。海洋工事、動力機関、工事用機械などにも業容を広げている。
中海発展0113812,1577.741,047▲38.9918,210
H株沿海輸送最大手の中国海運を親会社に持つ大型船会社。主に石炭、乾貨物などのバルク、原油・燃料油の沿海輸送に関して、国内屈指の規模・競争力を持つ。LNG輸送を将来の成長分野に位置づけており、中国石油天然気(00857)、中国石油化工(00386)というエネルギー大手2社と提携を結ぶなど、将来への布石を打っている。
中遠太平洋011993,87234.192,5127.6026,792
ハンセン海運最大手「中国遠洋運輸」が中国遠洋控股(01919)を通じて支配する港湾会社。環渤海、長江、珠江デルタ地区などでコンテナふ頭を経営するほか、スエズ運河やアントワープ、ギリシャのピレウス港など海外の港湾会社に出資。ふ頭の運営にとどまらず、コンテナリースや、中国国際コンテナ(200039)を通じたコンテナ製造も手掛けている。
中国遠洋控股0191984,639▲12.28▲ 10,495赤字転落52,289
H株海運最大手「中国遠洋運輸」の中核を担う上場旗艦企業。コンテナ、ばら積み、原油など幅広い貨物の輸送を担う。中遠太平洋(01199)を通じて、ふ頭運営、コンテナリースなども展開。遠洋運輸の最大手として、貿易拡大の恩恵を受けやすい。一方で貿易環境が悪化すれば、その影響も大きく、11.12期は赤字に転落した。
中海コンテナ運輸0286628,246▲18.85▲ 2,743赤字転落31,757
H株中国海運の傘下で、コンテナ海上輸送などを担当する海運会社。国際・国内航路に定期便・チャーター便を就航している。コンテナ輸送に関しては国内屈指の規模を誇る分、海外の影響を受けやすい。11.12期は国際航路の不振を国内航路でカバーしきれず、赤字に転落した。中海発展(01138)とは兄弟会社の関係にある。
大連港028803,95518.53666▲18.0613,594
H株大連港を運営する企業。大連は東北振興の中心となる都市であり、数少ない国際港として戦略的に重要。通常のコンテナターミナルに加え、自動車ターミナル、石油備蓄基地などの機能も備えていることなどが特徴。日中韓のFTAが実現した場合、大連の地理的優位性は注目できる。
天津港0338213,7399.9359225.015,419
レッド天津港で最大規模のコンテナふ頭を運営する地元政府系の企業。天津発展(00882)などが大株主となっている。コンテナバースに加え、非コンテナふ頭も経営しており、食糧、鋼材、鉄鉱石などの積卸業務にも従事。天津は3大海運センターの一角としての地位を有しており、政策的な恩恵も見込める。
中国国際コンテナ20003964,12523.873,69022.9633,544
深セン世界最大級のコンテナメーカー。買収を通じて事業の多角化を進めてきた。傘下の中集安瑞科(03899)は天然ガス・化学製品などの輸送・備蓄設備を生産。10年に買収したオスロ上場企業はリグ(海洋掘削装置)を製造販売する。中国遠洋控股(01919)、招商局国際(00144)が大株主として出資している。
上海振華重工90094719,12911.7630黒字転換19,466
上海世界シェアトップの港湾荷役機械メーカー。コンテナクレーン、バルク用機械設備を製造している。国務院直属の交通インフラ大手「中国交通建設(01800)」に属し、親会社とともに海外から大型契約を受注してきた。一方で、海外景気の影響を受けやすい港湾設備への依存度を下げるため、近年は海上大型設備を重視。同事業の今後が注目される。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年6月27日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.758HKドル。

海運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧) その他輸送機械等(業種別一覧)

注目されるトピックス ~欧州情勢などリスク要因は多いが、中国の景気対策による市況底入れに期待~

沿海・内陸部の港湾整備、河川輸送網に注目:

当局は第12次5カ年計画(11~15年)で計440カ所の深水バースの建設目標を掲げるなど、港湾整備に積極的。海外との貿易に関しては、上海を中心に大連、天津を含めた3大海運センターの建設を目指している。さらに中国は内陸から沿海部までを繋げる広大な河川網を有している。これを一層活用し、国内貿易の活性化を進める考えだ。

景気刺激策による海運市況の底入れに期待:

政策当局による景気対策が今後本格化すれば、公共事業主導で鉄鉱石など一次製品の需要が回復、つれて輸入拡大のペースが再加速する可能性も。海運市況の底入れが期待される。ただ、過剰な輸送能力という構造問題は当面続くとみられ、リーマンショック後の09年にみられたような運賃高騰が繰り返される可能性は低いだろう。

主要国の景気動向、原油相場、通商環境をはじめリスク要因は多い:

主要国の景気しだいでは、海運・港湾業界の業績に大きなブレが生じる懸念も。当面は欧州情勢が主要なリスク要因となろう。貿易振興に不可欠な安定した通商環境も、この先、貿易摩擦や通貨安戦争が激しくなる可能性がある。原油高は海運会社のコスト高に直結。海運運賃の動向にも目を離せず、業界を左右するリスク要因は少なくない。(中国部 畦田)

海運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧) その他輸送機械等(業種別一覧)

港湾景気指数の推移
貿易額上位10税関(11年実績、空運、陸運を含む)
中国の貿易取扱額上位10税関

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